TOP > きっかけは焦燥感。3ヶ月の越境プログラムで本当にやりたいことに気づいたワーママのその後

きっかけは焦燥感。3ヶ月の越境プログラムで本当にやりたいことに気づいたワーママのその後

このエントリーをはてなブックマークに追加

「新興国ソーシャルベンチャー共創プログラム」第1弾の参加者へのインタビュー。

前回は、このプログラムへの参加を機にソーシャルビジネスへの想いを再燃させ、新たな道へと歩き出した坂本和樹さんのお話をお届けした。

「民間企業で働く僕がソーシャルビジネスで貢献できるのか」若手ビジネスマンの3ヶ月の挑戦

今回は、フルタイムで働く1歳児の母でありながら、2度のインドネシア渡航を含む当プログラムに参加した西谷あかりさんにお話しを伺う。

仕事を持つ社会人の日々は慌ただしく、働き盛りの人々はライフステージの過渡期にあることも多いため、本当にやりたいことができない理由や諦めなければならない理由を見つけ出すのは簡単だ。

しかし、「自分のキャリアはこのままでいいのだろうか?」「やりたいことをしないまま働き続けるのだろうか……」というモヤモヤを抱いているのなら、「思い切って越境したことで、キャリアに対する迷いが消えた」という西谷さんの挑戦は参考になるのではないだろうか。

(新興国ソーシャルベンチャー共創プログラム第1弾には、西谷さんの他にもワーキングマザーが参加していた)

この仕事は子どもとの時間を削ってまでやりたいことなのか?

西谷さんがこのプログラムに関心を抱いたのは、ごく自然なことだった。

西谷さん

大学では国際関係を専攻しました。途上国支援に興味があり、NGO でインターンをしたり、NPOの主催するインドのスタディツアーに参加したりしたこともあります。

高校の講演会で、字が読めないために騙され、財産の全てを失った途上国の人の話を聞いたことがきっかけで途上国支援に興味を持った西谷さんは、大学で児童労働について学んだ。ソーシャルセクターへの就職を希望していたが、チャンスに恵まれず、一般企業に就職。貿易事務の仕事に就いた。

西谷さん

途上国支援への思いを胸に仕舞ったまま仕事をしていました。27歳で出産し、育休中に自分を見つめ直した時に、『自分のやりたいことって何だっけ?』『自分のキャリアはこれでいいのかな?』という疑問が頭をもたげるようになったのです。その気持ちは復職後にますます強くなりました。

幼い子どもを預けて仕事をする。必然的に子どもと過ごす時間が減っていく。『今の仕事は子どもとの時間を削ってまでやりたいことなのか?』というモヤモヤとした思いが「働く意義」を再考させた。

西谷さん

夫に自分の気持ちを打ち明けたところ、夫の友人であるGEMSTONEの深町さんを紹介してもらい、このプログラム(新興国ソーシャルベンチャー共創プログラム)を教えてもらいました。インドネシアに足を運び、パートナー団体の方々と協働してプロジェクトを実施できることは、現地の実態を知った上で活動することを望んでいた私にとって非常に魅力的に映りました。それにバックグラウンドの異なるメンバーと共に取り組むのは、自分にとって得難い学びになるだろうと直感しました。

(大学時代の経験から、「机上で知ったことと現地の実態は違う」と感じていたため、現地への渡航は必須だと思っていたという)

プログラムへの参加を後押ししたもの

1歳のお子さんを抱える西谷さんがこのプログラムに参加できたのは、パートナーの理解や協力によるところも大きい。「普段から家事・育児を分担している」とはいえ、3泊4日のインドネシア渡航中は、全ての家事・育児をパートナーが担ってくれた。

西谷さん

お互いの人生観やキャリア観、志向、意向を日頃からよく話しているからか、夫はこのプログラムへの参加を当たり前のように後押ししてくれました。夫に家事・育児を任せることに不安はありませんでしたが、まだ小さい子どもと3日間も離れることには大きな葛藤がありました。

子どもが生まれてはじめて家を空けた。「こんなに小さい子どもを置いて参加していいのかな?」という迷いは直前まで拭えなかったが、最後には「こんなに小さい子どもを残してまで参加するのだから、しっかり成果を残そう」という決意に変わったという。

西谷さん

『自分を変えたい』という思いが大きく膨らんでいました。今やらないと前に進めない、自分がやりたいことに向けて舵を切りたい、そんな思いに突き動かされるようにしてプログラムへの参加を決めていました。

自分に何ができるかは分からないが、とにかくできることから行動しよう。それが自分を変える契機になれば……そう祈るような気持ちで、インドネシアの社会起業家育成プログラムの企画・運営改善を行う「Instellarプロジェクト」に参画することにした。

(とにかく前に進みたい、ソーシャルセクターに携わりたい、という気持ちで参加したという「Instellarプロジェクト」)

共通の想いを持つ“二枚目”な仲間たち

西谷さんはコモンルーム(プログラムの参加希望者が集い、共創団体との交流を行うイベント。このイベントで団体の想いに触れ、参加を決定することが多い)に出席していない。コモンルーム終了後にこのプログラムの存在を知ったからだ。それでも参加したのは「何としてもソーシャルセクターに携わりたい」「子どもとの時間を削ってまで働くのなら、自分が意義を感じられることがしたい」という覚悟の表れだろう。

西谷さん

初回のチームミーティングから参加しましたが、私と同じように途上国に貢献したいという気持ちを持ったメンバーばかりだったので、すぐに打ち解けられました。ミーティングでも、常に話が前へ前へと進んでいき、『このプログラムで何かしらの爪痕を残すんだ』という皆のエネルギーが満ちているのを感じました。だからと言って“熱い”わけではないのです。和やかな雰囲気がとても心地良く、毎回のミーティングが本当に楽しみで仕方がありませんでした。

