3か月のプロジェクトで終わらせない関係を ~現場で感じた「復興」の言葉の重みと継続的な関わり方~

本記事は、「福島12市町村 ソーシャルコラボレーション プロジェクト」にサポートプロジェクト・デザイナー(コーディネーター役)として参加した桐ヶ谷綾菜(きり)さんによる体験記です。 パートナー団体の株式会社いのちとぶんか社とともに、地域の祭りをテーマに取り組んだ3か月間の活動と、プロジェクトが終了した後も、「ふたばの灯」プロジェクトを立ち上げるに至った想い、これから関わる方々へのメッセージを綴っていただきました。
「なぜやるのか」に向き合った3か月間とロードマップの作成
2025年9月から12月まで、「福島12市町村 ソーシャルコラボレーション プロジェクト」に、二枚目の名刺のサポートプロジェクト(以下、SPJ)※・デザイナーとして参加しました。パートナー団体は株式会社いのちとぶんか社。震災・原子力発電所事故を経験した福島12市町村にて、地域の文化や祭りを通じたコミュニティづくりや、「強制されない防災」につながる地域づくりに取り組んでいます。
※社会人・学生がチームを組み、NPO等の団体と約3か月協働するプロジェクト
プロジェクトでは、「祭りをきっかけに、共助の意識を芽生えさせること」を一つのテーマとして、社会人メンバー、団体メンバーと活動しました。当初は「どのようなイベントを実施するか」「学生や地域の人をどう巻き込むか」といった具体的な企画の議論が中心でした。しかし、活動を進める中で、「何をやるか」よりも「なぜ祭りなのか」「地域の人にとって祭りとは何なのか」を考えることが重要だという認識に変化していきました。
3か月間で重ねた打ち合わせは26回以上。4つの祭り団体へのヒアリングも実施しました。そこで見えてきたのは、祭りが単なる地域イベントではなく、人が集まるきっかけであり、地域への帰属意識や人と人とのつながりを確認する場でもあるということでした。その結果、2028年の双葉郡合同盆踊り大会を一つの目標とし、そこへ向けた長期ロードマップと、新たな仲間を募るためのチラシを作成しました。
このプロジェクトでは、「何をつくるか」以上に、「なぜやるのか」「誰のためなのか」を考えることに多くの時間を使いました。目に見える成果を急ぐのではなく、地域の方へのヒアリングやメンバー同士の対話を重ねながら、自分たちの考えを何度も見直しました。この過程を通して、地域に関わる際には、まず地域を知り、そこで暮らす人たちが大切にしているものを理解しようとすることがなにより大事であるということを改めて認識しました。

言葉の受け止め方の違いと背景を学ぶ重要性
福島で活動する中で強く意識するようになったのが、同じ言葉でも立場によって意味が異なるということです。特に「復興」「支援」「前に進む」といった言葉は、外部の人間にとっては前向きな意味で使われることが多い一方、地域や個人によって受け止め方は異なります。
プロジェクトが開始してから、この点について考える機会が増えました。福島出身の方から、地域によって復興支援の状況に差があったことや、それによって異なる経験や感情が生まれていることを聞き、自分が福島について知っていることはごく一部であると気づきました。現地へ行き、行動することは大切ですが、それだけではなく、震災や原発事故後にそれぞれの地域がどのような歩みをたどってきたのか、復興政策や地域創生、関係人口といった背景についても学ぶ必要があると考えるようになりました。

「ふたばの灯」としての活動継続と富岡町での盆踊り参加
取り組んだプロジェクトは2025年12月で終了しましたが、活動そのものはそこで終わりませんでした。当時のメンバーのうち5名は、2026年1月から「ふたばの灯」として活動を継続しています。ふたばの灯は、祭りを切り口に、文化と伝統の継承と地域の共助のしくみづくりを目指す取組みです。まずは8月に富岡町の盆踊りに参加し10月には活動を伝える展示も検討し、仲間集めを含め徐々に取組み定着させ最終的には、2028年に相双地域のそれぞれの地区の祭りが一体となった合同盆踊りが開催できるようにすることを目標にしています。
この夏、富岡町の盆踊りにボランティアとして参加しました。プロジェクトに一緒に取り組んだメンバーと再び現地に集まり、今度は実際に地域の祭りを支える側として参加しました。地元の方から「東京から来てくれたの」と声をかけていただく場面もあり、外から継続して足を運ぶことも、一つの関わり方になるのだと感じました。

