【企業対談シリーズ vol.1】コクヨ株式会社 ✕ 二枚目の名刺 プロジェクトを通じ、ミドルシニア層の人材育成に挑戦!

二枚目の名刺は、人材育成支援にアンテナを張る企業様と連携を行っています。
本シリーズでは、これまで行ってきた企業連携のご紹介と、人材育成の場としてご活用いただいている企業様の本音を深堀りしていきます。
ゲスト:
野﨑 伶奈 さん(企業連携窓口担当)
コクヨ株式会社 ヒューマン&カルチャー本部 HR戦略推進部 グローバル企画推進ユニット
内田 陽子 さん(プロジェクト(AfriMedico)参加者)
コクヨKハート株式会社 コクヨ特例子会社 重度障がい者多数雇用企業 ST開発部 企画グループリーダー
インタビュアー:
坂田 美佳(愛称:「みかさん」)
役割:プロジェクトデザイナー(プロジェクト伴走者)
内田さんの参加したAfriMedicoのデザイナーを務めた。
藤木 位雄(愛称:「きんぐさん」)
役割:事業推進事務局(企業・自治体等連携の窓口)
企業様窓口としてご相談初期よりコクヨ様と一緒にプロジェクト企画と運営に取り組む。
良い事業づくりは、生き生きとした人材育成から
坂田: コクヨさんとは2022年から二枚目の名刺との連携企画が始まりましたが、当時「森林経営モデル」を軸として、二枚目の名刺との連携に至った背景がありましたね。
まずはこの森林経営モデルについて教えていただけますか?
野﨑: 弊社は大きく分けると、家具などのワークスタイル領域と文房具などのライフスタイル領域に分かれますが、自らの社会における役割を「WORK & LIFE STYLE Company」と再定義し、「2030年 長期ビジョン」の実現に向けて文具や家具といったカテゴリにとらわれない、豊かな生き方を創造する企業となることを目指しています。森林経営モデルは、その達成に向けてコクヨが変革することを指しています。
例えて言えば、これまでコクヨは、総合メーカーという幹に事業の枝を持った“一本の木”のような形でした。
森林経営モデルでは、これまでの3つの主となる事業のほか新規事業など多くの木が育ちひろがり、やがてこれらの集合体が森となるイメージです。様々な木を育て森全体を成長させていくことを目指しています。
坂田: 事業を木に見立てて、森を作っていく感じがとてもコクヨさんらしいですね。
野﨑: 良い木を育てるためには木をしっかり育ててくれる人材も必要です。ちょうど人材育成について考えているときに、二枚目の名刺さんとも出会うことができました。
(※コクヨ「長期ビジョン C C C 2030」より抜粋)
内田: 森林経営モデルについては社長自ら社員全員に説明していただき、漠然としていたものが明確になりました。大きな1本の木だったものを、たくさんの木々で森を作っていくという今後のビジョンをわかりやすくビジュアル化していただけたことで、私を含め社員の理解も進み、共感に繋がったと思います。
坂田: コクヨで働く皆さんそれぞれの仕事が経営方針と結びつきやすくなる表現で、会社との一体感も生まれますね。
野﨑: 私もこれを聞いたときにしっくりきました。社員がワクワクしながら「ここへ向かっていくぞ!」と思えるかどうかは大事なことだと思います。
以前より「コクヨのヨコク」という取り組みもスタートしていますが、社内でも失敗を恐れずに実験していこうよ!という風土や、社員自身がワクワク感やwillを持つことを推進する「実験カルチャー」が弊社にはありますね。
コクヨの実験!二枚目の名刺との連携で、社会との接点を創り出す
藤木: 初めてお話をした時も、そうした風土を大切にされていた印象があります。それで二枚目の名刺との連携も考えてくださっていたのでしたよね。
野﨑: コクヨは個人の成長と会社の成長を結びつけることを大切にしており、年齢問わず様々な施策を通じて、社員の成長を後押ししてきました。しかし、特に40代・50代の方々にとっては人生の折り返し地点。将来的にコクヨを卒業する時も近いことを踏まえたうえで、その方々の価値を引き出して可能性を広げるために、私たちHRができることは何だろうと考えました。
例えばコクヨには、「20パーセントチャレンジ」という社内複業(副業)の制度があります。この施策は、社内制度ですが、成長を後押しするための機会提供は必ずしも社内にとどまる必要はなく、「フラットに社内でも社会でも活躍の場を選べる。」そのような状態を作れればと考えるようになりました。しかし、そもそも社会とつながる後押しができるような施策が当時コクヨには多くありませんでした。
二枚目の名刺さんは「社会課題に対して思いがあれば問題ありません」と話されていて、すごく惹かれました。
これだったらコクヨの社員でも社会との接点を持つ最初のステップとして、すごく良い後押しになるんじゃないかということを会社として考え、お声がけさせていただいたんです。
坂田: ありがとうございます。社会の選択肢をまずは1つ創り出してみるという意味では、先ほど言われた「実験カルチャー」ですね。
野﨑: まさにそうです。人事側としても実験的な一歩でした。
坂田: プロジェクト開始までには何度か議論を重ねたわけですが、譲れなかった点や実現させたかった点はありますか?
