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サポートプロジェクト座談会~成果物だけでない価値はずっと残り続ける~

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2023年10月から2024年1月に実施されたNPO法人ちぇぶらのサポートプロジェクト。更年期についての知識や対策ケアを提供する団体のサポートに、社会人から学生まで年齢も背景もさまざまな8名のメンバーが参加しました。チームワークもよく、団体にも満足してもらえる成果物を渡すことができたプロジェクトについて、参加者、プロジェクトデザイナー、そして団体の方に振り返ってもらいました。

 

参加メンバー

塚原優作さん(さっくん)
食品メーカーに研究職で勤務。社内でも自分がプロジェクトを動かす立場になりつつある年代。

 

中野響子さん(なかきょん)
コンサルタントとして勤務。今回は第2子の育休中にプロジェクトに参加。過去にもサポートプロジェクトに参加した経験が。

 

永田京子さん(きょんちゃん)
NPO法人ちぇぶら代表。更年期トータルケアインストラクター。自身の母が重い更年期障害に苦しんだ経験から「ちぇぶら」を設立。

 

佐藤由紀江さん(YUKIE)
1枚目の名刺は製薬会社勤務。今回のプロジェクトでは、参加メンバーとパートナーとなる団体をつなぎ、プロジェクトの進行をファシリテートするプロジェクトデザイナーを担当。

 

聞き手:白石和彦さん(カズさん)
NPO法人二枚目の名刺事務局でサポートプロジェクトを担当。

 

NPO法人ちぇぶら
すべての人が「その人らしい充実した日々をすごすことができる社会」を目指し、「更年期サポート」をはじめとした健康に関する社会問題の解決に取り組む。企業や医療機関、自治体での講演のほか、更年期サポートができるプロフェッショナルの育成も行う。
https://www.chebura.com/

 

「社会人って自由度が高い!」と衝撃

白石 まずはちぇぶら代表のきょんちゃんからサポートプロジェクトを振り返っての感想から聞かせていただけますか。

永田 一言で言うと、楽しくてとっても幸せな時間をすごしました。毎週夜のミーティングなど、一つ一つは大変なこともあったとは思いますが、素晴らしい成果物をいただいて本当にありがたかったです。一番印象的なのは、初回ミーティングでのなかきょんちゃんのファシリテートですね。衝撃を受けました。

中野 えっ⁉ どんな衝撃でしょう? 恥ずかしいな。

永田 きちんと体系立てたワークとか、「Miro(インターネット上で使えるホワイトボードソフト)」とか、私が知らなかったものがたくさん取り入れられていて、視界がぱっと広くなったのを強烈に覚えています。

中野 ありがとうございます。初回ミーティングはめちゃくちゃ緊張していたので、どんなファシリをしたかよく覚えていなくて……(笑)。二枚目の名刺のサポートプロジェクトに参加するのは3回目なのですが、今回はキックオフのときの「楽しいプロジェクトになりそう」というワクワクした気持ちが最後まで続いた気がします。3カ月どころかもっと長くやっていたような感覚もあって。

白石 それだけ中身が濃かったということですよね。

佐藤 私もあっという間の3カ月でした。このチームはチームビルディングをそんなにしなくてもみんなが前向きで、意欲的。団体側のきょんちゃん、かよさん(ちぇぶら事務局メンバー)のコミットメントのレベルも高くて、プロジェクトデザイナーとしては、すごくいいチームにあたったなと思っています。

塚原 僕はこの3カ月間、衝撃的なことが多かったです。一番思ったのは、社会人って意外と自由度が高いんだってことでした。今まで仕事するときには、まず先輩の許可を得て、その上の上司の許可をもらって、さらに課長や部長にも許可をとるみたいな。許可取りが多すぎて、話が通るのにめちゃめちゃ時間がかかるんですけど、こういう団体の活動は、誰に許可をもらうわけでもなく、みんなが「いいね!」「やりなよ!」って言えばできてしまうんだと驚きました。