一方で、現地へ行くことで、自分は震災や原発事故を実際に経験していない外部の人間であることも改めて意識しました。地域について十分に知らないからこそ、どこまで踏み込んでよいのか分からず、一歩引いてしまうこともあります。関係人口として地域に関わるとはどういうことなのか、どのような距離感が適切なのか。この問いには、今も明確な答えを持っていません。
ある時、地元の方から、「復興とは建物や元の生活に戻ることだけではなく、いつか『当時は大変だったね』と話せるようになることではないか」という話を聞きました。プロジェクトに取り組んでいた当時から感じていた、関わる立場によって「復興」の捉え方が異なるということを、改めて考えるきっかけになりました。

現地に足を運び、継続して関わるための仕組みづくり
こうした感覚は、オンラインでミーティングを重ねているだけでは得にくいものだと思います。オンラインで情報を得たり議論したりすることはできますが、それだけでは地域について「知ったつもり」になってしまうこともあります。実際に現地へ足を運び、人に会い、その場所で時間を過ごす。そうすることで、自分が知らなかったことや、分かったつもりになっていたことに気づくことができます。継続的に地域に関わるうえで、定期的に現地へ行くことの重要性を今回改めて感じました。
同時に、継続すること自体の難しさもあります。プロジェクト期間中は明確なスケジュールや目標があり、定期的に福島について考える時間があります。しかし、プロジェクトが終わり日常生活に戻れば、それぞれに仕事や生活があり、時間や距離の制約も生まれます。関心を持っていても、日常の中で少しずつ遠ざかり、風化してしまう可能性があります。
だからこそ、個人の熱意だけに頼らず、関わり続けられる仕組みをつくることが必要なのだと思います。現地に行く、人に会う、祭りに参加する。それを一度きりの経験にせず、次の訪問や活動につなげる。さらに、新しい人が無理なく参加できる入口をつくる。こうした仕組みをどうつくっていくのかは、「ふたばの灯」にとってもこれから考えていきたいテーマです。
私自身、プロジェクトへの参加をきっかけに、「福島」「復興」「地域創生」「関係人口」といった言葉に自然と関心を持つようになりました。同時に、関わるほど自分が知らないことにも気づくようになりました。だからこそ、実際に地域へ足を運ぶことと、背景を学ぶことの両方を続けていきたいと考えています。今後は、地域創生や関係人口の形成について、実践だけではなく理論的・学術的な視点からも学び、現地で感じたことと結びつけて考えていきたいと思います。
↑写真一番右が桐ヶ谷綾菜(きり)さん
第2期メンバーへのメッセージ:限られた期間を超えて広がるつながり
これから第2期に参加する皆さんにも、まず現地に行き、人に会い、話を聞く機会を大切にしてほしいと思います。3か月という限られた期間の中で成果を出すことも必要ですが、「地域のために何ができるか」だけではなく、「誰のためにやるのか」「なぜ自分たちが関わるのか」「自分たちは地域について何を知らないのか」といった問いを持つことも、このプロジェクトの大切なプロセスだと思います。
そして、できれば3か月で関係を終わらせないでほしいと思います。
プロジェクトには開始日と終了日がありますが、地域との関係までその期間に合わせる必要はありません。一度現地へ行ったこと、一人の地域の方と話したこと、祭りに参加したことが、次に福島へ行く理由になることもあります。
第2期の活動からも、プロジェクト終了後にそれぞれの形で福島との関係を続ける人が生まれ、第1期、第2期という枠を越えて新しいつながりが広がっていくことを期待しています。そうした人が少しずつ増えていくことも、このプロジェクトが福島に残していける一つの成果なのではないかと考えています。
★【2026.9.20締切】第2期募集!福島ソーシャルコラボレーションプロジェクト
↓↓↓詳細とお申込みはこちら
https://fukushimascp2.peatix.com/
ライター
編集者
カメラマン

