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【3児の母&イラストレーターがパラレルキャリアを始めた理由】“人生100年時代”を見越して踏み出した一歩

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イラストレーターとして活躍するカツヤマケイコさん。親しみやすくかわいらしいタッチとわかりやすい描写が特徴で、著書や連載も多数持つ売れっ子だ。そんなカツヤマさんが約1年前から古道具屋「Brocca」の店主という“2枚目の名刺”を持つように。

小学生と保育園児、3人の子どもの母であり、家事育児とイラストレーターの仕事だけでも多忙なことが想像できる。そんな中で別の世界に踏み出したのは、ひとつの仕事で一定のキャリアを積んだからこそ出てくる「成長がストップした」という感覚を打破するため。2枚目の名刺を持つことで、自分をアップデートしていけるのだ。また、2枚目の名刺を持ったメリットは、イラストレーターとして働くだけでは出会えなかった「人とのつながり」を得たことだとも。

さらに、カツヤマさんが、古道具屋を始めたのには“人生100年時代”を見据えた理由もあった。これまでのキャリアと、2枚目の名刺を持ってからの生活の変化、家事育児との時間配分などと合わせて聞いていく。

イラストレーターになったのも、古道具屋を開店したのも、「勢い」!

カツヤマさんのイラストレーターとしてのキャリアはすでに14、5年。専門学校卒業後、地元関西の百貨店の宣伝制作部でデザイナーとして勤務していたが、忙しすぎて家には寝に帰るだけの日々。突如「旅行に行きたい」という欲望がわいて退職することに。そして本当に旅に出たのだという。

その旅行中に、元同僚の人や家族に絵手紙を描いて送ったのが楽しくて。1カ月半くらいの旅行から帰ってきてイラストレーターになることに決めたんです

最初は関西の出版社に、その後東京在住の友達の家に泊まりながら東京の出版社や編集プロダクションにもファイルを持って営業に回った。

「本当に勢いですね。就職活動をする人が読むような会社一覧が載っている本を買って、片っ端から連絡して、100社くらいは回ったんじゃないかな。行ってみたら全然思っていたのと違って、イラストなんて使うことがないような出版社もありましたけど(笑)」

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イラストレーター仲間のゼリービーンズさんとのブログ「お買い物★交換日記」より。

そこから順調に仕事も増え、イラストレーターとして軌道にのるとともに、結婚をきっかけに上京。3人の子の母となる。そんなカツヤマさんに思いがけない転機が。

「イラストレーター仲間が子ども向けのアートクラスやワークショップを開催するアトリエ兼仕事場をオープンすることになって、壁を塗るお手伝いに行ったんです。それを見て“自分の場所があるっていいなあ”と思ったんですよね。ちょうどその頃に、自宅で私が仕事部屋に使っていたところを子ども部屋にすることにもなって、仕事場を外に出そうとも考えていたところで、好きで買い集めてきた古道具を売りながらイラストの仕事をできたらいいなと思ったんです

「古道具屋」を始めようとしたことには「人生100年時代」を見越した考えもあったという。

「イラストレーターの仕事もいただけるうちは続けていきたいですが、年齢とともに減っていくと思うんです。でも、私は死ぬまで働いていたいので。だったら体力があるうちに次のことを始めておこうと。でも、そういう理由は後付けかもしれないですね(笑)。百貨店の仕事を辞めたときも、イラストレーター始めたときもそうなんですけど、やりたいとなったらじっとしてられないんですよ。勢いです!

「自分の好きなもの」に囲まれる空間が何より楽しい!

後から考えればきっかけはいろいろあるも、「勢い」に乗って「古道具屋」オープンに動いたカツヤマさん。イラストの仕事が忙しく、一旦は見つけた物件の契約を見送ったり、内装業者が決まらず、なかなか開店日が決まらないなど多少の紆余曲折もあったが、「やる」と決めて2年ほど経った2017年4月、自宅から徒歩圏内の三鷹で古道具屋「Brocca」の開店にこぎつけた。

「店舗経営については本を1冊読んだくらいかな。古道具屋をやるには“古物商”の許可申請が必要なので、そのために書類をそろえて手続きをしましたが、ほかに開店までの手続きで困ったこともなかったです」

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お店に並ぶ古道具はカツヤマさん自身が買い集めてきたもののほか、海外在住の知人から送ってもらったものなどが。古道具以外にアクサセリー作家さんによるハンドメイドのピアスやイヤリングなどのアクセサリーも。お店に並ぶもので共通しているのは、すべてがカツヤマさんの「好きなもの」であるということ。

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「一時期迷いが生じて“売れそうなもの”を仕入れたこともあったんですけど、全部自分が好きなものじゃないとお店としてブレてしまうと思ってやめました。アクセサリーも手作り市などで出会った作家さんでステキだと思った方に声をかけて置かせてもらっています。今はお店の営業をしながらイラストの仕事もここでしてるんですが、自分の好きなものに囲まれて仕事ができるのが、めちゃくちゃ楽しいですね(笑)

