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クリスチャン・ディオール唯一の日本人テーラーが持つ「もう一つの名刺」〜彼がこいのぼりに掛ける想い〜

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「自分は何のために働き、どんな人生にしたいだろう」と考えたことがあるのは、本記事のライターだけではないと思います。そんな自分自身への問いかけに対するヒントを得るために、2枚目の名刺ホルダーへのインタビューを実施。同じように生き方や働き方を模索する若手社会人にお届けします。

5月5日はこどもの日。子どもの健やかな成長を願う日本の伝統行事の一つです。
こどもの日の代名詞でもあるこいのぼりで、子どもたちに笑顔と希望を届ける素敵なプロジェクトがあります。世界にひとつだけのこいのぼりを作るワークショップを開催するKOINOBORIプロジェクトです。

このプロジェクトの運営をするのは、日本で唯一クリスチャン・ディオールのオートクチュールデザイナーとして活躍されている高松太一郎さん。高松さんは、オートクチュールデザイナーとして仕事をしながら、NPO法人coyomiを立ち上げ、KOINOBORIプロジェクトを運営する2枚目の名刺ホルダー。2018年10月〜12月には二枚目の名刺サポートプロジェクトと協働したパートナーでもあります。

※前回ご紹介した「NPO活動に参加した僕たちが社内でワークショップを立ち上げた理由~越境学習を体験したNST社員の変化」は、高松さん率いるNPO法人coyomiのサポートプロジェクトに参加したメンバーへのインタビューです。

(画像:作品展「東京、青山、テキスタイルの地図。」で展示された高松さんの作品)

今回は、そんな高松さんにKOINOBORIプロジェクトを始めた経緯やKOINOBORIプロジェクトにかける想いについてお聞きします。

きっかけは2011年の東日本大震災「気が付いたら被災地にボランティアへ赴き、仕事も辞めていた」

大学を卒業後、東京のウェディングドレスのアトリエで働いたという高松さん。自分のやりたかったことがやれるという充実感とは裏腹に、ある種の閉そく感を感じていたと言います。

高松さん:「大学卒業後に就職したアトリエでは、幅広いキャリアを積めるというやりがいがある一方で、職場でも同僚以外との関わりはあまりなく、お客さんもハイステータスな方が中心。そのため、一部の限られた人としか出会うことができないというジレンマを感じていました。

そんな中、2011年3月に東日本大震災が起きた時、直感的に東京へ留まっている場合ではないと感じ、被災地へ赴きました。当初は日帰りでしかボランティアに参加できなかったので、毎週末被災地に通いボランティアをしました。ボランティアに必死になるうちに、気づけば仕事も辞めていました。」

―当時高松さんは27歳。仕事を辞めて被災地のボランティア活動に集中することに、ためらいや迷いはありませんでしたか? また、高松さんを突き動かしていたものは何だったのでしょうか?

高松さん:「被災地に行かなければという使命感の方が強くて、仕事を辞めることについてはあまり深く悩んだり、その理由を考えたりはしませんでした。ですが、今振り返ってみると、自分も過去に大変な状況を経験したことがあったので、震災も他人事に感じられなかったのだと思います。

僕は、子どものころ事故に2回遭い、どちらもあと少しで命が危なかったというくらいの大きなけがをしました。その時に家族や友達、医師など多くの人に助けられたことで、「自分は生かされている」という感覚が強くあります。こうした経験があるからこそ、同じように辛い境遇にある人を助けたいと自然と思ったのだと思います。だから仕事を辞めてボランティアをすることに違和感や抵抗はありませんでした。」

(画像:KOINOBORIワークショップで、プロジェクトに掛ける想いを語る高松さん)

被災地の人々に希望を届けたいという思いから生まれたKOINOBORIプロジェクト

高松さん:「ボランティア活動の1つに、被災地で被災した方々の話し相手になるというものがありました。話し相手になってみて、被災した方々がどれだけ今辛い状況なのか、深い悲しみを背負っているのかということをひしと感じました。今自分が置かれている状況が理解できていない小さな子どももいて、そういう子どもと話をすると特に身に堪える想いがしました。だから、『生きる希望や笑顔を届けたい』、『自分に何かできることはないか』と考え続けました。」

―その震災でのボランティアの経験から考え出したのが、KOINOBORIプロジェクトということですね。

高松さん:「はい。大学近くの保育園、児童施設や留学先のオーストリアの小学校で、アートのワークショップをしていた経験があったので、子ども向けのワークショップならできると思いました。また、布を使うもので、子どもを応援したいと思いついたのが、こいのぼりという題材でした。