白石 なるほど。自由度が高いってそういう意味なんだね。

塚原 そうです。それから、僕は研究職なので研究所にこもっていることが多くて、他社に電話をかける経験をほとんどしたことがなかったんです。なので、このプロジェクトで広報活動の担当になって、市役所や商工会議所に電話をかけたんですけど、かけるまで20分くらい携帯電話をにぎりしめて悩んでいたりもして。でも、勇気を出してかけてみると意外とちゃんと取り合ってくれるんだっていうのもびっくりでした。

白石 意外とみんな話を聞いてくれるよね。

塚原 あとは2回目のミーティングのときですかね。僕、初回のミーティングに出られなくて、2回目のミーティングで自己紹介をして「さっくんって呼んでください」って言ったあとに「今までそう呼ばれたことはないんですけど」みたいなことを言ったら、ファシリのなかきょんさんから「呼ばれたことないんかーい!」って関西弁でツッコまれたんですよ。それも衝撃でした(笑)。

中野 それは覚えてる!(笑)ツッコミ入れました。

塚原 ミーティングに参加してみたら、みなさんの“しごでき(仕事ができる)”オーラがすごくて! 僕が今まで使ったことがなかったようなビジネス用語もバンバン飛び交うし、どうしよう……仕事できる人たちしかいない……って焦りました。ただ、そんな中でも僕の目標があって、1回は笑いをとろうと思ってたんですよ。バチバチにやってる仕事ができる人たちの笑った顔が見たいという気持ちがちょっとありまして。

中野 めちゃくちゃ計算したうえでの「呼ばれたことないんですけど」だったの⁉

塚原 はい。実はめちゃめちゃ考えてました(笑)。なので、なかきょんさんにツッコんでもらえたのがすごくうれしかったんです。

サポートプロジェクトが育休中の社会との接点に

白石 そもそもみなさんは「二枚目の名刺」をどこで知ってくれたんでしょうか?

塚原 僕の場合は会社の研修として参加させていただいていて。同じ部署の4つ上くらいの先輩で研修としてサポートプロジェクトに参加した方がいたんですよ。その先輩に「社会人として何か勉強したほうがいいですかね?」って軽く相談した時に「こういう活動があるよ」って教えていただいたんです。「正直めっちゃしんどいけど、すごく楽しいし、今お前に一番足りないことができるよ」と言われて。忙しくなるかもしれないけど、なんとかなるか!って軽い感じで応募しました。

中野 私はサポートプロジェクトにかかわっている友人がいて紹介してもらいました。サポートプロジェクトに参加する前も、別の団体で似たような活動に参加したことがあったんです。ただそちらはコミットの期間が年単位で長かったので、子どもも生まれて、本業とのバランスがとりにくくなってしまって。サポートプロジェクトの3カ月集中という期間がちょうどいいと思って参加したら、思いのほか楽しくて3回も参加しちゃいました(笑)。

白石 なかきょんさんはサポートプロジェクトのどういうところがよくてリピートしてくれてるの?

中野 私、3回のプロジェクト全部育休中に参加してるんです。1回目は1人目の、2回目と3回目は2人目の育休中で。やっぱり育休中って大人と話す機会がすごく少なくなって、ある意味社会と断絶されて、子どもと自分の世界にこもるような感じになるので、外の人とのつながりがほしかったというのがひとつ。もうひとつは、1枚目の名刺である本業がお休みの期間だからこそ、普段会わない人からのインプットがピュアに浸透するような気がしていて。それが育休中に参加した理由ですね。

白石 育休中ってワンオペだと日中ずっと赤ちゃんと2人きりですごすような感じだもんね。外とつながることで精神的に安定するようなところもあるのかな?

中野 そうですね。同じ立場である「ママ」と出会う機会はすごく多いんですけど、ママどうしで話すときって、基本子どものことしか話さなくて、自分が何者か名前すらも言わなかったりするので。ママではない自分として、自分の名前で、自分の意見を自分の言葉で話せる場を持っておきたいなって思ったんですよね。

白石 育休中だからこそ子育てに全力投球する人もいると思うし、いろいろな価値観があるだろうけど、なかきょんさんみたいな視点も忘れちゃいけないと思うよね。きょんちゃんは団体としてサポートプロジェクトに参加しようと思ったのは、どういう理由だったんでしょうか?

