「サポートプロジェクト、やってみてどうでした?」プロジェクトメンバーがNPOに事後インタビュー【前編】
2016年10月から2017年1月にかけて行われたNPO法人ArrowArrowの「NPOサポートプロジェクト」。社会人が有期のプロジェクトを実施したことで、NPOにどんな変化があったのか?
プロジェクト終了から4カ月後、このプロジェクトに参加したコーディネーターとプロジェクトメンバーがNPOにインタビュー。プロジェクト期間中のこと、終了後のことを聞いた。
子育てや介護等の理由に左右されず、仕事を当たり前に続けられる社会の創造を目指すNPO。産育休を取得する女性や企業に対し、産育休取得前から復帰前後までの一括サポートを実施するプログラム「ライト・ライト」を提供している。
■この記事に登場する人
堀江由香里さん(呼称:ほーりーさん)
NPO法人ArrowArrow代表。人材系企業、NPO法人フローレンスを経て、2010年にArrowArrowを設立。
海野千尋さん
NPO法人ArrowArrow共同代表。広告代理店、ITベンチャーに勤務後、堀江さんが提唱していた「生き方デザイン学」に感銘を受け、ArrowArrowに参画。2017年6月より「2枚目の名刺Webマガジン」の編集にも携わる二枚目の名刺ホルダー。
中島裕子さん
NPO法人ArrowArrowスタッフ。企業で勤務をしながらボランティアとしてArrowArrowに参画。2015年よりスタッフに。ArrowArrowの業務に従事しながら、他のNPO団体にプロボノとして参加している。
こず
第1期コーディネーターとしてArrowArrowサポートプロジェクトのサブコーディネーターに。社会福祉法人で経営企画に従事する傍ら、複数のNPOにボランティアとして参加している。
らま
産休育休やそれにまつわる働き方に興味を持っていたことからArrowArrowサポートプロジェクトにメンバーとして参加。人材系の企業で派遣スタッフへ
のコーディネーターとして勤務する社会人3年生。
当事者でない男性も集まってくれたことがうれしかった
NPO法人ArrowArrowのサポートプロジェクトは、二枚目の名刺×ギャップジャパン株式会社のコラボプロジェクトの一つとして行われた。
産育休を取得する女性社員と企業側が用いる、ArrowArrowオリジナルの面談シート「ライト・ライト」のブラッシュアップがプロジェクトのゴールに設定され、資金集めとしてクラウドファウンディングも実施。「ライト・ライト」本体のほか、企業向けのパンフレットや紹介動画が成果物として納品された。
こず:昨日、Facebookで「ライト・ライト」がリリースされたって投稿されていましたよね。
堀江:そうなんです! ようやく「ライト・ライト」正式版のパッケージをリリースできて。リリースの日を昨日にするのは前から決めていたことではあったんだけど、昨日に間に合わないと、今日こずさんとらまさんに会うのに報告できるものが何もないと思って頑張りました(笑)。
こず:ありがとうございます。今日は、そういったサポートプロジェクト終了後のことや、プロジェクト期間中のことを聞かせてください。
堀江:私からも聞いていいですか? 2人はCommonRoomに参加した3団体の中から、どうしてArrowArrowを選んでくれたんですか?
らま:私は堀江さんのパッションに惹かれました。
こず:私も同じです。CommonRoomでは、各団体の方が10分間プレゼンしてくれますけど、そのときのパワーがすごかったです。
堀江:そうだった!?(笑)。プレゼンの後、各団体とのブースセッションがあって、参加者の方が気になる団体のところに行きましたよね。ドキドキしました! もし誰も来てくれなかったら…と思うと。
海野:あれだけオープンにどこを選んでもいいってなってるのに、誰も来ないのはキツイですよね。
堀江:そうそう。プロジェクトメンバーに入ってくれた人たちは、「来てくれた」って覚えてる人たちばかりでした。特に男性は印象に残っています。うちの団体がやってることって、なかなか社会課題だと思ってもらいづらいから。
こず:でもふたを開けてみたら今回のプロジェクトメンバーは、男性1人を除く5名が独身者。当事者じゃない人ばかりでしたよね。
海野:そうそう。男性も入ってくれたのがすごくうれしかったです。
堀江:二枚目の名刺のサポートプロジェクトに参加するモチベーションって、うちの課題に興味があるかどうかよりも、リーダーシップであったり、プロジェクトを動かすということだったりするじゃないですか。そういう動機で来てくれた人が、私たちの課題に触れて「こういうことが今、社会課題なんだ」と思ってくれるのがとてもいいですよね。私たちNPOは向き合う課題がはっきりしているがゆえに、その課題に興味がない人にはなかなか届かないので。
(「普段出会えない層の人たちに関わってもらえた」と堀江さん)
プロジェクトメンバーのパッションが、NPOスタッフの心を揺さぶった
こず:キックオフ後、プロジェクトが走り出してからは何か感じられたことはありますか?
