TOP > 一歩踏み出した先に、見える世界が変わった――「二枚目の名刺」で越境した2人が語る10年

一歩踏み出した先に、見える世界が変わった――「二枚目の名刺」で越境した2人が語る10年

このエントリーをはてなブックマークに追加

本業を持ちながら、社外のNPOプロジェクトに参画する「二枚目の名刺」。10年前、大阪で開催されたプロジェクトで、認定NPO法人Homedoor(ホームドア)の支援に取り組んだ藤木さん(通称・きんぐ)と清水弥生さん(通称・うえっち)。現在も交流が続く二人に、参加のきっかけから活動の裏側、そして越境がキャリアにもたらした変化まで、語り合ってもらいました。

 

藤木 位雄さん(愛称:「きんぐ」)
NTT西日本株式会社 勤務(出向先:NTT西日本ルセント 関西支店 専任課長)2017年に二枚目の名刺プロジェクトで「認定NPO法人Homedoor」とプロジェクトで協働し、その後も相談ボランティアや夜回り活動などを現在も継続。2019年から二枚目の名刺の運営メンバーにjoinし、プロジェクト伴走や2025年まで事業推進事務局を担い、連携希望の企業や自他体等の渉外を担当。これら越境体験が「人の可能性を信じ、伴走する」という藤木さんの原点となる。 本業先は特例子会社でその学びを活かし、また母校ラグビー部のメンタル&キャリア支援など、多様なフィールドで活躍。NTT西日本で2024年に開催された越境活動を賞賛する「E-1グランプリ」では優秀賞を受賞するなど、現在も挑戦を続けている。

清水 弥生さん(愛称:「うえっち」)
株式会社ドコモCS関西 フロント支援事業部 営業支援部長2017年に二枚目の名刺のサポートプロジェクトに参加し、藤木さんと共にホームレス支援に取り組む。その学びを本業にも活かし、さまざまな異業種交流プログラムの企画や女性活躍推進に取り組んできた。副業では社外メンターとして、キャリアに悩む女性管理者や管理職候補の伴走支援を行っている。 現在は、社内では社内外のつながりを広げながらWell-beingな社員を増やすプロジェクトをリード。ボランティアではSDGs課題に挑む女子学生のビジネスプラン開発を支えるメンターとしても活動している。
越境で得た気づきを、周囲の人の成長や働く環境づくりへと、あたたかく丁寧に広げ続けている。

 

 

きっかけは「タイミング」だった

――お二人が参加したきっかけを教えてください。

藤木(きんぐ): 当時、本業はサービス開発の部署に所属しており、社内研修の一環で二枚目の名刺プロジェクトが企画されました。最初は積極的に参加するつもりはなかったのですが、研修を企画した友人からの誘い、また40代後半で将来へのモヤモヤは確かにあり、「支援先となるNPOのプレゼンを聞いてから決めればいい」と言われて説明会に参加しました。これまで社会課題に積極的に触れたことが無く、どのNPOのプレゼンも興味深く聞き、特に衝撃を受けたのはホームドアのプレゼンで、結果的としてプロジェクト参加に迷っていいましたが、自ら参加要望を行い、一歩踏み出すことにしました。

 

――忙しい時期だったのでは?

藤木(きんぐ) :当時の職場は上司との関係も良く、心理的安全性があり、「機会があればいろいろなことにチャレンジして」と背中を押してもらえました。その前の職場だったら、忙しすぎて参加しなかったと思います。気持ちに少し余裕があり、チャレンジできる環境だったので参加することにしたのです。タイミングはすごく大切だと思いますね。

清水(うえっち) :私は採用・育成・ダイバーシティを推進する部署の課長をしていて、育成業界で「越境学習」がトレンドになり始めた頃でした。スキルアップだけでなく、挑戦する機会や外を見る機会をつくりたいと情報を集める中で、二枚目の名刺を知って。ただ活動の中心は東京なんですよね。関西で参加できるものはないかと思っていたら、ちょうど大阪開催を知り、「これは行かねば」と説明会へ。そのまま参加を決めました。

 

――当時のお仕事の状況は?

清水(うえっち) :正直、むちゃくちゃ忙しい時期でした。スタッフ部門だったこともあり、人員は減るのに業務量は増え、新しいことも生み出せと言われる。社内のリソースと自分の引き出しだけでは仕事が回らない。だからこそ社外とのつながりや、違う手法を求めていたんです。

 

「自己責任」という思い込みが覆った

――支援先に3団体からホームドアを選んだ決め手は?

清水(うえっち) :悲壮感がなかったことです。ホームレス問題をどうにかしたいという思いを持ちながら、社会のせいだけにしていない。自分たちにできることを増やして解決したい、という前向きさがあった。社会課題にそこまで詳しくなかった私でも「参加してもよさそう」と思わせてくれるプレゼンでした。

藤木(きんぐ) :私は、3団体の事前情報を見た時点では「ホームドアには参加しないだろうな」と思っていました。路上生活をする人は自己責任で路上に出ている、くらいの認識しかありませんでした。でも、実際に代表の川口さんのプレゼンを聞くと、制度の狭間で路上に出ざるを得なくなった人たちが、本来使える社会の仕組みにつながれずにいる。その「つなげる役割」を担うのがホームドアだと。私自身、路上生活者の多いエリアで勤務した経験もあったのに、何も考えていなかった。課題は見ようとしないと見えない。それが衝撃で、手を挙げました。

 

「否定しない」場が生んだスピード感

――活動はどう進んだのですか?

