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「民間企業で働く僕がソーシャルビジネスで貢献できるのか」若手ビジネスマンの3ヶ月の挑戦

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新興国・途上国、グローバルな社会課題、ソーシャルビジネス、社会起業に携わりたい。
本業とは異なる環境で、志を同じくするメンバーとともに、自らの力を試してみたい。
アジアの新興国で、社会的事業を推進するソーシャルベンチャーの経営課題に挑んでみたい。

このような想いを抱いている方が、本業を辞めることなく、“2枚目の名刺”としてインドネシアの社会的事業の推進に取り組める「新興国ソーシャルベンチャー共創プログラム」が再び開催される。

実施国はインドネシア、期間は2019年6月15日~9月14日の3ヶ月間。
参加者は日本からの遠隔コミュニケーションと短期間の現地渡航を組み合わせ、新興国の社会的事業の経営課題にチームで挑むことになる。

>当プログラムを立ち上げた二枚目の名刺・廣優樹と一般社団法人GEMSTONE CEO 深町英樹氏のインタビュー

僕たちがインドネシアでプロジェクトを立ち上げる理由――新興国ソーシャルベンチャー共創プログラム(前編)

第2弾の実施を前に、2018年10月〜2019年1月までの約3ヶ月間、同プログラム第1弾に参加したメンバー2名に、参加の動機やプログラムの感想について話をお聞きした。
彼らがこのプログラムに参加した目的、そして3ヶ月で得たものは何だったのか。どんな成果を生み出したのかーーー。

(同プログラムでは2泊3日の現地渡航を2度実施する。これにより社会課題や経営課題がよりリアルなものとなる)

利益優先のビジネスに対するジレンマ

1人目のインタビュイーは、このプログラムに参加後に勤めていた企業を退職し、この秋からイギリスの大学院に留学。以前から関心を抱いていた開発学(途上国の開発、発展について経済、環境、社会学など様々なアプローチで考えていく学問)を学ぶことにしたという坂本和樹さん。

世界で2番目にゴミ排出量の多いインドネシアでゴミ問題の解決に取り組む団体Waste4Changeのプロジェクトに参画した。

坂本さん

大学生の頃、国際開発の研究をしていました。就職時にも国際開発に携わりたい気持ちはありましたが、門戸も狭く、僕自身あまり英語も堪能ではなかったため、まずは海外でも働ける民間企業に就職しました。このプロジェクトは、3ヶ月という期間がちょうどよく、本業を続けながらも参加できる点、そして実際に渡航してサポート先の事業に関わることができる点に惹かれました。

民間企業のマーケティング部門で6年半働き、消費者のニーズに沿った物づくりができることにやりがいを感じてはいたものの、利益重視のビジネスに対するジレンマが募っていたタイミングだったと振り返る。

大学1年生の頃に授業を通して関わったフィリピンの農村開発事業で、日本とは全く異なる生活をしている人たちがいること、その背景には全く異なる経済構造や文化が存在することに興味を抱いた。そうした社会への好奇心も彼を後押ししたのかもしれない。

事業利益を得ることと社会課題の解決に同時に取り組んでいるソーシャルビジネスに携われるこのプログラムを、“楽しそうだ”と思ったという。

坂本さん

コモンルームでSanoさん(Waste4Change創業者兼代表)のプレゼンを聴き、彼の取り組みに関心を持ちました。本来政府がやるべきゴミ問題をなぜ民間でやっているのだろう、と。僕はもともとパブリックな問題に関心を持っていたので、途上国の社会課題に構造的に関われるのは、本業でもなかなか出来ないチャンスだなと感じました。

(プログラム第1弾のコモンルームの模様。坂本さんは当日開催を知り、飛び入りで参加したという)

プログラムからの学び

同プロジェクトは、2回の現地渡航と遠隔コミュニケーションによって進行される。坂本さんは、住まいのある神戸から参加していた。遠隔でのコミュニケーションにやりづらさや困難は感じなかったのだろうか。