野﨑: どのように社員を後押しできるのか?という点は譲れなかったですね。
藤木: 野﨑さんには参加者がどのような温度感なのか、その熱量や雰囲気を感じてもらえるように、実際にオブザーバーとして発表会を見ていただきました。参加者が初めて知り合って、1か月半、3か月でこんな成果を出せたり、関係性を作れるのかというのを見てもらうことが大切でした。
これって机上でプレゼン資料を見せて説明してもなかなか伝わらないんですよね。
野﨑: たしかに、実際に見ただけで共感できましたね。そしてその熱量を社内に資料だけで伝えることもやはり難しかったので、座談会を開き、社員にそのまま熱量を届けられるようにしました。
その結果、本来は9名の応募予定が、11名に増えたんです。
坂田: 社員の方々ももちろん思いがあって応募されたのでしょうけれども、座談会を開いたり、育成のために奔走された野﨑さんの思いも相当な熱さがありますね。
野﨑: 個人的な意見にはなりますが、やはり1日の中で働く時間は大半を占めるので、自分の価値を引き出しながら楽しく働けることはとても重要だと思っています。社内であっても社外であっても、自分の可能性を広げられる場を提供したいという思いは強いかもしれませんね。
坂田: 内田さんも先述の「20パーセントチャレンジ」に参加されていますよね。もともと意欲が高くて熱い方なのかな?とも思いました。
内田: 自分では意欲が高いかどうか自覚がないですが(笑)、二枚目の名刺さんの活動があったから視野が広がり、社内でのチャレンジもハードルが低くなったのはあります。
HR部門は本当に素晴らしくて、色々な機会を与えてくれるんですね。20パーセントチャレンジで選んだのは社内の相談員を務めるというものです。
活動に参加しなければ交わることのなかった世界を経験させていただき、これをきっかけに、人にまつわるお仕事にチャレンジしたくなったんです。
会社が応援してくれる安心感。参加者が活動を通じて得たリアルな成長
坂田: 内田さんが参加されたAfriMedico(アフリメディコ)のプロジェクトについて簡単に教えていただけますか?
内田:AfriMedicoはアフリカの医療支援を行っている団体です。私たちのチームでは、AfriMedicoの認知度を上げるための活動に取り組みました。団体の活動を理解し、支援していただけそうな企業をピックアップし、その企業への働きかけやコラボイベントを企画・提案しました。
坂田: 内田さんとは最初1on1をさせていただいたんですよね。その時は、なんとなくご自身のキャリアについて思案されていた記憶がありますが、参加されたきっかけは何だったのでしょうか?
内田: 長らくグラフィックデザインの業務をしてきましたが、年齢と経験を重ねるごとにプレイヤーからマネジメントをする立場にもなり、このままデザインの世界だけに留まっていていいのだろうかと思うようになっていました。
デザインやものづくりから、人と関わることや、人が心地よくあるためのサポートをしたいという方向へ興味が移っていたタイミングで二枚目の名刺さんに出会ったことは、参加のきっかけになっているかもしれません。
坂田: 参加するにあたって不安はありましたか?
内田: もちろん不安はありましたが、会社側がサポートしてくれる安心感はありました。また、コクヨから何人か参加者がいたことも心強かったです。自分の興味ある分野だったこともあり、挑戦しようと思いました。
坂田: 私はプロジェクトデザイナーとして関わるなかで、皆さんが「私ここで発言していいのかしら…」「誰もやらないなら、やろうかな」といったお互いの遠慮があった状態から、途中でグループ分けされてから一人ひとりが能動的に行動されていった変化を見ていました。積極的に色々な所に出かけていかれたり調べられていた姿を観ていて、行動量がとても多かったのはかなり印象的でしたね。
内田: コクヨ以外のメンバーもいて、オンライン上ということや自分の性格上、最初は様子を伺うことはありました。
でも刻々と時間が迫る中で、少人数のチームに分かれてからは自分の役割が見えて積極的に動けるようになりました。
自分のデザインスキルを資料作成に活かせたことも良かったですし、本業では未経験の企画や営業的なことに勇気を持ってチャレンジできたことも達成感がありました。直接伺った先で相手の反応や共感を得られたことも良い経験でした。
藤木: 二枚目の名刺での取り組みは「手触り感がある」というような表現をするんですよね。大きな企業で働かれていると顧客の反応を直接見ることができなかったりしますが、プロジェクトでは短期間に企画から運営まで行い、相手の反応も直接見ることで、次の改善やアクションへのモチベーションも上がる経験ができますよね。
坂田: プロジェクトを終えてから内田さんの中での変化や、自信に繋がったこと、新たに何かを始めたことなどはありますか?