誰かに強制されたり、単に生活のためにやるのではない2枚目の名刺のフィールドには、想いでつながる業種・職種・年齢等の異なる仲間に出会うことができる。今回は大学院生、企業経営者、人材会社勤務、自動車会社勤務のメンバーが『Instellarの事業推進に寄与する』という共通の目的のもとで協働した。

西谷さん

当初期待していた通り、多様なバックグラウンドを持つメンバーからの学びは大変大きなものでした。特にアウトプットに対して多角的な視点でブラッシュアップしていくことができたのは、メンバーの多様性あってのことだったと思います。それぞれに違った角度から率直な意見を出してくれました。

(現地渡航では、日中に団体とのディスカッションやフィールド調査、夜に日本人チームでのミーティングが行われた)

挑戦が生んだ「自信」と「気づき」の副産物

Instellarの事業の一つ、「メンタリングプログラム(先輩起業家による後輩起業家への指導・支援プログラム)」のブラッシュアップに取り組んだInstellarチーム。そのプログラムの中で活用するワークシートを作成することが、西谷さんの担当だった。

西谷さん

メンタリングという言葉すら知らない状態からのスタートでしたが、ガイドラインや関連書籍等を読み、分からないことは調べたり、メンバーやRomy(Instellarの創業者兼代表)に相談したりしながら、最適なアウトプットを探っていきました。結果として団体に運用いただけるワークシートを生み出すことができましたが、それと同時に“自分のやりたいことが明確になる”という副産物も得ることができました。

これまでの仕事で培ってきた知識やスキルを直接活かせなくても、“想い”があればソーシャルセクターでもやっていける。そして自分は“想い”を起点に誰かをサポートすることにやり甲斐を感じるのだ。プログラムから得た自信と気づきが、西谷さんにとって前に進むための原動力になったようだ。彼女は今年5月末に途上国支援を行う公益法人に転職することになっている。

西谷さん

このプログラムに参加して確信したのは、自分は誰かの役に立ちたいという想いが強いということです。インドネシアの社会起業家の『社会を変えるんだ』という心意気や仕事に傾ける情熱に触れて、『社会を変えるんだという想いを持った人を何かしらの形で応援したい』と思いましたし、そんな方々をサポートすることが自分自身のモチベーションになるのだということに気がつきました。

(自分の役割にとらわれず、「想いを持つ人をサポートすること」のやりがいに気付いたという西谷さん。)

制約があっても、やりたいことなら頑張れる

足が止まっていることへの焦燥感から思い切って越境したことが、本当にやりたいことへのキャリアチェンジを後押しした。しかしやはり気になるのは、幼い子どもを抱えてフルタイムで働く西谷さんが2枚目の名刺を持つことに無理はなかったのか、ということだ。

西谷さん

チームのオンラインミーティングは休日の夜、作業は子どもを寝かしつけた後の1時間半〜2時間を使って行いました。やりたいことをやっているという充実感は、不思議と疲れを感じさせないほどの活力にもなるんですよ。やりたいという思いがあれば時間は作れるし、やりたいことなら頑張れます。

忙しい中でも時間を捻出しようと思えるかどうか、ストレスを感じることなく活動を続けられるかどうか。まずは2枚目の名刺で試してみることで、自分が本当にやりたいことかどうかがわかるのかもしれない。

また皆が本業を持ち、時間的な制約を抱えている2枚目の名刺では、育児や介護、その他の制約があったとしても理解を得られやすく、チームとしての工夫も生まれるのだろう。

最後に、西谷さんに「新興国ソーシャルベンチャー共創プログラム」への参加を迷っている方へのメッセージをいただいた。

西谷さん

ソーシャルセクターに関心のある方、今のキャリアに悩んでいる方は、まずは行動してみると良いと思います。インドネシアの社会起業家の熱意や同じ想いを持った仲間たちとの協働は、自分が得意なことややりたいことを再確認させてくれるはずです。

(「やりたいという思いがあれば時間は作れるし、やりたいことなら頑張れる。」1歳のお子さんを育てながらフルタイムで働く西谷さんも、3ヶ月のプログラムを走りきった。)

【新興国ソーシャルベンチャー共創プログラム 第2弾】

坂本さんが参加した「新興国ソーシャルベンチャー共創プログラム」第2弾の募集がスタートしました!
今回もインドネシアを代表するソーシャルベンチャーの経営課題に取り組みます。

プログラム期間は6/15-9/14、応募締切は5/31。
「新しい自分に出会いたい」「本業以外のところで自分の力を試してみたい」「社会的事業に取り組んでみたい」。
そんなあなたの参加をお待ちしています!

===

プログラムに興味がある方はこちらをご覧ください。

・プログラムの模様を動画でCHECK!→こちら
・プログラム第2弾 説明会 兼 体験型セッション@三田→こちら
・プログラムの概要&申し込み→こちら

このエントリーをはてなブックマークに追加
ライター

ライター

編集者

編集者

カメラマン

カメラマン

はしもと ゆふこ
ライター
編集者
女性誌出身の編集者。 「人生100年時代」に通用する編集者になるべく、雑誌とWebメディアの両方でキャリアを重ねる。趣味は占い。現在メインで担当するWebメディアで占いコーナーを立ち上げ、そこで独自の占いを発信すべく、日々研究に励んでいる。目標は「占い師」という2枚目の名刺を持つこと。