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呉英吉さん(前大阪朝高ラグビー部監督)×野澤武史【前編】「国籍を越え、“勝ち”に向かって取り組む男のラグビー観」
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【今月の二枚目ラグビー人】
呉英吉(お・よんぎる)氏
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48歳、大阪府生まれ。NTTドコモレッドハリケーンズリクルーター。NPO法人大阪コリアンフットボールクラブ チーム育成アドバイザー。前大阪朝鮮高級学校ラグビー部監督、元日本ラグビーフットボール協会ユースコーチ、現日本ラグビーフットボール協会リソースコーチ。
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第3回は、NTTドコモレッドハリケーンズリクルーター、呉英吉さんを取り上げる。大阪朝鮮高級学校ラグビー部を全国の強豪に引き上げた呉さんのラグビー観はどのようにして醸成されたのか。また、「NPO法人大阪コリアンフットボールクラブ チーム育成アドバイザー」という2枚目の名刺を通じて、どのような夢を成し遂げようとしているのか―。年の瀬の迫る大阪で話を聞いた。
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トップリーグと韓国ラグビーの発展に尽くすための2枚の名刺
野澤:まずは、呉先生の1枚目、2枚目の名刺について教えてください。
呉:今年の5月からNTTドコモレッドハリケーンズのプロリクルーターとして活動しています。また、2枚目の名刺としてNPO法人大阪コリアンフットボールクラブ(以下、OKFC)のチーム育成アドバイザイーをしています。
野澤:1枚目の名刺はプロリクルーターということですから、大学のチームを回ったりされているのですか?
呉:そうですね。大学を回ったり、高校生の隠れた逸材を発掘したりしています。また、僕が在日韓国人ということもあって、韓国ラグビー出身選手たちをトップリーグに獲得することを目指してアプローチをしています。
野澤:NPO法人ではどのような活動をされているのですか?
呉:大阪朝鮮高級学校(以下、大阪朝高)と、愛知や東京の朝鮮高校でのコーチング、関西の中学のスクール選抜や高校でスポットコーチをしています。3年前に日本協会ユースコーチに推薦していただき、新たな経験を積むことができました。そこでの経験と自分のノウハウをミックスして、「チームに壁を越えさせる」という新たなチャレンジをしています。
野澤:韓国代表のマネジメントもしているそうですね。
呉:今まで、韓国代表に在日の選手が入ることはありませんでしたが、レベルが向上したことにより、韓国協会から私に代表参加の話がありました。それで、3名の選手が韓国代表に参加し、5月6月のアジアチャンピオンシップで初キャップを獲得しました。
野澤:そういう流れだったのですね。
呉:その後、韓国協会の方とディスカッションする機会があり、「日本のラグビーは、ユース・リソースコーチ研修や、ブロック合宿、中学スクールの育成、普及システムがあって強くなったんだ」という話をしました。そうしたら、驚かれて。韓国協会は「エディ・ジョーンズ(ラグビー指導者)が来たから強くなった」と思っていたようです。
野澤:在日の選手が韓国代表に入るというのは歴史的なことだったのですか。
呉:はい。韓国代表に選ばれると、トップリーグではアジア枠に入らなければならないので、選手にはリスクがあります。たとえばヤマハ発動機ジュビロでラグビーをしようと思ったら、デューク・クリシュナン選手とその枠を競わなければならないんですよ。
野澤:なるほど。
呉:また近い将来、各地域のトップリーグ下部組織が合体してトップチャレンジができるという話があるので、そこに「韓国版サンウルブズ」が参加する、という絵を描いています。僕の中で「変化」という言葉が響くんです。ユースコーチ研修でも、「大人の学びは痛みを伴う」ということがキーワードになりますが、自分たちが次の世代に時間を投資することが、未来のラグビー界の発展につながると僕は考えています。
野澤:ただ、これも一筋縄ではいかないでしょうね。
呉:はい。本気になるなら2023年のワールドカップを目指さないといけない。付け焼き刃の3年計画では無理です。7年かけてジュニア世代から高校、大学、社会人と強化の体制を作ることが必要です。日本ラグビーを真似するだけでなく、韓国ラグビーの特性に合わせたやり方で、いかにバランスよくチームを作っていくかが重要です。
野澤:道のりは険しいですが、伺っているとワクワクしてきますね。
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スクールウォーズに憧れ、ラグビーの道へ
野澤:先生のラグビーとの出会いを教えて頂けますか?
