TOP > 電通が労働環境改革の一環として試験導入した「インプットホリデー」で、社員の生活と仕事はどう変わるのか?

電通が労働環境改革の一環として試験導入した「インプットホリデー」で、社員の生活と仕事はどう変わるのか?

このエントリーをはてなブックマークに追加

多くの企業が働き方改革の実現に向けて、試行錯誤や社内での議論を重ねる中、今年6月に月に1度の週休3日(実質的に)となる制度「インプットホリデー」の試験導入をスタートさせた株式会社電通。この制度によって生まれる余暇で社員の生活や仕事はどう変化するのか、あるいは(企業人事の方であれば)果たしてどのようにして休暇を増やすことが可能になったのか、知りたいとは思いませんか?

「週休3日」という制度が2枚目な活動を持つパラレルワーカーや2枚目の名刺の持ち方を探るプレパラレルワーカーにどのように作用するのか気になったので、電通本社に話を聞きに行ってきました。

IMG_0006_original

「まだ試験段階なので、お話しできることは少ないかもしれませんよ」と取材に躊躇されていたインプットホリデーの責任者である濱崎伸洋さん。それでも、「きっとこの制度に関心のある企業や2枚目ホルダーは多いはず。なぜこの制度をスタートさせたのか、何を目的としているのか、ぜひ教えてください!」と取材申し込みをしたところ、快くお引き受けしていただけました(取材を引き受けて下さった、写真左から河南周作さん、濱崎伸洋さん、芦田秀さん、ありがとうござました)

 

働き方改革は、休み方改革。休みやすくするための「インプットホリデー」

二枚目:御社が試験導入した「インプットホリデー」について伺いたいのですが、なぜ休みを増やす取り組みを始められたのでしょうか?

電通:弊社は、過重労働問題の再発防止に向けて、2016年11月に労働環境改革をスタートさせました。この改革は労働時間の短縮と業務品質の向上を両立して一人ひとりの社員が自己の成長を実現・実感できるようにすること、です。弊社ではその一つとして、今までの業務を100とした場合、それを80の時間で行うことを目指していますが、そのためにはそれなりの覚悟と努力が必要です。そこで、役員と社員が集まってプロジェクトチームを作り、社員が気持ちよく改革に邁進できるムード作りや改革をポジティブに捉えてもらえるような施策を打つことになりました。

その中で、電通独自の休暇を作るのはどうかという話になったのです。また一方で、「働き方改革」と「休み方改革」は両輪であり、業務品質の向上の為にも休み方改革にもきちんと取り組まなくてはならないという話が出てきました。

二枚目:休み方改革……。確かに日本人は休むことが苦手だと言われていますもんね。

電通:そうなんです。問題は、「休むことは自分の成長を止めることになるのではないか」と後ろ向きに考えている人が多いことでした。

二枚目:広告会社のお仕事だと、取引先とのスケジュール調整も大変そうです。インプットホリデーの実施日に休めないという社員もいるんじゃないですか?

電通:あらかじめ休みを決めているので、社員にはなるべくそれに合わせてスケジュールを組むようにしてもらっています。取引先にも「より良いアウトプットのための休みなので、ご理解ください」と、インプットホリデーの趣旨をきちんと説明し、締め切りなどの調整にご協力いただいています。

取得率は非常に高く、7月に該当日に休んだ人は88%で、振替休日を合わせると96%でした。ちなみに、最初のインプットホリデーとなった6月の状況は、該当日に94%、振替休日を合わせて97%でした。

二枚目:90%を超えるとは、すごいですね!

IMG_9933_original

 

なぜ「インプット」なの? インプットホリデーの由来と目的は?

二枚目:ところで「インプットホリデー」というネーミングがユニークですね。インプットするための休暇ということですが、この制度名の由来を教えてください。

電通:これは現場の社員から出てきたアイデアなんですよ。弊社の仕事では、「いかに質の高いアウトプット」をするかが問われます。そのためには、良いインプットをしなければならない。アイデアが枯渇してしまいますからね。そこで、インプットすることの大切さを会社全体で見つめ直そうということで「インプット」という言葉が出てきました。

それに良いインプットをすることは、労働時間の削減にもつながります。長時間労働是正のためにも、短い時間で質の高いアウトプットをすることが求められるので、自分の引き出しにネタを豊富に入れておき、必要に応じてポンと提案できたらいいですよね。日頃からインプットを大切にしようという想いを込めて「インプットホリデー」という名称になったんです。

二枚目:なるほど。良いアウトプットをするための休暇なんですね。

電通:あくまでも「休暇」なので、用途は社員の自由です。でも、他社が働いている平日に休みを設けることでの気づきはあるなと思いました。

 

インプットホリデーの効用とパラレルワークへの期待 

二枚目:平日に休むことでの「気づき」とは?

電通(河南さん):個人的な話で恐縮ですが、私はデパートや量販店を回ったり、テレビを観たりして過ごしました。そこではっと気づいたんです。我々は広告業界にいながら、意外と世の中の人たちが平日の昼間にどのように過ごしているのかを見る機会がないし、ゆっくりテレビを見たりすることがないなぁ、と。そういうわけで、インプットホリデーがちょっとしたリサーチデーになりましたね。

二枚目:なるほど。平日昼間の一般ユーザーになるという体験をされたのですね。休暇中、自由に過ごした体験が、新たな視点を伴ったインプットになったわけですね。平日には主婦向けの商材も多いでしょうし、より良いアウトプットにつながりそうです。他の社員の方はどんな過ごし方をされているのでしょうか?

