TOP > 「“街づくりの当事者となる経験を”という親としての想いが活動の後押しに」東急不動産・関口冬樹さん<後編>

「“街づくりの当事者となる経験を”という親としての想いが活動の後押しに」東急不動産・関口冬樹さん<後編>

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原宿の街の再開発に関わる東急不動産・関口冬樹さんの大切な業務の一つは「地域とのつながり」をつくること。本業の一環として「渋谷をつなげる30人」に参加した関口さんは、そこで「Social Kids Action Project」の構想を聞き、企業と地域の新たなつながりをつくるきっかけになると直感。会社全体を巻き込んだプロジェクトにしたいと動き出す。

>前編はこちら

 

一人の親として、子どもに社会をつくる経験をさせたい

「SKAPは、自分が描いていたビジョンそのものでした。小学生を中心に、原宿の企業と原宿で働く人と原宿に住む人が同じ方向を向き、未来の街をつくっていけるのですから。それと同時に、東急不動産としても協賛金を出すだけではなく、全社社員を絡めた企画にしたいと思いました。道のりはスムーズではありませんでしたが、2017年1月に行われたSKAPのトライアルプロジェクトに、一部の社員が参加してくれたことは大きかったですね。そこから全社を巻き込むような流れになりました」

SKAPには、原宿にある企業、町会、商店街のほか、渋谷区役所や学校、警察署、郵便局など、さまざまな組織の人々が関わっている。こうしたステークホルダーを巻き込み、プロジェクトの実現に向けたフィールドを整えた功労者は、間違いなく関口さん本人だ。

また関口さんは、毎週土日に開催されたトライアルプロジェクトに、毎回手弁当で参加している。ここまで本業の枠を超えてSKAPに関わりたいと思った原動力は一体何だったのだろうか。

子育てをする親としての気持ちが大きかったですね。自分の子どもに、街づくりの当事者となれるSKAPのようなプロジェクトを経験させてみたいと思ったんです。それに、僕の仕事を知ってもらう良い機会にもなると思いました」

当時小学4年生だった関口さんのお子さんも、トライアルプロジェクトに参加している。企業人としてではなく、いち保護者としてSKAPを体験したことで、企業だけではなく、小学生にとっても有意義なプロジェクトであることを実感したからこそ、本プロジェクト実施に向けた動きを加速することができたのだという。

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(プレゼンをする関口さんのお子さん。提案したプランの実現を東急不動産に依頼した)

“原宿の街づくり”という子どもと共通の話題が生まれた

「僕の仕事を、息子はよく理解できていなかったと思うんです。でもSKAPを経験してからは、僕が普段どんな仕事をしているのか、多少なりとも伝わっている気がします」

「原宿の街をどんな街にしたいのか」という、同じ課題に取り組んだ関口さん親子には、プロジェクト終了後に共通の話題が生まれた。関口さんは嬉しそうにこう話す。

「SKAPは、大人たちが子どもの出したプランを実現させることを目指しているため、息子が提案した「新・子どもの国」という子どもが楽しめる街づくりを進めていかなければなりません。スパイダーマンみたいにビルとビルの間を移動できるロープが欲しいと難題を投げかけられていますが、『僕のプランはどうなっているの?』とたまに聞かれるので、何とかしなければ(笑)」

また、渋谷区長や地域会長、企業の社長など、たくさんの大人に向けて自分のプランをプレゼンするというこのプロジェクトでの体験は、息子さんの成長にとっても、大きな役割を果たしたようだ。

「実現するかもしれないプランを考えるのは、とても楽しかったようです。それに、多くの大人が自分の意見を聞き、力を貸してくれたことは、息子にとって大きな自信になっているようです。参加前よりも、物事に積極的に取り組むようになったし、発言するようにもなったと、妻も喜んでいます」

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(2017年夏のSKAPで、小学生のプレゼンを動画で撮影し、アドバイスをする関口さん)

