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“5枚の名刺”を持つ彼女が、マルチタスクを実践するために大切にしている「7ルール」

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NPO法人二枚目の名刺でサポートプロジェクトデザイナーとして活動する海野千尋さんは、3つのNPOで働きながら、自由大学で講座を持つ1児の母だ。

海野さんの名刺
・NPO法人二枚目の名刺メンバー
・NPO法人ArrowArrowメンバー
・任意団体ALTメンバー
・自由大学「ネオ・ファミリースタイル学」キュレーター
・1児の母

実は彼女、2018年春までは、当Webマガジンの編集をしていた。NPO法人二枚目の名刺には、編集者として参画したのである。

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(海野さん参画当時の編集メンバー。左から海野さん、はしもと、廣)

フリーランスというと、自分の職業スキルを活かして組織をまたいで仕事をする人が大半だが、彼女はそれに限らず一つの組織で役割を変えながら働いている。また聞くと、同時期に各組織で担っている役割も様々だ。

自由に、柔軟に、マルチに活躍する彼女が、このような働き方をしている理由は何なのか。またパラレルキャリアを実践しながら、多くのタスクを回すためにどんな工夫をしているのか。そして、どのようなキャリア観を持っているのか。

【前編】では仕事で大切にしている7つのルールを、【後編】ではパラレルワークを支える家庭でのパートナーシップを、彼女の歩みとともに紹介する。

ルール①:「みんなのやり方」にとらわれない

今でこそ、職を限らず軽やかに仕事をしている彼女だが、そのキャリアの原点は「編集者になりたい」という想いにあったそうだ。

「関西の大学に通っていたのですが、編集の仕事がやりたくて、就職先を決めずに東京に出てきました。入社前に自分で学んでから入る方が即戦力になるだろうと、就職活動はせず、学校に通うつもりだったんです。」

なぜみんなと同じタイミングで、みんなと同じような格好をして就職活動をしなければならないのだろうと“強烈な違和感”があったという。どうすれば就職活動をせずに働くことができるのだろうか?と考えていたそうだ。

ではそんな彼女が編集をやりたいと思った理由はなんだろう?

「関西はローカルな情報が、いろんな人たちの手でメディアになっているんですよ。私は静岡出身なのですが、地域を面白がれる人たちがいることが、ものすごく衝撃的で。私も地域の情報を発信するための編集を学びたいと思って。編集の世界では、東京で実績を培っていく人が多かったので、上京しました。」

やりたいことが見つかったら、それに向かって真っ直ぐに行動する。例え、それがみんなとは異なるルートでも。

みんながいいと思うものが自分にとってもいいとは限らないというのを昔から思っていたんです。天邪鬼でしょう?」

そんな彼女らしい性質が、今の働き方につながっていることは間違いない。

ルール②:業務量を把握し、キャパシティを見極める

上京した彼女は、ひょんなことがきっかけで仕事を得ることになる。就活せずに、だ。

「偶然広告代理店兼編集プロダクションの東京支社を立ち上げたばかりの人に出会って。人を探しているというので、手を上げて入ったんです。ただ、その時必要とされていたのは広告営業担当。まずは業界に溶け込むんだということを自分の中で決めていました。私を含めて社員3名の小さな支社だったので、もうなんでもやりましたよ。」

マルチプレイヤーの種は、そこで芽生えたのかもしれない。やりたい仕事ではなくとも、その先に自分の納得する“何か”があれば、そこにコミットする。そうして最初は営業企画をしていたが、徐々にパンフレットの編集やライティングを任せてもらうようになった。

しかし、時は2000年代。インターネットの勃興期だ。彼女は会社を辞めた後、「可能性の見えるものの方に駆け出してみたいと思って」ITベンチャーに転職する。

「Webディレクターとしてクライアント先に出向し、プロジェクト単位で事業を回していくという仕事でした。行く先々で、社員ではないけれど、社員のような立ち居振る舞いを求められていたので、一つの会社にぶら下がっている感じは、その当時から希薄だったのかもしませんね。」

