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二ノ丸友幸さん×野澤武史「2枚目の名刺で独立への土台を固めた、ラグビー11チームの”プロコーチ”」
【今月の二枚目ラグビー人】
二ノ丸友幸(にのまるともゆき)氏
1979年生まれ、38歳。大阪の名門・啓光学園中でラグビーをはじめ、啓光学園高では2年から高校日本代表候補。同志社大学-株式会社カネカ-株式会社クボタ(クボタスピアーズ)とプレーし、26歳で引退。クボタに勤務しながら2012年にラグビーの現場(コーチング)に戻り、U17、U18などユース日本代表コーチを歴任。2016年9月末にクボタを退職し、「Work Life Brand」を設立。現在は御所実業をはじめ11の単独チームと2つの地域代表チームのコーチングディレクターを務める。ラグビーとは別に、企業内人財育成研修、企業ブランディングといったコンサルタント業や顧問アドバイザー業もこなす。
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高校ラグビー界で、いま最もアグレッシブに活動しているコーチと言えば、“ニノマル”の名が挙がるだろう。昨年、会社員×ラグビーコーチという“2枚目の名刺”に区切りを付け、約15年勤めたクボタを退職。現在はプロコーチとして11チームものコーチングやディレクターを担っている。
彼のキャリアが特殊なのは、クボタに在職中の6年間、ラグビーから離れた空白期間があること。その間、会社員としての社業に打ち込んだ。コーチとしてラグビーの現場に戻ってきた後も、管理職まで登りつめ、ラグビーと仕事を両立することに徹底的にこだわってきた。
同期であり、高校時代からのライバルとして、そして指導の現場では同志として同じ時間を共有してきた二ノ丸の神髄は何だろうか。2枚の名刺を1枚に絞る、その裏にあったものは何だったのか? そして専属コーチではなく、複数のチームをコーチングするスタイルを選択したのはなぜなのか? 多忙な合間を縫って、再開発が進む大阪は梅田で話を聞いた。
人財育成コンサルタント兼11チームのコーチングディレクターに
野澤:二ノ丸(以下、マル)の今の名刺を教えてください。
二ノ丸:人財育成コンサルタント、コーチングディレクター、企業顧問アドバイザーの3つの柱を主な事業とするWork Life Brand(ワークライフブランド)の代表です。人財育成コンサルタントとして、企業や行政、教育機関等の研修や会社員やコーチの方々に対するプライベートレッスン(社会人の家庭教師)、起業ブランディングの構築を外部顧問としてやっています。コーチとしては、選手に対してただコーチングをするだけではなく、若手コーチの育成指導、練習内容や年間計画の策定・見直しなどのチームマネジメントのサポートもしています。他にも、各地域のスポーツ指導者を集めた指導者セミナーや保護者セミナーなども行っています。
野澤:それをマルの会社で請け負っている、という形になっている?
二ノ丸:そうだね。Work Life Brandとして契約等しているよ。
野澤:ちなみに今は、どのくらいのチームと地域を見ているの?
二ノ丸:個別のチームでは各県1校ずつを基本軸に11校。地域代表としてはオール愛媛、オール兵庫のサポートをしています。あとは各地域・県協会や組織、団体からの依頼への対応だね。ラグビークリニックをしたり指導者セミナーや講演をさせて頂いたり。
野澤:プラス、日本協会からの依頼。
二ノ丸:そうだね。ユース代表活動としてU17、U18日本代表関連。加えて各ブロックの合宿(トライアウト)に参加したり、今年からはU15の担当もすることになりました。
野澤:ありがとうございます。かなり多岐にわたるよね。今までの経歴をざざざっと教えてください。
二ノ丸:小学校6年生の時にラグビーに出会って一目惚れをしました。たまたま観に行った試合が啓光学園対国学院久我山という高校ラグビーの決勝カードで、迷わず中学で啓光学園を受験しました。高校では3年連続で花園にも出場できて、最強のライバルであるゴリこと野澤にも出会ったわけだよね(笑)。
野澤:ありがとうございます(笑)。
二ノ丸:大学は同志社大学に進んだけど、2年生の時にアキレス腱を断裂して、2年間ほぼ練習もできない辛さも経験したな。卒業後に進んだ株式会社カネカ(当時、関西社会人ラグビーAリーグ所属)では廃部も経験したし、最後は悩んだ末、自分の社会人ビジョンに合致したクボタにお世話になった。社会人的に言えば転職、ラグビー選手的に言えば、移籍だね(笑)。
あえてラグビーから距離を置いた5年間の空白期間
野澤:コーチングを始めたのはいつになるの? 引退してすぐ?
