「好きなことや自分の価値観を仕事にしたら、起業して複業する働き方になった」平沢朋子さん【後編】
「子どもに豊かな食体験をさせたい」「忙しいママたちを助けたい」。そんな思いから、出産前から続けていたライターを続けながら、離乳食ブランド「bebemeshi」を立ち上げた平沢朋子さん。忙しい育児と併行して、ブランドの運営だけではなく、ライター業を続けているのはなぜだろうか。2枚の名刺を持つことを選んだ理由を伺った。
>前編はこちら「簡単で安全な食事を赤ちゃんに」離乳食ブランドを立ち上げたフリーライター 平沢朋子さん【前編】
責任を持って想いを伝えるために、会社を設立
2016年1月に「bebemeshi」ブランドと最初の商品である「おうちごはん」シリーズを、同年9月には常温での保存が可能な「おそとごはん」をデビューさせる。それから間もなく、11月には展示会にも出展している。
「『オーガニックライフスタイルEXPO』という総合展示会です。きっかけは、オーガニックコスメなどを扱っている会社から、プレスとしてご招待いただいたことでした。展示会の概要を知って、“bebemeshiも出展したい!”と思って。離乳食ブランドで出展していたのが、うちだけだったこともあって、かなり大きな反応がありました」
展示会をきっかけに、bebemeshiを取り扱ってくれる実店舗が急増。2017年1月、ついに「bebemeshi」の製造・販売を行う会社として「株式会社ベベジャポン」を設立し、平沢さんは代表取締役となる。
「最初は夫の会社の一部門という形でしたが、取扱店も増えてきたこともあり、きちんと責任を持って想いを伝えていこうと会社の設立を決意しました。『おそとごはん』のほうは秋田にある工場で製造をお願いしていますが、『おうちごはん』の製造は夫の会社。そして、商品の販売自体は、『ベベジャポン』が担当するという形です」
bebemeshiのギフト用BOXは、ロゴなどと同じくShogo Sekineさんがイラストを担当している。
「ロゴは赤ちゃんが離乳食のときにつけるスタイのイメージ。よく見ると大きくお口を開けているところにも見えるんです」
子どもを持ってから、今までの価値観に加えて興味のあることが増えた
bebemeshiディレクター、「ベベジャポン」取締役としてかなり多忙なはずなのに、ライターの仕事も継続している理由は何なのだろうか。
「ライターとしての経験や人脈は、bebemeshiの仕事にも強くつながっています。先ほど話した『オーガニックライフスタイルEXPO』に出展したのも、ライターとしてのつながりがきっかけですし、リリースを作ったり、発表会を行ったりすることが、媒体に取り上げてもらうために必要だとわかるのも、自分が媒体側の人間でもあるから。これまでライターとして一緒にお仕事してきたモデルさんがSNSでbebemeshiを紹介してくれたことでも、大きな反響をいただきました」
もちろんbebemeshiにメリットがあることだけが、ライターを続ける理由ではない。ライターという仕事に魅力を感じる気持ちも変わらずあるからだ。
「出産をきっかけに、働き方を変えて、新しいことを始めたいと考える人は私のまわりでも少なくありません。今まで続けてきた仕事が好きな気持ちや価値観は変わらない。でも、さらにやりたいこと、興味のあることが増えたという感覚でしょうか。私にとっては、それが子どものことであり、食に関することだったんですよね」
いくらやりたいこととは言え、想像するだけでも多忙な日々、どうやって時間調整を行っているのだろうか。
「美容ライターって、頻繁にコスメの発表会のお誘いをいただくんですよ。でも、去年展示会に出た後に、商談が続いていた時期は、参加する発表会の数をかなり削って調整しました。あとは、小さいお子さんがいる方はみなさんやっていると思いますが、子どもが寝たあとに原稿を書くこともあります。妊娠前は雑誌など紙媒体の仕事がほとんどでしたが、今はWEBの仕事が増えて、出版社や企業に出向かなくてよくなったのも、時間調整がしやすい理由かも」
2枚の名刺を持ちながらも、母として、娘さんと過ごす時間もきちんと確保できているという。
「18時頃に夫と娘が帰宅してから寝るまでは、家族のための時間と決めています。妊娠前には考えられないスケジュールですが、今はライターとしてご一緒している編集の方もほとんどがママなんです。同じような時間帯で動いているので、18時前に仕事を切り上げるのも、そこまで難しくありません」
「やりたいこと」「新しいこと」をやっていて、楽しくないはずがない!
さらに驚くことに、育児、ライター、bebemeshiのデュレクターを同時に進行させながら、食育インストラクターの資格も取得。ママ向けのセミナーなども行っている。
「“3歳までの食経験で味覚が決まる”など、離乳食の大切さをママたちに伝えていくことが、bebemeshiを手に取ってもらうことにもつながると思ったので。それに、セミナーを通じてママたちの生の声を聞けるのもとても勉強になるし、楽しいんです」
平沢さんの話を聞いていると、すべてにおいて「楽しい」という気持ちが原動力になっているのを感じる。
「bebemeshiでコラボしている『大地宅配』さんに、全国の生産者さんの畑に連れて行っていただくんですよ。私はライターとして畑を訪問したレポート記事も書くし、bebemeshiのディレクターとして生産者さんにごあいさつをして、野菜について知ることができる。そういった“一度の機会に2つの仕事をする”ことも増えています。20年近く同じ業界にいたので、今は新しい経験がとにかく楽しくて。しかも、子どものことと食のことという自分がやりたいことなので、楽しくないわけがない。この1年、大変なこともありましたが、とても充実していました」
(「おそとごはん」を届けた熊本地震の被災者からのお礼メッセージも宝物の一つ。「『おそとごはん』は防災用としてストックしておくこともできます」と平沢さん)
「やりたいこと」の幅は、さらに広がっているそうで、楽しそうな笑顔でこれからの展望を話してくれた。
「子どもたちを生産者さんの畑に連れて行くツアーをやりたいんです。そこで採れたてのおいしい野菜を食べるのは、何よりの経験になると思うので。ベベジャポンの取締役としては、組織を整えて、きちんと戦略を立てて企業としてやっていきます。いずれは、“赤ちゃんのものといえば、ベベジャポンだよね”と言われるような企業に成長していきたいですね」
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主食、魚やお肉、野菜といった一食分の食材とともにお出汁(ソース)もついている「おうちごはんセット」と持ち運びのできる「おそとごはん」。
10年ほどのおつきあいになる平沢さん。いつもおだやかで柔らかい雰囲気の持ち主ですが、胸の内に、これだけの熱い思いや行動力を秘めていたとは驚きでした! ママたちが楽になるうえに、子どもにとってもよい食経験ができるbebemeshiはとても画期的だと思います。bebemeshiが育児の定番アイテムになる日もそう遠くないはず!
ライター
編集者
カメラマン