永田 一つ目は更年期についてさらに広く知ってもらえる機会になるんじゃないかというのがありました。二つ目は団体の中に新しい風が吹けばいいなという気持ちです。活動を始めて今年で10年目なんですが、長くかかわってくれているメンバーが多いので、新しい風が入ってくることで、私にとっても団体メンバーにとっても刺激になればいいなと思って。結果的にとてもいい刺激をいただきました! 三つ目はあわよくば業務が整理されて、団体として前進できればとも思っていて。実はその点はそれほど期待をしていなかったんですが、みなさんにありとあらゆる面で大きく進めていただきました!

 

愛にあふれる成果物は使うたびに思い出がよみがえる

白石 3カ月のプロジェクトを振り返っていただいて、うれしかったことを教えていただきたいのですが。

中野 私とさっくんは同じ「外向きチーム」で、営業活動の一環として、企業の人事部の方を集めてちぇぶらのセミナーをするっていうのをプランニングしていたんですが、企画だけして「後はちぇぶらさん、頑張ってくださいね」ではなく、自分たちで実施できたのがうれしかったです。

塚原 僕は自分たちが考えたことを、ちゃんと行動に起こして形に残すっていう経験がすごく楽しかったです。まず団体を知ることから始まって、団体のこういうところをのばしたいとか、こういうところをもっと知ってほしいというのを考えて、それを解決するためのアイデアを出して、それを実際にやってみるというのをたった3カ月でできたのがすごいですよね。これが会社だったら、自分のプロセスを企画する段階でも半年くらいかかるので、こんなにスピーディーにできて、なおかつ自分の成長も感じられたのがうれしかったことです。

白石 プロジェクトデザイナーのYUKIEさんはどうですか?

佐藤 このプロジェクトは、最終報告会の後に納品会をやったんですよ。最終報告会のときに言えなかった成果物の詳細を、きょんちゃんやかよさんに伝える場で。正直、各チームの説明を聞いていて、私が思っていた倍以上の仕事をこの人たちはしていたのがわかって、かなり感動しました。ずっと伴走していたはずの私にも見えていなかったボリュームとクオリティが氷山の下に隠れていたと思ったんです。

白石 サポートプロジェクトに参加してくれる方たちは優秀なビジネスマンだから、報告もきれいにまとめるよね。そうするとサクサクいったように感じてしまうけど、その裏にはきっともめたことや悩んだりしたことがきっとあって。僕やYUKIEさんのようなデザイナーはそこもしっかり吸い上げていかないといけないよね。

佐藤 そうなんです。正直ある程度のことをやれば最終報告会では成り立つんです。でも、今回は本当に成果物が愛にあふれていて。それはどこかでしっかり伝えたいとデザイナーとして思いました!

白石 そんなYUKIEさんの感動的な話を聞いたあとですが、「実はこんなこと悩んでました」「苦しかった」というようなことはありますか?

塚原 僕は研究職で理系なので、りょうさん(プロジェクト参加の社会人メンバー)がやってくれたようなロジックを立てて論理的に考える役割をできたらと思ってたんです。でも、りょうさんがとても素晴らしかったので、どうしようかと思って。チーム内での自分の存在意義に悩んだことがありました。結果的にはチームがなごむような雰囲気づくりをしようと思って、そこを意識しながら活動してました。

中野 そうだったんだ! さっくんはそういうのを天然でやってると思ってました! チーム内での相談が既定路線に行きそうになるところで、いつもフレッシュなアイデアを入れてくれたのが、私にはできないことなのですごくありがたかったんですけど、計算してやってくれてたと思うと、本当に空気の読める人なんだなって感動してます。

佐藤 私もさっくんは天然なゆるキャラだとずっと思ってた!

白石 なかきょんさんはどうですか?

