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頼るのが苦手な教育現場で外のチカラを受け入れたら起こったこと(未来手紙プロジェクト・前編)

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NPO二枚目の名刺のサポートプロジェクト(パートナー団体:NPO法人JAE)から生まれたキャリア教育プログラム「未来手紙プロジェクト」。現役教師とキャリアコンサルタントがそれぞれ、本業以外の2枚目の名刺として取り組むことで生まれたプログラムです。

今回は、プログラムづくりや現場での実践に参画したメンバー(現場の教師とキャリアコンサルタント)にインタビューでお話をお聞きしました。

前編では、メンバーとしてサポートプロジェクトに参加した、現役教師である鼻崎氏(ニックネーム:なりす)にプログラムの内容や実施に至るまでの経緯、想いについて取材させていただきました。

鼻﨑吉則氏(なりす)(サポートプロジェクトメンバー)
愛媛県の公立小学校教諭。未知のものに触れる、学ぶことが大好きで、その楽しさを子どもたちにも伝えるべく日々実践中。”なりす”はスペイン語で”鼻”。青年海外協力隊で中米に赴任して以来のニックネーム。キャリアコンサルタント資格も保有。
聞き手:塚田亜弓(つかちゃん)
国家資格キャリアコンサルタント。未来手紙プロジェクトの第二回授業にも参加)
未来手紙プロジェクトとは
子どもたちの自己理解を促すことを目的にしたキャリアコンサルタントとの協働によるキャリア教育プログラム。
教室と全国のキャリアコンサルタントがオンラインで繋がり、一緒に授業を行う。プログラムの対象は、小学校5年生~中学校3年生まで。今回は、サポートプロジェクトメンバーのなりすが担任を務める愛媛県松山市の小学校6年生を対象に授業を行った。
※未来手紙プロジェクトのプログラムづくりに取り組んだNPO法人JAE×二枚目の名刺サポートプロジェクトは、こちら

「未来手紙プロジェクト」で本音を語り始める子どもたち

つかちゃん:最初に、この「未来手紙プロジェクト」が生まれた経緯を教えてください。

なりす:今回のサポートプロジェクトに一緒に取り組んだNPO法人JAE“ドリカムスクール※”というコア事業があります。その魅力をさらに幅広く知ってもらうキッカケとなるように、ドリカムスクールの簡易バージョンのプログラムとしてつくったのが「未来手紙プロジェクト」です。

※ドリカムスクール……子どもたちが「期間限定の社員」になって、企業から出されたミッションに取り組むプログラム。子どもたちに「働く人」の生の姿に接してもらうことで、自分や社会、仕事・働くことについて考え、自分たちの夢を実現する力をつける機会を提供する。(NPO法人JAE ホームページ より)

今、学校現場では、コロナ禍で職場体験など従来のキャリア教育プログラムが実施できなくなっています。そんな状況にも対応できるように、新たなやり方を模索しました。

 

つかちゃん:今回、実際に教室で「未来手紙プロジェクト」を実施してみて、教師というお立場からどんなことを感じましたか?

なりす:私たち教師だけの力では引き出せなかった子どもたちの声を聞くことができました。子どもたちは、キャリコンさんと自分たちの「弱み」を「強み」や「よさ」に見直すための話をしているうちに、その奥にある本音を語り始める子がたくさんいたんです。その姿から、子どもたちも自分の思いをしゃべりたい、聞いてもらいたいんだなあと実感しました。

子どもたちは先入観がないからか、キャリコンさんとの1対1でのお話も予想以上にスムーズにできていました。こんなふうに子どものうちから、ありのままの自分の思いを語ったり、聞いてもらったりする経験の積み重ねは、自己肯定感の向上にもつながると思います。

 

つかちゃん:子どもたちは日ごろ、自分の思いを聞いてもらうような機会はあまりないのでしょうか?

なりす:普段の学校生活では、子どもたちが自分の思いに目を向け、じっくりと自分に向き合える時間はなかなかありません。未来手紙プロジェクトは新しい試みでしたが、子どもたちから「モヤモヤ」「スッキリ」という言葉がたくさん聞かれたこと、そしてキャリコンさんと話し終えたときの子どもたちの表情が、この試みの意義を物語っていたと思います。その様子を見た同僚も「こういう時間は子どもたちにとって大切だね。」と感じ入っていました。

 

頼り下手というか……目の前のことに全力投球するのが教員の特徴

つかちゃん:たしかに、私も授業に参加して、子どもたちの表情が変わる様子がとても印象的でした。
では、サポートプロジェクトから今回の未来手紙プロジェクトを学校で実施するまでの活動を通して、どんな気づきがありましたか?

