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2枚目の名刺を持つ最初のきっかけは何でもいい。目指していきたい理想の社会の姿とは

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NPO法人二枚目の名刺の運営メンバーであり、普段は医療法人で働く長澤佑美さんは、2016年から2枚目の名刺の活動をスタートさせた。

前編では、2枚目の名刺の活動を始めた経緯やその中で得たもの、ご自身の変化などについてお話をうかがった。

後編では、長澤さんの2枚目の名刺に対する想い、本業と2枚目の名刺の活動との両立についてや、今後の目標などについてお聞きする。

マルチタスクの中でも100%のコミットを目指す

現在、長澤さんはNPO法人二枚目の名刺で、企業連携、渉外、組織内のインターナルコミュニケーションなどを担当。イベントの集客やコーディネーションなどもおこなっている。

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『未来をつくるkaigoカフェ』との共催イベントの様子。(写真=長澤さん提供)

同時に、サポートプロジェクト(以下、SPJ)にも携わる。SCSK企業連携によるNPO法人両育わーるど(知的・発達障害児及び育成者と、地域住民・学生・企業の交流を促進し、リアルなつながりの実現を目指すサービス)のプロジェクトにかかわるほか、一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会(以下、ELC協会)のSPJデザイナーとして、今年5月にプロジェクトを立ち上げた。

同団体がおこなう『いのちの授業プロジェクト』という学びのプロジェクトのサポートを目的として、6月にキックオフを実施。現在は7名のメンバーとともに活動している。

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ELC協会のSPJメンバーと、キックオフミーティングにて。(写真=長澤さん提供)

「個人が自尊感情や自己肯定感を高めていくためには、各々が人の想いに寄り添うことができる社会になるためにはどうしたら良いのだろうと、以前から思っていました。ある勉強会でELC協会の方と出会い、社会や自分にとっての課題を話した時に意気投合したことが、SPJを立ち上げるきっかけとなりました。

参加メンバーはみな、団体の取り組みや考えに対しての共感の高さはもちろん、『いのちの授業』がこれからの社会にどれだけ必要かを強く感じています。最低でも週1回のミーティングをおこなっているほか、団体が実施する勉強会やイベントにも参加し、団体が実現したい社会への理解を深めながら、プロジェクトをすすめています」

長澤さんは現在、平日は医療法人の仕事をしながら、並行してNPO法人二枚目の名刺の運営メンバーとしての活動をおこなっている。1日に数件の予定が入ることがあったり、仕事のない休日も予定が入ったりしていることがほとんどで、タイムマネジメントや移動などに苦労する部分はあるという。幸い、現在の職場は入社前から長澤さんの活動を知り理解を示しているため、応援してくれる環境にある。

「NPO法人二枚目の名刺の中でも常にいくつかのプロジェクトにかかわっているので、どうしてもマルチタスクにはなっています。前職でも常にマルチタスクな状態ではあったので、それ自体は大変だとは感じていません。ただ、本業がある中で、2枚目の名刺の活動それぞれに完全にコミットするのが難しいという点に関しては、苦しさを感じています。

もちろん、気持ちの面では100%コミットしたいと思っているのですが、そうなると結果として、体力も100%使うことになる。ひとつのプロジェクトのみに関わっている人たちの熱量に対して、どうしても時間の配分が少なくなってしまうことに、申し訳なさを感じることはありますね。

現在取り組んでいるSPJでも、想いが強すぎてつい自分が手を動かしすぎてしまい、他のメンバーからも『そんなに頑張りすぎなくても大丈夫だよ』と言われることもあります(笑)」

『想い』が通じるコミュニケーションを

2枚目の名刺の活動で多くの人とかかわる中で、長澤さんは自分らしい工夫をしながら、周囲との関係性を築いている。

「2枚目の名刺でかかわる人たちはみな仕事や家庭を持っていたり、時間に制約があったりします。限られた時間の中でやりとりや調整をしながらも、想いがきちんと通じているか、同じ方向を向いているかなどを把握することには力を入れています。

独りよがりではなく、相手の気持ちを知ったうえで行動していきたいと考えているので、より細やかなコミュニケーションを取るよう心がけています。その分、自分の時間が少なくなることもあるのですが、好きでやっていることなので、辛く感じることはありません」

自らを「気が多くて好奇心旺盛」と評する長澤さん。出会う人全員に共感したり、ついつい想いが入ったりしがちであるという気質が、うわべだけでない、相手と深い信頼関係をつくる行動につながっているのだろう。

「私は、人との出会いを通じてここまで成長させてもらいました。自分の思考や価値観に良い影響をもたらしてくれる人に、まだ出会ったことがないという人もいると思います。自分の存在が、出会った人にとって少しでも良い変化をもたらすきっかけになってくれたらいいな、と考えています