店舗兼仕事場を持つことで、仕事と生活にメリハリが

それまで自宅でイラストの仕事もしていたのが、今は「Brocca」がカツヤマさんの仕事スペースも兼ねている。外で仕事をするようになって、仕事のスタイルも少しずつ変わってきた。

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(Broccaでの取材中のひとコマ。お店のカウンターにはイラスト作業用の大きなPCディスプレイが)

「家で仕事してるときは、化粧もしないし、服も毎日同じもの着てましたからね。まずそこが変わりました(笑)。家にいると、どうしてもコーヒーを飲んだついでにゴミが目に付いて掃除機をかけてみたり、片付けをしてみたり、仕事の合間に家事をやってしまう。家族からも家にいるんだからと“宅配便受け取っといて”“郵便出しといて”“銀行行ってきて”など雑用を頼まれがち。そういうのがなくなって仕事に集中できるようになりました」

お店を開ける日は朝9時過ぎにお店に出勤して、17時ごろにお店を閉めて帰宅。イラストの仕事はお店にいる間しかやらないことにしている。完全に仕事とプライベートを分離する形に

「一応家にもパソコンはあるので作業はできるんですけど、もし帰宅後にクライアントから連絡があっても、翌朝まで待っていただくようにしています。開店直後は接客で時間を取られて〆切に間に合わなくなることもありましたが、今はペースもつかめてきて、お店を開けながらもスケジュールに支障なく仕事ができるようになってきました」

イラストレーターに加えて古道具屋という新たな仕事が増えたとなると、家事や育児に影響もありそうだが、無事にクリアできているという。

「お店を開店した時点で一番下の子も3歳になって、あまり手がかからなくなってきたのもあるかもしれません。可能だったらもうひとり子どもを産んでいたかもしれませんが、それは無理なので4人目の子どもの代わりがお店です(笑)。去年の冬は、子どもたちが順番にインフルエンザにかかってしまった時期があったのですが、そのときはお店もお休みに。飲食店だと在庫の管理や予約の対応があって急なお休みは難しいと思いますが、古道具屋なのでなんとかなります」

今までなかった「地域での人のつながり」ができた

カツヤマさんが「Brocca」を始めて最もプラスになったのは「新たな出会いがたくさんあったこと」だと言う。

「お店を始めることになってからイラストレーターの集まりで近所に住むWebデザイナーさんと知り合ったんです。聞いたら彼女も昔雑貨などの店をやろうとしたけどうまくいかなかった経験があるそうで、だったら一緒にやろうとなって、お店の奥の部屋を仕事場にしてもらって、私が来られないときは代わりにお店をお願いしています。『Brocca』の中にも彼女がやっている『束の舎』の棚があって、雑貨やオリジナル作品を販売してるんです」

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ほかにもイラストレーターの仕事だけでは出会えなかった人たちとのつながりが。

「お店がある町内の方たちやお客さん、近くのお店の方たちとのつながりができました。イラストレーターの仕事でも出会いやつながりはありますけど、その多くはイラストの仕事がなくなったら切れてしまうかもしれない。でもお店を通じて出会った地域の人たちのつながりはずっと続くんじゃないかと。老後に向けて地域でのつながりが増えるのはありがたいですよね

「新しい目標」を持つための手段として新しい仕事を

古道具屋を始めたことについて「人生100年時代」を見据えて「働き続けるため」という理由を話してくれたカツヤマさん。それは単に「収入を得続ける」だけでない意味もあるのだと気づかされる。

「以前はイラストレーターとして“あの雑誌でイラストを描きたい”とか“本を出したい”とか目標や夢があったんです。でも、ありがたいことにその夢がかなっていったときに、イラストで新しい目標が思い浮かばなくて。だからイラストの仕事は屋台骨として、新たな目標となることを始めてみたのもあるかもしれません。あとは、子どもの巣立ちに備えてというのもありますね。子どもたちが独立して夫と2人きりになったときが想像できなくて!(笑)古道具屋をやっていれば、夫と2人で海外に買い付け旅行に行けるかもしれない。夫は古道具には興味ないですけど、食べることが好きなので。そうしたら老後も楽しく過ごせるかなと」

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人生を長く楽しく過ごすためには、ワクワクし続けることがとても重要になる。今の仕事とは別に、長く続けられる新たな活動を始めてみるのも、ワクワクを持続させるためのひとつの方法だろう。自分の「ワクワク」に向けたアンテナが反応したら、カツヤマさんのように、まずはあれこれ考える前に一歩を踏み出していきたい。

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古川 はる香
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フリーライター。女性誌や育児誌を中心に雑誌、書籍、WEBで執筆。