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ビジネス法務に携わる若手弁護士が、2枚目の名刺でNPO支援に取り組むワケとは?

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瀧口徹さんは現在、法律事務所の共同代表として忙しく働きながら、BLP-Network(以下BLPN)の代表、その他複数のNPO法人の理事・監事などの業務を並行しておこなっている。

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今回は、瀧口さんが弁護士という本業を持ちつつソーシャルセクターの支援をおこなうようになったきっかけや、弁護士が2枚目の名刺を持つことの意義、今後の目標などについてお話をうかがう。

プロフィール:瀧口徹
慶應義塾大学環境情報学部卒業、立教大学大学院法務研究科修了。2009年に小島国際法律事務所に入所、国際取引を中心としたビジネス法務を取り扱う。2012年、銀座法律会計事務所(現 銀座木挽町法律事務所)へ入所後、2018年に牛込橋法律事務所を設立。

NPOの拡大と発展を目の当たりにした学生時代

瀧口さんがはじめてNPO支援に携わったのは、大学4年生の時。NPO法人フローレンス代表の駒崎弘樹さんが同じ大学の先輩であったこと、以前から子どもに関する社会課題に関心があったこともあり、同法人の立ち上げに参加したことがきっかけだった。

今でこそ病児保育サービスのほか、障がい児保育や赤ちゃん縁組などの取り組みでも有名なフローレンスだが、立ち上げ当時のメンバーは5〜6人で、はじめのうちは世間にもほとんど知られていなかった。

「フローレンスにかかわる前は、NPOというと『お金にならず、規模も大きくなりにくい』というイメージを漠然と持っていました。ですが、立ち上げから1年ほどでメディアに取り上げていただけるようになったり利用者が増えたりして、団体の規模が大きくなっていくのを目の当たりにしたのは、とても貴重な体験でした。

NPOであってもきちんとニーズがあり、事業として動かせるような整備を行っていれば徐々にでも拡大していくし、必要なところにサービスが行き届くようになるのだと、活動をする中で実感しました

学生時代からNPO支援をおこなっていた瀧口さんだったが、昔から特別な興味があったわけではないという。

「弁護士を目指していた当初はどちらかというと知的財産などの分野に興味があって、最初からNPO支援に強い関心があったというわけではありませんでした。

NPOを立ち上げて活動をしている人たちに出会う中で、魅力的で一生懸命な人が多くいると知り、人柄に惹かれていったという部分が大きいですね。その中で、彼らをサポートしたいという想いが、徐々に強くなってきたのだと思います」

「世の中をよくしたい」「社会を変えたい」と考えて活動に心血を注ぐ人たちとの出会いが、瀧口さんをソーシャルセクターの支援へと突き動かすきっかけとなった。

「NPOでなければ解決できない社会課題」の助けに

弁護士になって2年目の28歳の時、瀧口さんは2度目のNPO支援をはじめる。児童養護施設の子どもたちへの学習支援をおこなう、NPO法人3keysだ。当時はすでに弁護士として活動していたこともあり、法律的な視点のほか、事業に関する相談も受けるなど、より団体の発展に役立つNPO支援をおこなえるようになっていた。

仕事が忙しくなってきたタイミングだったこともあり、本業と3keysの両立には苦労した部分もあったという。現在も副代表理事という形で、7年以上支援をつづけている。

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「フローレンスと3keysという、ふたつのNPOの中に入って活動できたことは、非常に良い経験になりました。3keysもまた社会のニーズがあり、団体の存在が急速に世間に認知されていくのを間近で見ることができました。

3keysの場合、もちろん施設の子どもたちから学習支援の費用は取れないですし、施設自体にも予算がありますから、基本的には無償でサービスを提供する必要がありました。寄付や助成金で団体の活動を成り立たせる必要があるという部分が、病児保育を事業として展開し、利用者の方から会費をいただいて運営するフローレンスとの大きな違いでした。

同じNPOでも運営方法は異なるということがわかり、組織のありかたを知るうえでとても勉強になりました」

ふたつのNPO支援を通して、NPOという存在の可能性や社会に与えられるインパクトを実感すると同時に、リーガルサポートの必要性を知った瀧口さん。2012年に設立されたBLPNには立ち上げから携わり、3年前からは代表をつとめる。

