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【イベントレポ】二枚目の名刺・夏フェス2016―「2枚目の名刺のこれから」

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8月7日、株式会社パソナ本社ビルにて、「二枚目の名刺・夏フェス2016」が開催されました。
3回目の開催となる今年の夏フェスのテーマは、『超える』。これから2枚目の名刺を持ってみたい、今持っている名刺をもっと増やしたい…という方々が一堂に会し、2週間に渡るイベントのフィナーレは大盛況となりました。

元ラグビー日本代表主将の廣瀬 俊朗さんによる基調講演や、NPO団体による活動のプレゼンテーションなど、盛りだくさんだった当日のプログラム。今回はその中から、イベントを締めくくったパネルセッションの模様をレポートします。

トークテーマは、「2枚目の名刺のこれから」。登壇者だけでなく参加者からも、リアルな意見が飛び出しました。

◇登壇者プロフィール

パネリスト
・志水 静香さん
株式会社ギャップジャパン 人事部シニアディレクター

・中野 円佳さん
女性活用ジャーナリスト/研究者、『「育休世代」のジレンマ』著者

・廣 優樹
NPO法人 二枚目の名刺 代表

モデレーター
・有馬 嘉男さん
NHK報道キャスター

ここ数年で、企業の姿勢も主体的に変化してきた

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(左から有馬さん、志水さん、中野さん、廣)

モデレーターの有馬さんのリードで、軽快に始まったパネルセッション。最初の話題は、二枚目の名刺がコアコンテンツとして取り組んでいる「サポートプロジェクト」について。これは、社会人が5~6人のグループを組み、数ヶ月かけてNPOの事業推進に取り組むというプロジェクトです。
実際にサポートプロジェクトを導入している企業である、ギャップ・ジャパンの志水さんは、プロジェクトの導入理由と目的についてこう語ります。

志水:私たちギャップジャパンは、サポートプロジェクトを通して、会社を背負って立つ、将来のリーダーを育成したいと考えています。社員には、プロジェクトへの参加を通して「自分がどんなことを大事にしているのか」「自分の人生をどうしたいか」といった自己認識を高め、ひと回り成長してほしいと思っていて。
社内にいると基本的にいつも同じメンバーと仕事をするわけですが、サポートプロジェクトに参加すれば、多くの知らない人と関わることになる。「自分にとって居心地の悪い場所にあえて身を置くことで、脳のパフォーマンスが上がる」という研究結果があるんです。そういった、立場や価値観の違う人たちと仕事をする機会を、社員に提供したいという思いもありますね。もちろん、サポートプロジェクトへの参加は強制ではなく、挙手制です。

ここ数年、ギャップジャパンを筆頭に、サポートプロジェクトに参加したいという企業が増えてきているとのこと。その理由を、廣と中野さんはこう分析します。

廣:僕たちがこのプロジェクトを始めたのは2009年頃なのですが、当時はまだ、20~30代の社会への問題意識がありかつ新しいことに挑戦したい人が参加するという感じでした。しかし3年くらい前から、若手だけでなく、いわゆるミドル層の人たちも「自分たちもこの新しい取り組みに参画したい!」と興味を持ってくれるようになりましたね。そして、さっき志水さんがおっしゃったように、企業からもプロジェクトを「若手のリーダー育成」と捉えて共同してくださる企業が増えてきました。

中野:私は震災後のこの5年ほどで、企業側の姿勢が大きく変わってきたな、と感じています。これまでは個人の「2枚目の名刺」的な取り組みに対し、企業はあくまで「承認する」という姿勢でしたが、最近では企業も主体的に関わるようになってきたな、と。

「そもそも“名刺”って古くない? とも思ってます」

中野:そのような流れを感じつつある一方で、正直に言うと……私は「“2枚目の名刺”ってネーミング、ちょっともう古くない?」って思ってます(笑)。もちろん活動自体は素晴らしいと思うんですが、「名刺ってまだ本当に必要?」って感じるんですよね。

私たちは学生時代からSNSに触れてきた世代なので、Facebookやブログなど、自分を表す手段って名刺以外にもたくさんあるしなあ、と思ってしまいます。

廣:……わあ、率直な感想をありがとうございます(笑)。確かに、名刺というもの自体、昔ほどは渡さなくなってきましたよね。
ただ、団体名にしている以上、僕たちも「名刺」に結構こだわりがあって。というのも、“名刺を渡す”行為には、マインドセット的な効果もあると思ってるんです。名刺を作り、渡すという過程の中で、自分のしたいことやアイデンティティが明確になると思うので。

ただ、本業とそれ以外の名刺って発想自体が、男性的かもしれませんね。実際に、このワーディングに響くかたは男性の方が多くて、僕たち「二枚目の名刺」の活動に共感・参加してくださる方の6~7割が男性です。今後は女性、そしてそれ以外の2枚目の名刺マイノリティの方にもこのコンセプトを広めていくのが目標ですね。

「育休をとると孤立する」――ワーキングマザーの本音

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性別や世代、地域を超えたさまざまな人に「2枚目の名刺」を広げたいという廣。それを受け、中野さんは、ワーキングマザーのリアルについて語ります。

中野:育休をとると、お母さんって孤立するんですよ。子育てをしている間、世界が子どもと自分だけになるわけです。「子どもを預けてまで働いている」ことを強く意識するようにもなり、「やりがいがある仕事をしている」「社会に貢献している」という実感を得るためには、「二枚目」的な活動をできる場所があるといいんだろうな、と思います。