呉:ベタですがドラマ「スクールウォーズ」、しかも実話版(伏見工業―大阪工大高、1980年度)です。当時、僕は中学生で、ラグビーをしていなかったのですが、なぜかこの試合の事を知っていたんです。試合を見て「これや!男のスポーツや!」と体に電流が走りました。荒々しいけれども、すごく知的な駆け引きがあって。これは、高校に進学したらやるべきだと即断しました。
野澤:大阪朝高に進学することは決まっていたのですか?
呉:はい。それは決まっていました。
野澤:当時は、まだ大阪朝高が全国大会に出場できなかった時期ですよね。
呉:そうですね。朝鮮高校のラグビー大会が9月にあって、3年生は引退です。公式戦には出られませんでした。ありがたいことに、「スポーツを通じて他校ともっと交流しろ」と指導してくれた先生方がいて、啓光学園、興国、浪商、都島工,西稜などと練習試合をしていました。花園は出るものではなく見るものだという感覚でした。
野澤:なるほど。
呉:でもね、花園に出場していた熊谷工業の試合を見に行った時に、同期の堀越(正巳、立正大学監督)や加藤(尋久、青山学院大学監督)が活躍しているのを見て「ああ、いいなあ」と思ったり、通名(日本名)だったら俺らも花園でラグビーできたのかな、朝高だから出られないのかな、といろいろ考えましたよ。ちょっとした嫉妬もありました。
野澤:そうだったんですね。
呉:平尾さん(故・平尾誠二氏)に憧れていたので、大学は同志社に行きたかったのですが、夜間で大検を取得しないとダメだと分かり、現実的ではないと諦めました。その後、体育教師を目指すために朝鮮大学に行って、ラグビーを続けました。そして、運よく大阪朝高に赴任したわけです。
野澤:いくつの頃ですか?
呉:21歳です。1988年で、当時体育科は短期だったんです。
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国籍を越えた試合での勝利経験が、ラグビー観の原点
野澤:ラグビーを通して一番印象深い出来事は、どんなことでしたか?
呉:大阪のクラブチーム代表でキャプテンを任されたことですね。国体は国籍で出場できないということで、「それならクラブチームの方で競技をしないか」という話を頂いたんです。当時、国体チームとクラブチームが参加する、府県対抗で関西ナンバー1を決める大会があり、そこでたまたま大阪のチーム同士が決勝で当たったんです。国体チーム対雑草軍団のクラブ(笑)。
野澤:なんだか、面白そうですね(笑)。
呉:国体チームにはそうそうたるメンバーがいました。NTT関西、大阪ガス、大阪教員団に所属しているような、昔の関西社会人Aリーグの代表選手たちです。こちらは雑草軍団ですから、高卒と無名選手の集まり。向こうは負けるはずはないと思っていたでしょう。でも僕は「勝てるぞ!」と言っていたんです。そしたら、本当に勝っちゃったんですよ。
野澤:おお~!
呉:優勝したことで、キャプテンとして表彰され、祝勝会まで開いていただいたんです。そこには、何の隔たりもないんですよ。それで「この経験を絶対生徒に伝えなあかん!」と思いました。国籍を越えて一つの“勝ち”に向かって取り組み、それを達成した時の感動は何事にも代えられないものでしたね。
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高体連への加盟から、花園常連校になるまで
野澤:呉先生のラグビー観はここから生まれたのですね。
呉:ちょうどその頃、1992年に大阪朝高が高体連に加盟することになったのですが、大阪の他校の先生方が率先して協力してくれました。「大阪朝高の生徒らも、同じように日本で生まれて頑張ってるんだから、一緒にやったらええやんけ」と。定期券も初めて学割になったんです。
野澤:それまでは学割じゃなかったんですね。
呉:僕らは高校生の時も、社会人と同じ値段で乗っていたんですよ。よく駅員に言いましたもん「おかしいと思えへんか?」と。
野澤:(笑)
呉:「だから、今日は素通りする」とか言ってみたり(笑)。
野澤:アンビリーバボー!(笑)
呉:高校生の時の話は冗談ですが、そこからですね。チームとして礼儀や規律を生徒に意識させ始めたのは。「この仲間とラグビーがやりたいと思うなら、自分たちが朝高の選手であるという自覚を持ちなさい」と伝えたかったのです。
野澤:チームはどのように進化していったのですか?
呉:1998年に初めて大阪の決勝に進出しました。ちょうど僕が教員になって9〜10年目ですが、花園に出られるようになったのが2003年ですから、そこから7年かかりました。
野澤:すぐに全国大会に出場できるようになったのだと思ってました。
呉:10年周期でそういう機会が来るんです。2007年から8年間監督を務め、花園には7回、選抜には5回出場しました。決勝進出は選抜の1回。花園はベスト4が2回、ベスト8が2回です。
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ライター
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編集者
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カメラマン
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