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「プロボノ」って、流行ってるけど実際どうなの?数多のNPOをサポートしてきた電通マンが語り尽くす

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社会人がそれぞれのスキルを活かして取り組むボランティア活動、「プロボノ」
プロボノに興味はあっても、実際にどんなことをしているのか想像がつかない、活動に参加するきっかけがない…という人も多いのでは?

そんな「プロボノ」をテーマにした講演会が、7月27日、サントリーのお台場オフィス・サントリーワールドヘッドクォーターズで開催されました。
登壇者はNPO法人「a-con」の代表理事である加形拓也さん。こちらは本来サントリーの社員さん向けに定期開催されている勉強会なのですが、今回、特別に取材をさせていただけることに!

マーケティングプランナーとして勤務しながらプロボノ活動をされている加形さんの目線で、プロボノとは何か、これまでにどんな活動をしてこられたか、そしてプロボノをするメリットとは? …について語っていただきました。

◇講師 加形 拓也さん

電通デジタル チーフマーケティングプランナー/a-con 代表理事
2003年電通入社後、人事部門を経て現局に配属。JTBとの合同事業「地域観光マーケティングスクール」のディレクター・講師も勤める。2007年に友人らとNPOコミュニケーション支援機構(a-con)を立ち上げ、代表理事となる。電通相撲部の主将。

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会場には遅い時間ながらたくさんの社員さんが集まり、プロボノへの関心の高さが窺えました。しかし加形さんが「すでにプロボノをしたことがある人、いらっしゃいますか?」と呼びかけると、参加者からは手が上がりません。

参加者全員がプロボノ未経験の中、ひとりの社員さんに今回の講演に参加した理由を聞いてみると、「通常の仕事ではしないようなことを体験して違う価値観を吸収したいなと思っていたので、そのきっかけになればと思って」とのこと。

講演を主催されたサントリーの山崎さんも、「プロボノやボランティア=人に施すこと、みたいなイメージがある人もいるかと思うんですが、自分のキャリアやビジネスにも役立つ、自分のためになるというのを強調したいです」とおっしゃっていました。

そもそもNPOって?お金をもらっちゃいけないの?

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自己紹介に続いて、「まず、NPOって日本にどのくらいあるかご存じですか?」と加形さん。会場からは、「500団体くらい…?」「1000!」と声が上がります。しかし、実際はなんと50,000団体

「皆さんなかなかNPOのことって知らないんですよね。たとえば、NPOってお金を受け取っちゃいけないんでしょう?って聞かれることが多いんですけど、そういうわけではありません。『非営利組織』という言葉のとおり、営利目的、つまりお金儲けのためには活動をしませんよ、というだけ。たとえば、活動資金に充てるためにTシャツを売る、みたいなことはOKなんです」

加形さんのお話に頷く会場。NPO法人の多くはまだまだ認知度が低いけれど、少し調べるだけでも、意義のある活動、面白い活動をしている団体はたくさん見つかる、と加形さんは続けます。

「でも、多くのNPOが資金不足や人材不足に悩んでいるのが現状です。そんなNPOのコミュニケーション面をサポートする団体が私たちが立ち上げた『a-con』。NPOそれぞれの価値観を尊重しながらも、傍観者にはならず一緒に汗をかく、というのがモットーです」

「チラシを配って終わり、じゃ伝わるわけがない」

a-conには現在、約200人のメンバーがいるとのこと。ここからは、実際にa-conが何をしているか、そしてa-conのプロジェクトの進め方についてお話してくださいました。

「毎月、1~2団体のNPOがa-conに相談にいらっしゃいます。まずは各NPOにいまお持ちの課題をお聞きして、『誰に』『何を』『どう』伝えるのがゴールなのか、というコンサルティングをしていきます。そこからa-con内でプロジェクトメンバーを集い、3ヶ月程度かけて広報のサポートをしていく、というのが活動の流れです」

NPOシェア

(NPO法人「シェア」Webサイト)

a-conが実際に広報コンサルティングをした例が、「シェア」というNPO法人。
カンボジアや東ティモールといった発展途上国、そして日本国内で、保健医療の支援活動を行っている団体です。

