【LO活プロジェクト②】兼業ウェルカム!ローカルベンチャーで活躍する企業が求める兼業のスタイルは?
兼業・副業を望むのは個人。
個人側の要望が先にあって、企業がそれを受け入れるという実態そのものは少ないのではないか。
「副業解禁元年」とまで呼ばれた2018年、大企業によっては兼業・副業の門戸が開かれつつあるというムードだが、それは首都圏や企業規模の大きさゆえ許せるのでは?中小企業やローカルな場所では実際まだまだなのではないだろうか…。
…そんな声をガラリと覆す地域と企業がある。
鹿児島市に拠点を置く企業3社である。
どの企業も兼業というスタイルだからこそできうる仕事を捉え、期待を寄せている。NPO法人二枚目の名刺もサポートしているLO活プロジェクトが主催するイベント”鹿児島兼業&移住支援プロジェクト「SWITCH」”のトピックは地域での兼業。
今回は鹿児島市で兼業を推進する組織側の視点をお伝えする。
廃校をイノベーティブに!この場所だからできる働き方
南九州市にある「リバーバンク森の学校」(かわなべ森の学校)は川辺町にあった旧長谷小学校が残され、廃校活用プロジェクトとして地域に根ざす場所に生まれ変わったところである。
『GOOD NEIGHBORS JAMBOREE』(グッドネイバーズ・ジャンボリー)という2009年より毎夏おこなわれるローカルコミュニティを中心とした音楽・食・クラフト・デザイン・アートなどの体験フェスを主催する株式会社BAGNは、もともと利用者としてこの場所を使用していた。2017年に廃校運営管理やイベント企画といった事業創出を引き受け、一般社団法人リバーバンクを立ち上げて、地元の人たちと協力しながら廃校の利活用に踏み出した。
「リバーバンク森の学校」のディレクターである株式会社BAGN 永山貴博(ながやまたかひろ 以下永山さん)さんは、実はもともと東京都内で別の大手アウトドアブランドのPR担当だった。
「(GOOD NEIGHBORS JAMBOREEは)地産のフードや体験型のワークショップに注力したフェスで、お客さんの笑顔と満足がすごく伝わってくる素敵なイベントで感激したんです。以来、毎年プロモーターとして参加する中でスタッフや地元の人たちとの交流もできました。そんな中で、会場である廃校をリノベーションして活用するというプロジェクトの話を聞いたんです。これはとても夢のある話だと思って、ここで働きたいと考えるようになりました」
「森の学校の活動が持続可能になるよう、社会性と事業性が両立するビジネスモデルを試行錯誤しながら考えているところです。今回は兼業というスタイルで、私たちと一緒に楽しみながら事業創出に関わってくれるメンバーを募集しています」
さらに鹿児島ならではの企業文化もあるという。
「鹿児島には異業種をマッチングして新しいプロダクトを生み出しやすい気風だけでなく、同業でも競合するのではなく協働して市場を盛り上げていこうという雰囲気があります。仕事のフィールドにかかわらず自分の力を生かせる場所がたくさんありますね」
都内から鹿児島に移住した永山さんだからこそ、都内の企業ムードとまた違う鹿児島の企業文化やここで暮らし働く人たちとの交流に魅せられている言葉を伝えてくれた。
地域の復興を企業としても最大支援する、支え合う働き方
鹿児島の新築住宅市場においてNo.1のシェアを誇る『ヤマサハウス株式会社』。1948年の創業から地域に根ざし誠実に実績を積み重ねてきた高い信頼と、「木へのこだわり」と「伝統と美しさの調和」をコンセプトにした職人の技は、ハウスメーカーとしての質の高さはもちろん、河川工事や港湾整備など地域の発展にも大きく貢献している。
地域発展に貢献しているだけではない。
1993年に戦後最大級と言われた台風が鹿児島を直撃して甚大な被害が出たときには、新規の受注事業をすべてストップさせ、社員を総動員して復旧業務を担当。先の熊本地震でも同様の対応を取った。
地域の困難や課題にも立ち向かうことは、新しいものを組み立てるだけではない、ハウスメーカーとしての責任感の強さと実直な社風を物語るエピソードだ。
「ヤマサハウスは熱い想いを持った社員が多いんです」
それを伝えてくれたのはヤマサハウスで経営企画・事業推進を手がける佐々木政典(ささきまさのりさん 以下佐々木さん)さんだ。
鹿児島出身で東京都内の大学を卒業後、地方経済の活性化を見据えて都内経営コンサルティング会社に就職。企業再生支援を担当する中でその経験を活かせる手応えを鹿児島でつかみ、2010年ヤマサハウスにUターン就職している。
現在、ハウスメーカー業界は変革期を迎えている。ライフスタイルの変化、家を持つことに対する価値観の変化、空き家問題など求められる内容も刻々と変化している。組織として兼業を受け入れようと思ったきっかけも、業界を取り巻くこの変化があったから。