坂本さん

チャットでも構わないから、毎日何かしらのコミュニケーションをとろうと皆で決めていたからでしょうか。一切やりづらさは感じませんでした。

キックオフ直後に団体とのディスカッションやフィールド調査のためにインドネシアに渡航した際、Sanoさんの想いを直接お聞きできたことやプロジェクトメンバーと意識合わせができたことも大きかったですね。結束感が高まりました。

プロジェクトの目的や目指す先がしっかりと擦り合っていれば、初対面であろうが、本業があろうが、国境を跨いでいようが、円滑なコミュニケーションのもとでプログラムは進んでいくのだろう。

(プロジェクトのミーティングは、平日夜や休日にオンラインツールを用いて行われた)

一方で短期間のプログラムだからこそ、苦労した部分もあったという。

坂本さん

3ヶ月という限られた期間の中で、どうすれば貢献できるのかという点は、非常に苦慮した部分ではありました。ソーシャルビジネスに関する知識も経験も足りていない中で、いかにして価値を創出するか……。通常のビジネスであれば、その事業が利益につながるかどうかがポイントになりますが、ソーシャルベンチャーは利益よりもまずビジョンに一致しているかどうか、ミッションを達成できるかどうかが意思決定の基準になります。そこは民間企業しか知らない僕にとっては新しい考え方で、学ばなければならないことでもありました。

(創業者兼代表・Sano氏は「ゴミ問題を解決するためにできることは全部やっている人」だった)

1+1を5にも10にもできる“一生の仲間たち”との出会い

初めて取り組むソーシャルビジネスだったが、Waste4Changeのメンバー3名はそれぞれが“得意なこと”や“できること”を活かし、
①分別回収をするためのゴミ箱「ドロッピングボックス」の設置や拡大戦略
②新しいゴミ施設を造るためのクラウドファンディング
の2つに焦点を当て、3ヶ月間を駆け抜けた。

坂本さん

僕はこれまでゴミ問題について深く考えたことがなかったので、たまたまメンバーの一人が何年もの間ゴミ問題を勉強しており、初回のミーティングからその知見を共有してくれたのは心強かったですね。もう一人のメンバーはアイデアマン。このプロジェクトで実施したクラウドファンディングは彼女のアイデアです。僕はInstagramのアカウントをどのように運用すれば良いかとか、Webサイトをどう作れば良いか、といったマーケティングの観点から意見することができたと思います。

年齢、業種、職種……このプログラムでは、バックグラウンドの異なる人々とチームを組むことになる。第1弾のプログラムにもバラエティ豊かな面々が参加していた。

坂本さん

プログラムが始まる前までは、意思疎通で苦労する面もあるのかなと少し心配していましたが、むしろバックグラウンドが異なるからこそ、1+1が2ではなく、5や10になる。お互いの違いで相乗効果が生まれるのは、僕自身にとって発見でもありました。

(自分とは違う経験をしてきた人や自分ができないことができる人との協働は刺激的だった)

プロジェクトチームによる2つの成果

このプログラムでWaste4Changeチームは2つの成果を生み出している。

一つは、Waste4Changeの評価指標の策定だ。Waste4Changeのスポンサー企業を集めてグループインタビューを実施し、インサイトを明らかにしたことで、回収したゴミの量を計測したり、国民のゴミ回収に対する意識がどう変化したのかを調査するという土壌を作った。実は、これは団体側がこのプログラムに期待していたコンテンツでもあったようだ。

もう一つは、クラウドファンディングで165万円の寄付を獲得し、新たなゴミ回収施設の資金を作ったことだ。Waste4Changeはコンサルティング事業などで収益を上げているとはいえ、新しい施設を造るほどの余裕はない。プロジェクトメンバーの発案のもと、2ヶ月かけて寄付を集めることにした。

坂本さん

クラウドファンディングを始めたことで、プログラムの期間は予定していた3ヶ月を超過しました。しかしWaste4Changeの財政面、そして現地のゴミ問題を考えた時に新しい回収施設は欠かせません。プログラムを延長することに迷いはありませんでした。それはこのプログラムをやりたくてやっているメンバーに共通することだったと思います。