そうした中で、大きな出来事が起こる。過労により心身に不調をきたしてしまったのだ。

「『わかりました、やります』と、何もかもを背負い、気づけば働きすぎてしまいました。自己管理ができていなかったんです。それで仕事を強制終了せざるを得なくなって。2010年のことでした。」

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一時期多くの業務をこなしても、体調を崩してしまえば、結局会社にもクライアントにも迷惑がかかる。仕事量を把握し、無理がないかを見極める。時には断ったり、人に振ったりすることも必要だ。その時得た教訓は、パラレルキャリアを実践する今も変わらず心に留めているという。

ルール③:「これだ!」と思うところに臆せず飛び込む

仕事を離れ、ただ呆然と過ごす日々。そんな“闇のシーズン”を抜け出すきっかけは、2011年に突然訪れた。

「東日本大震災の時、『何かできることがしたい』と思いました。でも、自分がちゃんと自分の足で立ってないと、何もできないですよね。そう思い、とにかく働くことにしました。対価を得ないとボランティアに行くこともできないから。」

働きながら、平日夜や土日に気になる場所に出かけて行った。ある時、『生き方デザイン学』という自由大学の講座に出会う。「結婚×出産×仕事の自分らしいカタチ」をテーマにした講義だ。NPO法人ArrowArrowの堀江由香里さんが講師を務めていた。

「それまでの私は、ライフイベントを切り捨てて働いていこうと思っていたのです。周りに仕事と子育てを両立している女性がいなかったこともあり、好きな仕事をするということと、結婚・妊娠・出産は捨てるものということがイコールだった。それなら私は捨てる側に行こうと決めていました。でも皆が皆、そうしているわけではなかった。」

同時に、「30年前から第一子を妊娠した女性の多くが仕事を辞めている」という現実が数値として出ていたことにも驚いたという。「両立することもできるのに、自分のように不可能だと思い、諦めてきた人もいるのでは?」そう思うと、居ても立っても居られず、彼女は、また彼女らしい行動に出た。

「この団体で働かせてください! 食い扶持は自分で稼ぐので、ボランティアでも何でもいいのでお願いします、と直談判しました(笑)」

たまたま運よく対価を得ながら働けることになったというが、二枚目の名刺に参画する時も、まさにこんな勢いだったことを思い出した。

ルール④:複数名刺を持って、やりたいことは全部やる!

彼女は、NPO法人ArrowArrowに参画した頃から2枚目の名刺を持つことを始めている。その理由を尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「東日本大震災の時に、1つの場所だけに居続けていると、必要なタイミングで動けないのではないかと思ったのです。自分が助けに行きたい場所があった時に、1つしか居場所がないと、そこを離れることに躊躇してしまう気がして。」

必要に応じて柔軟に動けるよう、編集ライティングの仕事も並行させて欲しいと交渉したという。1年の中でいくつかの仕事を掛け持ちしていることもあれば、ArrowArrowの事業に専念している時期もあった。

「本当にわがままな言い方をさせてもらうと」と前置きした上で、「やりたいことを全部やりたい。だから両方やらせてくれというのもありました。」と続けた。

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ルール⑤:「チームで働く」意識を持つ

ArrowArrowで出会ったワーキングマザーや彼女たちを支える企業に後押しされ、ライフイベントと仕事を両立するという選択をした彼女は、ある日代表の堀江さんに「あなたの働き方が信用できません」と苦言された。

「産後、何とか自分の立ち位置を確保することに必死でした。この領域は私が守ります!とばかりに仕事をしていました。でもそこで、『その仕事は、ArrowArrowの海野にやって欲しいわけではなくて、ArrowArrowがやるものだ。あなたがその仕事を抱え込むことは、組織にとって何のメリットにもならない』と言われたんです。まったくその通りだと思いました。」

育児と仕事を両立していると、子どもの体調不良等でチームのサポートが必要になるタイミングがある。しかし、「この仕事は自分のものだ」とばかりに抱え込んでしまうと、途中で誰かがサポートしようと思っても、難しくなってしまう。

そのことに気づいた彼女は、働き方を再考することにした。必要に応じてチーム内でサポートし合うために、どういう働き方をすれば良いのかを徹底的に考えた。

ルール⑥:自分の仕事を可視化する

「出産の前後で、私の働き方はまるで違うという自覚があります」。そんな彼女の自負は、この時周囲のワーキングマザーの働き方を観察したり、話を聞いてみたりしたことの結果、生まれたものだ。