藤木(きんぐ) :テーマの洗い出しから始めて、シェアサイクル「HUBchari」のポート(駐輪拠点)を広げる活動に決めた時も、NPO代表が即断してもらったため、その後の対策検討には早期に移行できた印象です。当時は、このポートも十数か所しかなく、シェアサイクルの利点を活かしきれず利用者も伸び悩んでいたと思われます。この事業は、路上生活をされている方は自転車修理が得意であることから始まった事業であり、拡大することで路上生活者に職を提供することにも繋がるのです。私が着手したのは、自社ビルの空きスペースに無償でポート設置を行う調整でした。

清水(うえっち) :印象的だったのは、川口さんが絶対に否定しなかったこと。やってほしいことは伝えるけれど、アプローチやアイデアは任せてくれる。だから安心して議論できましたし、メンバーのモチベーションも上がりました。プロジェクト終了後のサポートを見据えて「学生インターンを集めよう」と決めた1週間後には募集をかけて、実際に2人来てくれた。あの意思決定の速さは、会社ではなかなか経験できません。

 

――逆に、大変だったことは?

藤木(きんぐ) :自社ビルの空きスペースにHUBchariを置く、というのを簡単に考えていたんです。ところが社内のどこへ相談しても「権限がない」と言われる。何故なら企業として無償でスペースを貸す規定も前例も無く判断できない状況となっていました。様々な部署に相談し、何とか受け入れ可能な組織にたどり着き、役員の承認を得てようやく実現しました。動き出しから8ヶ月、プロジェクト自体は4ヶ月で終わっていたので、終了後も続けたことになります。一度ポート設置の承認が下りると、それまで「権限がない」と言っていた方々が協力してくれました。また、自社ビルポートの完成記念としてテープカット付きのニュースリリースまで出して頂きました。今も自社ビル10数ヶ所にポートがあり、ホームドアの収益と、路上生活者の仕事につながり続けています。

 

ホームとアウェイを往還する

――本業と家庭に加えた「第三の場所」は、どんな時間でしたか?

清水(うえっち):違う立ち位置、違う役割があることで、考えの視野が広がり集中力が持てました。仕事では「失敗しないように」という意識が先に立ちがちですが、二枚目の名刺では「こういうことをやったら良くなるんじゃないか」というポジティブなワードで議論できる。その経験に勇気づけられて、本業でも「やってみよう」という姿勢で話せるようになりました。

藤木(きんぐ) :私は本業しか知らず、会社の常識が世の中の常識だと思っていました。しかし、このプロジェクトを通し社外の人と交流することで、新たな価値観が持てるようになりました。法政大学の石山恒貴先生が言う「ホームとアウェイの往還」をまさに体感した印象です。越境はホームを捨てるためではなく、ホームに還元するためのもの。還元とは定量的な成果だけでなく、仕事への向き合い方や発想の転換も含まれると思います。

 

――その後のキャリアにも影響が?

清水(うえっち):私はフットワークが格段に良くなりました。社内外問わず自分が関心を持ち、自らのスキルや経験が活かせそうな活動に、積極的に参加するようになりました。そして、活動を行うことで新たに得るものが増え、自分の人生が豊かになった気がします。

藤木(きんぐ) :だいぶ変わりましたね。ホームドアには今も関わり続け、二枚目の名刺ではプロジェクト伴走者だけでなく運営事務局も担い、その経験の中で対人支援に興味を持ち、キャリアコンサルタント資格を取得しました。また、自社内の障害者雇用の職場へ自ら希望して出向することが叶い、その後も転機を自ら掴み、新たな挑戦を続けています。心理学者であったクランボルツ氏が提唱する「計画的偶発性理論」がまさに当てはまりました。一つひとつに向き合うことで機会が増えていく。その起点が越境でした。

 

一歩を踏み出そうとする人へ

――最後に、越境を迷っている方へメッセージを。

清水(うえっち):越境活動が心のアンテナに引っかかったなら、それは心が求めているタイミングです。ぜひ一歩踏み出してほしい。きっと、たくさん得るものがあると思います。二枚目の名刺のファシリテーターの方は、参加メンバーの方それぞれの特性を考えて、しっかりと伴走支援してくれます。そのため、安心してプロジェクトの活動に打ち込めます。そして活動と学びをセットにして「これはどういうことなんだろう」と自分ごとにすると、経験がぐっと深まりますよ。

藤木(きんぐ) :越境は、新たな視点を獲得する場です。数ヶ月で大きく変わらなくても、見える世界が変わり、できることが見えてくる。大きな目標でなくていい。まず好奇心で一歩踏み出してみてください。それは仕事だけでなく、人生そのものをプラスにするきっかけになると思います。このときのプロジェクトの参加者とは、10年以上経っても折に触れて会う機会があります。二枚目の名刺のファシリテーターのサポートを受け、プロジェクトが成功したことで得られた成功体験があるから、その絆が続いているのだと思います。

 

 

編集後記:

10年前のプロジェクトを振り返る今回の対談で印象的だったのは、「参加して終わり」ではなく、その後の人生にまで影響が続いていることでした。

キャリアの選択、人とのつながり、社会課題へのまなざし――。二枚目の名刺での越境体験は、お二人にとって単なるボランティアではなく、その後の仕事や生き方を少しずつ変えていくきっかけになっていたのだと感じます。

「見える世界が変わる」という言葉は、決して大げさではありません。新しい価値観に出会い、自分のホームをより良くするために還元していく。その積み重ねが、10年後も語り合える仲間や、新たな挑戦につながっているのでしょう。

これから一歩踏み出そうとしている方にとって、このお二人の言葉が、その背中をそっと押すきっかけになれば嬉しく思います。

 

二枚目の名刺が提供する越境体験やサポートプロジェクトについて詳しく知りたい方は、こちらの紹介ページもぜひご覧ください。

このエントリーをはてなブックマークに追加