行動を起こすことで新たな道が拓ける「One Panasonic」交流会レポ
パナソニックにあるコミュニティスペース「Wonder LAB OSAKA(ワンダーラボ・大阪)」で、同社の有志の会「One Panasonic」主催の交流会が開催(2016年6月5日)されました。
18回目を迎える今回の交流会のテーマは「モノの見方を変える」。社外からも参加者を募り、200人以上が集まったこの会の中で語られた、“パナソニック社員にとってのOne Panasonicの意義”についてレポートします。
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「One Panasonic」とは
社員のモチベーションの向上、知識・見識の拡大、人的ネットワークの構築を目的としたパナソニック有志の会。「組織の枠を越えたつながりをつくりたい」との思いから、2012年に社員の交流会として始まり、現在2300名もの社員が参画するコミュニティーに。イノベーションの種を生み出そうとする取り組みが社内外から高く評価されている。
「交流と学び」をテーマに、パナソニック社員のモチベーションの向上・知識拡大・人脈形成につなげたい。
そんな想いのもとに集まったOne Panasonicの運営メンバーは、現在、東京・大阪・名古屋・福岡の4拠点にそれぞれ5~6人ほど。週に1度、夜10時頃から2時間ほどWebミーティングを行い、交流会やイベントなどの企画を立てているそうです。
今でこそメディアに注目され、新入社員からの関心も高いOne Panasonicですが、2012年に発足した時は、“若手に何が分かるのか”“本業に専念しろ”などといった批判的な意見が多く、会社の施設を活用することすら難しい時期があったといいます。
会社にとっても一定の存在感を示すほどに育ち、経営幹部も認めるほどのコミュニティーとなった現在、One Panasonicは、パナソニックの社員にとって、どのような存在なのでしょうか。「ブース別交流会」に登壇した社員の話から紐解きます。
社内ネットワークの拡がりが、希望部署への異動を叶えた
橘匠実さん(パナソニック株式会社 ブランドコミュニケーション本部)
大阪の運営メンバーの代表で、海外の展示会やイベントなどの企画を担当している橘匠実さんは、「One Panasonicがあったから、会社を辞めずに済んだ」と話します。
橘さん:「入社当初は社内につながりがなく、孤独を感じていたこともありました。当初想定していた部署と違う配属になったことに加え、社内のつながりを感じにくい東京の支社で2年間を過ごした原体験がそのきっかけです。2年後に勤務地変更になった先の大阪でOne Panasonicに出会い、“たくさんの人とつながるチャンス!”とすぐに参加を決めました」
こうして徐々に運営にも携わるようになった橘さんは、今やOne Panasonicの代表に。
橘さん:「One Panasonicの活動は、希望していた仕事に就くための布石にもなりました。社内にネットワークが拡がり、そこで知り合った関係部署の先輩方に直接思いを伝えることができたのです。大企業の中で、待っているだけでは希望の部署で働ける可能性はゼロに近いですから、自分の存在をアピールすることができたのは大きかったと思います。One Panasonicがなかったら希望を叶えることができず、会社を辞めていたかもしれません」
アイデアを発信し、仲間を見つけ、形にしていく場
グエン・ジュイヒンさん(生産技術本部 ロボティクス推進室)
小学校のときに“ロボコン”を見て以来、ロボットに興味を抱き、中学卒業後は工業高校に進んだ、ベトナム出身のグエン・ジュイヒンさん。大学でもロボット工学の研究を続け、パナソニックに入社したのは「ロボット開発に力を入れている会社だったから」と振り返ります。
そんなグエンさんのブースに集まった参加者たちの主な関心は、グエンさんが社内で立ち上げた「ロボット部」について。「どうして立ち上げたんですか?」「仲間集めはどうやって?」など様々な質問が寄せられました。
グエンさん:「入社後すぐにロボットに関わることはできませんでしたが、頭の中にはいくつかのアイデアがありました。One Panasonicの交流会には、毎回欠かさず出席し、先輩たちに学びを得たり、アイデアについて、ほかの参加者とディスカッションをしていました」。
そうした中、One Panasonicがトーマツベンチャーサポートの協力を得て実施した「イントレプレナー養成講座」に参加。自分が何に取り組みたいのか? その思いの背景にはどんな原体験があるのかを考えるワークショップで、自らのロボットに対する思いを再確認したグエンさんは、その思いを叶える活動をしようと「ロボット部」を設立します。
グエンさん:「本業の枠組みとは別に、ロボット技術に興味がある若手有志が集まりました。5人でスタートし、現在は27人が所属しています。これまでに、ロボットの開発アイデアを役員に提案したり、子どもたちにものづくりの楽しさを教えるキッズスクールを開催しました。今は、力試しで参加したハッカソンに刺激され、メカトロニクスとプログラミングの開発技術の向上に力を注いでいます」。
One Panasonic初の事業化を実現したい!
