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日本一クリスマスとサンタクロースに詳しい NPO団体を目指して―清輔夏輝さん(後編)—

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前回に引き続き、二枚目の名刺代表・廣による、チャリティサンタ代表理事の清輔夏輝さんへのインタビューをお届けします。

幼い頃のサンタクロースの記憶が、NPO法人チャリティーサンタの原点―清輔夏輝さん(前編)—

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2008年にスタートを切り、着実に活動を広げてきたNPO法人チャリティーサンタ代表理事の清輔夏輝さん。プレゼントを届ける子供や家庭、スタッフなど、関わる人々が増えていく中で、自身のなかにチクチクとうずくトゲがあることに気が付いていたのかもしれない。大先輩の声に耳を傾けた清輔さんに、チャリーティーサンタプロジェクトを見直す時期がやってくるー。

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本格的な現状分析から新たな基金をスタート

―チャリティーサンタの発展は、地道にやってきた成果ですね。その中で、転機になるような出来事はありましたか?

清輔:確かに順調に見えるでしょうし、今のままでもチャリティーサンタに賛同してくれる参加者やプレゼントを届ける家庭の数を増やしていくことはできると思います。けれど、この業界の大先輩であるIIHOE(※人と組織と地球のための国際研究所)代表の川北秀人さんから「NPOが規模を大きくすることだけを追うのはおかしい。君たちは1万人の子供たちの状況を正しく把握しているの ? 」と指摘されたのを機に、過去にプレゼントを届けた家庭にアンケートを実施したんです。「家族構成は ?」「世帯収入は ? 」「お子さんが置かれている状況は ?」など、突っ込んだことを聞きました。そこで分かったのは、僕らがこれまでにプレゼントを届けてきた子供たちは、比較的世帯収入が高めの層だったということです。

2015年にそのことが分かり、「ルドルフ基金」という経済的に厳しい家庭向けの取り組みを実施しています。「一口1000円〜の寄付をしてくだされば、サンタが来ない子供にプレゼントを届けます」という主旨の基金なのですが、ありがたいことに去年プレゼントを届けた家庭のうちの約500家庭が、通常サンタを呼ぶための1家庭2000円の寄付に加えて、追加の寄付をしてくださいました。20パーセントくらいの家庭が協力してくれるといいなと思っていたのが、ふたを開けてみたら倍だった。スタートを宣言しただけで、実績もないのに…。これには驚きましたね。

 

心を届けたい層に情報を直接的に届けたい

―新たな取り組みをどのように発信されたのかが気になります。

清輔:「ターゲットとする層にいかに情報を届けるか」という部分に苦労しましたね。実際のところ、世帯収入の低い家庭や一人親家庭は、インターネットに触れている時間がとても短かったんです。しかし、チャリティーサンタの申し込みは、原則としてインターネットからお願いしている。もちろん広報の中心もそうなってきます。これまでと同じやり方では、届けたい人に情報を届けることができないと改めて思い始めました。

そこで、去年はSNSサービスのmixiと一緒に展開をしました。mixiがほかのSNSと違う点は、匿名性です。ですから、「ひとり親」などのコミュニティにも、他のSNSに比べると気軽に入れるようです。気後れしそうな情報も得られるし、コミュニティ自体が非公開になっていたり、権限が細かいなどの配慮がなされている。mixiのシングルマザーやひとり親のコミュニティには、何万人もの人が登録していました。そういうコミュニティや純粋に子育て世代の親御さんを数十万人抽出して、mixiとチャリティーサンタのタイアップ企画という形で、「サンタが家に行く/サンタから手紙が届く」というプレゼントキャンペーンのダイレクトメールを配信しました。すると、一瞬にして230件の応募があったんです。

―チャリティーサンタは、世帯収入が少なくサンタが来ない家庭に、プレゼントを届けたいというところからスタートしていたのでしょうか?