こいのぼりは家で飾れるし、掲揚すればその場の風景を変えることができる。さらに、作って終わりではなく、世界のだれかと交換することもできる。自分がだれかを想ってこいのぼりを作って、どこかの誰かが自分を想ってこいのぼりを作ってくれて、それが届けられるということは、きっと生きる希望になるんじゃないかと考えました。

平時ではない状況下で、人が生きる姿勢というものが周りに生きる事そのものを指し示して行くのではないかと実感しました。だから、私自身があの時期あの地域で生きることの意味を全身全霊で感じでいたんでしょうね。とにかくその時は、誰かに対して未来に向けて希望を持てる体験を、なにより届けたいと思っていました。」

(打ち合わせやワークショップなどcoyomiの活動現場には、3歳のお子さんを連れて行くことも多い)

「こいのぼりに込められた想い」を世界へ届けたい

―被災地の子どもたちの希望となることを祈ってスタートしたKOINOBORIプロジェクト。高松さんが、ワークショップでのこいのぼりを作るという体験を通して子どもたちに伝えたいことは何でしょうか。

高松さん:「こいのぼりの文化が始まった江戸時代には、子どもが3歳まで生きるというのがとても困難な時代でした。当時のこいのぼりには、3歳まで子どもが元気に育ってほしいという、家族の切実な思いが込められていました。現代の日本とは比べものにならないくらい、必死の想いがあったはずです。

それから何百年も経って衛生環境もテクノロジーも進化した今の日本では、当時のこどもの日の意味合いは薄れてきています。ですが、世界を見渡せば子どもが3歳まで生きることが困難な国はたくさんあります。かつて日本人がこいのぼりに込めた想いを届けられる場所は世界にたくさんあります。

こいのぼりだけではなく、あらゆる物事には必ず、本来の意味・目的とそこに至るまでの歴史があります。例えば、僕たちの身体だってそう。日本は、農耕民族だから筋肉の付き方、骨格、姿勢、手足の動かし方など体つきが西洋人と異なります。その理由をたどると人類の歴史まで遡ることになる。身体は本来のかたちとこれまでの長い歴史の蓄積をちゃんと覚えています。だけど今、僕たちは西洋の「洋服」を着ているし、ライフスタイルも西洋化している。

こんな風に本来物事の持っている性質や意味合いと今私たちを取り巻く現状は、大きく変化してきています。KOINOBORIプロジェクトではワークショップの体験を通じて、日本の人にはそういった忘れられていた感覚や想いを再発見してほしいですし、海外の人には日本のこいのぼりという文化に込められた想いを感じてほしいと思っています。」

(高松さんの活動範囲は日本だけに留まらない)

―震災後仕事を辞め、ボランティア活動を経てKOINOBORIプロジェクトを始めたられた。その後はどのように活動されたのでしょうか。

高松さん:「2012年2月の福島県の保育園・児童館、仮設住宅、小学校でのワークショップを皮切りに、宮城県気仙沼市と岩手県陸前高田市、オーストリアのウィーンでもワークショップを行いました。ウィーンでは、現地の小学校10ヶ所や国立美術館3ヶ所をまわり、それぞれの施設で日本で作ったこいのぼりと一緒に子どもたちと掲揚しました。その後、ケニアやネパール、スリランカなどをまわりながら2年間活動を続け、2014年に現在のNPO法人coyomiとして法人化しました

2012年の夏には本業の仕事も再開しており、イタリアのPRADA、Dolce&Gabbanaのテーラーを経験して、1年半前にクリスチャン・ディオールのテーラーになり今に至ります。」

―昨年12月のサポートプロジェクトに参加してくださいました。参加されたプロジェクトメンバーのみなさんからは、「何事に対しても前向きになれた」といった感想が聞かれました。彼らと協働した高松さんの感想をお聞かせください。

高松さん:「自分自身やこれまでの活動を客観的に知る良い機会になりました。業界業種の異なる者同士、最初は理解してもらえているのかな?という疑念がありました。仕事の進め方や考え方、アウトプットの仕方が違うからだと思います。ですが、参加してくれた皆さんは全員僕の話にずっと耳を傾けて聞いてくれていました。想いを伝えていくうちに最初の戸惑いは自然と解消されました。根底に共感できる想いがあればバックグラウンドの壁はすぐに乗り越えらえるし、協働するからこそ達成できることがあるのだと知りました。」

(coyomiサポートプロジェクトでは、参加メンバーが自社に持ち帰ってワークショップを実施した)

―プロジェクトメンバーの方々から、高松さんの前向きに楽しみながら仕事をする姿に刺激を受けたという声がありました。高松さんご自身は仕事というものをどのように捉えていますか?

