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副業を解禁するとき、企業は労働契約上の義務や健康管理の問題をどのように整理するか(下)

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※この記事は、森・濱田松本法律事務所・荒井太一弁護士からの寄稿文です。

前稿「副業を解禁するとき、企業は労働契約上の義務や健康管理の問題をどのように整理するか(上)」の続きをお届けします。

副業と安全配慮義務

副業に関する健康管理については、前稿の労働時間の議論とも共通する点がありますがが、本業が労働者の健康をどこまで管理する権利と責任があるのか検討が必要です。

この点、ガイドラインにおいても、「労働時間や健康の状態を把握するためにも、副業・兼業の内容等を労働者に申請・届出させることが望ましい。」という記載にとどめており、本業が副業での労働時間を把握する権利や義務があるといった記載はされていません

ただし、事由を問わず、使用者は労働者の健康に配慮すべき義務を負っており、①一般的な労働者の体調の管理把握はもとより、②もし労働者の体調がすぐれないと様子が認められるなど、体調の悪化について具体的な危険が認めらる場合には、労働時間や業務軽減措置などの必要な配慮が求められると考えられています(土田道夫「労働契約法」(第二版)528頁参照)。したがって、副業をおこなっているか否かにかかわらず、こうした責任を果たさなければなりません。

副業に限らず、長時間労働に対する懸念が払しょくされていないことも事実であり、労働者の健康確保はより一層の取り組みが望まれます。注力すべきはこの健康管理の問題であり、労働者自身の幸福追求やプライバシーに配慮しつつも、使用者、そしてもちろん労働者個人に対し、健康確保の観点から、十分な予防措置をおこなう方向が望ましいといえます。

副業をおこなう労働者の対応

本検討会においては、労働者の責任といった点も議論に上りました。すなわち、副業が本業の指示ではなく、労働者の主体性により行われるものである以上、副業・兼業による過労によって健康を害したり、業務に支障を来したりすることがないよう、労働者が自ら、本業及び副業・兼業の業務量や進捗状況、それらに費やす時間や健康状態を管理する必要があることが確認されました。

従来とは異なるキャリア設計の考え方においては、労働者自らがメリットと留意点をふまえて慎重に判断し、その責任についても十分考慮したうえで行う必要があるという意味で、重要なポイントといえます。

副業についてのその他の社会的課題

上記の副業における労働時間通算についての労働行政の解釈の見直しのほかにも、今後の課題として、以下の点が確認されました。

まずは、副業をおこなっている場合の労災保険給付額についてです。現在は、災害が発生した就業先の賃金分のみを算定基礎としているという課題があり、副業・兼業先の賃金を合算して補償できるよう、検討すべきとの点が指摘されています。

また、雇用保険・社会保険についても、現状、これらの保険は、各勤務先との雇用契約ごとに所定労働時間を基準に加入の可否が決定される点について、今後検討を行うべきといった議論が行われました。

副業の今後

今後、ますます、副業を希望する働き手は増えてくることが予想されます。働き手の価値観の変化と組織や社会の在り方は相互に作用することから、副業を一部または積極的に取り入れざるを得ない、といった事態になることも考えられます。

また、働き手も、自らのキャリアについて、これまで以上に積極的・主体的に取り組むことが必要になってくることが求められると言えるのではないでしょうか。

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ライター

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編集者

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カメラマン

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荒井 太一
ライター
厚生労働省労働基準局で勤務した初めての弁護士であり、労働基準法および労働契約法をはじめとする労働関係法規に豊富な知見を有する。 著書『実践 就業規則見直しマニュアル』(労務行政)等多数