清輔:そうとは限りません。むしろ世帯収入にかかわらず、「すべての子どもたちにサンタクロースとの特別な体験を届けたい」と思って活動してきました。ただ、活動が順調に推移するなかで、調べてみたら、ものすごくギャップがあった。子育て世代の世帯収入は約600万円(中央値)です。僕らが届けてきた家庭は、それよりも約150〜200万円高い。300万未満の層は日本全国に13%いますが、僕らが届けていた中には6%しかいなかった。僕らが1000軒の家庭にプレゼントを届けても、たった60軒にしか届けられていなかったんです。

―世帯収入に関わらずサービスを届けたいと思っていたのに、調べてみたら世帯収入が低い家庭の子どもたちには届いていなかったというわけですね。

清輔:そうです。それで発信する場所を変えてみたんです。新しいところに石を投げないと、波紋は起きませんから。スピード感を持って展開するにはIT業界との連携が有効でしたが、今後は行政とも協力していければと思っています。僕らがいくら情報発信をしても、今のままでは届けられない人たちもいる。そういう家庭、子どもたちのところにも行きたいんです。

やっぱり事前事後のリサーチはすごく大事ですね。新たに知ることが多いです。今もメンバーはもちろん、外部のビジネスパーソンやコンサルタントなどの協力者と一緒にリサーチを進めています。

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サンタ活動の基本は子供の夢を守ること

―単に、たくさんの人に情報が届けばいいのではなく、サービスを提供したい相手に届くように、発信手段を変えていくということですね。このほかにも情報発信で気を付けていることはありますか。

清輔:まず僕らには、「子供の夢を壊さない」という前提があるんです。それは大きな制約ですね。ただテレビに出て伝えればオッケーではないので、夜10時以降の番組に絞ったり、昼間でも僕らがNGとしている表現を使わないという約束ができるメディアを選んでいます。情報が広く伝わったとしても、それによって泣いてしまう子どもが出てしまうようではポリシーに反するので、危ないかも…と思う取材はお断りしています。そのメディアに出ることで申し込みは数倍になるかもしれないけど、長い目で見たらマイナスになると思うんです。

 

サンタ白書でさらなるステップアップを

―これから先の新たな仕掛けについて教えてください。

清輔:大きなものとしては、今年から毎年11月に「サンタ白書」を出します。日本の子育て家庭におけるクリスマスとサンタクロースの実情について調べた日本初の白書です。すでにプレ調査をしたのですが、面白い結果が出てきています。例えば、子どもへのプレゼントを買うタイミングはいつなのか、どこで購入して、単価はいくらなのかなどです。カジュアルな質問ですが、これは毎年やっていこうと思っています。続けていくことで、日本のクリスマス事情に一番詳しい団体になれると思うのです。第1章は日本のクリスマスについての全体像。第2章は今お話したカジュアルな内容。第3章は収入別に見るとどういった違いがあるのか等。そして最後に私たちの取り組みについて、という構成になる予定です。協賛してくれた個人や企業も記載します。これは重要な広報発信ですし、マスメディア等に対しても、特にテレビ番組などでも、数字や事実を紹介して、活動を発信できるようになります。基金や活動の広がり、それから新たに寄付を集めることなどにもプラスになると思います。これからは活動エリアの拡大と、僕らの活動を通して見えた課題の明示にも力を入れてきたいですね。

どんなことも、まずは知ることから始まり、それが行動になっていくのだと思います。個人的にはその行動が「子どもへの働きかけ」だと良いなと考えています。なぜなら彼ら、彼女らは「未来」だから―。

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\2016年度 サンタ活動応募受付開始!/

サンタ活動の応募が一部の支部で開始されました!

(11/1までに全国の支部で募集開始予定)

▼ご自宅にサンタを呼ぶ

▼ボランティアとしてサンタになる

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【インタビュー後記】

チャリティーサンタのお話を清輔さんから聞くと、不思議とワクワクしてくるんです。清輔さんを起点にした素敵なストーリーは、広く活動を知ってもらうために対外的に発信され、同時に活動するメンバーにも浸透しているのです。NPOで発信というと、対外発信に気が行きがちで、内部向けの発信は後回しになることも多いですが、活動が大きくなればなるほど、内部向けの発信も大切になることに気付かされます。

また、チャリティーサンタで向き合った「本当に支援・サービスを届けたい人に届いているのか」という問いは、事業が回り始めたときにこそ、NPOは一度立ち止まって考える必要がありそうです。発信の仕方次第で活動そのものの意味づけ大きく変わってきますね。

そろそろ、サンタクロースは、本番に向けて準備が本格化するころ。今年は、どんなサンタストーリーが生まれるのでしょうか。(二枚目の名刺・廣優樹)

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ライター

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今井 浩一
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フリー編集者・ライター。長野県の文化・芸術に関する情報を収集、 発信するサイト「NaganoArt+」の編集長も務める。