画面越しでは絶対に味わえない「熱量」が、ここにある。 ――日常の枠を飛び出し、福島と出会い直した3か月間の物語

2025年9月から12月までの3か月間、NPO二枚目の名刺が展開するサポートプロジェクト(SPJ)※のデザイナーとして、福島12市町村ソーシャルコラボレーションプロジェクト(通称、Hello!福島)に伴走してきた“あつにい”です。
本業を持ちながら、もうひとつの活動の場を持つ「2枚目の名刺」。今回のプロジェクトは、3か月の期間中にキックオフ、中間、最終報告会と、計3回・6日間にわたって実際に福島へ足を運び、リアルに出会い、五感で体験することを軸に据えた特別なプロジェクトでした。本業や日常のルーティンの中だけでは決して得られない熱量、予想もしなかった人との出会い、そして地域に本気で向き合う面白さ――。私自身が現場で体感した3か月間のリアルな軌跡を、これから2期への参加を考えているあなたにお届けしたいと思います。
※社会人・学生がチームを組み、NPO等の団体と約3か月協働するプロジェクト
出会い:田村市で芽吹いた「nononowa」の挑戦と、集まった5人の社会人
私が担当したのは、福島県田村市に本拠を置く「nononowa(のののわ)」という団体でした。 代表を務めるのは「ままみ」さん。もともと地域おこし協力隊として福島県に関わり、任期終了後もこの地に残り、長戸路城址(城跡)にある風情ある古民家を購入して、田村市を拠点に新たな挑戦を始めようとしていた方です。
その挑戦の核となっていたのが、東北の一部山間地に自生する希少なベリー「なつはぜ」の栽培と商品化でした。見た目はブルーベリーに似ていますが、ひと口かじると野性味あふれる鮮烈な酸味が口いっぱいに広がる果実です。古くから地域の人々がおやつ代わりに親しんできたこの実を、地道に畑へ植え替えて守ってきた地元のおばあさんがいました。ままみさんは、その大切なナツハゼ農園をちょうど引き継いだばかりのタイミングでした。

そこに集まったのが、性別も年代もキャリアも全く異なる5人の社会人メンバーです。
- 20代・40代の会社員 2名
- 地域の課題解決に関心を持つ公務員 2名(40代)
- 定年退職を経て自営業として新たな挑戦を続ける 1名(70代)
20代から70代まで、普段の生活ではまず交わることのないバックグラウンドを持つ社会人5人に、団体の強力な協力者であるアーボリスト(樹木のスペシャリスト・樹守師)の「ぼんさん」、代表のままみさん、そしてデザイナーの私を加えた計8人のチームが結成されました。
始動:大熊町での初対面と、田村市の「現地・現物」がもたらした衝撃
2025年9月20日〜21日、プロジェクトの幕開けとなるキックオフ合宿が大熊町の拠点施設「CREVAおおくま」で行われました。
参加した社会人メンバーにとっては、全員が完全な「初めまして」の状態です。これから始まる3か月間に向けて、全員が少なからずの緊張や不安を抱えつつも、それを上回る大きな期待を胸に現地へ集まりました。
お互いを知り、想いに触れる初日
初日の目的は極めてシンプルかつ本質的な2点でした。
- お互いの価値観や人となりを深く知ること
- nononowaとままみさんが描くビジョンを徹底的に理解すること
事前に準備してきた自己紹介シートをもとに、じっくりと対話を重ねました。お互いの人となりやバックグラウンドを深く理解していなければ、本当の意味でのチームワークは生まれません。続いて、ままみさんからナツハゼへの想いが語られました。山守のおばあさんが守り継いできた歴史、全国的な知名度がまだないナツハゼをどうやって知ってもらい、地域を元気にする産業へ育てていくか――。熱を帯びた議論は尽きることなく、あっという間に時間が過ぎていきました。
その夜に行われた他チームとの合同懇親会では、同じ「Hello!福島」に飛び込んできた仲間同士、あっという間に打ち解け、夜遅くまで熱い語り合いが続きました。

オンラインを凌駕する「現地・現物」の解像度
2日目は午前中に震災遺構を見学し、午後は田村市へ移動。実際のナツハゼ畑と、拠点となる長戸路城址の古民家を訪れました。
澄んだ空気、土の感触、青々とした木々の葉擦れの音、古民家の柱が放つ歴史の重み。オンラインの画面越しでも情報自体は伝達できますが、現地に立ち、五感で受け止める情報の「解像度と熱量」は桁違いでした。「この場所の魅力を、絶対にたくさんの人に届けたい」――メンバー全員の心に、確固たる火が灯った瞬間でした。

