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言葉より心が通じ合えばわかりあえる。10回目のSocial Kids Action Projectで子どもたちが渋谷のまちで見つけたもの

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2017年のトライアルから9年。節目となる10回目の『Social Kids Action Project(ソーシャルキッズアクションプロジェクト。以下SKAP)』が開催されました。渋谷駅周辺は「100年に1度」といわれる大規模な再開発が進行中。この9年の間にも渋谷スクランブルスクエア、MIYASHITA PARKが完成するなど大きく変わりました。

また、コロナ禍を経てインバウンドが多数やってくるなど世の中の移り変わりもあります。そして、渋谷区立小中学校では「未来の学校」プロジェクトが進行し、探究「シブヤ未来科」では子どもが主体となる探究的な学びを街ぐるみで推進し、それを支えるような学校施設の建て替えが進んでおり、教育もバージョンアップしています。

まちの姿も、教育のかたちも、変わっていきますが、それでも変わらないものもあります。それは、渋谷のまちを舞台に、住む・働く・訪れる人へのインタビューを通じて課題を見つけ、解決アイデアを区長をはじめとした大人に向けてプレゼンするこのプログラムに参加する子どもたちの前のめりなエネルギーです。二枚目の名刺とKids Experience Designerの植野真由子さんの共催で行われた今年のSKAP、その4日間を振り返ります。

 

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インクルーシブ社会を生きる小学生が持つスキルは『対話』と『協働』。新たなまちづくりプレイヤーを生み出すSocial Kids Action Project

正解も不正解もないSocial Kids Action Project。楽しみながら「自分にしかできないこと」を見つけていく

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聞いて、歩いて「渋谷」の解像度を上げていく

今年のSKAPに集まったのは、新小学3年生から新中学1年生まで9名の子どもたち。年齢の幅が大きかったからこそ自然と助け合う空気が生まれていたようです。年上のメンバーや2回目の参加になるリピーターが先導し、年下の子たちが困っていればサポートしあう。年齢差が大きいことが、今年参加した子たちの豊かな個性にもつながっていると感じました。

初日は渋谷の街を「知る」ことからスタート。メンターとして参加している渋谷区の職員の方から人口や観光客数など区の現状を聞き、渋谷区観光協会の金山さんからは観光客が何を求めて渋谷に来るのかを学び、東急不動産の中村さんからは渋谷駅前が今後どのように開発されていくのかを教わりました。

 

 

 

金山さんの講演では、ちょっとしたハプニングが。プロジェクターがうまく動かず、急遽子どもたちが金山さんのパソコンを囲んでスライドを見ながら説明を聞くことに。そのおかげで、ぎゅっとした親密な空気が生まれ、それまで少し遠慮気味だった子どもたちから金山さんに向けて、どんどん質問が飛び出していました。金山さんによると、渋谷駅前のスクランブル交差点を見下ろす『スターバックス コーヒー SHIBUYA TSUTAYA店』は世界一の売り上げを記録したことがあるのだとか。また、渋谷は東京都を訪れる外国人の訪問先として3年連続で1位を獲得しているそうで、自分たちが住む渋谷が海外の方から人気の高い都市なのを実感したようです。

 

お話を聞いた後は、雨の中、渋谷駅周辺を自分たちの足で歩いてみました。渋谷ヒカリエ、渋谷スクランブルスクエア、渋谷ストリーム、渋谷駅、渋谷サクラステージ、渋谷フクラスと、いくつもの施設が空中で「デッキ」と呼ばれる歩行者用デッキによってつながっているのがわかりました。ハチ公やスクランブル交差点は、雨の日もカメラを構えた旅行客でぎっしり。「渋谷ってどんな街?」と体感することになりました。

 

 

 

「話す」力が大人との距離を縮めていく

2日目は、渋谷区役所周辺や渋谷センター街のお店、施設へと2班にわかれてインタビューに行きました。出発前にはメンターの大人たちが店員役となり、しっかりとインタビュー練習をしました。

インタビューの心得として伝えられたのは「答えを掘り下げよう」。質問は事前に準備していきますが、その質問への答えを聞いて終わりではなく、答えからさらに「それってどういうこと?」と、質問を重ねると、相手の深い思いに気づけるということ。また、答えを掘り下げるには、聞いた言葉を一字一句逃さずメモするのに集中しすぎずに、相手の話に耳を傾ける必要があります。

