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2019.05.29

地域課題を“面白がる”ことが「2枚目の名刺」につながる!?【「○○を面白がる会」主催者に訊く】前編

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「調布を面白がる会」「PTAを面白がる会」「不動産を面白がる会」など、さまざまなテーマについて、集まったメンバーで一杯飲みながら“面白がって”、課題解決アイデアを考える飲み会。それが「○○を面白がる会」(以下「面白がる会」)だ。主催するのは「別荘リゾートネット」という別荘に特化した不動産ポータルサイトを運営する唐品知浩さん。

「面白がる会」がすごいのは、テーマについて、ただ“面白がって”終わりにならないところ。「面白がる会」で出された地域の課題解決アイデアがその場に集まった人たちによって、実際に形になった例がいくつもある。

唐品さんが実行委員のひとりを務める野外映画上映イベント『ねぶくろシネマ』も、「面白がる会」から派生した「調布を面白がるバー -“映画のまち調布”を面白がる-」がきっかけになって生まれたものだ。

ほかにも地元の人が集まる場ができたり、地域で開催されるマルシェなどが、これまでも「面白がる会」がきっかけとなって行われた。つまり「面白がる会」への参加が、2枚目の名刺を持つきっかけになった人が少なからずいるということである。

イベントが立ち上がると、瞬く間に「満員御礼」になることも少なくない「面白がる会」。どこにこの会の魅力があり、なぜ「面白がる会」から企画やイベントが生み出されるのか。筆者自身が自分の住む「面白がる会」に実際に参加した感じたことを伝えたい。

初対面のメンバーが「面白がって」街を歩くうちに意気投合!

唐品さんによれば、「面白がる会」のテーマは「課題感のあるものがよい」とのこと。例えば人気のある都心エリアでは面白がりにくい。すでに街としてのブランドが確立しているイメージが強く、課題感が薄いと思われるからだ。

その点、私が参加した「京王新線を面白がる会」の課題感と言ったら、まさに「面白がる会」にふさわしい。おそらく「京王新線」が東京都内に住んでいてもその存在に触れずにいることが多いに違いない知る人ぞ知る路線だからだ。

「京王新線を面白がる会」の第1回は街歩き。地域をテーマにした「面白がる会」の初回は街歩きであることが多いようだ。土地にゆかりがある人も、そうでない人も一緒に“面白がる”目線で街を歩くことが、課題を面白がる第一歩というわけだ。

会場で趣旨説明を受け、チームごとに割り当てられた区域を歩き、おいしいものを食べ、面白いものを探して写真に撮ってくる。出発前、唐品さんから何度も「21時30分までに会場に戻ってきてくださいね?」と念押しをされたが、実際に21時30分までに会場に戻ってきたのはわずか1チームだったという(私のチームも遅れた)。それほどまでにどのチームも街歩きを楽しみ、おいしいものと会話を満喫して戻って来られなくなるのである。ほぼ全員が初対面であるにもかかわらず。

会場に戻って来た後は、各チームが撮影し、事前に登録したFacebookグループにアップした写真をつまみに再び飲む(笑)。「京王新線」沿線をはじめて歩いた参加者の方々が、私にとっては日常の風景を“面白がる”様子は、大きな刺激になった。「そうか。この街にはこんな魅力があるのか」と客観的にそのよさを感じることができたのである。

飲み会感覚でゆるく地域の課題解決を考える

地域住民として、また「面白がる会」の面白さにすっかりハマってしまい、第2回「京王新線を面白がる会」にもイベント開催を知ってすぐにエントリー。

第2回は「街のいいところ・わるいところ編」と題されたブレスト飲み会。これこそ「面白がる会」の真骨頂である。土地の値段や、世帯数など京王新線沿線の特徴がわかる資料スライドを見た後、テーブルごとに街の課題を考え、それを解決するアイデアを話し合う。

その片手にはドリンク(もちろんアルコール含む)。そしてテーブルには食事が。従来の地域課題を考えるワークショップと大きく違うのはここだ。「課題をつまみにしながら、飲み会をする。それくらいの感覚でゆるくやるのがいい」と唐品さんは言う。