坂本さんにとっては初めてのクラウドファンディングだったが、初日から多くの寄付が集まり、目標額を上回る資金を得ることができた。もう一つのプロジェクト、InstellarチームのメンバーやWaste4Changeの現地スタッフの力にも大いに助けられたと坂本さんは言う。

坂本さん

皆が社会課題を自分事に捉えていて、それを解決するために自分の力を最大限に活用したいと思っている。本当に素晴らしいメンバーが揃っていました。プログラム後も一生付き合っていたいような仲間に出会えたことは、幸せなことでしたね。

(ゴミリサイクルの行程は想像以上に複雑だからこそ、新しい仕組みを作って解決しなければならないと強く思った)

プログラムで得た自信をもとに、次なる道へ

プログラム終了後に1枚目の企業を退職し、現在は留学準備中の坂本さん。何が彼を次の道へと突き動かしたのだろうか。

坂本さん

3ヶ月のプログラム期間中に、自分のことをうんと知ることができたのだと思います。大学生の頃に抱いていた国際開発への興味が顕在化しました。それに、民間企業で働いてきた身としては、ソーシャルビジネスや国際開発の場で果たして自分が貢献できるのだろうかという不安もありましたが、まだ到底力は及ばないものの、自分にもできることがあるということに今回気付かせてもらえことで踏ん切りがつきました。

このプログラムで国際開発を仕事にすることへの一歩を踏み出すきっかけを得ると同時に、自分に不足している基礎を学ぶ必要性を感じ、大学院への進学を決めたのだという。

坂本さん

そうは言っても、僕はこれまで働いてきた民間企業の現場を通して、ビジネスの力はものすごく信じているんです。今回のプログラムでも民間企業が社会問題に取り組む様子を垣間見ることができました。大学院で学んだ後は、ビジネスの世界から社会問題を解決できるような人間になれたらと思っています。

Sano氏の生き樣や活動に触れ、社会に良い変化を与えるには、誰もやっていないことに挑戦することや、いかに個人で新しい価値を出しに行くかが大事だということに気づいたという坂本さん。挑戦することの重要性を実感した彼は、留学までの期間、NPO法人二枚目の名刺のサポートプロジェクトデザイナーとしても活動している。

坂本さん

今度は僕自身がプロジェクトを立ち上げて、そこから他の人や社会の変化を起こせたら素敵だなと思っています。最近仕事が楽しくないな、守りに入ってしまっているな……そんな風に感じているのなら、新興国ソーシャルベンチャー共創プログラムやサポートプロジェクトに参加してみることをおすすめします。必ず自分に変化が起きますよ。

(「新興国ソーシャルベンチャー共創プログラム」第1弾に参加したメンバーと現地スタッフ)

【新興国ソーシャルベンチャー共創プログラム 第2弾】

坂本さんが参加した「新興国ソーシャルベンチャー共創プログラム」第2弾の募集がスタートしました!
今回もインドネシアを代表するソーシャルベンチャーの経営課題に取り組みます。

プログラム期間は6/15-9/14、応募締切は5/31。
「新しい自分に出会いたい」「本業以外のところで自分の力を試してみたい」「社会的事業に取り組んでみたい」。
そんなあなたの参加をお待ちしています!

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プログラムに興味がある方はこちらをご覧ください。

・プログラムの模様を動画でCHECK!→こちら
・プログラム第2弾 説明会 兼 体験型セッション@三田→こちら
・プログラムの概要&申し込み→こちら

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はしもと ゆふこ
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女性誌出身の編集者。 「人生100年時代」に通用する編集者になるべく、雑誌とWebメディアの両方でキャリアを重ねる。趣味は占い。現在メインで担当するWebメディアで占いコーナーを立ち上げ、そこで独自の占いを発信すべく、日々研究に励んでいる。目標は「占い師」という2枚目の名刺を持つこと。