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1万人の子どもにプレゼントと優しさを手渡しする。NPO法人チャリティーサンタの原点―清輔夏輝さん(前編)

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学生時代に行っていたヒッチハイクがきっかけで人の優しさにふれ、今度はその優しさをプレゼントとともに子供たちに手渡していく活動をスタートした清輔夏輝(きよすけなつき)さん。「チャリティーサンタ」というNPO法人を立ち上げると、そこを拠点に、活動の輪は仲間たちによって全国に広がっていく。そんなチャリティーサンタの成長の軌跡を、二枚目の名刺・代表の廣が聞いた。

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(右)NPO法人チャリティーサンタ代表理事・清輔夏輝さん
(左)NPO法人二枚目の名刺代表・廣優樹
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きっかけは幼い頃のサンタとの出会い

―清輔さんのサンタストーリー、初めて伺ったのはもう4年前ですが、僕自身もそのストーリーテリングに魅せられた人間の一人です。現在、多くの仲間を集め、活動を展開されていますよね。その広がりを可能にしたのが、チャリティーサンタの上手なメッセージ発信だと思っていて、今日はその発信の秘訣を探っていきたいと思っています。まずは活動を始められた経緯から教えてください。

清輔:原体験としては、6歳のときにサンタが僕の家に来たことがあって、それがすごく嬉しかったんです。母に「今日の夕方、サンタが来るよ」と言われたのですが、幼心に「サンタは夜、寝てから来るものだ」と思っていたので、聞き直したら「連絡があったから」って(笑)。「これは本当かもしれない」と、弟と一緒に新聞広告の裏に“サンタさん、うちはこちらです”と大きく書いて、家の玄関から近所の電柱まで5枚くらいの道案内を貼りましたね。待っていたら本当にサンタがやってきたんですが、なぜか軽トラックを運転していたんですよ。「トナカイじゃないの ?」 とか、いろんな疑問とともに頭が真っ白になってしまったので、記憶は曖昧なんですけど、この時のことは強烈な印象として残っています。

当時、僕の祖父と父は障害者の作業所の立ち上げを応援していました。また父は、自然環境の問題にも取り組んでいたので、家庭から出る廃油を回収し、製油したものを作業所に持っていき、クッキーなどを作ってもらう活動もしていました。そんな流れで、「クリスマスにケーキを買うなら作業所で作られたものにしよう」ということになり、そこの職員さんがサンタの格好で届けてくれた。大人になって聞くと、それが真相だったようです。

 

子どもたちはみんなサンタを待っている

―チャリティーサンタの活動を始めることになる原体験は、清輔さんの幼少期にあったのですね。

清輔:そうかもしれません。それともう一つ、学生時代にヒッチハイクをしていた時の経験も、原体験になっていると思います。ヒッチハイクってずっと一人旅だと思っていたけど、全然違う。いろんな人にお世話にならないと次に進めないんです。そんな中、とてもお世話になった方がいて、何かお返ししないと…と、モヤモヤするようになりました。たまたまその時、滋賀で車に乗せていただいた本能寺の和尚さんにその話をしたら、「出会った人から優しさをもらったら、次の人に渡していけばいい。次の人がいなければ、社会に返せばいいんだよ。それが恩というもの」という、すごくいい話をしてくれて。

ちょうどその頃、チャリティーサンタの活動を一緒に立ち上げることになる女性と出会ったんです。彼女はピースポート(※国際交流を目的として設立された日本のNGO)に参加したことがきっかけで、国際協力が身近になったのだと話してくれました。「特別な技能や知識を持たなくても、楽しみながら誰かのためにできることがある。誰もがその力を持っていることに気付いた。老若男女関係なく参加でき、誰もが気軽に楽しく参加できる活動がしたい」と語ってくれたのです。その“条件”がポイントでした。2008年9月に一緒にカレンダーを見ながらできることを考えていた時に、「クリスマスだ !」 と思いました。子供の頃のサンタの記憶がふと浮かんだのです。マラソンとチャリティーだったり、何かをチャリティーと繋げるというプロジェクトが、ちょうど増えていた時期でした。

―それで、サンタクロースとチャリティーをつなげることを考えた。

清輔:はい。日本の子どもたちは、小さい頃の僕と同じように、プレゼントを、サンタを待っているだろうと。子どもたちにプレゼントを届けることによってチャリティーを集め、彼女がやりたいと考えている発展途上国の子どもにプレゼントを届けられるんじゃないかと思いました。「誰もが参加しやすい」という条件にも当てはまるだろうとも考えたわけです。

