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【新卒パラレルワーカー座談会】僕らがパラレルワークから学んだこと

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パラレルワーカーに憧れてはいるけれど、実際のところ、彼ら・彼女らがどんな働き方をしているのかあまりイメージが湧かない……という方は多いのではないでしょうか。特に、まだキャリアの浅い若手社員やこれから新社会人になるという方は、自分がいくつもの仕事をこなせるかどうか自信がない、と悩みがちだと思います。

そこで今回は、新卒パラレルワーカーというアクティブなキャリアを歩んでいる2名の方に、座談会形式でお話をしていただきました。

登場いただいたのは、さくらインターネット研究所で情報工学分野の研究員として勤務しながら、理化学研究所で材料工学分野の客員研究員をされている熊谷将也さんと、サイボウズ株式会社でマーケターとして勤務しながら、フリーライターとしてパートナーシップや家族のあり方を取材している熱田優香さん。

おふたりに、パラレルワークを始めたきっかけやタスクの管理法、パラレルワークをしていてよかったことなど、新卒パラレルワーカーのリアルについて語っていただきました。

エンジニア兼研究者、マーケター兼フリーライターとして活躍

──まずは、おふたりが現在、パラレルワーカーとしてどんなお仕事をされているか教えてください。

熊谷 将也さん(以下、熊谷):私はいま、さくらインターネット株式会社内の研究組織である、さくらインターネット研究所の研究員として勤務しています。業務内容としては、機械学習を用いてサイバー攻撃の予知や検知をおこなうというのが中心ですね。

それと同時に、理化学研究所で客員研究員としても勤務しています。研究員としては、半導体や新しい材料を機械学習を用いて開発設計するための材料データーベースを作る仕事を担当しています。

熱田 優香さん(以下、熱田):ふたつのお仕事は、スキル的にはつながっているんですか?

熊谷:そうですね。どちらも機械学習を使うという共通点があるので、そのスキルを活かせる仕事だと思います。

熱田:なるほど! 私は、IT製品を開発・販売しているサイボウズでマーケターとして勤務しています。具体的な業務でいうと、ネットや紙媒体に広告を出稿したり、セミナーの集客をしたりと、プロモーション業務全般をおこなっています。

一方で、副業ではパートナーシップや家族のあり方を専門にフリーライターの仕事をしています。最近はそこから派生したライティングの勉強会の講師やイベント登壇のお仕事もありますね。

「未熟だから副業なんて無理」と思いたくなかった

──おふたりとも、ジャンルは違えど、新卒でパラレルワーカーとして活躍されていらっしゃるわけですね。パラレルワークを始めたきっかけを教えていただけますか?

熊谷:私はもともと大学院の博士後期過程まで材料工学の研究をしていたんですが、それと同時に、個人的な研究として、東京大学の先生と一緒に材料データーベースを作るプロジェクトをしていたんです。

2016年の大学院修了間近の時期に、「理化学研究所のAIPセンターでこのプロジェクトを続けられるよ」という話をいただきましたが、さくらインターネットへの就職はすでに決まっていたので、入社したらそのプロジェクトを辞めなくてはいけないのかな……と悩んでいました。

そんな中で、さくらインターネットが2017年1月から、社員がパラレルキャリアに挑戦できる制度を始めるという話を聞いたんです。まだ内定が決まって入社もしていない段階でしたが、恐る恐る人事の方に相談したら「やっていいよ」という前向きな言葉をもらい、いまに至ります。

熱田:恐る恐る、というのは、まだ入社もしていないのに副業をしてもいいんだろうか……という気持ちがあったからですか?

熊谷:そうですね。新卒でまだ会社の業務のこともなにもわからない状態なのに、いきなりふたつの仕事をするというのはちょっと会社に失礼なんじゃないか、という気持ちも正直ありました。熱田さんは、どのようなきっかけでパラレルワークを始められたんですか?

熱田:もともと「いろいろな人が自分らしい選択ができる社会にしたい」という想いがあって、そのために自分ができることを因数分解したら「職場と家庭を変える」という結論に落ち着いたんです。

本業のサイボウズは企業向けのIT製品を出しているので「職場を変えること」に携われます。「家庭を変えること」に関しては本業では満たせない領域だったので、入社1年目の仕事に慣れてきたタイミングで副業を決意しました。

──入社1年目で副業をするのは勇気がいりますよね。

熱田:当時は新卒1年目から副業をしている女性社員がいなかったので、不安はありました。

でも、新卒1年目でも「今日は定時で上がって友だちと飲みに行こう」という日はあるし、土日も暇だったりしますよね。いわゆるみんなが土日にリフレッシュしてる時間や飲みに行っている時間を副業に変えるだけなので、あんまり変わらないんじゃないかなと思い直して。自分は未熟だから副業なんて無理……というふうには考えなかったです。

「副業歓迎」の空気をいかに社内で醸成するか

──おふたりが新卒1年目で実際に副業を始めたとき、想像と違って困ったことはありますか?

熊谷:私の場合は、会社の人たちの反応がおおむねポジティブだったのでありがたかったです。それに、新卒というまっさらな状態でふたつの仕事に同時に挑んだからこそ、純粋にどちらの仕事にもワクワクできたのはよかったことかなと思います。

熱田:サイボウズは、副業自体はOKという環境だったのですが、当時はベテランの人たちしか副業をしていなくて。新卒1年目からパラレルワーカーとして働くという人は少ないし、いたとしても表立っては活動していなかったんですよね。そんな中で私が表立って副業を始めたので、目立ってしまっているなという感覚は正直ありました。

熊谷:周りの社員さんからなにか言われる、といったこともありましたか?

