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NHK特番「二枚目の名刺〜働く私の自分探し〜」の制作者・実践者・共感者、3つの視点から見えたこと

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去る2017年7月29日にNHKドキュメンタリー「二枚目の名刺〜働く私の自分探し〜」の特集番組が放送された。その後、当法人のwebサイトにさまざまな共感やお問い合わせ、Facebookページに賛同の声が上がり、改めて団体が求めているミッションの価値や存在意義を感じる大きなきっかけになっていた。
一方共感や賛同とともに上がってくる疑問もあった。

「実際そういった取組みをやってみたいけどどうしたらいいのだろう」
「受け入れたNPO側は実際のところはどうだったのか?」
「『意識が高い』人たちだからできるんでしょうか」

共感や賛同、そして疑問。沸き起こるさまざまな意見はあったが、今回は「NHK特番の制作者が語る『二枚目の名刺』」と題し、この特集番組を制作した人をゲストに、NPOサポートプロジェクトを実践した人やそのNHK特番を見て現場を感じたいと思った人たちが一堂に集まった。3者の視線を追う。

“働き方改革”で本当に必要なものは何なのか。働いている人ひとりひとりの声を愚直に撮りたい

きっかけは、2016年2月NHKエンタープライズの制作本部情報文化番組のプロデューサーである小山靖史さん(こやまやすし 以下、小山さん)と当法人理事・酒井章との出会いだった。本業の名刺交換ののち、酒井から「こちらが2枚目の名刺です」と言ってNPO法人二枚目の名刺が渡され、小山さんは目を留めた。

「去年1月にロート製薬株式会社が副業を解禁しました。世間でも“働き方改革”がニュースで取り上げられ、急速に注目を集めていた頃でした。“働き方改革”の中身を見ていると、政府や企業経営側の視点で考えられていることが中心になっているような印象を受けていて、もっと、いわゆるサラリーマンを含めた働く人たち個人に有益な“働き方改革”を進めていくには、働いている人たちの声、見ていること、感じていることを伝えるべきなのではないかと思いました」。

NHKevent-koyama

制作に至る原点の話をする小山さん

二枚目の名刺の活動を愚直に記録していくことで、決して声高ではないけれど、働き方改革で本当に必要なものは何なのか、それを追いかけられると感じました」。

6ヶ月プロジェクトに付き添い密着して撮影し切り取って行くというスタイルは、まさに愚直そのもの。現代のテレビ業界では効率やリスクの面から考えるとなかなかできないやり方でじっくりと現場を見つめてくれたのである。

今働く場所では見えない自分

1時間の番組は、当法人のNPOサポートプロジェクトを通して、変化のある社会人一人ひとりにフォーカスを当てた内容になっていた。プロジェクトに関わった人の性別、年齢、業界もさまざま。今いる組織や取組以外の場で何かを求め一歩外に出ていくその姿は、迷い、揺れ、不安や葛藤を抱えながらも前に進む人の真摯な表情を切り取っていた。

現在動いているプロジェクトはこちら

制作いただいた1時間の番組をその場にいた全員で見た後、制作側の2人、そして実際にNPOサポートプロジェクトに参加した2人、そして来場された方々とのクロストークが開始。

番組の中では、一人の女性の変化がクローズアップされていた。医療の仕事をしながら二枚目の名刺NPOサポートプロジェクトに携わった長澤佑美さん(ながさわゆみ 以下、長澤さん)だ。彼女にとってのNPOサポートプロジェクトの価値はなんだったのだろう。

考え方の違い、働き方の違い、知らないことを知ることができる。私は困惑するというよりも、楽しみ・ワクワクするという気持ちが大きかったです。10年間自分が仕事をしてきた場所で“大切にしていること”と言われてもなかなか答えを出せなかったのですが、こういった場所で『やっぱり私はこういうことが大切なんだな』ということに気づけました

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NPOサポートプロジェクトが自分にどう活きたか、詳細を話す長澤さん

「本業では適正に合わせた仕事をしているからこそ自分があえてできないこと、苦手なことにチャレンジしたいと思って、このプロジェクトに参加しました。でも実際プロジェクトを始めてみると、本業でもやっている、人と人との間に入り調整することや気持ちに寄り添うことに率先して自分で動いてしまう。それは強みであり、自分自身も好きなことなんだなと。自分の強みを痛感しました」。
番組内で朗らかに笑う笑顔と同じ顔で、この場でもそう語ってくれた。

一方50代という年代で参加したNTTデータシステム技術株式会社の管理職である村井一毅さん(むらいかずき 以下村井さん)の言葉には、会場から何人も首を縦に振る動きが見え、共感の空気が流れた。

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会社での立場とはまた違う立場の違いを感じ気づきや学びを得た村井さん