それをふまえてインタビューに向かった場所のひとつ、桑沢デザイン研究所では、「渋谷の課題はなんですか?」という問いに対して、インタビューを受けてくれた奥山先生から「みなさんはなんだと思います?」と逆に質問を受けてびっくりするひとコマも。いくつかのやりとりの後、奥山先生は現在の職に就くまでの話の中で「偶然に身を任せることで訪れた出会いもある。あえて目標を立てずに生きることも大切だと思います」と、子どもたちに伝えてくれました。筆者やメンターなど大人たちには深く刺さったこの言葉。子どもたちのこれからの人生でも「小学生のときにあんなことを聞いたな」と生きてくるでしょう。インタビューとは単に聞き手が知りたいことを話してもらうだけではなく、対話の中から新たな気付きを得るものだと実感させられました。

 

 

2日目に初めて会ったメンターもいるはずなのに、インタビューを終えて区役所に戻ってくるころには、きょうだいや友達のような関係に。昼休みには「一緒にお昼食べようよ~!」と大人と子ども交じり合ってのランチタイムを楽しんでいました。筆者もインタビューからの帰り道、「どこのファストフードのポテトがいちばんおいしいか」を子どもたちと話したのが印象に残っています。年齢も違うしバックグラウンドもわからない、そんな相手とこんなふうに雑談ができるのは、実はすごいスキルではないでしょうか。

 

「ゴミ問題」に大人も子どもも楽しみながら議論!

今年のSKAPの新たな試みのひとつは、「ゴミ問題」をフィーチャーしたこと。これまでも、フィールドワークやインタビューを重ねた結果、ポイ捨てを減らすためのアイデアが出てくることが多かったからです。渋谷区では2026年4月に「きれいなまち渋谷をみんなでつくる条例」が改正され、過料2,000円が徴収されることが決まりました。区全体でゴミのポイ捨てを減らし、きれいなまちにしようと取り組んでいるタイミングで、SKAPでも「ゴミ問題」をクローズアップすることになったのです。

2日目の午後に登場したのが、渋谷駅周辺で定期的にゴミ拾いを続けるソーシャルグッド活動家のばれん太さん。ばれん太さんから伝えられたのは単純に「ゴミのポイ捨てはよくない」ということではありませんでした。山や川、道路には渋谷よりももっとたくさんゴミが捨てられている。渋谷以外のまちでも、ゴミ問題は起きている。それなのになぜ「渋谷といえばゴミ問題」のイメージになっているのか?という投げかけには、先入観が崩されていきます。その後にはロールプレイ形式の議論も。くじ引きで「ポイ捨ていいじゃん派」と「ポイ捨て反対派」に分かれ、それぞれの立場になって意見をぶつけ合います。

また、くじ引きで決めるのは「●●派」だけではありません。「設定」と「名前」が書かれた札をランダムに選ぶことで、完全に自分とは違う誰かの立場に立ってゴミ問題を考えることになるのです。「ポイ捨てはよくないことだからダメでしょ!」と言っているだけでは解決しない。ポイ捨てする人はどういう気持ちなのか想像することで解決策が見えてくるというばれん太さんからの教えです。このロールプレイ議論に子どもたちも大ハマりし、あまりの盛り上がりぶりにメンターも交えての延長戦に突入。ここでも大人と子どもが混じりあっての対話が繰り広げられました。これぞSKAPでしか生まれない時間でしょう。

 

そんな議論をふまえて、3日目には実際に街へ出てゴミ拾いを体験しました。当日は別のゴミ拾いイベントも行われていて、ゴミはひとつも落ちてないかと思いきや、茂みの中やベンチの下をのぞくと、あるわあるわ……。「次のスポットに移動するよ!」「そこは拾うの大変だからいいよ!」と声をかけられても、草むらにかき分け、ベンチ下に顔を突っ込みながら宝探しのようにゴミを拾い続けていました。

 

結果的に発表会でゴミに関するアイデアを出した子は半分ほどでした。テーマを提示したからといって全員が同じ方向を向くわけではなく、アンテナがひっかかるのは、人それぞれ。それもまたSKAPらしいと感じました。

 

