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【イベントレポ】働き方を考えるカンファレンス2017ー「日本人は本当に働きすぎているのか?」

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労働人口の減少、ライフスタイルの多様化、テクノロジーの進化などにより、私たちの働き方も着実に変化している昨今。政府も安倍晋三首相を議長に働き方改革実現会議を開催するなど、官民挙げての検討が行われている。そんな現代において、多くの企業・人・団体による事例共有のプラットフォームとして、働きやすい社会づくりに貢献することを目指す一般社団法人at Will Workが、「働き方を考えるカンファレンス2017」を2017年2月15日に開催した。

「働き方を考えるカンファレンス2017」は、午前10時、代表理事の藤本あゆみ氏が「at Will Workとは」を語るところから始まった「KEYNOTE SESSION」を皮切りに、18時30分に世耕弘成経済産業大臣と谷本有香氏(フォーブス ジャパン副編集長兼WEB編集長)のCLOSING SESSIONで幕を閉じるまで、「MAIN STAGE」「SUB STAGE」「MINI STAGE」の3つの会場で16のプログラムが催され、さまざまな視点から今とこれからの「働き方」を語り、参加者に問いかけた。

ここでは「日本人は本当に働き過ぎているのか?」をテーマに行われた「SPECIAL SESSION」の様子を紹介しよう。パネラーは、竹中平蔵(慶應義塾大学名誉教授、東洋大学教授)、白河桃子(少子化ジャーナリスト・作家・相模女子大学客員教授・昭和女子大女性文化研究所客員研究員)、小口日出彦(株式会社パースペクティブ・メディア 代表取締役)、西村創一朗(株式会社HARES 代表取締役)の各氏。モデレーターは前週刊アエラ編集長でもあった浜田敬子(朝日新聞社 総合プロデュース室プロデューサー)が務めた。

まずは、浜田氏が投げかけた「日本人は本当に働き過ぎているのか?」というテーマについて、それぞれが意見を語った。

働き方改革は、働き方の多様性を前提に議論すべき

トップバッターとして口火を切ったのは、金融担当大臣・経済財政政策担当大臣などを務めたこともある竹中平蔵氏だ。

竹中:「日本の人口は1億2,700万人。働いていない人もいますが、心身を害するほど働いている、働かされている人がいるのも事実だと思います。重要なのは働き方は一律ではないということです。つまり働きたいか働きたくないかという問題と、職種によって時間で測れるものと測ってはいけないものがある。働き方改革に共通するのは、終身雇用、年功序列こそが正しい働き方であるという概念が社会にあって、それに基づく労働、保険、税制などの制度ができ上がってしまっているという現状。そうではなく多様性を前提としてこのテーマを見つめ、議論をしていかなければいけないと感じています」

日本の女性は、世界的に見ても働きすぎ

まさに真っ只中にある政府の働き方改革実現会議にも有識者委員として名を連ねる白河桃子氏は、自身の経験も踏まえ、弱者、女性の視点から語る。

白河:「私は弱者、働き方を選べない方、働かされている方、女性、それから介護や育児などで働き方に制約がある方たちの働き方について提言しています。まずお金に関していいますと、日本人はお給料が高くなくても長時間働いている。時給換算すると海外のプロフェッショナルに比べて安いと思います。それから女性は働きすぎですね。家事、育児、介護などの無償労働があり、正社員またはパートで有償労働をしている方もたくさんいます。その二つを合わせると日本の女性は、世界の中でもかなりの長時間労働です。睡眠時間もトップクラスで少ない。よく女性が活躍できない、管理職になれないと語られますが、その理由の一つとして労働時間の問題があります。働き方改革実現会議の政府案は残業の上限が月平均60時間となっています。自律的に自由な裁量で働いて、どんどん成果、価値を上げていく人と、生活の糧として何時間かびしっと働いて食べていくことができればいいという人たちがいます。守られるべき人たちが不当に働かされないための上限はあってしかるべきです」

働きすぎかどうかは自分で判断し、選ぶもの

このカンファレンスを主催したat Will Workの顧問でもある小口日出彦氏は、「at Will Workとは、“自分の意思で働く”という意味」であることを紹介し、その観点からテーマについて語り始めた。

小口:働きすぎかどうかは自分で判断せよということですね。働き方についてはいろいろな考え方、立場がある。それは自分で選ぶもの。今回のテーマは働くことが前提ですが、私は働かないという選択もあって構わないと考えています。若いころ、おこずかいをもらってパチンコに行き、勝てば豪華な晩ごはんといったただの居候(いそうろう)生活をしていたこともあります。一方で、シリコンバレーにいたころは、朝9時から朝5時まで、20時間くらい働いていたこともありましたが、働きすぎだとは思いませんでした。いろんな切り口があることをat Will Workでお伝えしていければ」

どう働きたいかの前に、どう生きたいのか

昨年末に株式会社リクルートを退社したばかりという西村創一朗氏は、在職中に「二兎を追って二兎を得られる世の中をつくる」というビジョンのもと起業した経験を絡めて話す。

西村:「日本人は働きすぎかという問いは簡単なようで難しい。じゃあ働くことで価値をどうやって生み出すかといえば、どう働きたいかの前に、どう生きたいのか、働くことで何を実現したいのかを考えて、それに従って自分自身の働き方を決めることが重要です。会社に人生を預けるのではなく、自分がどうしたいかを考えなければならないのだと思います。今それを考えられる人がどれだけいるかといえば正直少ないかもしれません。考えるには時間が必要で、自分が自由に使える可処分時間が少ないことが問題だと思います。まずは可処分時間を増やして、考える時間も増やしていくこと。その上でもっと働きたいのであれば働くという選択肢を選ぶことが今の日本には必要なことだと思います」

後編につづく(後編は明日公開予定です)

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写真:ハラダケイコ
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今井 浩一
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フリー編集者・ライター。長野県の文化・芸術に関する情報を収集、 発信するサイト「NaganoArt+」の編集長も務める。
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