伴走:本業と両立しながら駆け抜けた3か月と、形になった2つの成果
リアル合宿を終えて日常に戻ってからは、週1回・平日夜20時からの2時間、オンラインZoomミーティングを重ねる日々が始まりました。
それぞれが本業の責任や家庭の都合を抱える中で、時間を作り出し、プロジェクトを進めることは決して容易ではありません。しかし、現地で共有した体験と熱量があったからこそ、誰ひとり脱落することなく、互いをフォローし合いながら3か月間を走り抜くことができました。
↑写真の左から2番目があつにい
チームが最終的に形にした具体的な成果は、以下の2点です。
ナツハゼのブランドブック作成&Webサイト設計
今後、HPやSNS、パンフレットなどでナツハゼを発信していくにあたり、不可欠となる「物語(ストーリー)」を体系化したブランドブックを作成しました。ナツハゼの生態や味等だけでなく、田村市で育まれてきた歴史、守り手のおばあさんから受け継いだままみさんの情熱を言葉とビジュアルで整理。さらに、その世界観を直感的に伝えるWebサイトのコンテンツ構成も具現化しました。
古民家×自然を活かした「ふるさと納税ツアー」企画
古民家の裏手に広がる雄大な自然空間に着目。樹木のプロフェッショナルであるぼんさんの専門スキルを融合させ、「古民家滞在×ツリークライミング体験」を主軸とした体験型ふるさと納税返礼品ツアーを企画・提案しました。地域の資源と人の魅力を掛け合わせた、nononowaならではの独自プランです。
収穫:プロジェクトを終えて心に残る、2つの大きな財産
3か月のプロジェクトを終えた今、私の中に深く刻まれている実感が2つあります。
損得を超えた「一生モノの人のつながり」
世代も職業も異なる見ず知らずの社会人が集まり、ひとつの目的に向かって本気で知恵を絞り、汗を流す。その過程で生まれた信頼関係は、単なるビジネス上のネットワークを超えた強固な絆になりました。プロジェクトが終了した現在もメンバー同士の交流は途切れることなく続いており、今でもみんなで田村市やnononowaの活動を応援し続けています。
さらに、参加した社会人メンバーの1人は、この経験をきっかけにNPO二枚目の名刺の運営スタッフとして本格的に参画することになりました。日常の枠組みの中に留まっていては絶対に巡り会えなかった仲間と出会い、自分自身の生き方や価値観に新たな風を吹き込む――これこそが、このプロジェクトがもたらす最大の価値です。
自分事としての「福島との出会い直し」
私個人にとって、このプロジェクトは福島との関係を結び直す大切な契機となりました。
2011年の東日本大震災当時、私は0歳の乳児を抱える父親でした。当時住んでいた千葉県内の地域が放射線量の高いホットスポットに指定され、我が子を守りたい一心で住居を移転しました。あの頃は自分の家庭や日々の生活を守ることで精一杯で、被災地となった福島の現実やそこに暮らす方々の痛みに深く想いを馳せる余裕がありませんでした。
それから年月が経ち、今回「Hello!福島」を通じて現地へ赴き、前を向いて力強く挑戦を続ける方々の姿に直接触れたことで、がいまなお復興の歩みの途中にある地域が存在し、同時に豊かな可能性に満ちていることを肌で知りました。「自分にできることがあるなら、少しでも力になりたい、行動を起こしたい」。かつて抱えていた心の引っ掛かりが、前向きなエネルギーへと変わっていくのを感じました。
これから一歩を踏み出すあなたへ
「今の仕事や生活に大きな不満はないけれど、どこか新しい刺激や手応えがほしい」 「自分の持っている力や想いを、地域の現場で試してみたい」 「福島という場所に、ずっと心のどこかで引っ掛かりを感じていた」
もし、そんな想いが少しでもあるなら、迷わず「Hello!福島」の扉を叩いてみてください。
事前の特別な専門スキルや知識が完璧に揃っている必要はありません。必要なのは、「関わってみたい」という素直な好奇心と情熱だけです。画面の向こう側の景色を眺めるだけでは決して味わえない、手触り感のある本物の熱量と、生涯を通じて語り合える仲間が、福島であなたを待っています。
日常の延長線上にはない新しい自分と出会う旅へ、ぜひ一歩を踏み出してみませんか。
★【2026.9.20締切】第2期募集!福島ソーシャルコラボレーションプロジェクト
↓↓↓詳細とお申込みはこちら
https://fukushimascp2.peatix.com/
ライター
編集者
カメラマン

