あなたは社会を変えるためにどんなアクションをしますか?【”働き方改革”とにっぽんの将来】分科会レポート④
2017年11月18日有楽町国際フォーラムにて開催された日本財団主催のソーシャルイノベーションフォーラムでの「“働き方改革”とにっぽんの将来」分科会では、パブリックセクター(行政)、ビジネスセクター(企業)、ソーシャルセクター(NPO)の3つの分野の人々が集まり、働き方改革を通してどのようにイノベーションを起こしていくか、それぞれの視点からのプレゼンテーションとディスカッションが実施された。
レポート4弾は各セクターからのプレゼンテーションののち、パネルディスカッションの内容をお届けしてみたい。
ワクワクする場所に自分から行くこと
会のモデレーターを務める新公益連盟理事/NPO法人クロスフィールズ代表の小沼さんより、各登壇者への問いかけからパネルディスカッションが始まった。
「パブリックセクターである伊藤さんへ。ソーシャルイノベーションが働き方改革につながっていくという中で、働く個人としては持ち札を増やすという話をいただきました。働き手はどんな持ち札を増やせば良いのでしょう?また、パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助さんのお話として『週休2日のうち、1日は休養、1日は教養』とご紹介いただきましたが、これからを生きる私たちはどんな教養を身につけたら良いのでしょう?」
「これからは、AIやロボットが経済活動、社会活動に入ってきて、人間の仕事を奪うと言われています。確かになくなる仕事もあるでしょう。テクノロジーが変われば私たち生活もまた変わるはずです。『ロボット』という言葉は元々の語源はチェコ語で、『強制された労働』という言葉の意味があったそうです。その語源に習って強制される労働はロボットがやるようになるのかもしれない。そうなったら人間は何をしていくかというと、『生産性』と『選択肢』がカギになると思います。島田さんからも“ワクワクすること”という話があり、廣さんからも“主体的に選ぶ”という言葉がありましたが、『自分がワクワクすることを選ぶ』ために必要なスキルを身につける必要があるでしょう」
伊藤さんのお話により、働き方改革の先には「未来における学び」があるというイメージが膨らんだ。人生100年時代の教養は「社会人基礎力」が礎になるという発言もされていて、そこから見えることは、学生は学生として、そして社会人は社会人として、OSが変わり続ける世の中で学び続ける力が必要で、その姿勢こそが教養なのだというメッセージを受け取れた。
「会社に勤める人が会社の中で、収益のためのロジックを立ててプロジェクトを進めていくということはもちろん大事です。でも一方、NPOのように『ロジックは大事。でも同じくらいビジョンや価値観も大事』という場所に出会うと、全く違う価値観があるということに気がつきます。自分が今いる場所と違う価値観があること、尺度が違うこと。そこから学びもあるし、失敗もあるでしょう。それは自分にとっては心地よくない場所に向かう行為となるかもしれないけど、自分のコンフォートゾーンを出てワクワクする場所に出向いてみることがこれからの学びに大切なのではないでしょうか」
NPO法人二枚目の名刺・廣からも、これからを生きる人たちが越境することの具体的イメージの話がでた。二人ともキーワードして上がってきたのが、ユニリーバ株式会社の島田さんが何度も伝えていた言葉に自然と繋がった。
「自分がワクワクすることをやりましょう!自分がワクワクすることがわからないという人が増えてきてしまっているけれど、これが好き!とかこれに夢中になる!ということをやりきってみてほしいです」
学生であろうと、社会人・企業で働く人であろうと、自分が幸せに生きていくためにはこの原点があって、それに突き動かされるという熱量が、小沼さんを含めた4人が共有していた概念のようだ。
自分だけで変化を起こすのではなく、集合的にインパクトを出す
「さぁ、それではここから具体的に動き出すために何をやりましょうか?今日はみなさんの目の前に伝えることができる各セクターの方がいらっしゃいます。みなさんがもっとワクワクして行くために、自分だったら何をするか、自分の組織だったら何をやるか、具体的なアクションや提言を考えましょう」
小沼さんから、会場にこんな問いかけがあり、参加者が一気に自分ごとに目を向けた瞬間だった。
小沼さんは続いてご自身から、新公益連盟としての提言を発表した。
「先の廣さんのプレゼンテーションにもありましたが、コレクティブインパクトという言葉があります。自分だけで社会を変えていくのではなく、さまざまな人が関わりながら集合的にインパクトを出していく。ソーシャルセクターからはNPOや社会的企業の連合体である新公益連盟というものができました。比較的若いNPO世代やソーシャル企業たちが90団体集まって共に横で連携していこうとしています。廣さんや僕はその中で人材分科会を起ち上げ、人材をキーワードにしたアクションを展開しています。半年間、その分科会でディスカッションして見えてきた、4つの提言を紹介します」
新公益連盟の提言
<企業に対して>
- 役員をNPO理事に!
- NPOリーダーを社外取締役に!
<行政に対して>
- 国家公務員のNPO出向の実現!
- 行政職員のプロボノ奨励とNPO限定での副業公認!
この提言を聞いて一番はじめにリアクションをしたのは島田さんだった。
「やれますね!やりましょう。ユニリーバに入って本物のリーダーシップというものを体感しました。社会のこれからをどのように創っていくかという視点に立っていて、ユニリーバではそれを会社として社会の前線に立っていこうという姿勢があります」。
「経営人材のリーダー育成には、やはり修羅場という試練を経験させるということは大きいと言われています。個人の側では越境と言われていますが、企業側、行政側にもそのような人を育てる意味で越境させることがあっていいでしょう」。
伊藤さんからは、パブリックセクターからだけではなく、日本の企業200社の方々と次世代リーダーの育成に関わることを議論されてきた視点からも話があった。
「二枚目の名刺が手がけるプロジェクトにおいても国家公務員、地方公務員が“2枚目の名刺”を持つにはどうしたらいいのかというプロジェクトがはじまりました。そうやって実際に踏み出し始めた人がいるんです。踏み出した人たちを見殺しにしないよう、実践している人たちのプラクティスを積み上げたいし、それはパブリックセクター側からも変わっていけることですよね」。
廣からは、ソーシャルセクターにすでにパブリックセクターの人間が入り込み始めた現状が話され、この提言を早くも実践している人たちがいるのだという現実が周知された。
このようなセクターを超えた繋がりは、会場の参加者からも起こった。
学生の2名から質問が上がった。
「WAAを学校の先生にも広めて欲しいです。先生がどこにでも居て教えることができるとなれば、生徒もどこでも学べられる。それが次の時代を作ると思っています」。
「ゲストの皆さんにとって働く魅力・働くとはどういうことですか?30-40代が思う『働く』と20代が思う『働く』は捉え方が違うと思っています」
次世代の「働く」を考えることができるのは、何も今働いている人たちだけではない。
これからの「働く」を実際に体現していく人たちが、先を走る人たちからどんな刺激をえて、どんな風に声をあげていき、そして実際にどうアクションできるか。
それはもしかしたらセクターを超えるだけではなく、世代を超えて、共に学び働くことにつながっていくのかもしれない。
今回のソーシャルイノベーションフォーラムはゲストスピーカーである各セクターからの提言があり、実際に社会を変えていくための一歩目のアクションが参加者にも伝わる形のフォーラムだった。
そして小沼さんが何度も会場に呼びかけていた言葉が今回のイベントの熱量そのものとして参加者それぞれに響いていた。
「あなたは社会を変えるためにどんなアクションをしますか?」
写真)海野千尋
ライター
編集者
カメラマン