これらの活動を通して、行政の手が届いていない社会問題が世の中にはたくさんあるということ、NPOがやらなければ解決できない課題があるということを知ることができたという。

「想い」に共感できる団体を支援したい

3keysの支援をはじめてから1年後、瀧口さんは当初からの想いであった「スタートアップの小規模なNPOやベンチャー企業を支援したい」という目標のため、別の事務所に転職。本業でも、自身が目指すものややりたかったことにより携わるようになった。

現在、瀧口さんはNPO法人3keysの副代表理事のほかに、公益社団法人ハタチ基金、NPO法人Accountability for Change(公認会計士がプロボノ支援をおこなう団体)、NPO法人二枚目の名刺の監事など、複数の理事・監事に就いている。

「理事の場合、基本的にはNPO法人などが重要な意思決定をする際にそれが適切かどうかを見てみずから意思決定や業務執行に関与する立場。株式会社でいう『取締役』のような役割ですね。監事は株式会社で言うと『監査役』に近い立場で、理事がおこなう意思決定や業務執行が法的におかしくないか、きちんと公益にかなった事業をおこなっているのかなどを客観視する立場です」

NPO法人などから理事・監事の依頼を受ける機会も多いが、すべてを引き受けるのは難しいのが現状だ。

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「お声掛けいただく中で、自分が時間を注げるものを選ぶうえでは『その団体が何を解決しようとしているか』を重視しています。団体が持つ想いに共感したときに、お引き受けさせていただくことが多いですね」

このスタンスが、限られた時間の中でも複数の団体に対し、質の高い支援を継続しておこなうことができている理由なのだろう。

「人の役に立つ」ことをダイレクトに感じられる2枚目の名刺

瀧口さんは2018年に独立し、学生時代の同級生とともに弁護士事務所を開業。スタートアップ企業向けの法務や、NPO・非営利法人法務などに取り組んでいる。2枚目の名刺としてスタートした活動を、本業でもおこなえるようになった。

「今後は仕事の中で、できるだけ『本業』『2枚目の名刺』という区別をなくしていくことが目標です。

NPO支援に関しても、弁護士の仕事としてできることであれば、そこは本業としてもやっていきたいですし、立ち上げたばかりやまだ規模が小さいなどの理由でお金のないNPOに対しては、無償での支援も必要だと考えています。社会起業家の方と一緒に活動をするのはすごく刺激的で楽しいので、本業かそうでないかにかぎらず、できる限りソーシャルセクターの支援に自分の時間をつかっていけたらと考えています。

私が直接、社会課題を解決するアイディアを持っているわけではありません。なので、NPOや事業の枠組みを使って社会課題を解決していくために、自分の強みを活かしてそのお手伝いさせていただきたいなと常に考えています

最後に、現在弁護士を目指している方、弁護士の中で2枚目の名刺を持ちたい人や興味のある人へ向けて、メッセージをいただいた。

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「弁護士になるきっかけはいろいろあると思うのですが、弁護士になる人は『社会課題の解決をしたい』『困っている人を助けたい』という気持ちが根底にある人が多いと思いますし、私自身、そうであると信じています。

たとえ今は本業が忙しくて動けないという状態であっても、NPO支援などを通して、本業以外に自分の力が活かせる場所があるのだということは心に留めておいていただけたらうれしいです。元々自分が持っていた想いはなくさずに、大切にしてもらいたいですね。

また、少しでも関心があり、できる環境があるのであれば、ぜひ一歩踏み出してみてほしいです。特に、弁護士になりたての頃は業務がものすごく忙しいので『自分は何のために働いているんだろう?』と悩みがちなんです。2枚目の名刺を持つことで、ダイレクトに自分が人の役に立っていることを感じられると思うので、本業にも意味があると思います

社会課題にかかわる方法はさまざまだが、瀧口さんのように「NPOなどが持つ想いに共感し、自分の強みを活かした支援をおこなう」という形は結果として、団体の発展に大きく貢献していることは間違いない。

写真:松村宇洋(Pecogram)

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手塚 巧子
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1987年生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社勤務等を経て、ライター・編集者として活動中。ビジネス、社会問題、金融、女性・学生向け媒体など、幅広いジャンルにて記事を執筆。小説執筆も行い、短編小説入賞経験あり。