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“社会は自分で変えられる!”小学生が地域課題に本気で取り組む「Social Kids Action Project」密着レポ

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最近よく耳にする「アクティブラーニング」

従来の受動的学習から、主体的に課題を発見し、それに対する解決策を既存の知識を使って見出し、新しい知識を世の中に創造するような能動的学習への転換の必要性が叫ばれ始めている。

「アクティブラーニング」とは、この能動的学習のこと。少子高齢化、グローバル化、高度情報化という大きな社会的変化に対応するために欠かせない力として子どもたちに求められているのだ。

小学生が「こんな原宿にしたい!」を区長に“本気”で提案

放課後NPOアフタースクールと二枚目の名刺、Kids Experience Designer 植野真由子(うえのまゆこ)氏が共催しているSocial Kids Action Project(ソーシャル キッズ アクション プロジェクト、以下SKAP)」は、アクティブラーニングをまさに実地に行う、渋谷区をフィールドにしたプロジェクトだ。

小学生が、「学校」という普段の居場所を離れて街に出て、街で暮らす人や働く人、訪れた人に「どんな街だと嬉しいか」をインタビュー。そこで得られた回答をもとに、街の課題を洗い出し、解決するためのアイデアを大人たちに向けて提案する。

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課外授業でこのような取り組みを行っている小学校もあるだろう。しかし、このプロジェクトが一線を画すのは、実現に向けた「本気」の解決策を小学生に求めていること。

このプロジェクトには、東急不動産やセコム、NTT都市開発といった渋谷の街づくりに関連のある民間企業だけではなく、渋谷区や原宿表参道欅会といった行政、地域が後援についている。

子どもたちが中心にいる街づくりの活動だからこそ、まさに「子はかすがい」となり、企業や行政、町会、商店街が無条件に集まり、子どもたちのプランの実現に向けて動き始めるのだ。

子どもたちに対しても、最終日のプレゼンテーションで「区長に街の課題の解決策を提案する」ことが最初に伝えられる。実現の可能性を秘めた本気の取り組みである。

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「自分にも社会は変えられるんだ」という体験の場

主催団体の一つでもあるNPO二枚目の名刺の代表 廣優樹(ひろゆうき)は、プロジェクトの目的をこうも述べる。

「未来を想像し、創造する力を身に着けてもらいたい」

SKAPの着想は、実は大人たちが取り組むNPOサポートプロジェクトから得たものである。

NPOサポートプロジェクトでは、社会人が普段の仕事を離れて、いつもと違うメンバーと試行錯誤しながら、これからの社会を創ることに取り組むことで、社会と社会人の変化が同時に生まれている。

SKAPは、まさにその小学生版だ。子どもたちが街づくりに参加する体験を通して成長できることに加え、未来の主役である子どもたちの視点や意見を拾い上げ、反映させることは、これからの時代に求められる社会を創ることにもつながる。

さらに、このプロジェクトによって「自分の発言が街づくりに活かされた!」「自分が動いたことで、社会にプラスの変化が起きた」という経験を得ることの感動や自信は、子どもたちが “アクティブ”に世の中を創っていくうえでも、大きな財産になるだろう。

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発言すること、インタビューすることに躊躇しない子どもたち

夏休み初日にスタートした「Social Kids Action Project @Harajuku」を取材した。

「小学生の力で原宿の街を変えていこう!」をテーマにしたこのプロジェクトは、渋谷区在住の小学4〜6年生12名が参加した全5日間のプログラムだ。3名ずつの4グループに別れ、そこに同数程度の大人がアドバイザーとして参加する。

初日から「原宿を使うのはどんな人?」「その人たちは、どんな原宿だと嬉しい?」のアイデア出しが行われた。

そこで驚いたのは、子どもたちの積極性だ。アイデアが途切れることなく飛び交い、わずか数分間で300個以上のアイデアが付箋に貼り出された。

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それはプログラム中、原宿の歴史や再開発、警備などについて話をした原宿表参道欅会の理事長や東急不動産、セコムの社員に対しても変わらず、「はい!」と大きく手を挙げては、次々に疑問や質問を投げかける。

「何か質問は?」という問いかけに「しーん……」とする場に居合わせることの多い、大人(私だけだろうか)の世界からは想像し得なかったことだったので、とても面食らった。

2日目、3日目の前半に行われた商店街や商業施設、街頭でのインタビューでも緊張することなく、初対面の人に対して質問しており、感想を聞いても「緊張した」「できるかどうか不安だった」の声は皆無。「普段行けない場所に行けて、話ができて楽しかった!」という何とも頼もしい言葉が返ってきた。

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友だちの良いところを真似することで、自分も成長できる

2日目、3日目の後半は、インタビューで得た街の課題をもとに、「原宿に暮らす人はどんな街にしたい?」のアイデアシートを作成。

チームのアドバイザーに「アイデアをどう出せば良いのか」とアドバイスを求めている子もいれば、「この案だと、こっち(サービスを作った側)が損しちゃう!」と予算面にまで思考を巡らせている子も、早々にいくつかのアイデアを思いつき、数枚のシートを作っている子もいた。

街で得たキーワードを具体的なアイデアに落とし込むために連想ゲームをしているチームもあれば、子ども同士でディスカッションをしながらアイデアを深めているチームもあった。