熱田:先輩から「正直俺は賛成できない」と言われたり、「副業しているとマネージャーにはなれないと思うよ」と言われたことはありましたね。嫌味というよりは、心配していたり親切心からの言葉だったと思います。

ただ、「土日に趣味をしたり遊びにいくのだって疲れるのに、なんで副業をすることだけそんなに特別視されるんだろう?」という思いはあって。それなら他の人も副業でこんなに活躍しているというのをもっと取り上げて、社内に見せていけばいいと思ったんです。自分がライターとして活動していたこともあって、「副業特集をやりましょうよ」と媒体に企画を持ち込んで、サイボウズ社員で副業している人たちを取材する記事を出しました。

熊谷:すごい。行動力がありますね……!

熱田:その取材で副業でテニスのYoutuberをしている人や日本酒のライターをしている人などを紹介しました。その結果かどうかはわかりませんが、次の年に入った新卒の子で副業しているメンバーがいたこともあり、「副業って結局、仕事以外の時間をどう過ごすかの話だよね」という認識が社内に浸透していった気がします。

仕事をしていない時間って、人によっては飲み会に行ったり、ネットを見たりのんびりしたりしているわけで、「仕事以外の時間にどう過ごすかは個人の自由だよね」という空気がじわじわと社内に広がっていったというか。そこから若手社員の副業が社内で一気にブームになり、肩身の狭さのようなものはなくなりましたね。

本業/副業のスイッチングコストを下げるには

──パラレルワークにこれからチャレンジしたい人やいままさにしている人にとって、特に気になるのはタスク管理の仕方なのではないかと思います。おふたりは、本業と副業を両立させるにあたって意識していることはありますか?

熊谷:タスクが管理しきれなくなって困る、という経験は個人的にはあまりないのですが、ふたつの仕事の気持ちの切り替えがうまくいかないときはあります。たとえば理研の開発が乗りに乗っているときでも、本業はさくらインターネットのほうなので、気持ちを切り替えてそちらの仕事に戻らなければいけない……となるとちょっと大変ですね。

最近意識しているのは、できるだけそのスイッチングコストを下げられるような研究テーマを探す、ということです。

熱田:スイッチングコストを下げる、というと……?

熊谷:どちらの仕事にも共通して機械学習というスキルを用いる、というのは最初にお話しした通りなんですが、その中でも特に、どちらの仕事にでも使える技術を追求するということを意識して研究をしています。扱うデータはまったく違うのですが基本的な技術は同じなので、そこは自分の工夫しだいかなと思っていて。

熱田:なるほど! 本業と副業、どちらにも活かせるスキルをご自分で積み上げているわけですね。

私の場合は、副業のスケジュールを徹底的にコントロールすることを意識しています。サイボウズの仕事は平日フルタイムなので、平日に副業で急な依頼があったとしても対応できません。「ふだんは会社員なので、納品には3週間以上かかります」などと副業先に事前に伝えておくと、トラブルになりづらいです。コミュニケーションや交渉で解決できることは多いと思います。

あとは、昼休みなどの空き時間を活用していますね。編集のチェックといった作業はスキマ時間で終わらせるようにしています。

パラレルワーカーが増えることは、企業にとってもメリットになる

──おふたりにとって、パラレルワークをすることのメリットはどんなところにありますか?

熊谷:やっぱり、ふたつの仕事をしているからこその視点で研究ができるというのは大きなメリットだと思います。いまは、ひと言で機械学習と言ってもさまざまな分野が混ざり合っているような時代なので、複数の視点を持っていると、特にそれが研究に活きてくるなと感じています。

熱田:本業のマーケティングの仕事でも記事制作をすることはあるので、そのときにライターとして副業で得た知見が活かせるのはいいなと思います。

それに、社員が副業をしているのは、企業にとっても離職を防げるというメリットになると思うんですよね。「他の環境も体験してみたい」という離職理由って少なくないと思うのですが、副業が許可されている会社であれば、そういった理由で社員が辞めてしまうのを防ぐことができますし。

熊谷:たしかにそうですね。副業先で本業の話題が出ることもありますし、副業する社員が多いと、そのぶん会社の名前が売れるという効果も少なからずあるのかなとも思います。

──なるほど。そう考えると、パラレルワーカーが増えることは企業にとっても大きなメリットになりそうですね。最後に、おふたりが今後、思い描いているキャリアプランや展望があれば教えてください。

熊谷:機械学習の研究者としてスペシャリストになる、というのが大きな目標なのですが、直近では、いまの会社の所属でジャーナル論文を書く、というのを目標にしています。さくらインターネットに所属している社員の中では、まだジャーナル論文を書いた方っていないので。

熱田:いまは副業も本業もどちらも楽しいので、今後 どちらに力をいれていくかは決まっていないです(笑)

いま以上に多様な働き方や家庭のあり方、暮らし方などが広まって、自分らしい選択ができる社会を作っていきたいというビジョンがあるので、そのために本業でも副業でも自分ができる活動をしていきたいと思います。

──おふたりとも、本日は本当にありがとうございました。

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