電通(濱崎さん):まだ細かな声を拾えてはいないのですが、ある社員はお子さんと一緒に、車いすバスケットボールの国際大会を観に行ったそうです。選手たちが激しくぶつかり合う様子は、格闘技のようでとても新鮮だったようで、その社員とお子さんも、障がい者に対する意識が変わったそうです。

また、同僚と釣りに行ったという人もいました。釣りには興味があってもなかなか行く機会がなく、この日初めて体験したそうです。

これは私の主観的な考えですが、突然与えられた休暇をどう過ごそうかと考えたとき、多くの人は「何か新しいことをやってみようかな」という気持ちになるのではないでしょうか。 

二枚目:新たな物事への興味が2枚目の名刺を持つことにもつながりそうですね! これまでWebマガジンでも、様々なパラレルワークをしている電通社員に取材をしてきました。そうした方々の2枚目活動に割く時間が増えることで、本業でのアウトプットといった意味でも社会に多くのプラスが生まれそうです。

電通:そうですね。弊社としても2枚目の名刺や新しいことを始める社員の取り組みは後押ししていきたいものです。

 

電通社員の2枚目の名刺はこちら

古い町並みの看板の文字からフォント作成!?「のらもじ発見プロジェクト」を手がける、電通の若手アートディレクターに聞く

「職業=自分」。複数の名刺を持ち、社会人が自律的キャリアを形成するサポートを

「プロボノ」って、流行ってるけど実際どうなの?数多のNPOをサポートしてきた電通マンが語り尽くす

LifeWorkS Projectがデザインする未来・会社・社会ーここから汐留のコレクティブ・インパクトが生まれる

 

電通が「休み方改革」をするために取り組んだ業務効率化とは?

二枚目:「本業と、それ以外のことで社会の役に立ちたい」と活動する2枚目ホルダーにとって、週休3日という制度は魅力的に映るのではないかと思います。でも、休暇は増えても業務量は変わらないですし、導入に反対の声はなかったのですか?

電通:そうした声もありました。「電通だけが休むというのは、さすがに難しいですよ」と。社内では、労働環境改革推進室が中心となって説明会をはじめ、イントラの掲示板、メールを通じて何度も説明を行い、同時に現場を通じて広告主や媒体社など様々なステークホルダーにご理解いただけるように働きかけた結果、徐々に社内外で納得が得られるようになっていったんです。取引先向けの説明文書は改革推進室で作成し、社員が説明しやすいように支援したりもしました。

二枚目:労働環境の整備については、具体的にどのような対応をされたのですか?

電通:労働環境改革の中で、業務効率化を図っているんです。部署ごとに業務棚卸しをして「廃止する業務」「簡易化する業務」「機械化する業務」「アウトソーシングする業務」などに分けてもらい、改善策を策定したり、営業職の移動時間を短縮するため全国20ヶ所にサテライトオフィスを設置したり、全社員の予定表を共有することで会議のスケジューリング時間を短縮化したり、オンライン会議を実施したり……様々な手段で労働時間の削減に努めました。

ロボットの導入で業務効率化・生産性向上を図るRPA(Robotic Process Automation)については、2018年6月末時点で約600の業務工程に導入済みで、月に約16,000時間の創出につなげています。

IMG_9961_original

(電通オリジナルのミネラルウォーター。「次の移動があるので5分前には、出ます」「今日、方向性はまとめましょう」など、会議の効率化につながるフレーズが書かれている。こうした電通らしい取り組みも労働時間の削減に一役買っている)

 

二枚目:業務効率化によって削減した労働時間を休暇に充てるということですね。

電通:その通りです。2016年に2,166時間だった社員一人当たりの総労働時間が、2017年には2,031時間になり、今年はさらに減る見通しです。単純作業にかける時間を減らせば、その分、社員がより豊かで創造的な生活や仕事に割く時間が増えますよね。休み方改革に力を入れると同時に、そうした時間の使い方ができるようになればと思っています。

 

「インプットホリデー」の本格導入に向けて

二枚目:最後に、「インプットホリデー」はまだ試験的な取り組みであるということですが、どのようにして効果を測り、継続の可否が検討されるのでしょうか?

電通:今年中に全社員アンケートを実施する予定で、試験導入してみてどうだったか、別な形の休暇制度の方がいいのではないかなどの意見を集めたいと思っています。それとともに、全体の取得率を出して振り返り、2019年以降の休暇制度について検討することになっています。

この12月で労働環境改革の基盤づくりも終了する予定です。先ほども申し上げたことですが、我々がこの改革で目指していることは、労働時間の短縮と業務品質の向上を両立し、一人ひとりの社員が自己の成長を実現・実感できるようにすることです。今後もインプットホリデーをはじめ、社員一人ひとりの成長を後押しする施策については、より一層力を入れて取り組んでいきたいと思っています。

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
ライター

ライター

編集者

編集者

カメラマン

カメラマン

はしもと ゆふこ
ライター
女性誌出身の編集者。 「人生100年時代」に通用する編集者になるべく、雑誌とWebメディアの両方でキャリアを重ねる。趣味は占い。現在メインで担当するWebメディアで占いコーナーを立ち上げ、そこで独自の占いを発信すべく、日々研究に励んでいる。目標は「占い師」という2枚目の名刺を持つこと。
関連記事
タイがカモになる!?株式会社週休3日に訊く「週休3日正社員制度のメリット」
2018.09.05
タイがカモになる!?株式会社週休3日に訊く「週休3日正社員制度のメリット」
持ち方・スタイル