言葉が通じなくても、心が開いていれば伝わる

3日目のもうひとつのプログラムにして、ある意味SKAPの山場ともいえるのが、突撃インタビュー。2日目の街で働く人へのインタビューとは違って、初対面のSKAPについて知らない人に対して、「渋谷についてどう思いますか?」と声をかけるのです。ただ質問をするだけでなく、SKAPの趣旨も知ってもらわなければいけません。

最初に突撃インタビューに訪れた代々木公園 BE STAGEでは、ブレイキンやダブルダッチなどストリートスポーツのイベントが行われていました。パフォーマンスを行うアスリートの方々が気さくに子どもたちに声をかけてくれ、ダブルダッチやフリースタイルバスケットボールなどを体験させてもらった流れでインタビューのお願いも。そこから勢いがついて、BE STAGEを訪れていた方々にどんどん声をかけていきました。

 

場所を移して北谷公園に向かうと、公園にいるのは9割が海外からの旅行客。いざとなったら翻訳アプリに頼る想定で話しかけてみると、インバウンドの観光客の方々も、とても快く応じてくれました。特に新中1は翻訳アプリを使わず、知っている英単語だけでの会話に挑戦。たどたどしい会話だったでしょうが、迷惑そうな顔をする方はおらず、子どもたちの話に耳を傾け、渋谷の印象について「渋谷はきれいな街」「人が親切」と真摯に答えてくれました。「道が混んでいる」「地下鉄の車両が狭い」などの声もありましたが、渋谷で働く人たちの「ゴミが気になる」という声とは見え方が違うようです。その発見もリアルな学びに。

 

「対話」のために大切なことは、言葉が通じるかどうかだけではない。お互いの心のドアが開いていれば、伝わるんだ。そんなことを感じた今年のSKAPでした。

 

「話す」ことで人が動く。そして渋谷が変わっていく

ついに迎えた最終日。長谷部健渋谷区長をはじめ、講演やインタビューに協力してくれて方々、保護者など大人たちの前に緊張していたのか、3日目までとは違っておとなしい子どもたち。一生懸命アイデアをまとめた模造紙を前に、自分たちの気づきやイメージを発表しました。

協力してくれる大人と話が進めば、すぐにでも実現しそうなアイデアもあれば、実現には少し時間がかかりそうなアイデアまでさまざまでしたが、発表に対しては会場の大人から「こうしたらもっと面白くなりそう」「こんな形だったら一緒にできるかも」とコメントをもらいます。そんな中、今年は思いがけない反応がありました。ゴミ箱をアプリで呼ぶことができたら、ポイ捨て防止になるかもというアイデアは、ハードルが高いように感じましたが、長谷部区長が「面白いね」と反応。「区長が好感触なら、実現に向かっていくかも!?」と空気が変わった瞬間でした。

発表会では、過去の参加者によるプロジェクトの進捗報告もあります。昨年度の参加者は、大人との会話や学びの結果、プロジェクトの内容がどんどん変わっていき、「渋谷の街をテーマにしたプラモデルが入ったカプセルトイを作りたい」という内容に。3Dプリンターで作ったという試作品も見せてくれました。廃棄する衣類から紙を作って渋谷区内で活用する「渋谷ペーパープロジェクト」に取り組む先輩は、すでに高校生に。小学生のときに今年の参加者と同じように模造紙1枚の発表からスタートし、たくさんの大人との対話と協力を通じて自分のプロジェクトを育ててきた先輩は、今年の参加者にこんな言葉を贈りました。

「やりたいと思っていることは今と変わっていくかもしれない。でも、楽しむ気持ちを忘れずに進めていって!」

まわりの人に「こんなことやってみたいんだ」と「話す」のが、プロジェクトが進んでいく第一歩。特に、今までは遠い存在だった大人と話すことで、「手伝いたい!」「一緒にやろう!」という展開が待っているかもしれません。生成AI、3Dプリンターなどテクノロジーも身近な存在になり、自分の思いを具体化しやすくもなっています。今年のアイデアも、本人たちの思いやさまざま大人との出会いによって成長していくのでしょう。この先の10年でどんなアイデアが飛び出し、過去のアイデアはどのような変遷をたどっていき、それらが渋谷のまちをどのように変えていくのか。その展開が今から楽しみでなりません。

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古川 はる香
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フリーライター。女性誌や育児誌を中心に雑誌、書籍、WEBで執筆。
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