内田: 今後のことを思案する中では、セカンドキャリアで福祉や人に関わることをしたいと思っていました。
そんな中でAfriMedicoの活動を通じ、より一層深く学びたいと思うようになり、 もともと趣味で続けていたヨガですが、「ヨガ療法士」という資格を取得しようと決めました。ヨガ療法士はセラピストに近いものなので、トラウマを抱えている人や精神的な問題を持つ人の役に立つようなことをしたいという思いも芽生えたんです。
やがてその思いが強くなり、社内の20パーセントチャレンジで相談員に応募し、その後、コクヨKハートという特例子会社に移籍しました。Kハートでは所属する部署の業務の他に委員会活動にも参加し、社員向けにワークショップの企画運営にも携わらせていただいています。
坂田: マネジメント業務としても人に関わることに取り組みつつ、20パーセントチャレンジや委員会での活動も積極的にされ、業務外でもヨガ療法士を学びつつ…プロジェクトを通じて、これほど内田さんのやりたいことが明確になったんですね。
内田: 二枚目の名刺さんの活動のおかげで「やっぱり自分の興味はコレなんだな」と気づけたと思います。
以前はデザインのことでマネジメントをしながら、余暇でヨガをするという、ある意味分断されたような形だったのですが、今は全部が一つの方向性に集約され、太い道ができあがったような感覚です。
同時に、会社がこうした思いを促進してくださっているから、チャレンジできているんだなとも思います。
自らの道をワクワクしながら選べることが、本当の後押し
(※THE CAMPUS)
坂田: ずっとお話を聞いていて思うのが、社員の方から「会社(人事)の後押しのおかげで」というようなことが節々に出てくるのはコクヨさんの良いところだなと感じます。
一方で、社員が社外で経験を積むことで、会社を卒業してしまう、いわば人材が流出してしまう可能性もありますよね。そのリスクについてはどうお考えですか?
野﨑: もちろんリスクはあります。ハイパフォーマーと言われる人たちが外に出てしまうことは会社としてはリスクかもしれません。ですが、基本的にコクヨでは「人は社会からの預かり物」という考え方を持っており、コクヨを卒業された方を良い状態で社会へお返しするという思いがあります。
また、社員を囲い込んで閉じるというイメージよりは、“開く”イメージも持っています。品川でコクヨ株式会社が運営する「THE CAMPUS」を見ていただくとわかるかと思いますが、実際にみんなのワーク&ライフ開放区として開いています。
藤木: 本当にその人のキャリアを考えると、プラスになることはたくさんあるはずです。様々な企業連携を進めていますが、社外での活動をプラスに考えておられる企業さんは、やはり社員さんと真摯に向き合われていると感じます。
野﨑: そうですね。リスクを恐れるよりも、人の成長を大切にするようにしています。
ある社員は、外部の活動をきっかけに大学に進学するために退職しました。聞いた時は衝撃的でしたが、同時に感動もしました。
その人は自分の人生を考えた結果、コクヨを卒業して新しい道に進むことを決めたということ。それを後押しできたことが嬉しかったんです。
「それが本当の後押しなんだな」と気づかされました。
藤木: 他の企業さんと接する中でも、「社外を知ったら社外に出ていくのでは」と心配される声をよく聞きます。でも、実際はホーム(本業)側で業績を伸ばされる方の方が圧倒的に多いんですよね。キャリアを後押ししてもらえる場所は社員にとって大切だと思います。
野﨑: 「点」ではなく「面」で考えるようにしています。考える機会を提供し、実験できる場所を色々と用意することで、社員一人ひとりが自分らしく成長できる選択肢を作りたいと思っています。
坂田: 人事の方が会社に残ってくれることだけでなく、その後の人生のことを考えてくれるというのは素晴らしいですね!
それでは最後に、内田さんから、これからチャレンジを考えているミドルシニア層へのメッセージをいただけますか?
内田: 年齢とともに視野が狭くなっていきがちですが、年齢問わず、いつでもチャレンジはできます。逆にミドルシニアの方は、卒業後のことを見据えて予行演習のような感じで、どんどんチャレンジしていかれると良いかと思います。
同じ思いを持った人たちと出会える場でもありますし、所属している場所だけではない世界に、もっと気軽に踏み入れてみると、自分自身が変わる可能性もあります。
何よりそのチャレンジを楽しんでいただけるといいなと思います。
坂田・藤木: 野﨑さん、内田さん、素敵なお話をありがとうございました!

ライター

編集者

カメラマン