「例えば、ある女性は、『自分にとって完璧じゃなくても、企画書や提案書を途中で代表にチェックしてもらう』と言っていました。内容を擦り合わせるのと同時に、進捗を報告するという意味で見てもらうのだ、と。また当時ArrowArrowには日報があったのですが、『その目的は、今みんながどれくらいのタスクを抱えているのかをマネジメント側も当事者も把握するためだと思っている』という話にも、深く納得しました。」

ワーキングマザーの工夫をつぶさに見て、聞いて知ったことは、彼女たちが「いかに短い時間で成果を出すか」、「どのようにチームや組織に貢献するか」にこだわっていること、そしてそのために「自分の仕事を可視化」していることだった。

複数の組織に所属している今、自分の全体タスク量を把握するのに加え、なるべく正確に各組織での稼働可能時間を算出しようと努めているのだと彼女は言う。

「どんなタスクが今の自分にあるのかを文字化するよう努力しています。その中で、今週中にやること、今月中にやること、といった整理もしています。それによって、どの程度その他の仕事に割けるのかという算段もつくので。何度でも自分の仕事を冷静に見つめる手段はとっていますね。」

二枚目の名刺がコミュニケーションツールとして使用しているslackには、彼女の業務が可視化されているスレッドがある。そこで自分の抱えている業務をオープンにしながら、業務整理をする彼女なりの工夫の一つのようだ。

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(海野さんが抱えている業務やその日の動きをオープンにしているスレッド「#tweet_chihiro」)

ルール⑦:1つの仕事にかける時間を決める

また子どもを持って、仕事のスピード感も変わったと彼女は言う。

この企画書は○分で書く、と決めて仕事を始めています。その中で、確実に詰めたい要点は何かということや、事務的に入れられる部分は○分でやろうということを、しっかり意識するようになりました。」

彼女のGoogleカレンダーを見ると、時間ごとに「どの組織の仕事をするのか」が記載されている。趣味や家族との時間を守るために、メリハリをつけて働く。そんな彼女の決意を表しているかのようだ。

理想の社会を実現するために、役割にとらわれず行動する

最後に、フリーランスでありながら、職を絞らずに働く理由を聞いてみた。

「ArrowArrowに入った時に、こうなったらいいなと思う社会のために活動したいと思いました。そうすると、自分のやる仕事の職種や内容は、ある意味どうでもよくなってしまったのです。実はArrowArrowでも、参画した当初はパンフレットを作るのが仕事だったのですが、それとは別の仕事をするようになりました。でも何のフラストレーションもわきませんでした。多分それは、自分の中の『固定観念を崩す』と言うミッションとつながっているから。二枚目の名刺でも同じですね。」

ArrowArrowでは「女性が出産を機に辞める」という固定観念を、二枚目の名刺では「1つの組織で専業する」という固定観念を、ALTでは「日本の女性における根強いジェンダーギャップ」をなくすために、彼女は自分の役割を限定せずに働いている。

自分が想い描く理想の社会を実現するために、職や役割にとらわれず、必要に応じて自分を変化させられる。それが、彼女が組織の内外を自由に横断しながら働ける所以なのだ。

【後編】では彼女のパラレルワークを支えるパートナーシップと、自由大学で講義する「ネオ・スタイルファミリー学」についてお聞きする。

ArrowArrowのメンバーとしてサポートプロジェクトに参加した時の話もチェック!

「サポートプロジェクト、やってみてどうでした?」プロジェクトメンバーがNPOに事後インタビュー【前編】

 

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ライター

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はしもと ゆふこ
はしもと ゆふこ
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女性誌出身の編集者。 「人生100年時代」に通用する編集者になるべく、雑誌とWebメディアの両方でキャリアを重ねる。趣味は占い。現在メインで担当するWebメディアで占いコーナーを立ち上げ、そこで独自の占いを発信すべく、日々研究に励んでいる。目標は「占い師」という2枚目の名刺を持つこと。
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