「1つの職場でずっと同じメンバーと仕事し続けると、目的を持って考えても全員同じ方向を向いているからか、なかなかアイディアが出てこなかったり、自分やメンバーそれぞれの強みが見えなくなったり。このような越境できる場所があると背景の違う人たちとの話でいろんなアイディアが出てくるだけではなく、他者の強みはもちろんですが、自分ができなくなったこと、やらなくなってしまったことなども理解しました」小山さんからも、この番組を作る上で村井さんのような管理職、50代の年代がチャレンジしてどういう変化があるのかを率直に聞きたかったと質問が上がった。

「25年入社以来ずっと同じ職場にいます。50歳を迎える中で、まだ体は動くが、今始めないとこのままズルズル行ってしまうのでは、という危機感がありました。うちの会社は60歳で役職定年・65歳がマックスで、そこまで会社に従属しているのがいいのか、はたまた国内で続けていくのか、疑問がいろいろと浮かぶ中で、50~60歳の間にさまざまなことに自らチャレンジして、その中で第2の人生は何ができるだろうか考えたいと思いました。この歩みはまだファーストステップ。この動きを続けながら期待するところにたどり着けていたらいいなと考えています」。

これら二人の話を聞いて、実際の現場で常にカメラを持ち寄り添い続けてくれた制作ディレクターの株式会社ネツゲン江藤孝治さん(えとうたかはる 以下江藤さん)からは客観的な言葉がかけられた。

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制作ディレクターとして現場の熱を違う形で一番感じていた江藤さん

「共通しているのは、自分の強み・弱みを客観視することの難しさでした。でも実はそれはプロジェクトを受け入れる団体側もそうで、個人も団体も自分たちの強み、弱みを考えざるを得なくなるんですよね。自分が何者であるのかということを知っているかどうかということ。僕はこの“2枚目の名刺“という方法論がいいなと思っていて、なかなか混じり合うことのない人たちが一時的に混じり合って1つのものを作り上げるプロセスは大事で、人生の楽しみ方を考えるきっかけになっていると思いました。ただ”働き方改革“というだけで語られるものではないだろうなと」。

制作者、実践者から二枚目の名刺が手がけるプロジェクトによってどのような変化が起こっているかを丹念に切り取る言葉が続き、参加者とも一体感を作り出し始めていた。

番組を見て感じた人たちから上がる本音、疑問、共感

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定員30名のところあっという間に枠内が埋まったこのイベント。関心の高さが伺える。

今回静岡から参加したという熱意溢れる男性から、実際にNPOサポートプロジェクトを受け入れた団体側に聞きたいという質問があった。
「今回のプロジェクトを受け入れたNPOさんは、どんな人が来るのかわからない状況で実際はどうだったのでしょうか。何か気をつけたことはあるのでしょうか」。

この日、NPOサポートプロジェクトを受け入れた団体として、NPO法人子育て学協会のメンバー、公益社団法人シャンティ国際ボランティア会から鈴木晶子さん(すずきあきこ 以下鈴木さん)が参加していた。

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参加者からあがった質問にまっすぐ答える鈴木さん

全く知らない人たちを受け入れるということは怖いことでもありました。お互いが分からないし、その前提が違う上で『違います』といってしまうことはとても簡単です。表面的に終わらせるもできました。でも、そうではなく、ありのままを見せ、そして関わる方の思いなどを一旦全て受け入れよう、そう腹を括りながらやりました」。

鈴木さんの言葉からは、受け入れる側の葛藤はありながらも、まずは人と人との関係性を作るという意味で、互いをありのまま出し合え見せ合えるような場作りを心がけていたようだ。そのようなオープンなコミュニティづくりがあったということは、実際にシャンティ国際ボランティア会に参加していた村井さんの頷きからも見てとれた。

「まずは記録しようというところから始まった番組製作ですが、まとめる上で1つのキーワードは、手垢にまみれた言葉ではあるものの広い意味では“自分探し”という言葉になると思えました。それは具体的には自分の強みや弱みを知ることに繋がった。これらは我々がこの番組から学んだことなのです。自分の強み、弱みってなんだろう。それはこの番組制作に登場した実践者だけではなく、番組を見てくれる方々や皆さんに問い掛けたいと思い、最後に『あなたの強みは何ですか?』という言葉を残しました」。

小山さんから結びのような言葉があり、これは参加者にとっても一つボールを受け取ったような印象になったようだ。

イベント終了後も、制作者、実践者、受け入れ団体者、そして影響を受けた人たちが集まり、時間や想いを共有する様子がそこここで見られた。
普段ならば関わることがない人たち同士が繋がり合うこと。自分について語ることで改めて自分自身を再発見していくこと。そして他者とコミュニケーションをとることで、自分自身の次のアクションに連鎖していくとしたら。
そんな新しい自分に出会うための機会提供ができたのであればと願っている。

 

写真)中安加織
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海野 千尋
海野 千尋
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2枚目の名刺webマガジン編集者。複数の場所でパラレルキャリアとして働く。「働く」「働き方」「生き方」に特化した取材、記事などの編集・ライターとして活動している。
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