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「全員主役」な汐留の夜~LifeWorkS2.0~

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東京・汐留エリアに拠点を持つ企業人事ネットワーク「汐留キャリア・ダイアローグ」主催の企業横断型プロジェクト「LifeWorkSProject」がスタートしてから、早一年が経過した。

所属する組織や業務内容などの枠を飛び越え、互いに知見やアイデアを出し合ったり、目指していきたい社会の姿を共有したりして、それをプロジェクトという形にし、主に本業以外の時間を使って活動をおこなっているのがLifeWorkSProjectだ。

これまで2枚目の名刺webマガジンでは、キックオフ、中間報告会と、LifeWorkSの取り組みを追ってきた。ここで生まれたプロジェクトはどう進化し、どのような成果を上げたのだろうか。

今回は、2018年8月1日に、電通本社1F電通ホールでおこなわれた1周年イベント「第三回LifeWorkS Project~LifeWorkS2.0~」の模様をお届けする。

Life WorkS Project
「働く」はこれから、どんどん「生きる」に近くなる。自分自身の夢や大好きなことを見つめ直して、それを今の仕事と重ね合わせて。
1人ひとりが、自分らしいと心から言えるこれからの働き方を語り合い、
仕事のカタチをデザインしていく汐留という場所を起点にしたプロジェクト。
2017年7月6日にキックオフが行われた。

LifeWorkS Projectがデザインする未来・会社・社会ーここから汐留のコレクティブ・インパクトが生まれる

課題を解決するためにLifeWorkSProjectができること−ここから汐留のコレクティブ・インパクトが生まれる【後編】

越境活動によって生まれたプロジェクトとそれを育むコミュニティLifeWorkS

コンセプトは「全員主役」

今回も、汐留を拠点とする企業社員、行政職員、NPO団体など約200名が参加した。

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イベントのコンセプトは「全員主役」。所属や年齢、立場、経験などにかかわらず、誰もがフラットな立場で、かつ能動的に取り組むことができるのが、LifeWorkSの魅力だ。

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社会課題を「自分ごと」として捉える

前半は、「越境ショートピッチ」。LifeWorkSから生まれたプロジェクトのプレゼンを聞き、参加者はその中から自分が興味・関心のあるプロジェクトを見つける。

プロジェクトに共通していたのは、病気や障がい、子育てなどの「当事者経験」が、プロジェクトに大いに活かされていた点。

当事者ではなくとも、社会や仕事、プライベートの中で感じた違和感や課題を敏感にキャッチアップし、改善するために行動している点が印象的だった。

その行動が、結果として個人に変化をもたらしたり、社会にインパクトを残したり、価値を生み出したりするための第一歩となっている。プロジェクトを通じて感じたことや経験、人との出会いがさらにプロジェクトを加速させ、ブラッシュアップさせる好循環ができていると感じた。

1)越境ワーカー

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第一期生として、電通、ソフトバンクの2社が連携し、相互に社員を受け入れて課題解決を目指す。企業の枠を越えた双方の社員の越境学習を、お互いのオープンプロジェクトを舞台として実践していくもの。今後は新たな参加企業も募集し、越境学習の実践者「越境ワーカー」をたくさんつくり、それによって新たなイノベーションを生み出していく。

次のソフトバンクのミラスイと電通のダイバーシティ・ラボのオープンプロジェクトに、第一期生の越境ワーカーが参画した。

ミラスイ(ソフトバンク 未来実現推進室)

ソフトバンクの未来実現推進室(通称「ミラスイ」)は、バックオフィスの未来を考え、その実現を推進していく組織。バックオフィスと聞くと、一般的にはフロント部門をサポートする部門というイメージが強いが、サポートだけでなくフロント部門をリードする存在に、そして最終的には「世界をリードする存在に」というバックオフィスビジョンを掲げている。

今回は”越境”というキーワードを元に、ここで受け入れた電通社員により「社会記号でオフィスの変革を」「Shiodome Back Office Conference」「バックオフィスアワードの開催」の3つのプロジェクトが考案された。本PJをきっかけに、バックオフィス改革を目指す。

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電通ダイバーシティ・ラボ(電通)