ママコミュニティでプロジェクトをまわすと、ワーキングマザーってスキマ時間で非常に高いパフォーマンスを発揮してくれるんです。「今日、子どもが熱出しちゃって」「じゃあ私がこれやるよ!」みたいな連携もすごくスムーズでした。

ここで話題は、これからのカギは「子ども」が握っているのでは?という方向に。

廣:2年前、地元のお祭りに子どもと一緒に参加してみたことがあるんです。そこで感じたのは、「子どもって意外となんでもできるんだな」ということ。小学生の子どもがかき氷屋さんをやりたいと手を挙げたんですが、ありがたいことに周りの大人たちが快諾してくれて、やらせてみたら実際にできたし、売上は昨年に比べて大幅増だったり。僕らが固定観念で「子どもにはできない」と思ってることって、意外とそんなことないんだなと思いましたね。

志水:分かります、子どもから学ぶことってすごく多いですよね。大人ってどうしても、やる前にできない理由を考えてしまうので。

「失敗体験ができない社会」の中で、失敗できる場所をつくる

中野:そう、大人って「できない」ことを恐れてしまいますよね。

『「育休世代」のジレンマ』を出版した時、私と同じようなワーキングマザーの方々に「勇気を出して、声をあげてくれてありがとう」と言われたんです。それが私には少しショックで。今の社会は既存の枠組みに合わせることが当たり前になっていて、声をあげることは「勇気を出す」ことなんだなと。トライ&エラーができない社会になってきているな、と感じました。

廣:技術の進歩に従って、さまざまなことが合理化されていきますよね。AI(人口知能)が今後普及してくれば、失敗体験はどんどんできなくなっていくんじゃないかなと思います。サポートプロジェクトの本質のひとつは、普段経験しない失敗体験というところにもあり、そういった機会を届けていきたいと考えています。

夏フェスのプレイベントのひとつで、中学生の時に会社を立ち上げたGLOPATHファウンダーの仁禮さんという方に登壇いただいたんですが、講演を聞いた大人がすごく刺激を受けていたのが印象的でした。既存の枠にはまらない子どもの発想や行動力に、むしろ大人が感銘を受けている。

志水:どんな人にも強みや好きなことはあるはずですしね。大人になるにつれて型にはまっていくというのは悲しいなと。逆に私たち大人が、子どもたちが夢中になれることを一緒に探して、伸ばしてあげることは可能だと思っています。

廣:志水さん、これはもう、ぜひ一緒に子どもプロジェクトやりましょう(笑)。

2035年、「副業」という言葉がなくなる未来はくるか

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最後のトピックは、「20年後の“働き方”と、実現のための課題」。
厚生労働省が主催する『働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために』という委員会のメンバーでもある中野さんからは、こんな予測が飛び出しました。

中野:私は、20年後には「1枚目の名刺」が唯一のアイデンティティだという考え方はなくなってるんじゃないか……もしかすると、「副業」という概念さえなくなっているのではないか、と考えています。

パラレルキャリアの人が増える中で、今以上の格差社会になっている可能性もあるんですけどね。『働き方の未来2035』の懇談会では、そうなった場合のセーフティネットをどうすべきか、という話もしているところです。

廣:NPO二枚目の名刺としては、ミドル層、シニア層へのアプローチももちろんですが、やはり今後マイノリティになっていくであろう「子ども」に目を向けていきたいなと。さっき子どもの可能性や活動参加といった話も出ましたが、サポートプロジェクトも、できる限り子どもたちがいる“目の前”でできたらいいな、と考えています。子どもたちの姿を見て、大人も刺激をもらえるような仕組みをつくっていきたいなと思いますね。

志水:今後の課題は、個人も企業もマインドセットを変えていくことじゃないかなと。特に、今の日本に蔓延している「長時間労働で評価される」空気を変えていくことは大切だと思っています。

最後には、セッションのモデレーターを務めていた有馬さんからもこんなコメントが。

有馬:僕は今回のお話を聞いて、少し安心しました。
今後、さらに格差が広がるかもしれないという話もありましたし、技術の進歩によって既存の仕事はどんどんコンピュータに取って代わられるかもしれない。そんな中で、自分のキャリアの築き方ばかりにこだわるのではなく、「子どもたちに投資をする」という考え方でもいいんだな、と。

「子ども」という視点が出てきたことで、二枚目の名刺の新しい未来が見えた気がします。今日はありがとうございました。

「公務員の副業も認められる世の中に」「副業していない社員は置いて行かれる?」

セッションのあとの質問コーナーでは、参加者の方からさまざまな質問や意見が飛び出しました。中には、「公務員にも副業を認めてほしい」「地方にいても多様な働き方が実現できるような社会になってほしい」という切実な意見も。

今回の夏フェスのテーマになぞらえて、参加者の方にはイベント終了後、“何を『超え』たいか”、アンケートに記入していただきました。そこには、「年齢」や「働き方の枠」、「地方の限界」といった回答と、「自分に何ができるかを考えるだけでなく、会社にも刺激を与える機会にしたい」等々の熱いコメントが。

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(セッション後のオフショット!)

夏フェス2016が、新しい一歩を踏み出そうとしている人の背中を少しでも押せる機会になったなら、これほど嬉しいことはありません。私たち二枚目の名刺はこれからも、昨日までの自分を『超え』、チャレンジする人たちを応援し続けます!

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豊城 志穂
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サムライト編集部
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