自らが2枚目の活動を持つことで得たものを、周囲の人たちに積極的に還元していきたい。そんな彼女の誠実な姿勢はきっと、かかわる人たち全員に伝わっているはずだ。

「外から見えづらい」ものを抱える人たちの助けに

日々新たなチャレンジをつづける長澤さんに、これからの目標について聞いてみた。

「もともと興味のある文化系や医療系に関することを、今後も取り組んでいきたいと考えています。2枚目の名刺の活動を通じてさまざまな団体さんと知り合う中で、外からも見えやすく、きちんと支援や社会保障を受けられている病気がある一方で、外から見えづらいうえに社会の認知も足りない病気であるために、なんの支援や社会保障も受けられていない難病を抱える方々をサポートする団体があることを知りました。

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難病や精神疾患などの目に見えづらい病気の人は、その人に能力があるにも関わらず、体調や状態などによって動ける時と動けない時があります。今、世の中では働き方改革が進んでいますが、私は、目に見えづらく人から理解されにくい病気を持つ人たちが多様な働き方ができる社会になったほうが、結果として、一般の人たちの働き方改革にもつながるのではないかと考えます。

病気を抱える当事者にとっても、働くことが社会とつながる道筋になるとも思います。アートに関しても同様で、たとえば障がいを持つ方がアート活動をおこなうためのサポートをすることで、その方々が社会とつながる道筋をつくれたらいいな、と思っています」

育児や介護などで時間に制約のある人たちが働きやすい制度や仕組みが作られたり、パラスポーツなど身体に障がいを持つ人たちが活躍したりする場が増えている一方で、目に見えづらい病気に苦しみ、生きづらさや働きづらさを感じている人たちがいる。

常に社会に目を向け、人の言葉や想いに耳を傾ける長澤さんだからこそ、他の人が気づきづらい社会課題に気づくことができているのだろう。

最初のきっかけは何でもOK。まずは第一歩を

長澤さんは現在、2枚目の名刺の活動を推進する立場でもある。社会人が2枚目の名刺を持つことに、どのような意味があると考えているのだろうか。

「NPO法人二枚目の名刺の運営やSPJに携わる中で、企業の困りごとについてうかがったり、NPO団体と出会ってお話を聞いたりして、皆さんがそれぞれの立場から取り組んでいる社会課題に傾けているエネルギーに感心すると同時に、2枚目の名刺で何ができるかを常に考えています。

もちろん、誰もが同じようなエネルギーを持って行動できるわけではありません。まずは2枚目の名刺が、少しでも社会課題を知ったり、向き合ったりする機会になってもらえたらいいですね。社会課題はしっかりと見ようとしなければ見えない問題ですし、見えないふりをする人もいます。ですが、たとえばSPJに参加すると、今私たちの身近にある社会課題を無視できなくなるのではないかと思います。

誰もが人の想いに寄り添って動くことができればきっと、もっと社会はよくなる。そのために、2枚目の名刺を持つという方法があるのではないかと思います。たとえば本業の職種をひとつ選んだら、一生、その職種のことしか知ることができないですよね。本業とは違う視点からものごとを見ることも必要だと思いますし、2枚目の名刺は、本業では得られない経験を得られるきっかけの場であると考えています

最後に長澤さんから、2枚目の名刺を持つことに興味がある方、これから2枚目の名刺の活動をはじめてみたいと考えている方へのメッセージをいただいた。

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「2枚目の名刺を持つことに関心がある方の中には、『自分は社会に対して何ができるだろう』『自分にはどんな想いがあるのだろう』と考えている方もいると思いますが、最初のきっかけは、本当に何でもいいと思います。大事なのは、まず一歩を踏み出すこと。『今の仕事がつまらないから』『会社以外の時間をもてあましているから』という方もいるかもしれませんし、『自分がやりたいことをやってみたい、挑戦したい』でもいいと思います。

私もそうでしたが、SPJは、自分が好きなことをするという自己実現の場と、社会課題と向き合う場の、ふたつの側面を持っていると思います。その両方の部分があるとバランスが良いのではないかな、と感じています。

2枚目の名刺の活動をすることで、最初は自分に向いていたベクトルが社会へと向いていきます。その変化を、ぜひ楽しんでほしいです

2枚目の名刺の活動では、自分が興味のあることと社会課題の両方にきちんと目を向け、できることをやっていく。

その偏りすぎないバランスの良さが、結果として社会人の視野を大きく広げることになり、長澤さんのように前向きな行動につながっていくことは間違いないだろう。

写真:ハラダケイコ

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手塚 巧子
ライター
1987年生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社勤務等を経て、ライター・編集者として活動中。ビジネス、社会問題、金融、女性・学生向け媒体など、幅広いジャンルにて記事を執筆。小説執筆も行い、短編小説入賞経験あり。