リアルを知り、世界を変える一歩を踏み出そう。注目のフォトジャーナリスト5選
日本で生活していると、戦争や貧困、環境問題を自分ごととして考える機会は少ないかもしれません。しかし、今こうしている間にも、世界では明日の生活もままならない人々が増加の一途をたどっています。
そんな世界の実態などを写真に収めて報道するのが、フォトジャーナリスト。あらゆる国々を訪れ、今まさに起こっている問題を世界中の人々に伝えようとしています。フォトジャーナリストが発信する情報は、その土地に足を運ばなければ知ることができない事実です。
世の中はどんな問題に直面しているのか。そして、私たちが取り組むべき社会課題はなんなのか。
今回は世界のリアルを発信し続ける5人のフォトジャーナリストをご紹介します。世の中を変えるためには、まずは現状を知ること。そして、自身の知識や経験がどう活かせるのかを考えて、はじめの一歩を踏み出してみましょう。
勇敢な女性フォトジャーナリスト、ハイディ・レヴィン
出典:Heidi Levine公式サイト
エルサレムに拠点を置くフォトジャーナリスト、ハイディ・レヴィン。イスラエルとフランスのメディアの記者としての経験を持つ彼女は、シリアの内戦、ガザ地帯の紛争をはじめとする現状を伝え続けています。
ハイディは2015年、国際女性メディア財団が「最も勇敢な女性フォトジャーナリスト」を表彰する「アニャ・ニードリングハウス・カレッジ・イン・フォトジャーナリスム賞」を受賞しています。その際にハイディが撮影したのは崩壊したガザ地区のモスク(イスラム教の礼拝堂)から、書物を拾い集めるパレスチナの住人たち。私たちの想像を絶する世界の姿を、ありありと撮影しています。
認定NPO団体「難民支援協会」では、シリア難民をはじめ、アジア、中東、アフリカなど世界各国から逃れてくる方が新たな土地で安心して暮らせるように支援し、ともに生きられる社会を実現しようとしています。
難民支援協会では、現在寄付だけではなく、ボランティアやインターンも募集しているそう。募集業務も、広報から就労支援担当までさまざまあります。公式ホームページから、自分にできることを考えてみましょう。
スーダンに居を構え、危険な紛争地域を撮影し続けるエイドリアン・オハネシアン
出典:ADRIANE OHANESIAN公式サイト
スーダンに移住し、アフリカを中心に撮影しているエイドリアン・オハネシアンもまた、2016年に「アニャ・ニードリングハウス・カレッジ・イン・フォトジャーナリスム賞」を受賞したフォトジャーナリストです。
コロラド大学で文化人類学と紛争解決を、国際写真学センターで撮影を学んだ彼女。南スーダンでの内戦やソマリアでの争いを中心に撮影をしていたエイドリアンは、この10年において唯一スーダンの反乱軍支配地域に赴く写真家でした。
スーダンは反政府勢力と政府軍の武装闘争が続いており、日本では渡航中止勧告が出ているほど危険な国です。政府の攻撃から60万人以上が家を追われる状況のなか、エイドリアンは武器を手にする人々や、爆撃機の攻撃でひどい怪我を負った少年を写真に収めました。
アフリカ・中東で起こる紛争の被害者を救うためのNPO団体、「日本紛争予防センター」(JCPP)。NPO団体に対する支援の形はひとつではありません。ボランティアやインターンとしてJCPPの活動を手伝ったり、毎月500円から寄付をしたり……自分のできることから社会貢献をおこなってみてはいかがでしょうか。
マット・ブラックがモノクロ写真で写し出す、アメリカの貧困問題。
出典:MATT BLACK Instagram
世界を動かすほどの経済大国、アメリカ。しかしその一方では、逃れようのない格差が広がっていることも事実です。マット・ブラックはそんなアメリカの貧困や格差社会の現状を取材しています。