中野 私は仕事柄もあって、プロジェクトは期間内にアウトプットを出して、きちんと納品して終わらせないといけないという感覚がずっと自分の中にあって。なので、3カ月という期間が限られている中で、どこまでどう入り込んでいいのかがすごく難しかったです。ただ、今回メンバーが本当に真摯にちぇぶらという団体のことを思って活動をして、実際きょんちゃんやかよさんにいいインパクトを与えたのを見て、プロジェクトを終わらせることだけが正義じゃないんだというのは、大きな学びになりました。

元気がない人、やりたい人がわからない人こそ参加してほしい

白石 3か月のプロジェクトが終わってみて、行動や心境で変化したことはありますか?

塚原 仕事するうえでも、悩むよりとにかく進めてみようって思えるようになりました。今までいろんなことを考えすぎて、手が出せないままっていうパターンが多かったんですよね。根拠がないとか情報が足りないとかあったとしても、とりあえず動いていくことで得られるものもあると思うので。3カ月でここまでできたっていうスピーディーさを仕事でも活かして、動いた後で考えるというスタイルを取り入れたいと思ってます。

白石 NPO団体と一緒に活動をしてみたのは何か発見があった?

塚原 いろんな社会課題があって、いろんな団体があるっていうのはすごく思いました。「更年期」なんて僕にとっては身近ではなかったけど、聞けば聞くほど納得できることもあったので、きっと社会の中に同じようなことがたくさんあるんだろうなと思いました。大学時代に塾講師のバイトが楽しかったので、ボランティアで小学生に勉強を教えるとか、そういう形で社会課題に貢献できたらなって今漠然と考えてます。

中野 私はこれまでプロジェクトに参画したときは、自分が仕事で培ってきたスキルやナレッジの部分で貢献するという気持ちだったんですけど、今回のプロジェクトに関しては、団体のことを思う気持ちやマインドに寄り添うことが助けになるのを見られたのが大きな学びになりました。それはこれからコンサルタントとして仕事をするときにすごく大事にしたいなと思います。

永田 みなさん仕事や子育てをしながら団体にかかわってくださって、その様子を見て、私も楽しむことを大事にしながらも、もっと人の役に立つことに限られた命を使っていけたら素敵だなって改めて思いました。

佐藤 私にとってはちぇぶらさんとの出会いで、更年期というあまりなじみのなかった社会課題にふれることができたのがすごくよかったです。今までなら通り過ぎてしまう課題だったところ、自分ごとの一部として考える機会に恵まれて、自分の人生の知識や経験、財産になったと思いますし、今後もちぇぶらさんと何かしらのご縁はつながっていくような気がしています。

白石 最後の質問です。このサポートプロジェクトはまわりの人におすすめできるでしょうか?

塚原 もちろんです! 僕みたいに将来こうなりたいとかああなりたいとかが特になくて、でも「社会人として何かしないと」っていう漠然とした不安を抱えている人って社内にたくさんいると思うんです。そういう人に向けて「何やっていいかわからないんだったら1回やってみたら? やりたいことが見つかるかもよ」っておすすめしたいです。

中野 そうですよね。こういう活動している方って、エネルギーにあふれてる方や自分に自信のある方が多いと思われがちなんですけど、今弱っている人とか、元気がない人こそやったらいいと思います。私自身は、きょんちゃんが更年期に苦しむ人たちを救いたいというミッションを持って突き進んでいる姿を見て、自分の好きなことや、やりたいことに時間をかけていいんだって元気をもらったんですよ。起業家や団体を立ち上げた方にふれあうとそういう元気をいただけるので、「人生おもしろくない」と思っている人や「自分なんて何もできない」と思っている人にこそやってほしいですね。

永田 サポートしていただいた団体としては、ほかの団体にもぜひおすすめしたいです。団体の立ち上げ時でも、10年目でも、どのフェーズで参加しても前に進めると思います。毎回のミーティングも毎度刺激をもらいましたし、すごく成長させてもらいました! またみなさんと同窓会もしたいですね。

佐藤 本当ですね。この座談会、プロジェクトが走っているときには聞けなかったような話も聞けた楽しい時間でした。このチームのプロジェクトデザイナーを担当できて、本当にラッキーでした!

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ライター

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古川 はる香
ライター
フリーライター。女性誌や育児誌を中心に雑誌、書籍、WEBで執筆。