「都心で働く人のアイデアを地方で活かせることってたくさんあると思うんです。キャリアを生かした分野とマッチングできる部分を一緒に探ることができると考えています。業界は過渡期と言われていますが、皆さんの新たなアイデアと私たちのリソースが融和することで新しい価値を創出できるチャンスがあると考えています」
地域が困難な時、助けが必要な時、事業をストップしてでも復興を支援してきたその経緯を聞くと、「今我々には何が求められているのか」それを常に注視しながら動いてきた組織の思いが見える。
今、求められているもの。それが“複数の場所で働く”という働く個人の要望ならば、融和していくという姿勢を感じる熱意だった。
人を育てる場所づくり。そこから生まれる地域の発展
ー食べることを真ん中に置く。
その保育園には中の様子が見える給食室があり、こどもたちが自分で調理できる調理室もある。米・野菜は地元の契約農家から仕入れ、味噌は毎月こどもたちが自分で仕込む。自分たちが食べるものに興味をもち、友達と協力し合いながら工程をやり遂げていくこと。
食べることにしっかり向き合う。そこから生きる力を育みたい。
そんな食に思いを寄せる保育園が、鹿児島県霧島市にある「ひより保育園」と鹿児島市にある「そらのまち保育園」だ。
運営を担当しているのは鹿児島県霧島市にて「cocoleca(ココレカ)」という出産祝いに特化したギフト商材をインターネット販売する株式会社無垢である。代表であるふるかわりささん(古川理沙さん、以下ふるかわさん)は小売業を営んでいたが2016年保育事業への進出に踏み切った。
「『おとなも自分の人生を楽しみつつ、こどもも楽しく生きられる場所をつくりたい』『保育をやってみたい』といった気持ちが生まれてきました」
スタートした保育園のコンセプトは”こどもたちの「親友」でありたい”。
おとなもこどもも関係なく、学び合いやひびき合いがあるような場をつくりたいという思いが込められている。
「今のやりたいことは、まず関わるスタッフや園児、取引先のみなさんが幸せであり続けるために、それぞれが当事者意識を持って考え、行動し続ける組織を作ること。そして、日本の一次産業を守ること。地方ならではの豊かさを内外に発信すること。それと現在、小・中学校をつくる計画やホテルをオープンする計画にも着手しています。その他にもまだ公に出来ない大きいプロジェクトも進んでいます」
「人ありきで事業を組み立てることも多いです。『兼業』というスタイルでどんな関わりが出来そうかを一緒に話し合えたらと思います。向かいたい方向性に沿っていて、自分の身の丈を大きく超えない範囲であれば、今後も色々と新しいチャレンジをしたいと思っています」
ふるかわさんからは、今見えている大事な人たちの顔と、そしてこの地域をもっと盛り上げていくための大きな視点とが伝えられた。頭の中には人と地域を結ぶ場所が次々と立体的に形作られている様子だが、事業の基盤は人なのだという言葉があった。
“人ありきで事業を組み立てる”というのは、この人だからできうるという仕事が形になって見えていくこと。スタートは小さな「信頼」というものかもしれない。でもその「信頼」が仕事として見える形になっていく。条件や時間で区切ってみる働き方ではなく、想いの共感と何ができうるかを伝え合うことから始まる働き方。
この3社それぞれが兼業に対して「ぜひに!」というスタンスであるのは、どの企業もそれぞれのビジョンや大事にしたい想いが明確であること。だからこそ同じ場所で働いていなくとも、時間がフルタイムでなくとも、その想いや興味に共感・刺激を受けたとしたら、まず一緒に考えてみましょうという考えがある。兼業を受け入れる組織には、そんな強い想いと人を受容できる力とが備わっているように感じる。
Kagoshima 兼業 Drinks〜隙間時間からはじめるローカルベンチャーへの参画〜
株式会社BAGNの永山さん、ヤマサハウス株式会社の佐々木さん、株式会社無垢のふるかわさん、ローカルベンチャー3社を招いたイベントを開催します。
地方で自分の力を試してみたいという方に向けて、兼業ウェルカムな3社が考えているプロジェクトについて詳しく説明します。鹿児島の食をデザイン・マーケティングの視点から支援する会社である株式会社STUDIO Kの中島秋津子さんからは鹿児島の食が提供されます。
「地方創生や兼業に興味がある」という鹿児島には縁のない人でも、「いつかは地元に帰ろうと思っていた」という鹿児島出身の人でも、鹿児島のローカルベンチャーの話、聞いてみてください!
12月4日(水)19:00-21:30 @theC(東京・神田)
ライター
編集者
カメラマン