二ノ丸:2003年にカネカを退社し、クボタに入社。ラグビーを引退したのが2006年。コーチを始めたのは2012年だね。
野澤:そうすると、引退してから結構空白があるんだ。
二ノ丸:現役引退した頃から、次のキャリアビジョンを模索しはじめ、2015年を目処に退職すると決めていた。クボタでは毎年実施される社内試験をストレートに合格すれば最短で入社12年目に管理職への昇格試験を受験できる。つまり、管理職になってから辞めようと思っていて。(笑)
企業研修の講師をしていきたいというキャリアビジョンがあったので、肩書きがある方が一兵卒よりも信頼があるだろうと。ラグビーだけではなく、仕事でもしっかり成果を出そうと考えていたこともあって、引退して約6年間は意図的にラグビーに携わらなかったんです。そろそろ現場に戻りたいと意思が強くなった頃に、日本協会にリソースコーチというシステムがあること知り、コーチング研修の場で日本協会コーチングディレクターの中竹(竜二)さんに出会って。これは、ほんとタイミングだよ。運が良かったと思う。
野澤:いずれラグビーの現場に戻ることは、引退したときから決めていたの?
二ノ丸:そうだね。僕は石橋を500回叩くタイプなので(笑)、いろいろ順序立てて「いついつにこうなっていたいから、今はこれをしておく」というプロセスを決める。意思決定のプロセスには「積み上げ方式」と「逆算方式」があると思うんだけど、僕は逆算方式のやり方で物事を決断していくタイプだと思う。
“2枚目の名刺”期に独立するための土台を固めた
野澤:このタイミングで起業を決断したのはどんな経緯から? 僕も含めて週末パートタイムでコーチングしている人はたくさんいると思うけれど、最後何を指標に起業に踏み切ったの?
二ノ丸:予定通り管理職に昇格できたので、そろそろ「次のキャリアステージへ」と思っていたときに、クボタの仕事で一番興味を抱いていた広告宣伝部(企業ブランディング)への異動の話が舞い込んできて。「こんなチャンスはない」と思い、退職するまでの約3年間はその仕事に打ち込みました。だから独立決断のタイミングは何かというと、「クボタでやりたい仕事ができた」ということも一理あるかな。
野澤:ラグビーではなくクボタの仕事の面から決断に踏み切ったわけだ。
二ノ丸:いやいや、それもあるけど、ラグビーコーチとして2012年から退職するまでの約5年間の土台構築がなければ決断できないよ。「会社を辞めても契約するよ」というお話をいくつか頂いていて、「これならやれる」という確信が持てたのが決断できた一番の要因かな。
野澤:スポットで僕もコーチングに行くけど、マルがすごいなと思うのは、スポットコーチをビジネスとして成立させているところ。そのためには、お客様を満足させなければいけないわけだから。日本だとお金を稼ぐという言葉はいい意味で捉えられないことが多いと思うけど、そこに対してしっかりコミットできているというのは、ほとんど尊敬できるところがない二ノ丸君の唯一尊敬できるところかな(笑)。
二ノ丸:そう言ってもらえるだけで十分です(笑)。
リピートにつながる二ノ丸流コーチングスタイル
野澤:具体的にスポットコーチ(コーチングディレクター)として行っているということだったけど、一回のコーチングではなかなかチームを変えられないよね。そんな中、マルが心掛けていることってどんなことがあるの?
二ノ丸:その日のコーチングが一過性のもので終わるのは良くない。フルタイムではない中で、選手、組織、監督に良い影響を与えられないとリピートオファーをもらうのは難しいと思う。
野澤:リピートないと、ショックだよね…。
二ノ丸:そうそう。リピートがないということは成果を出せなかったということ。成果を出すために、監督からのニーズをしっかり分析する。例えば、対象が高校生なら、高校現場で言っていいことと悪いことを意識する。そして、チーム方針とマッチングさせながら、あえて学校の先生とは違う立場の人間として選手にアプローチし、「より良いチーム」を作っていく。そうしたやり方に共感してくれた先生やコーチの方々が僕にオファーをくださっていると思う。
野澤:そこは先生と相談して?
二ノ丸:そうだね。つまり、一番大事なのは先生とのコミュニケーション。ただ単にオファーをもらっていくわけではなくて、当日までに何度もな打ち合わせをする時もある。ここはゴリもわかっていると思うけど、スポットコーチがチームや選手を潰すことって簡単なんだよ。数分もあればチームを崩壊させることもできる。「今までの取り組みを否定して、今から僕がいうことが正しい」といったように。
野澤:それで現場に迷いが生じるわけだよね。
二ノ丸:肩書がついた人間が現場に行くと、なおさら言葉に重みが増すので、先生を否定することで、子供たちを右向け右にすることができる。それはプロのコーチとして絶対あってはいけないこと。
野澤:ブロック合宿に何回か一緒に回ったけど、マルは先生に本音を言う方だよね。組織に対しも介入していく。やっぱり大人は痛いこと言われたくないし、こっちだって嫌われたくないから自分が言われて嫌なことは言わなくなってしまうものだけど。
二ノ丸:本音を言えるのは、簡単なことではないよ。つまり、僕は5年、6年というお付き合いの中で、人間関係、信頼関係を構築し、本音を言える関係性を築けたから言えるんだよ。人間関係もないのに、偉そうなことは言えないよ(笑)。
野澤:さっき、「辞めても契約もらえるなと思った」って言っていたけど、そう思ったのはいつ? 決め手は何だったの?