企業から“仕掛けた”ことが、グッドプラクティスに

SKAPに良い影響を受けたのは、関口さんのお子さんだけではないようだ。東急不動産社内からも、地域の魅力を向上させる手段の一つとして、自社がやっていくべきエリアマネジメントの一環であるという声が届いている。また他の地域でもやっていくべきだという声も。

「区長や地域会長に参加いただけたこと、東急不動産全社をあげて取り組んでもらえたことは大きかったですね。地域の方からも、企業側からアクションをしかけたことを評価していただけたんです。僕にとっては、まず何より地域の方、他の企業の方と話をする良いきっかけになりました。今後“オール原宿”として街を盛り上げていく大きな第一歩を踏み出せたのではと思います」

「つながりを作り、地域を良くする」Shibuya WILL Card

「渋谷をつなげる30人」の第2期にも参加しているという関口さんの社外活動は、さらに広がりをみせている。

「『渋谷をつなげる30人』の第1期で、渋谷に愛着を持った人が集まれるように、つながりを持てるプラットフォームをつくりたいと宣言したんです。渋谷区長も含めて50人以上の人が見ている前で宣言したので、やらなきゃいけないんですが(笑)、プラットフォームをつくるのはなかなか難しくて……。最近動き始めたのが、“リアル版2枚目の名刺”にあたるShibuya WILL Cardです」

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(関口さんのWILL Card。興味関心のほか、今やっている仕事やできることなど、人とつながるきっかけが盛り込まれている)

Shibuya WILL Cardは関口さんが「渋谷をつなげる30人」のメンバーが主催したセッションに参加して生まれたアイデア。得意なことや興味の方向、感じている課題、困っていることなどの情報が書かれたカードをつくり、自己紹介に活用するというもの。

「Shibuya WILL Cardを使うことで、コミュニケーションが円滑化されれば、その結果いろんなつながりが生まれるだろうし、もっといい街になるのではと。カードに書かれていることをデータベース化してマッチングできれば、さらにおもしろい化学反応が起こせると思うんです」

自分のフィールドを少し広げることが「1.8枚目の名刺」を持つきっかけに

関口さん自身が「渋谷をつなげる30人」やSKAPへの参加など社外での活動を通じて得たのはどのようなものなのだろうか。

「自分の得意分野や領域が広がったことで、自信がつきました。また、社内的にも社外的にも人脈が広がって、“あいつは人脈を持っている”と認識されることにもなりました。地域の方や企業とのコミュニケーションも深まったので、今後仕事で困ったときに、何かを教えて欲しいとか、お願いしたいとか、そういったやり取りも円滑になるのではないかと思います。『渋谷をつなげる30人』とSKAPを通じて渋谷区長や副区長とお話させていただく機会が増えたことで、本業もやりやすくなりました」

このように本業やプライベートの延長線で関わった活動が、大いにプラスになっている関口さんだが、もともと社外活動をすることには全く興味がなかったという。

「子育てに関することは興味がありましたが、SKAPのように自分から動いて何かをしようというモチベーションまではありませんでした。一番大きかったのは、業務の一環として地域活動を始めたけれど、“関口”個人として地域の中に入ったことです。そこで自分の間口が半分開いていたところに『渋谷をつなげる30人』があって、外を向くきっかけをもらえた。地域活動もそうですけど、やってみると楽しいしやりがいもあるんです。それでいろいろ広がってきたのかな」

関口さんにとっては、自分が社外に向けて間口を開いたことで、「1.8枚目の名刺」を持つことにつながった。

「僕の場合は本業からでしたが、2枚目の名刺に興味がない人も、自分のフィールドを少し広げるようなきっかけがあると変わるんじゃないでしょうか」

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2枚目の名刺は、本業以外のことに費やす時間があったり、何かを成し遂げたいという熱い思いがある人だけが持てるものではない。本業の一歩先や本業とプライベートが交わるところを起点に持つこともできる。

むしろこうした相互のフィードバックがあることが、2枚目の名刺ならぬ、“1.8枚目の名刺”の魅力かもしれない。

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古川 はる香
古川 はる香
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フリーライター。主に女性誌や育児誌、WEBで執筆。
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