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「子供の貧困の連鎖を無くしたい」神戸みらい学習室

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二枚目の名刺は、ボランティアを希望する社会人を募り、非営利組織等を3ヶ月間支援するサポートプロジェクトを提供しています。参加者は、サポートプロジェクトを通して社会を本気で変えようとしている人々の情熱に触れて感動を受けたり、時には価値観まで変わってしまいます。

情熱が人を変え、社会を変えてゆく。このシリーズでは情熱に溢れたサポートプロジェクトを簡単に振り返ります。

今回は、2022年7月から10月にかけて支援した「神戸みらい学習室」の代表佐々木宏昌さんにお話を伺いました。

神戸みらい学習室とは

「神戸みらい学習室」は、事情があって塾に通えない中学3年生を対象に無料の学習支援を提供しています。代表の佐々木さんは、現役の神戸市役所員であり、その傍で、この「神戸みらい学習室」を運営しています。神戸市は公務員の副業を解禁した先駆け的存在です。佐々木さんは、仕事を通して生活保護を受ける方と出会い、そこで経済的な事情により高校への進学を諦める子供たちがいるという現実を目の当たりにします。そこには行政だけでは解決しきれない問題もあり、子どもたちが自らの未来を諦めてゆくのを何とかしたい一心で、佐々木さんは動き出します。2017年に同じ志を持つ同僚を集めて開設した「神戸みらい学習室」は、今年で5年目を迎え、毎年通った全員が高校進学を果たすという実績を出しています。

貧困の連鎖を救うのは思いやりの連鎖

「神戸みらい学習室」は、毎週日曜日に開講され、ボランティアで集まった大学生らが講師を務めます。幸いにも、学習室には、理念に共感した思いやりに溢れる大学生や社会人ボランティアが講師として集まっています。「お金ではない何か大切なものを受け取ってほしい」というのは、佐々木さんの口癖です。その言葉通り、毎年卒業式で講師から生徒へ贈られる言葉は、温かく優しさに溢れていて、学習室で過ごした時間が、単なる学習指導だけにとどまらず、お互いが人として成長した時間であることが伺えます。ボランティアの講師は毎週入れ替わり立ち替わりなので、運営スタッフは、学生と講師のマッチング作業を毎週行う必要があります。佐々木さんは、このマッチングに全力を注いでいます。複雑な環境で育ち繊細な年頃の学生にミスマッチが生じると、せっかく支援を求めにきたのに、二度と通わなくなってしまう。だからこそ、一人ひとりの学生の顔を思い浮かべながら、その子が抱える事情や特性など、指導の時に配慮すべきことを考え抜いてマッチングをします。ボランティアの講師には、毎回交通費をカバーするための1,000円を支払っており、40名を超える講師が50週間通えば、それだけで年間200万円の運営費が必要になります。学習室にくる学生が毎年増え続ける中で、活動を続けるには継続的な資金の確保が極めて重要でした。

二枚目の名刺との出会い、一緒に走り抜けた3ヶ月間

佐々木さんが二枚目の名刺のサポートプロジェクトを受けてみようと思ったきっかけは、設立5年目になり業務の棚卸が必要と感じていたこと、そして二枚目の名刺のデザイナー(※)の方が団体活動への理解があり信頼できると思ったからでした。佐々木さんは、初めて出会う社会人メンバーとオンラインで進めてゆくことに不安を感じていましたが、デザイナーの方がうまくまとめ上げて、画面越しの距離感をあっという間に縮めてくれました。今までも他のプロボノを受けたことがあったそうですが、佐々木さんは二枚目の名刺のサポートの特徴を「一緒に地べたを這いつくばってやってくれる」と表現していました。その表現通り、この3ヶ月間で、社会人メンバーは、いつかは取り組まなければならなかったけど手付かずだった企業向けPR資料を作成したり、活動の生命線となる寄付金募集のサイトを改修したり、アンケートを実施して新たな課題を整理したりしました。3ヶ月でこれだけのアウトプットを出すのは決して容易いことではありませんが、その分、十分な達成感を味わえます。バックグラウンドの異なる仲間と協働して結果を出すには、お互いを認め、歩み寄る努力が必要です。参加者からは3ヶ月間の経験を通して、「毎週新しい気づきを得た」「心が広くなった」「自分自身に目にみえる成長を感じた」ということを実感したそうです。

※デザイナー:サポートプロジェクトがゴールに向かうまでをデザインする役割

活動を通して実現したい夢

最後に、佐々木さんに、今後も活動を続けてどんな社会を実現したいか伺ってみたところ、「どんな家庭に生まれついても、子供の能力が最大限に発揮されるような社会にしたい」と仰っていました。その口調は、確信に満ち溢れていて、決意表明のようにも聞こえました。私はこの取材で、子供の貧困の連鎖を止めるのは、お金や制度以前に、手を差し伸べようとする人の思いやりなのだと痛感しました。「神戸みらい学習室」のような活動によって、今日もまた一人、子どもの未来が救われていると思うと、心からこの活動を応援したいと思いました。

団体概要:

  団体名称:任意団体 神戸市職員有志

  学習室の名称:神戸みらい学習室

  事務所: 兵庫県神戸市西区 

  連絡先:info@kobemirai.com

  団体設立の年月日: 2017年4月1日

  神戸みらい学習室への寄付はこちら

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ライター

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編集者

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カメラマン

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一般企業に勤めながら、NPO法人二枚目の名刺の広報担当として活動。