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海外駐在員がインドネシアでプロジェクトを立ち上げ、2枚目の名刺を持った理由

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今や東京だけではなく、大阪や東北でも実施されている二枚目の名刺NPOサポートプロジェクト。でも、実は東京以外で初めて実施された場所がインドネシアであったことをご存知ですか? それも、日系企業勤務の海外駐在員がイチから立ち上げたのだということを。

NPO二枚目の名刺宛に「地元で二枚目の名刺を立ち上げたい」、「2枚目の名刺のコンセプトを広げたい」という問い合わせをいただくことがありますが、インドネシアでサポートプロジェクトを主催した井上正夫さんが同様のコンタクトしてくれたのは、2016年の初め頃。

なぜ井上さんはインドネシアという異国の地で、しかも前例がない中でプロジェクトを立ち上げようと思ったのか。2枚目の名刺Webマガジンが話をお聞きしました。

「自分の仕事は人の役に立っているのだろうか」という疑問

―――井上さんが2枚目の名刺を持とうと思ったきっかけを教えてください。

井上:2010年からインドネシアに赴任し、今と同じ管理部門で働いていました。経営に近い立場で働くことができ、すごくやり甲斐を感じていたんですが、「自分の仕事は社会のためになっているのか」とモヤモヤし始めて。環境を変えて、社会のためになることをしたいという気持ちも自分の中に芽生えました。

―――もっと人の役に立ちたい、と?
井上:そうです。それで、いろんな人と話をしながら、自分が情熱を持てることは何なのかということを整理していったら、「成長・学び・新しいこと・仲間・挑戦・応援」というキーワードが出てきました。それなら今いる環境の中でも自分が情熱を感じることができるのではないかと思い、「本業を持ちながらも自分がこれまでに本業で培ってきたことを社会課題解決に活用したい」ということをインドネシアで働く日本人の知人に話していたところ、知人から「二枚目の名刺というNPOがある」と教えてもらいました。

―――井上さんのベースに、「社会課題を解決したい」という気持ちは常にあったのですか?
井上: 社会事業への関心はずっとありましたね。NPOなどのリソースが足りていないところで自分の社会人としてのスキルやノウハウを活かしたい、社会に役立ちたいという気持ちを持っていたので、二枚目の名刺のビジョンやミッションを見たときにすごく共感を覚えました。またこうした取り組みを通じて、自分自身の成長や学びにつながるとも思ったので、「サポートプロジェクトをやってみたいな」と率直に思いました。

―――それで二枚目の名刺にコンタクトを?
はい。インフォメーションから問い合わせて、自分の想いを当時の二枚目の名刺のメンバーにお話ししたら、「一緒にやってみましょう!」「インドネシアでサポートプロジェクトを立ち上げましょう!」と言ってくれて。二枚目の名刺のメンバーになりました。

最初はすごく大きなものをイメージしていたんですよ。現地の人たちや現地のNPO団体をたくさん巻き込んで一大プロジェクトをやるといった風に(笑)。でも、「できることから小さく始めてみましょう」「少人数でもいいからまずはやってみたらどうですか?」と言ってもらい、身の丈で始めることができました。
サポートプロジェクトの経験がある方々からのアドバイスはとても心強かったです。

2枚目の名刺を持つことを後押ししたもの

―――小さく始めたとはいえ、自国以外の環境で、しかもご家族もありながら、2枚目の名刺を持つことにためらいはありませんでしたか? 海外のサポートプロジェクトは前例もありませんでしたし。

井上:はじめは不安もありました。個人的な取組みとはいえ、会社に知られたときに、何か言われてしまうのかな、ということもありました。でもサポートプロジェクトはプライベートの時間を使って自分の意思でやるボランティア。二枚目の名刺のメンバーからも、「本業にしっかり取り組んでいるからこそ、2枚目の名刺の活動も応援してもらえる」という話を聞き、本業もしっかりやっていこうと意識して取り組みました。

当時、家庭にもまだ小さな子どもがいましたが、妻は僕の“何かしたい”というモヤモヤを知っていたので、後押ししてくれました。プロジェクト中は休日の家族時間を割いた部分もあり、迷惑をかけたところもありますが、とても協力してもらいました。

―――ご家族のサポートもあったのですね。井上さんが実施された、2回のプロジェクトの概要を教えていただけますか?

井上: 1回目は途上国の子どもたちの教育支援を行う日系NPOの運営サポートです。その団体は一年ごとに駐在スタッフが変わるのですが、派遣される人が変わるたびに現地パートナーとの付き合いが希薄になったり、書類やデータの引き継ぎがうまくいかなかったりする、といった課題を抱えていました。そこで、プロジェクトでは僕を含めた4名のメンバーで、引き継ぎ業務を円滑にするような解題抽出とアクションプランの策定までを行いました。

2回目は、前回メンバーとして参加してくれた女性が立ち上げた団体からお声がけいただきました。その団体は、日本語を勉強する海外の学生たちに日本語学習のサポートをしたり、日本文化を伝えたりしており、ちょうどその頃ボランティアスタッフや参加者が増え、団体が次のステップに移行する時期でした。しっかりとした組織運営をしていきたいということで、ビジョンやミッションの策定や運用ルール作りを手伝わせてもらいました。

日本のサポートプロジェクトはCommon Roomで団体と社会人メンバーをマッチングしていますが、僕がインドネシアでやったプロジェクトは、「こんなことをやるので、一緒にやりませんか?」と身近な人に声をかけて実施したもの。
「二枚目の名刺海外初のサポートプロジェクト」っていうのはおこがましいくらい、本当に小さく始めました。

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「プロジェクトを通して団体内の横のつながりも強くなった」という感想も寄せられた。

信頼関係の構築がプロジェクトのカギ

―――サポートプロジェクトで社会課題に携わってみて、何か発見はありましたか?