なりす:決して後ろ向きな意味ではなく、学級担任が子ども一人一人の気持ちに寄り添いきることには限界があると感じました。子どもたちは、外部のキャリコンさんだからこそ話せたことがたくさんあったはずです。
子どもたちによりよい学びや経験の機会を提供するためには、いろんな立場の人の力を借りることが重要だと実感しました。

つかちゃん:それは今回のようなキャリア教育に限らず?

なりす:未来手紙プロジェクトで多様な立場の方々と協働してみて、教員は学校の中で起こることを抱え込みがちなんだと気付いたんです。たとえば、不登校などの問題は、それを学校内の出来事として見ている限り、私たち教員は学校だけでなんとかしなければと考えてしまいます。

頼り下手というか、頼るという価値観がないのか、とにかく目の前のことに対して個々が全力投球するというのが教員の特徴なのかもしれません。もっと視野を広げ、不登校や子どもの自己肯定感の低さなどを社会の課題として捉えることができれば、アプローチの仕方や学校の役割もまた違った見方ができるのではないかと思います。

 

つかちゃん:この活動をキッカケに、自身や周りに生じた変化などはありますか?

なりす:このプロジェクトに参加して、学校も社会の一部なのだと強く感じました。学校は子どもたちにとって社会との出会いの場です。何と、誰と、どのように出会うのか。その質を高めるには教員のマインドセットが大きく影響するのではないかと思います。

つかちゃん:子どもたちと社会との出会いの質を高めるカギは教員ということですね。

なりす:教師自身が学校という枠を越えて外の人と連携する、つまりは越境して、その経験や実感をもとに子どもたちに伝えたいこと、必要だと感じることから学びをデザインできるようになると、学びの在り方は大きく変わっていくはずです。だからこそ、越境にチャレンジする教員が増えるといいなと思います。

 

学校内外を問わず、共感し合える関係性を地道に築いていきたい

つかちゃん:学校教育に対して、強い思いをもっている先生はとても多いと思います。
しかし、外部の活動に関わるための間口が少なく、「学校の壁」という表現を聞くこともしばしば。一歩踏み出すためのアドバイスはありますか?

なりす:そうですね。先生たちって、この仕事を選んだ背景にはものすごく熱い思いがあると感じてます。
教職を志した理由は、教科書以外のところにあるという人は多いんじゃないでしょうか。だから、まずは自分自身の原点や素直な思いに立ち返ってみてはどうでしょう。

つかちゃん:なりすもそうやって最初の一歩を踏み出せた?

なりす:私自身、これまでは「何とかしたいけど動き出せない」状態でした。NPO二枚目の名刺のサポートプロジェクトに参加していろいろな立場の人と繋がることで、一気にいろいろなことが動きだしました。

この活動に、わくわくしながら前のめりになって取り組むことができたんです。だから今はまだ踏み出せていないという人にも、ご自身のわくわくのスイッチを探してみてほしいです。プロジェクトを終えた今、社会と学校とをつなぐ、越境することのよさや楽しさを多くの先生たちにも伝える、そんな橋渡しが私の個人的なミッションかなと思っています。

 

つかちゃん:最後に、今回のご経験も踏まえて、今後の展望を教えてください!

なりす:今後の活動の弾みになる、ひとつの成功体験だったなと感じています。

学校には「やるべきこと」「当たり前」が数多くあります。それら一つ一つに既存の価値はあるのですが、視点を変えてみることで新しい何かが生み出せる可能性は大いにあります。一気に変えていくことは難しいですが、学校内外を問わず、共感し合える関係性を地道に築きながら長いスパンで捉えて、自分にできること、小さなチャレンジを繰り返していきたいと思っています。

そして、やっぱり何より大事なのは、子どもたちの姿です。いろんな人と一緒に動いていくことで、子どもたちの笑顔や自己肯定感、自分自身への気づき、前に進んでいこうという気持ちに少しでも繋がったらいいなと思います。

 

後編につづく

キャリアコンサルタントが小学校のキャリア教育をつくってみたら(未来手紙プロジェクト・後編)

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ライター

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編集者

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カメラマン

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島田正樹
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さいたま市役所に勤めながら、NPO法人二枚目の名刺「2枚目の名刺webマガジン」の編集者として活動。その他、地域コミュニティづくりの活動や、公務員のキャリアに関する活動などにも取り組む“公務員ポートフォリオワーカー”。『仕事の楽しさは自分でつくる! 公務員の働き方デザイン』(学陽書房)著者。ブログで日々情報発信中。https://note.com/shimada10708 https://magazine.nimaime.or.jp/shimadamasaki_interview/