こうした取り組みが評価され、グエンさんは今年、念願だったロボティクス推進室に配属されました。
グエンさん:「“ロボット開発を通じて、再び日本を技術立国にする”というのが私の夢です。そのためにも、まずはOne Panasonic発の商品化を実現したい。今の自分があるのは、夢を語る自分をいつも応援してくれたOne Panasonicのおかげです。交流会がなければ、仲間たちとも出会えず、本業でロボットに携わることもできていなかったと思います」
目を輝かせながら熱く語るグエンさんに、ブースに集まった参加者たちは、「自分もグエンさんを応援したい!」と笑顔を見せていました。
One Panasonicから生まれたアイデアが、事業化する日も遠くなさそうです。
志の高い後輩たちに、挑戦し続けることの大切さを伝えたい
大嶋光昭さん(AVCネットワークス社 イノベーションセンター)
1974年に松下電器産業(現パナソニック)に入社。手振れ補正技術を発明・開発し、「紫紋褒章」を受賞するなど、日本屈指の技術者である大嶋光昭さん。京都大学など複数の大学で教壇にも立つ大嶋さんにとってのOne Panasonicとは?
大嶋さん:「ゲストとして呼ばれて以来、交流会には毎回参加しています。“発明の思いを伝え、技術者を育てたい”と願う私にとって、One Panasonicは効率的にその想いが叶えられる場所。志の高い若者が集まって来ますから」
大嶋さんは、開発した製品のデモ機を持ち込み、集まった若手に技術の説明や売り込みの手法など、多様な視点で自らの挑戦の歴史を語ります。
大嶋さん:「日本は“失われた20年”と言われて久しく、その間、挑戦できない若者が多くなってしまいました。保守的な上司に“打たないほうがいい”と言われたら、それに従う他はないのかもしれません。でも、私が伝えたいのは、“それでも打席に立ったら必ず打ちなさい”ということ。失敗するかもしれないけれど、失敗を繰り返した先に見えてくるものが必ずあります」。
「これから挑戦する若者が、思いっきり打ち込める土壌をつくりたい」と、自らの失敗談を交えた経験を語る大嶋さん。偉業を成した先輩から直接話を聞けるのも、One Panasonicの醍醐味のひとつのようです。
社会に役立つものをつくるために、多様な視点やニーズを知りたい
村上健太さん(先端研究本部 インタラクティブAI研究部)
学生時代からロボットを研究し、入社前から交流会に参加してきた村上健太さん。現在は、暮らしの中で柔軟に動作する「知能ロボティクス」の研究開発を進めている村上さんは、「One Panasonicは自分を高めるための処方箋」と例えます。
村上さん:「交流会には、成長意識が高く、様々なジャンルで活躍している人が集まってきます。そのような人と語り合うことで、“もっと頑張ろう”という意欲が沸いてきます」。
また、One Panasonicを、エンジニアとして成長するためのフィールドだとも捉えているそう。
村上さん:「社会に役立つものを生み出すためには、たくさんの人と交流し、多様なニーズや異なる視点を知ることが不可欠だと思っています。日々の業務や生活の中で新しい人に出会うことは少ないので、貴重な場だと思っています」。
横のつながりを持つことで、自分の仕事を広い視点で見ることができる
林珠里さん(知財戦略部)
立ち上げ時から参加している知的戦略部の林珠里さんは、One Panasonicに参加し続ける理由をこう話します。
林さん:「組織の規模が大きいと、縦のつながりばかりで、横のつながりを持つことはなかなかできません。One Panasonicは、横のつながりが持てる場所。参加することで、目の前にある業務が、どんな部署にどう影響しているのかを客観的に捉えることができています。自分のやっていることが社内でどう生きているのかを知ることは、仕事へのモチベーションにもつながります」
おわりに
「何かをしたい、変わりたいという意思のある人は、交流会に来て大きく変化します」とOne Panasonic大阪の橘さんが言うように、One Panasonicの活動が一歩踏み出すきっかけになったり、本業へのモチベーションアップにつながった声が多く聞かれました。
「One Panasonicの成果をよく聞かれますが、それは、ここに来た人が何かを始めること。今後は、もっと本業につながる交流の機会をつくっていけるよう、多様な意見を取り入れていきたいです」と橘さん。
One Panasonicからどんなイノベーションが生まれていくのか、楽しみです。
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