多くの気づきがあったのですが、まずは信頼関係の大切さです。スタートする前に、二枚目の名刺のメンバーから“サポートプロジェクトは団体との信頼関係が成否を決める”と聞いていたのですが、プロジェクト中に腹落ちしました。活動への共感はもちろんのこと、団体と目線を合わせること、そのために密なコミュニケーションをとること、支援する側・される側という立場を作らないこと、こうしたことの積み重ねが団体からの信頼につながり、プロジェクトの内容を左右するのだろうと思いました。

また、社会人チームとして会社の組織を越えたメンバーと協働できたことも良い経験になりました。プロジェクト中は、会社の立場やコネクション、ルールが通用しませんし、与えられた指示通りにやるわけではありません。普段仕事では接する機会のないメンバーと同じ目的を持って、答えのない課題に向き合うわけです。「どう取り組むか」を考える道のりで大きく成長できたと思いますし、異業種の方の課題抽出の仕方など新しい発見もあり、面白さも感じました。

今の仕事の中でも、できることがもっとある!

―――2枚目の名刺を持つ前に持っていたモヤモヤはなくなりましたか?

井上:モヤモヤとするタイミングはありますが、だいぶ晴れましたね。今は「違う環境の中で働きたい」というよりも、「今ある仕事環境の中で、もっとできることをしよう」と思うようになりました。

団体さんからいただいた「ためになった」という言葉や、海外で働きながら2枚目の名刺を持つことができたということは、自分にとっての大きな自信になったと思います。どこにいても、社会課題を解決できるし、人の役に立てるのだと。

―――本業先でも何か変化はあったのでしょうか?

今も管理部門で働いているのですが、課題を持っている人が問い合わせをしてきた時に、これまで以上に「一緒に解決しよう」というスタンスで話しをしたり、話を聞いたりするようになりました。これは、「対象と目線を合わせる」というサポートプロジェクトの経験があったからこそ、より意識できるようになったことだと思います。

2回目のプロジェクト先から、「客観的な立場からの意見が、自分たちでは気づかなかった視点で非常にありがたかった」という声をいただいたんです。違う立場からの視点が、力になるんだという気づきを得たので、「その人に見えていないことはないかな?」と広い視野で物事を捉えるようになりましたし、それが僕のいる管理部門に求められていることなのだと改めて意識するようになりました。

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「異業種の方との交流が視野を広げ、団体が前進しているのを感じた」という声も。社会人と団体、双方にとって有意義な時間だったようだ。

いつか上海でサポートプロジェクトを!

―――赴任先が変わり、2017年7月から上海に駐在されていますが、上海でプロジェクトを立ち上げる予定は?

井上:やりたい気持ちはとてもあるのすが、今はボランティアで子どものサッカーチームのコーチをやっているため休日が埋まってしまっていて…(苦笑)。でもいつかサポートプロジェクトをまたやりたいと、社外のコミュニティーを広げたり、どんな課題があるのかなというアンテナを張ったりしながら生活しています。

―――世界中にプロジェクトを通したコミュニティーが広がっていきそうです。最後に、かつての井上さんのようにモヤモヤしている方へのメッセージがあればお願いします。

井上:何かしたいけど、何をすればいいのかわからない。漠然と今の環境から抜け出したいという気持ちでいるのなら、小さい規模でも、まずはトライアルでもいいので、やってみてはいかがでしょうか? Common Roomに参加することでも良いと思います。

僕は「少人数でもいいからやってみましょう」という一言に背中を押してもらい、勇気を出して「こんなことをしたいから一緒にしない?」と知人を誘ったことで、これまでとは違う経験をすることができました。一歩を踏み出すことで世界が広がると思いますよ。

―――ありがとうございました。上海でのプロジェクト発足も楽しみにしています!

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井上さんの呼びかけで集まったインドネシアサポートプロジェクトのメンバーと団体スタッフ

NPO二枚目の名刺は、自らミッションを持ってプロジェクトを立ち上げたいと思っている方も応援しています。

これまでに二枚目の名刺から立ち上がったプロジェクトはこちら
公務員×2枚目の名刺プロジェクト
パラスポーツ×2枚目の名刺プロジェクト

もしあなたが2枚目の名刺を持ってみたいのなら、このWebマガジンで自分にしっくりくる2枚目スタイルを探し、参考にしていただくもよし、コモンルームに参加してサポートプロジェクトをきっかけにしていただくもよし。

もし井上さんのように自分のいる場所でプロジェクトを立ち上げようと思ったり、既にマイミッションを持っていたりするのなら、二枚目の名刺で仲間を集い、プロジェクトを立ち上げることもできます。

あなたの2枚目の名刺はどんな形でスタートを切りますか?
パラレルキャリアの基本記事

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はしもと ゆふこ
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女性誌出身の編集者。 「人生100年時代」に通用する編集者になるべく、雑誌とWebメディアの両方でキャリアを重ねる。趣味は占い。現在メインで担当するWebメディアで占いコーナーを立ち上げ、そこで独自の占いを発信すべく、日々研究に励んでいる。目標は「占い師」という2枚目の名刺を持つこと。