海野:メンバーの方たちの熱意と客観的視点が常にある感じでした。将来的に当事者になるであろうという感覚の方もいれば、すごく引いた視点を持っている方もいて。そのバランスが絶妙だなと。でも、プロジェクトに参加して、一番影響を受けたのは、中島ですね(笑)。
堀江:中島がはじめてリモートではなく対面でミーティングに参加した日、私と海野に10スクロールくらいしないと読めない長文メールが届いたんですよ!
中島:参画してから1年くらい経って、ArrowArrowでの自分の担当業務がうまくいかなくて悩んでいたり、どうArrowArrowと関わっていくかを考えたり、悶々としていた時期だったんです。そこでみなさんのパッションに触れて、私もArrowArrowに入った当時の気持ちを思い出せたんです。
海野:普段そういう熱いところを見せる人じゃないんですよ。自分の言葉を長文で誰かに投げかけるようなタイプではない人からのまさかの長文ラブレターで(笑)。
こず:中島さんはどういうところに感動してくださったんですか?
中島:みなさんが主体的にどんどんプロジェクトを動かしてくださって、私たちが作ってくれたものをレビューするという形で進んでいたじゃないですか。ミーティングを朝7時からやって、そこからお仕事に行かれる。本業もお忙しい中で、これだけのパッションを私たちの活動に傾けてくださっているんだということに、心を揺さぶられました。
(「参画当時の気持ちを思い出せた」と中島さん)
こず:プロジェクト中、みなさんも普段の業務を行いながらプロジェクトメンバーに伴走するにあたって、意識されていたこととか、苦労されたことはありますか?
堀江:クイックレスポンスは心がけていました。誰がいつオンタイムかわからないから、できるときにできることをする! 私たちで止めない! 常にボールを投げ返す!!!
らま:バッティングセンターみたいですね(笑)。でも2枚目の名刺として動ける時間が限られているプロジェクトメンバーにとって、クイックレスポンスはすごくありがたかったです。
成果物を受け取ったことで、次にできることが見えてきた
こず:プロジェクト終了後に、何か変化はありましたか?
堀江:プロダクトがひとつ増えました。これは大きな変化でしたね。ずっと「やらなきゃ」と思っていたのに、他の重要度の高い業務に集中してしまって、できていない状況だったから。でもみなさんが動いてくれるんだから、こちらもコミットするしかない!
海野:ドライブがかかりましたよね。
堀江:そうそう。今回のプロジェクトがなかったら、まだ「ライト・ライト」は完成してないと思います!
こず:CommonRoomのときに、ある程度形はできてたんじゃなかったでしたっけ?
海野:仮のものはありましたね。でも今回つくっていただいたものとは雲泥の差です!
中島:あれこそパッションしか詰まっていない、「パッションの押し売り」みたいなシートでしたね。
堀江&海野:「パッションの押し売り」!!!(笑)
中島:それを客観的な視点で「これだとわかりづらい」と言ってくださって。お知り合いの人事の方やこれから育休をとろうとしている同僚や友人の方など、私たちではつながれない方にもレビューしてくださって、フィードバックをいただけたのも大きかったですね。
海野:本来であれば、それくらい多様な方が使うイメージを持っていないといけなかったんですけど、長く関わってきたからこそ、私たちの視点でしかつくれていないところもあったんですよね。「そういう視点もあるんだ」「そういう言葉のほうが伝わりやすいんだ」って、私たちにもいいインプットになりました。
堀江:これからは実績をつくっていくフェーズに入ったので。それをちゃんと報告していければと。
海野:こうやってコンテンツができたことで、新規に営業がかけられるし、今までつながりがあったところにも「こういうものができたので話に行かせてください」ってアポイントを取るきっかけにもなる。
(「コンテンツができて、やれることが増えました」と海野さん)
後編へ続く
写真:原田麗奈
ライター
編集者
カメラマン