2008年に活動を始めて、2014年にNPO法人になり、2014年に僕らがプレゼントを届けた子どもたちが、のべ1万人を超えました。

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サンタを通して、誰もが社会課題を自分事に感じる

―チャリティーサンタの活動は、現場で参加してもらう人も多いですし、運営にもたくさんの人が関わってますよね。ここまで人を巻き込こんで広がってきている理由は何だと思いますか。

清輔:チャリティーサンタは“自分事感”がすごくあると思うんです。「社会課題」というと、“自分事感”がないからなかなか興味を持てないですよね。だけど、ほとんどの人には幼い頃にサンタの思い出があって、場合によっては悲しいものかもしれないけれど、そこがこの活動のキモになっているように思います。

支部の運営スタッフに関して言えば、多くの人が最初に “サンタ体験”をするなど、まずは自分自身で体験することを大切にしています。実際に活動してみると、子どものためにやっているようで、実は大人にすごくいい変化があるんですよ。それを早めに経験してもらうようにしています。この活動には絶対的な正解がないので、メンバーがみんなで答えを考え、作っていかないといけない。そして状況によって変えていかなければいけない。18歳から50代の方までがスタッフとして参加してくれていますが、ニックネームで呼び合うようにすることで、フラットな関係ができているんです。スタッフにとっては家庭や学校、職場ではない“第三の場所”になっているという声はとても多いんです。

物語を得ることで、参加者が充実感を感じる

―チャリティーサンタの活動ですごいなと思うことの一つが、日本各地に支部をもって全国展開しているということなんです。日本のNPOでこんなに地域展開できている団体は少ないと思います。

清輔:2016年現在、全国21都道府県に28支部あります。積極的に活動を広めたり、強制して動いてもらうようなことはしていませんが、参加した方々自身が圧倒的に濃い経験をすることで、徐々に広まっていきました。僕はこの活動は、“参加者が主人公になる活動”だと思っているんです。サンタに変身して、いつもの自分じゃない自分になって、ピンポ〜ンガチャっと知らないお家に入るわけですから、真剣に向き合わなくちゃいけない。それが1人ひとりのオリジナルストーリーになる。「僕が行ったお家はこんな感じだった」「私がサンタのサポートをしていたら街中でこんなことがあって」と、それぞれが話せるストーリーができるんです。そういう経験談を参加者の皆さんが周りの人に話すことで、自然な活動紹介をしてくれた結果が、今の形になっています。

―コンセプトを支部に展開するときに、取り組んでいることはありますか?

清輔:実は僕らの活動に参加していただく方には必ず見ていただくスライドと台本があるんです。それを見ると僕らの活動がどう展開してきたのかが分かるし、日本や途上国の現状も分かる。100枚くらいのスライドで、全部を見ると1時間以上かかるため、会場の都合などで難しい時のために、削ってもいいものと必ず見てもらいたいものを決めています。それを支部ごとにアレンジしながらプレゼンしていただくんです。その内容も毎年必ずバージョンアップさせています。

「ドリームプラン・プレゼンテーション」というプレゼン大会をご存知ですか?僕らは2011年にこの大会に参加するためにチャリティーサンタのプレゼン映像を作りました。数字を出してはいけない、説明・説得をしてはいけない、という制作上のルールがあるため、事業内容を「ストーリー」で伝えなければならないのですが、その時に作った映像の評判がとても良かったのです。事業について何も知らない企業や個人の方に向けて、説明や説得をするのではなく、映像を用いて感動や共感を呼び起こすことで、事業を“体験”してもらい、その結果、関心を抱いてもらえる。僕たちの事業には“カジュアルさ”という武器があるので、特にこの手法が生きると思うんです。「サンタ」という誰もが知っているカジュアルな扉があるから、僕らのストーリーがス〜ッと頭に入ってくる。そういう扉があるのは強みだと思います。

後編に続くー
後編では、サンタを待つすべての子どもたちにプレゼントを届けるための発信の工夫と、これからの取り組みについてご紹介します。
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\2016年度 サンタ活動応募受付開始!/

サンタ活動の応募が一部の支部で開始されました!

(11/1までに全国の支部で募集開始予定)

▼ご自宅にサンタを呼ぶ

▼ボランティアとしてサンタになる

 

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ライター

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今井 浩一
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フリー編集者・ライター。長野県の文化・芸術に関する情報を収集、 発信するサイト「NaganoArt+」の編集長も務める。