「医療支援をしている団体というと皆さん『国境なき医師団』とかを思い浮かべると思うんですが、それに比べるとシェアの活動はちょっと地味なんですよね(笑)。“手を洗いましょう”とか“肉や野菜をバランスよく食べましょう”みたいな啓蒙活動をしているんですが、それって日本にいると当然じゃん、って思えてしまって。でも、そういった健康教育って本来はとても大事なことなので、それを広めるお手伝いをしたいなと」

シェアからの最初の相談は、「活動に参加してくれる会員を増やすため、Webサイトを新しくしたい」というものだったそう。しかしコンサルティングを進めるうちに、Webサイトのリニューアルでは根本的な課題は解決されない、と加形さんたちは判断します。

「NPO法人って渋谷区や港区に多いんですが、シェアは長年、台東区で活動されているというお話を聞いたんです。下町という土地柄、派手でない活動に対しても、共感すればきちんと支援してくださるシニア層の方が多い。まずはその人たちときちんと繋がろう、ネットよりもリアルの活動に注力しようという提案をしました」

最終的に、300団体以上のNPOが参加するイベントの中で、途上国の現状を伝える映画の割引チケットを配布したのだそうです。上映には多くの人が集まり、シェアの活動への理解も深まったとのこと。

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「NPOが集まるイベントって、ただパンフレットを配布して終わり、というケースが多いんです。来場者からしたら、300団体からパンフレットを渡されたって全然分かんないですよね。マーケティングの視点で考えると、そんなことでコンバージョンするわけがない。

でももちろん、NPOの方も一生懸命PRしようとしているわけです。それなのに、大量のパンフレットを配るだけで“これだけ配ったから伝わったよね”というのはあまりにももったいなさすぎる。その一生懸命さをきちんと認めた上で、より効果的な新しい方法を考えるというのが私たちの仕事です」

a-conでは常に2~3団体のプロジェクトが同時並行で進んでおり、a-conがサポートに入ったことで200万円の増収になった、というNPOもあるそうです。

プロボノをしていると、「人を巻き込んでなにかをする」ことに慣れてくる

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続いて話題は、「プロボノをすることのメリット・デメリットは?」という点に。

プロボノの難しいところは、「(仕事とは違い報酬が発生しないので)メンバーのやる気をいかに持続させるか、チームをどうマネジメントするか」だと加形さんは語ります。しかしその一方で、プロボノにはメリットも多数あるのだそう。

「例えば、異業種交流会で名刺交換をして“今度なにか一緒にやりましょうよ”とか話しても、基本的にはなにも起こらないじゃないですか(笑)。けどプロボノをすると、普段は仕事で関わらないような人たちと大変なことを一緒に乗り越える、という経験ができる。『人を巻き込んでなにかをする』ことに慣れてくるというのは、大きなメリット

  • じゃないでしょうか。

    信頼のできる人間関係が生まれるので、プロボノがきっかけで結婚したという人も多いですよ。多分、僕が知らないところで付き合ってるメンバーとかいるんじゃないかな(笑)」

  • 加形さんが最後に紹介されたのが、「計画的偶発性理論」という考え方。

    これはスタンフォード大学のジョン・クランボルツ教授が提言した理論で、「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的な事象によって決定されるため、その『偶発的な事象』を計画的に起こしていこう」というもの。

    「難しい理論に聞こえるかもしれないんですが、要は仕事における“たまたま”って、実はたまたまじゃないぞ、という考え方です。プロボノをしていると、いろんな環境でいろんな人といろんな仕事をするわけです。だから、『たまたまそれを知ってる』『たまたまそれについて考えたことがある』という機会が増える。キャリアってそういうところから広がっていくものなので、そういう機会を意図的に増やしていこうよ、っていうことですね」

    新しい人や環境との出会いもプロボノの魅力であり、ひいてはそれが自分のキャリア形成にもつながっていく。あなたも、プロボノを通してそんな体験をしてみませんか?

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    豊城 志穂
    ライター
    サムライト編集部