「面白がる会」には、いくつかのルールが設けられている。

・人の意見を否定しない
・難しい言葉・業界用語を使わない
・偉そうにしない

ごくごく簡単なことではあるが、みんなで“面白がる”ためにはとても重要なことだ。このルールも回を重ねるごとに自然発生的に、なんとなくできたものであるという。このルールがあるためか、「面白がる会」では参加者が雑談感覚でとても活発にアイデア出しをする。

「温泉を掘ったらいいんじゃない?」「サーキットを作ったらいいんじゃない?」と、ある意味「ふざけた」アイデアを出しても誰も怒る人はいない。むしろ、最初のアイデアは全く実現不可能で、振り切ったところから出発するのがいいと唐品さん。

「マジメに街のことを考える場で“温泉掘りましょう!”なんて言えないですよね。“変わった人”って烙印を押されますから。でも、 “温泉掘ろう!”と振り切ったところから始まって、“温泉を持ってきたらいいんじゃない?”“足湯でもいいかな?”とやれそうなことに寄せてくる。そういう感じじゃないと街のことって全然おもしろくないんですよ。せっかくやるなら、街のことで面白く盛り上がって、おいしいお酒を飲んで、友達も作って帰る。そのために“ありえないことを考えるのが当たり前”という雰囲気にしているのかもしれません」

出たアイデアをスケッチブックに書き出し、グループごとに代表者が発表。この発表タイムも大喜利やスケッチブック芸のごとく「笑わせてなんぼ」。でも、そんな中で「これは実現したらいいな」「これなら自分にもできそうかも」と、ワクワク感が沸き上がるアイデアがいくつも見つかる。発表後に「この中のどれかを実現させてください」と唐品さんから指示されるわけではないが、同じようにワクワクのベクトルが合う人が集まってくると、これまであったようにアイデアが実現に向かうことになる。

「面白がる」体験は別の場面でも役に立つ?

課題解決アイデアを出しただけで、特に何が動き出したわけでもないのだが、会の終了後は心地よい達成感と何かが始まりそうなワクワク感に満たされる。一緒に課題解決を目指した同志のような感覚なのだろうか。自然と同じテーブルの人たちが名刺を交換したり、Facebookで友達申請をしたり、つながりを持ちたくなる。そのまま2次会的に飲みに行くグループもあるらしい。

現在進行形でまちづくりに参加している住民としては、地域住民とは違う視点を持ち、飲み会として面白がりに来ている人から出るアイデアに発見をもらうこともある。また“面白がる”ワクワク感が、今まで“まちづくり”をどこか遠く感じていた人たちが、実際に関わる原動力になることも。どこの町にもある「現役世代がまちづくり参加しない」「参加するのはいつも同じメンバー」「町内会が高齢化」という課題を解決するのは「面白がる会」ではないだろうか。

まちづくりに関わらなくとも「面白がる会」に参加する意味は多々ある。課題を“面白がる”感覚を体験すること、ワクワクするような解決方法を考えることは、きっと普段の仕事や人生全般においても役に立つ。また、バックグラウンドの異なる人とブレストすること、ネットワークを作ることも“越境学習”の第一歩ではないだろうか。

特定のテーマを“面白がる”目的で集まると、自然とお互いのリソースを活かしながら交流ができてしまう。そこから“2枚目”につながるきっかけも得られるとしたら、これほどお得なイベントはないと感じる。

興味が湧くのは、唐品さんがどのような経緯と想いで「面白がる会」を生み出したかということ。
後編では、自身も「2枚目の名刺」ホルダーである唐品さんに「面白がる会」の裏側を聞く。

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古川 はる香
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フリーライター。主に女性誌や育児誌、WEBで執筆。
はしもと ゆふこ
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女性誌出身の編集者。 「人生100年時代」に通用する編集者になるべく、雑誌とWebメディアの両方でキャリアを重ねる。趣味は占い。現在メインで担当するWebメディアで占いコーナーを立ち上げ、そこで独自の占いを発信すべく、日々研究に励んでいる。目標は「占い師」という2枚目の名刺を持つこと。