二ノ丸:これは僕のコーチとしての原点のエピソードなんだけど、2012年に日本協会リソースコーチに任命頂き、U17日本代表候補近畿ブロックの合宿に行ったのね。そこで、御所実業(以下、御所実)の生徒が合宿最終日に「丸さんって、代表とは別に御所実にコーチに来て頂けないんですか?」って言ってくれたのよ。それで「俺も行きたいけど、竹田先生(御所実監督)からお声がけ頂けないといけないよ」と言いながら携帯番号を交換したわけ。
そうしたら、翌日早々に竹田先生から連絡をいただいて、「うちの生徒たちが二ノ丸君に来てほしいって言うんだけど」と。もちろん「行かせて頂きます!!」って即答したよ。そういうわけで、はじめて正式に外部コーチという形でコーチングの機会を頂けたのが御所実なんです。その後、御所実に練習試合をしに来るチーム等から「うちにも来てくれないか」というオファーをいただきながらどんどん広がっていった。自分の力は小さいけれど、本当に運がよかったと思う。
「段取り」次第で等身大のヒーローになれる
野澤:プロになるときにどこかのチーム専属ではなく、複数チームと契約するという形を取ったところがマルの決断の味噌だと思うんだけど、そのあたりのことを聞かせてください。あまり前例がないよね。
二ノ丸:コーチキャリアとして階層的に考えたとき、まず初期段階は複数のチームに関わりたいなと考えていました。最終的にはトップリーグや自分のチームを持ちたいという夢もあるけど、今は、多くの先生の「参謀」になりたいなと思っている。要は軍師。NHK大河ドラマで「軍師官兵衛」の放送をみて、「これや!」とひらめいた!(笑)
野澤:マル兵衛ね(笑)。
二ノ丸:先生がラグビーの事を聞きたくても聞ける人がいない、プライドが邪魔して聞けない。色んな悩みを持っておられることを知る中で、自分が参謀になりたいという思いが湧いたのかな。一方で僕自身も高校ラグビーの現場を学べる。これってwin-winの形じゃない? コーチングの幅もかなり広がるよね。
野澤:マルの中長期的なビジョンにつながる部分もあるわけだね。
二ノ丸:僕の座右の銘は「段取り(準備)」。段取りだけは絶対に怠らない。前日には翌日のプランがすべて出来上がっている、これがないとうまく物事が進まない。
野澤:なるほど。
二ノ丸:人生をマイルストーン的に考えると、いま全力で頑張っていることが次のステージに続く「段取り」になるわけだよね。いい段取りをして、計画的に動いていくタイプなので、「息苦しい奴やな」と思われることもしばしばあるけどね。
野澤:逆に『プロフェッショナル仕事の流儀』とか見てどう思う?「一つのことを貫いた男がいる…」とか。
二ノ丸:凡人の僕には、天才気質の方々のことはあまり参考にならない!
野澤:(爆笑)。
二ノ丸:テレビで紹介されるような凄腕の人は一部の天才気質の人々であり…。2枚目の名刺を持ったりしてコツコツと足場を固めていく人の方が身近なヒーローになれる。例えば、イチロー選手とか、すごいなと思うけれど、真似しようとは思わないよね。そもそも偉大すぎて真似すらできないよ。
それよりも、僕らみたいな凡人も、ちょっと見方や考え方を変える、完璧な段取りをすることで、掴めるものがあると思う。僕は、そちら側のロールモデルになりたい。
野澤:等身大のロールモデルだね。
二ノ丸:「二ノ丸でもできたんだから、自分もやってみようかな」と思ってもらえると嬉しいかな。
今は高校生への指導と先生方の参謀業を極める時期
野澤:マルの今後のビジョンについて教えてください。
二ノ丸:向こう5年を目処に参謀業を極めたい。親からもらった一番の財産は、「自分の足元を見ろ、分相応の言動を!」って言葉。身の丈に合わない飛び級は、後で必ずボロが出るからね。だから、階段を一段ずつ上がっていきたい。
野澤:苦言を呈してくれるというのは、ありがたいよね。一番の成長のチャンスでもある。
二ノ丸:そういう人が僕には数人いる。両親、妻、そして御所実の竹田先生をはじめとした契約先チームの先生方々。そうした人達の意見に耳を傾け痛みを伴ってきたからこそ、今の自分があると思う。
野澤:高校現場の指導に特化しているのはなぜ?
二ノ丸:意識的に高校現場に特化しているわけではないよ。大学、社会人カテゴリーのチームからもお声がけは頂いている。ただ、思い起こせば高校時代、自分自身がラグビー人生の礎を築けた時期であり、そんな高校生を指導させて頂く機会を頂いている現在は、高校現場で勉強させて頂き、成長し、キャリアアップに繋げていきたいと思っている。高校生の1年間ってものすごく濃密じゃない?
野澤:そうだね。前年まで小学生みたいだった子が今年はチームを牽引したりしている。あのダイナミックさというのは、指導者として取りつかれる魔力がある。
二ノ丸:そうそう、だから今は高校現場の先生の参謀として、また、生徒達にいい影響を与えるのが自分のミッション。今はこのミッションの達成に突っ走りたい。
野澤:これからがますます楽しみだな、今日はありがとう!
ライター
編集者
カメラマン
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