一人ひとりが多様性を尊重し、価値として積極的に捉えていく新しい社会や企業に向けての変革のサポートなどをおこなう、電通社内のダイバーシティ&インクルージョン課題専門のタスクフォース。ラボが提唱する「インクルーシブ・マーケティング」について越境ワーカーと協働して立ち上げた。

ここで受け入れたソフトバンク社員により考案された「スポーツ観戦イノベーションプロジェクト」「アンコンシャス・バイアスプロジェクト」「ショートタイムワークプロジェクト」「インクルーシブデザインを本気でやってみたPJ」の4つのプロジェクトが紹介された。

聴覚障がい者や子どもなどの多様なメンバーが一緒にスポーツ観戦をする、社会に蔓延する無意識の偏見について新たな視点で改善策を練る、障がい者雇用と生産性向上を両立する次世代の働き方について考える、義足を起点にした新たな価値創出の方法論を見出すなど、多様な人たちが存在する社会がどうすればもっと良くなるのか試行錯誤し、前向きにチャレンジする姿が印象的だった。

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2)汐留CCC(キャリアカウンセラーズコンソーシアム)

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「誰もがイキイキと働ける社会を創る」をミッションに、約20社・50名程度のキャリアカウンセラーが参加するプロジェクト。

今年6月には、汐留の企業で働く社員を対象とした「キャリアMonth」を実施。働く目的を学生と社会人が語り合うワークショップ「ハタモク」のほか、「音楽座シアターラーニング」、講演会「50代は人生最強の瞬間(とき)!」などをおこなった。

自身のキャリアを振り返り、考える機会はなかなかない。キャリアカウンセリングそのものをよく知らなかったり、「自分が受けてもいいのだろうか」と躊躇したりする人もいるだろう。その入り口として、これらのイベントは最適だと感じた。

3)School Of LifeWorkS

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即興劇や太極拳など、月に1回程度の頻度で様々なコンテンツをみんなで一緒に学ぶ企画。過去10回開催され、累計250名・約60社が参加し、社外の交流の場にもなっている。参加者は楽しみながら、会社を超えたつながりができる。

「学び」とは、なにも座学だけではない。一見、本業と全く関係のないことに思えるジャンルに「越境」することが、自身の以外な一面を発見したり興味・関心を引き出し、新たなアイデアを生み出したりするきっかけにもなるのだろう。

4)かいしゃぱーく2.0

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汐留で働く社員たちの「LIFE」と「WORK」は別の顔なのか? LIFEを豊かにするためのWORKが求められているのに、それでよいのか? という社員の問題意識から生まれた企画。電通の会議室やホールを子どもたちと社員とが出会い育みあえる公園として開放し、社員の子どもたちがさまざまな体験をしながら過ごせる場をつくった。

「親」が働く「会社」に「子ども」が参加するというこのイベント。単なる子ども向けの催しにとどまらず、社員や会社にとって「子育てをしながら働く」ことを改めて考えさせる体験になったことは間違いない。

5)LOSSO

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電通アドギアの社員が中心となり、一般社団法人 LOSSO LABを立ち上げておこなうプロジェクト。

「アイデアで食品のロスをなくすこと」を目的に、会社の事業のひとつとしてLOSSOを立ち上げ、最初のアクションとして、規格外野菜をつかったピクルスの製造などを実施。

「事業を通じて人生を幸せにする」という、電通アドギアの新たな価値をつくることも目的のひとつ。実際には、自身のアイデアを本業としておこなうことをすぐに実現することは難しいが、LifeWorkSという本業以外の活動が、結果として本業に新たなアイデアを持ち込むきっかけとなった。

6)点字フォント「Braille Neue」

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コピーライターを本業としながら、「発明」というライフワークから生まれた、Braille Neue(新しい点字)プロジェクト。

点字と墨字(目で読める文字)を重ね合わせた書体をつくり、晴眼者(目の見える人)、視覚障がい者がともに読める文字を考案。すでにイベントで使用したり、研修型の改善プロジェクトなどを予定したりしている。

本業では見せない「別の顔」としておこなっていた活動がプロジェクトという形で具体的になり、結果として社会課題を解決するツールを広めることに成功。自分が好きなことややりたいことを、本業以外でも形にでき、社会に影響をもたらすことができるのだと感じた。

7)女性のヘルスケアプロジェクト

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女性社員によるプロジェクト。働く女性が増加しているが、不健康な状態で働いている現状がある。そのサポートの必要性は、企業や社会全体でも高まってきている。