こうして考えたアイデアを、毎回のプログラム終了時に皆の前で発表するのだが、聞いている側は、ポストイットを片手にそれぞれの良かったところを記入する。

「声が大きく、はきはきと話していて聞き取りやすい」
「絵を使って具体的なやり方まで説明していてわかりやすい」
「前を見て発表しているので、心に残った」
「インタビューで聞いた、色んな人の意見をまとめていて良かった」

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ポジティブなフィードバックは受け取る側の自信にもなるだろうが、友だちの良いところを見つけながら、「伝わるプレゼン」がどのようなものかを考えるきっかけにもなるだろう。

日を追うごとに、子どもたちのプレゼンが上達していくのが、目に見えてわかった。

アイデアに共通点を見出し、チームのビジョンをつくる

3日目までは、思い思いに自分のアイデアを考え、発表していた。しかし問題は“チームで1つのビジョン”を決める4日目だ。

この日は、インタビューでよく聞かれたキーワードを洗い出し、渋谷区子ども青少年課の方に「渋谷区基本構想」(渋谷区はどんな街にしようとしているのか)を聞いたうえで、「みんなはどんな原宿にしたい?」をテーマにチームごとに「ビジョン」を作る日だった。

お互いの意見を上手にまとめ、キャッチーなイラストにしているチームがある一方、ビジョンとアイデアの違いがわからず、なかなか前に進めないチームや、チーム内で思い描くビジョンが異なり、意見がぶつかってしまうチームもあった。

最終プレゼン後の感想に「チーム内で意見をまとめるのが大変でした」というものがあったが、結果として異なるアイデアのなかに共通点を見つけ、互いの考えが活きる“チームのビジョン”に落とし込むプロセスを体験できたことは、社会に出てからもきっと役立つことだろう。

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100人を前にした大舞台で「早く発表したい!」

最終プレゼンの会場は、セコム本社の大ホール。そこに渋谷区長や副区長などの行政関係者のほか、協力してくれた企業や地域の関係者、メディア関係者、保護者など、100名以上が集まったが、この日も子どもたちには緊張の色はない。

「準備万端? 大きな声でね!」と声を掛けると、「何で大人はみんな同じことを言うの?」と笑いながら応えてくれる。

子どもたちにとっては、自分のアイデアを発表することは楽しみでしかなく、「早く聞いて欲しい!」という想いでいっぱいなように、私の目には映った。

「本当に実現するかもしれないというワクワク感があった。教科書やインターネットで調べるだけではなく、自分で考えて、区長に提案できたのが良かった」

「実行できるかもしれないと考えながら、アイデアをたくさん出すことは楽しかった。来年もまたやりたい」

終了後には、こんな感想が聞かれた。

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子どもたちの視点が、大人の思考を広げる

プレゼンの中には、「落書きが多くて困る」という街の声に対し、「落書きしてもいい壁を作る」という逆転の発想を活かした提案や、区長も構想しているという「歩行者天国」を、人口密度が高くて歩きづらいという高齢者のために復活させようという提案も。

「水が欲しい」「子どもが遊べる場所が欲しい」という街の声をもとに、再開発ビルの屋上に「四季の魚を泳がせた川を作りたい」というアイデアには、原宿表参道欅会の理事長や区長から、「構想はあったが、危険もあり実現には至らなかったのだ」という話とともに、「子どもの発想は自由だなと思うと同時に、大切だけど大人が諦めてしまっていることもあるのではないかと気付いた」という感想も寄せられた。

また何名かの子どもから緑を増やすための提案があったのだが、「渋谷区は23区内で3番目に緑が多い」としながらも、「この場で提案されるということは、地域に住んでいる子どもたちが、足りないと感じているんだなと知りました」と区長。

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「できたら良いが、現実的ではないだろう」
「これは過去にできなかったから、きっと無理だろう」

大人の経験値をもとに“簡単に実現できること”にだけ目を向けていることは、人々が本当に求めている地域を作ることを諦めることと紙一重なのかもしれない。

知らず知らずのうちにはめていた足枷の存在に気付く瞬間が何度もあった。

プロジェクト終了後も、アイデアの実現に向けて取り組んでいく

「ファッションでイベントをしよう。」をタイトルに、代々木公園でのファッションイベントの実施を呼びかけた女の子には、ラフォーレ原宿の社長が実現するためのサポートを約束。プレゼン後に名刺を渡し、打ち合わせの調整をしていた。

SKAPのゴールは区長に向けたプレゼンではない。自分が考えたアイデアを形にするために、大人や社会に働きかけて実現に導くことだ。

今回参加した子どもたちのアイデアと進捗状況は、SKAPのホームページで随時更新されていく。子どもたちのプランを実現するために力を貸しながら切磋琢磨していくことで、私たち大人の主体性も磨かれ、発想の柔軟性も高まっていくかもしれない。そんな可能性を感じた。

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はしもと ゆふこ
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女性誌出身の編集者。 「人生100年時代」に通用する編集者になるべく、雑誌とWebメディアの両方でキャリアを重ねる。趣味は占い。現在メインで担当するWebメディアで占いコーナーを立ち上げ、そこで独自の占いを発信すべく、日々研究に励んでいる。目標は「占い師」という2枚目の名刺を持つこと。
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