高松さん:「本業に限らずですが、仕事は楽しくないと続かないと思っています。本業についても、服を作る仕事で生きていこうと考えたことはありません。大学で偶然ファッションデザイナーを頼まれたのがきっかけで、服を作ることが楽しくなり、その時々でやりたいことややるべきことを考えて、そのために行動していた結果が今に繋がっていました。

実は、本業とNPO法人coyomiの活動の他にも個人でいくつかのプロジェクトを進めています。パラリンピック選手の衣服をつくるプロジェクトや、人型アンドロイドの皮膚をつくるプロジェクト、中東の女性たちが刺繍やレース編みの技術を身につけて手に職を持ち現金収入を得られるように、現地のNGOメンバーと協働で技術面やマーケティングのサポートをするなどの活動を同時並行で進めています。糸と布をつかって、少しでもその人を幸せにしたいという気持ちが強くあります。」

―これらの活動と本業を両立するために工夫していることはありますか?

高松さん:「例えば、僕は基本的に残業をしません。それは業務後の時間を本業以外の仕事の時間に充てるためです。自分のやりたいことを実現するのには、どう自分の仕事の仕方や時間の使い方をマネジメントするかということが大切なのだと思います。」

(高松さんは「子どもたちが少しでも未来に希望を持てるような活動を続けていきたい」とまっすぐな目で話してくれた。)

本業と2枚目の名刺としてのKOINOBORIプロジェクトの活動に限らず、さまざまな場所でマルチに活躍される高松さん。そんな高松さんが大切にしてものは、「物事の本質」や「自身の根底にある想い」でした。

「物事の本来あるべき姿」や「今、やりたいこと、やるべきこと」に対して真剣に向き合うこと。そしてその後には、実現のために迷わず行動すること。それが高松さんのマルチな活動の根源であり、真っ直ぐに仕事に向き合う姿は関わる人に笑顔や勇気を与えているのだと思いました。

 

\5月5日こどもの日に開催!/
「KOINOBORIワークショップ」
こどもの日をゴルフ場で遊びつくそう!
coyomiサポートプロジェクトメンバーが企画した「KOINOBORIワークショップ」が5月5日(祝)に栃木県のゴルフ場・セブンハンドレッドクラブで開催されます。
子どもと一緒に世界で一つだけのこいのぼりを制作する「こいのぼりを作ろう!」のほか、ゴルフやサッカーとゴルフを融合させたフットゴルフの体験など、子どもと大人が一緒になって楽しめるアクティビティーが盛りだくさん!
広いゴルフ場に世界各国の子どもたちが制作したこいのぼりと、この日制作したこいのぼりが掲げられます。
お子さんが世界各国の人々表現手法に触れ、様々な個性があることを知るきっかけにしてみませんか?

【開催日時】2019年5月5日(祝)※雨天決行
・午前の部:10:30〜12:30
・午後の部:14:00〜16:00
【開催場所】セブンハンドレッドクラブ
栃木県さくら市早乙女2370
【定員】小学生くらいまでのお子様各回50名
【費用】無料
【持ち物】汚れても良い服
お電話にてご予約ください(定員になり次第締切):028-686-0700

\5月1日にも開催!/
海老名市立図書館前 芝生広場でも同プロジェクトの「KOINOBORIワークショップ」が行われます。どなたでも先着順で参加できるので、GWに出かけてみて!

【開催日時】2019年5月1日(祝)
・午前の部:10:00〜12:00
・午後の部:13:00〜15:00
【開催場所】海老名市立図書館前 芝生広場
神奈川県海老名市めぐみ町7-1
【定員】各回30名
【費用】無料
【持ち物】汚れても良い服
先着順のため申込不要です

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ライター

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篠崎紗英
篠崎紗英
ライター
社会人2年目のSE。学生時代は教育系NPOのインターンとして、子ども向けイベントの企画・運営や障害児支援活動に携わる。入社後「社外の人ともっと出会ってみたい」という思いから2枚目の名刺での活動を開始。執筆活動を中心に活動中。
はしもと ゆふこ
はしもと ゆふこ
編集者
2枚目の名刺webマガジン編集者。 出産を機に出版社を退職し、ママ向け雑誌や広告、Webメディアなどで編集・ライターとして活動している。
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