ヘルスケアに関するリテラシー向上のためのセミナー・イベントの実施や、健康アクションを継続できるようなサービスの開発を、汐留の企業連携で実施すべく、プロジェクトへの参加を呼びかけ。

忙しい日々の中で、ついないがしろにされがちな「健康」。当事者だからこそ感じる問題意識を大勢に広め、活動していきたいという強い意志が伝わってきた。

8)LAVENDER RING

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仕事とがんの治療両立のための制度は増えているが、制度を運用するのは人であり、配慮や意識が必要。「がん=不治の病」という古いイメージを払しょくし、がん患者が生きやすい社会をつくるためにプロジェクトを立ち上げた。

資生堂の協力で、がん患者にヘアメイクを施し、オリジナルポスターを制作する企画を昨年8月に実施。これまでに約100名が参加した。今後は、がん患者が職域で気軽に相談できるネットワークをつくることを目指し、写真展やイベントを予定。

LAVENDER RINGの活動は、がん患者はもちろん、さまざまな病気を抱える人がいかに生き、働いていくかということへの大きなヒントになるだろう。

「越境」は特別なことではない

プレゼン後の「全員越境タイム」では、会場後方のブースにプレゼンターが待機。参加者は関心を持ったブースへ行き、プレゼンターと話した。大勢の人がブースに集ったり、名刺交換をして話し込んだりする姿があちこちで見られた。

キャリア、働き方、障がい、ヘルスケアなど、仕事や人生に身近なテーマばかりのプロジェクトだからこそ、参加者は、自身が持つ課題や理想との共通点を見つけることができているのだと思う。

全プロジェクトがLifeWorkSをきっかけとして生まれたということが、多くの参加者が集まり、全員を積極的な姿勢にしているという点もあるだろう。プレゼンターも、少し前までは参加者と同じ立場だったのだ。「越境」は特別なことではなく、すべての人が今日からはじめられることなのだとわかる。

スキルや経験がなくとも、本業と関係のないことであっても、誰でも自身の想いを形にすることができる。それを目の当たりにすると、「自分も何かできるのではないだろうか」と、自然と頭や身体が動くのだろう。それこそが、イベントのコンセプトである「全員主役」を体現しているように思えた。

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「街」から未来が変わっていく

最後は、LifeWorkS事務局の、NPO法人二枚目の名刺メンバーでもある酒井章さんからの提案。「イベントにご協力いただいたフューチャーセッションズさんは、渋谷の活性などもおこなっている。もっと汐留を活性化させていくために、今日から汐留フューチャーセッションズを立ち上げたい」と宣言。会場からは大きな拍手が起きた。

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なお同イベントでは、託児サービスと提携した、託児型ワークショップのスペースが設けられた。

「全員主役」は子どもたちも同じ。「親が新しい一歩を踏み出している間に、子どもも成長を感じるような託児にしよう」というコンセプトのもと、なりたい自分を想像して「顔はめボード・ワークショップ」を実施。思い思いの作品が並んだ。

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(写真=ここるく様提供)

会社勤めをしていれば、主に付き合う相手は社内や取引先程度で、近隣の企業とかかわる機会はほとんどない。ましてや、自分の近くの会社にはどのような人が働いていて、何を考え、関心を持っているかについては、知ることもないのではないだろうか。

同じ街で働いているからこそすぐに集まることができ、打ち合わせやイベントなどが実施しやすい点も強みだ。「汐留」というひとつの街から未来を変えるきっかけを生み出せるのは、多くの企業群が集まる、汐留LifeWorkSならではだといえるだろう。

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終始和やかな雰囲気でおこなわれたLifeWorkSの1周年イベント。会場は、参加者の意欲と熱気に満ち満ちていた。

今夜のイベントからまた新たな企画が生まれ、汐留から、社会を変えるきっかけとなる多くのプロジェクトが発足、発信されていくことだろう。

写真:鈴木むつみ

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手塚 巧子
ライター
1987年生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社勤務等を経て、ライター・編集者として活動中。ビジネス、社会問題、金融、女性・学生向け媒体など、幅広いジャンルにて記事を執筆。小説執筆も行い、短編小説入賞経験あり。
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