マットは故郷であるカリフォルニア州セントラル・ヴァレーの貧困問題をInstagramに投稿していました。後にアメリカの46州、100,000マイル以上を旅しながら現状を伝える、「貧困の地理学」というプロジェクトに発展します。マットは干ばつに見舞われた農村、ハリケーンの被害を受けた街並みをモノクロの写真で紹介することで、より強いメッセージをInstagramの投稿を通してフォロワーに伝えようとしています。
サンフランシスコは、アメリカの中でも貧富の差が激しい都市のひとつ。低所得者を支援する団体は多いのですが、人手が足りていません。NPO団体「CIEE」ではNPO活動支援やチャイルドケアなど、自分の得意なことを生かした活動に参加できます。興味のある方は、国際ボランティアの募集要項などを確認してみてください。
核実験の傷跡を撮影した、フィル・ハッチャー=ムーア
出典:Phil Hatcher-Moore公式サイト
2011年よりフォトジャーナリストとして活動をはじめ、リビアやシリア、中央アフリカ共和国といった国々の紛争、アフリカ大陸の干ばつの様子を撮影してきたフィル・ハッチャー=ムーア。
彼は2ヶ月にわたり、冷戦核実験の実験場だったカザフスタン、クルチャトフ市に今も残る爪痕を撮影し続けました。ここでは住人がいないことを理由に核実験が行われていましたが、周辺の村々には住人が暮らしています。
実験で崩壊した建物、後遺症に苦しむ人々の姿は見る人に衝撃を与えていますが、何よりも撮影したフィルがその事実に驚いたことは言うまでもありません。「核の亡霊」と名付けられた写真の数々は、文字どおり「核実験場そのものはなくなっても、亡霊のようにいつまでも人々を苦しめ続ける」ことを証明しています。
NPO法人「ピースデポ」は、核兵器の廃絶と軍事力に頼らない安全保障の実現を目指し、各国の核政策をはじめとする世界的な情報を伝える団体です。ピースデポの会員になれば、各国の核政策や国連の動向、日米安保、米軍基地問題、関係する世界のNGOや自治体の動きなどの情報を伝える『核兵器・核実験モニター』を無料購読できるので、興味がある方はぜひホームページをチェックしてみてください。
ベニー・ラムが伝える、香港のリアルな生活風景
出典:Benny Lam公式サイト
近年、経済発展が著しい中国・香港。輝かしい面ばかりが強調されていますが、深刻な貧困問題や格差が生じています。香港に拠点を置くフォトジャーナリスト、ベニー・ラムは4年もの歳月をかけ、香港の住宅問題を撮影し続けました。
香港の人口は増加を続け、開発可能な土地に限りがあることから多くの人は1畳にも満たない小さな一部屋に住むほかありません。ベットの上で食事を済ませ、なんとか干した洗濯物に囲まれながらテレビを見る様子からは、安らぎを感じることは難しい状態です。ベニーが「ここに住んでいるということは、籠に閉じ込められているようなもの」と語っている通り、あまりにも窮屈な生活環境しか得られない人々の叫びが浮き彫りになっています。
日中の友好を深め、アジアと世界平和に貢献することを目指すNPO法人「埼玉県日本中国友好協会」。中国では、貧困地域の教育条件改善や、経済的な理由で勉強を諦めてしまった未就学児童の復学などを援助するプロジェクト「希望行程」が実行されています。本協会と地区協会は県民の方々から寄付金を募り、その結果、中国に10校が開校しました。協会への入会者を募集中のようなので、興味のある方はホームページから問い合わせてみましょう。
知られざる世界の姿。まずは知り、考え、次なるアクションにつなげよう
気にはなっていても、世界のどこかで起こっているリアルな問題を知る機会はそう多くはありません。 だからこそ、危険を顧みずに現場に足を運ぶフォトジャーナリストが伝える情報は私たちに強烈な問いを投げかけてくれます。今回ご紹介したフォトジャーナリストの写真の中には、自分が考えていた以上にひどく、ショッキングな内容のものもあったはず。
現状がわかれば、何をすべきかが見えてくるもの。「知る」という一歩超え、社会貢献をはじめてみませんか。あなたの次なる行動と、自身の持っている知識や経験が、世の中を変える一歩になってくるでしょう。
ライター
編集者
カメラマン