キャリアコンサルタントが小学校のキャリア教育をつくってみたら(未来手紙プロジェクト・後編)
NPO二枚目の名刺のサポートプロジェクト(パートナー団体:NPO法人JAE)から生まれたキャリア教育プログラム「未来手紙プロジェクト」。現役教師とキャリアコンサルタントがそれぞれ、本業以外の2枚目の名刺として取り組むことで生まれたプログラムです。
前編ではサポートプロジェクトメンバーで、自身の学校で未来手紙プロジェクトを実施することになった現役教師のなりすの想いを聴きました。
後編では、同じくサポートプロジェクトメンバーで国家資格キャリアコンサルタントのキタさんから、プログラムの内容や実施に至るまでの経緯、想いについて聴いていきます。
本業の傍ら、NPO団体の支援やキャリアコンサントとして個人のキャリア支援をしながらパラレルキャリアに挑戦中。昨年「Eキャリ部」を主催し、全国のキャリアコンサルタント仲間と子ども達の未来のために何ができるのかを模索中。
聞き手:塚田亜弓(つかちゃん)
国家資格キャリアコンサルタント。未来手紙プロジェクトの第二回授業にも参加。
子どもたちの自己理解を促すことを目的にしたキャリアコンサルタントとの協働によるキャリア教育プログラム。
教室と全国のキャリアコンサルタントがオンラインで繋がり、一緒に授業を行う。プログラムの対象は、小学校5年生~中学校3年生まで。今回は、サポートプロジェクトメンバーのなりすが担任を務める愛媛県松山市の小学校6年生を対象に授業を行った。
子どもたちの未来が明るくなるキッカケをつくりたい
キタさん:はい。よろしくお願いします。
つかちゃん:今回、未来手紙プロジェクトという新しいプログラムをつくってみて、いかがでしたか?
キタさん:私この未来手紙プロジェクトは、キャリア教育のことや学校現場のことをあまり知らない状況で、サポートプロジェクト の中で、皆がなにができるのだろうかと模索し作り上げてきたプログラムなんです。だからこそ同じ想いをもつ人がつながり、一歩やろうと踏み出せば、なにかが実現できることを知ることができました。
つかちゃん:実際に学校で実施してみて、キャリアコンサルタントという立場からどんなことを感じましたか?
キタさん:個人的には授業を受けた子どもの一人でも未来が明るいものになるキッカケがつくれたらいいなと思っていて、小さな一歩かもしれませんが、授業を受けた子どもたちの表情や感想をみると、その手応えを感じていました。
子どもたちの“自己肯定感”を高めるプログラムですが、「やればできる、役に立ったかも」と私自身の自己効力感や有用感も高まり、プログラム実施後、感動をしてしまいました。私にとっても学びの多いプログラムでした。
つかちゃん:具体的には、どのような学びがあったのですか?
キタさん:『日本の子どもは自己肯定感が低い』という調査結果は知っていましたが、小学6年生のクラスで実際に子どもたちの話を聴くと、「自分は今のままでいいのか」とか「他の人と比べてできないことが多い」と本気で悩んでいる子どもが多いことに衝撃を受けました。
一方で、親でも友人でもないナナメの関係の「キャリコンさん」に子供たちが抵抗感を持たず、むしろ親にも先生にも話したことのないことを出会って5分もたたない、画面越しのキャリコンさんに話す姿をみて、心が動かされました。
つかちゃん:そこにはやはりキャリアコンサルタントの役割も大きかったのでしょうか?
キタさん:普段授業をしている先生たちではない『強みを引き出すプロ』から認められることは、子どもを笑顔にさせたり、自信をアップさせたり、今の自分を受け入れたりできるのだと思います。子どもたちの本気の悩みに触れ、対話を通して、表情が明るくなる瞬間も見ることができました。
今回の授業を通じて、教育現場のナナメの関係の必要性と教育現場におけるキャリアコンサルタントによる支援の有効性について、大きな可能性を感じました。キャリアコンサルタントが人生の伴走者になる、という私の夢の実現に近づいた気がします。
はじめは踏み出すのが怖かったけれど思いが勝った
つかちゃん:サポートプロジェクトから今回の未来手紙プロジェクトの実施までの活動全体を通しての気づきなどはありますか?
キタさん:じつは本業とは別に社会的な活動に取り組むいわゆる越境活動は、今回で2回目です。はじめての活動は、2年ほど前。このままでは自分のキャリアの幅を広げられない、という漠然とした不安を抱えていた時期に、「人生楽しく生きるには、越境活動があるよ」と誘いを受けたのがきっかけです。はじめは踏み出すのが怖かったけれど、今を変えなければならないという思いが勝りました。ボランティア活動と言っても、人のためというよりも自分のための参加だったと思います。
前回と今回、2回の越境活動を通じて、自分のやりたいことを具体化させることができました。
【キタさんが考えるキャリア教育の姿】
「この実現にむけ、挑戦できる人と場を増やしたい」
つかちゃん:この活動の前後で変化などありましたか?
キタさん:周囲から「変わったね」と言われるようになりました。
“楽しくなければダメ” というのが私のポリシーですが、同じ想いの人と集まると、何かができるのでとても楽しい。協力してもらえる仲間が増えて、 周りからも楽しそうだね、と言われることが増えました。
また、誉められた時に、素直にありがとうと言えるようになりました。勤め先ではやりたいことの提案を求められたりと、本業にもいい効果が現れていると思います。
キャリアコンサルタントが生涯にわたり伴走する存在になれるように
つかちゃん:最後に、今回のご経験も踏まえて、今後の展望を教えてください!
キタさん:学校のキャリア教育のステージにおいて、キャリアコンサルタントが活躍することを目指したい。子どもたちのガラッと変わった表情をいろんなところで見ることができたら素敵だと思う。子どもたちの未来のために、私たちキャリアコンサルタントに何ができるか。そのためのプラットフォームを作りたいと思っており、もっと仲間も集めたいです。
この活動を通して、子供たちの教育に手を差し伸べたいオトナはいることがわかりました。だけど、なりすも話していたように(前編)、学校が抱え込みすぎる傾向があるためか、外から見るとチカラになりたいと思ってもそれを受け入れてもらうハードルが高い印象があります。今回多くの方の協力があって、少しハードルを下げることができたかもしれないので、この動きをどうにか広げていきたいです。
そして、生涯の展望で言えば、キャリアコンサルタントが子どもからシニアまで困ったときにいつでも伴走できる存在であればいいなと思います。
NPO法人JAEのキャリア教育コーディネーターからのコメント
(NPO法人JAE)
自団体の活動を客観視するのは容易なことではありませんが、今回、色んなメンバーのみなさんの視点・考えに触れさせてもらったおかげで、改めて自団体のあり方を見つめ直したり、めざすべき方向性を意識できるようになりました。メンバーのみなさんには、JAEのめざす方向を見据えつつ、既存プログラムとの相乗効果を生み出す素晴らしいプログラムを作ってくださり感謝の気持ちでいっぱいです。
色んな学校現場をまわる中で既存のプログラムではフォローしきれない部分、特に「自分の良さ」を見い出すのが難しかったり、自分に自信が持てない子どもが多いことに悶々とした思いを抱えていましたが、このプログラムはそんな子ども達を笑顔にし、前に進めるようそっと背中を押すパワーを持っていると思います。このプログラムに込められた想いとパワーを大切に、これから一人でも多くの子ども達に届けられるよう取り組んで行きたいと思います!
団体やプロジェクトに御関心いただけた方は、是非とも下記のURLからお問い合わせお願い致します。(https://jae.or.jp/)
ライター
編集者
カメラマン