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目指すはNPO広報のスペシャリスト!2団体での社外活動と大学院を掛け持ちするPR会社広報-高橋明日香さん

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広報部と言えば企業の花形部局として憧れの対象だったりもする。ただし、広報を戦略的にしっかり取り組める企業ばかりではないのも、また事実。ましてやNPO法人のように決して規模が大きくなく、ミッションやビジョンの実現に邁進している組織では、どうしても広報が後手後手になってしまう。そんな状況に手を差し伸べたいという夢を抱いたのが、PR会社勤務の高橋明日香さんだ。それは「素敵な活動なのに、知られていないのはもったいない」という素朴な思いから始まった。

大好きなケニアのことを、どう伝えればいいのか?

PR会社に勤務して5年。NPO法人二枚目の名刺の運営メンバーとして活動しながら、NPO法人シャプラニールのサポートプロジェクトにも参加している高橋明日香さん(参照:「NPOサポートプロジェクト」で社会人が学んだこと)。NPO法人の活動に興味を持ったきっかけは何だったのだろう?

「初めてNGOやNPOに興味を持ったのは中学生くらいの頃だったと思います。詳しいきっかけは忘れてしまいましたが、『世界を舞台に働くのってかっこいい!』『国際協力ってかっこいいなぁ』とぼんやり感じていたんです。一時は国連職員になりたいとも考えていましたよ(笑)。今思えば、いろいろなNGO・NPOが創立され、その活動が注目され始めた時期だったような気がします」

その思いをさらに強く抱いたのは高校生のとき。通っていた高校の夏休みの研修プログラムのなかに、「アフリカ野生教室」という10日間ケニアで過ごすユニークなプログラムがあり、それを選ぶことにしたのだ。「もともと動物が好きだったんですよ」と明るく笑う高橋さんだが、このプログラムへの参加が、“今”につながる重要な出会いをもたらす。

「サファリに行って、現地の子どもたちと遊んで、現地で働く日本人の方に話を伺い、ケニア料理を作り…その一つひとつがとても楽しかったんです。すっかりケニアの虜になって帰国し、大学生になったら絶対にケニアに関わる活動を何かしよう、ケニアと関係のある団体に入ろうと決意しました。さすがに大学でスワヒリ語を学ぶのは止められて、法学部に入ったんですけど(笑)。

大学入学後は、“日本とケニアの架け橋となる”“よりよい社会を作る”という理念を掲げた日本ケニア学生会議という日本の大学生とケニアの大学生が一緒に運営している学生団体に参加しました。夏休みの1カ月間、隔年で日本かケニアに滞在してフィールドワークをしたり、ディスカッションをしたりというような活動をするんです。大学2年生のときがちょうど10周年で、私は日本側委員長になりケニアの学生を迎えたんですよ。すべての始まりはそこからでした」

学外での活動に力を入れていた高橋さんは、さまざまな学生団体やNPO・NGOの関係者と出会う。けれど大好きなケニアの印象が、一般には「ケニア人は視力がいい」「ケニア人は足が速い」など、情報が少なすぎる状況に愕然とする。「どう伝えればいいのか?」というそのときの悔しさが、「広報」を志すきっかけになったそうだ。

(前列中央が高橋さん。日本ケニア学生会議に参加していた頃)

NPOが行っている意義のある活動を広報で支援したい

元来が活動的な高橋さんは、日本ケニア学生会議での2年の活動を終えると、「週刊ダイヤモンド」などを出版するダイヤモンド社の学生記者をしたり、「生き抜く力を、子ども・若者へ」を理念に活動しているNPO法人カタリバの企画に参加したり、高校生・大学生などが「ミニ音楽会社」を設立してライブを企画し、その利益を寄付することで社会に貢献するというプログラムを実施しているNPO法人ブラストビートに参加したりと、活動の幅を広げる。

「ダイヤモンド社は文章で伝える、ブラストビートは音楽で伝える、カタリバは自分の話す言葉で直接伝える。そうやって何かしらの方法で「伝えること」を軸にしている団体に関わったんですけど、私自身はどういう手段で伝えたいのか、一つに絞れなかったんです。文章を書いて届けるだけではなく、イベントもやりたいし、映像や写真といったビジュアルも使いたい。いろんな方法で伝えられたらいいのに…と考えたときに、PR会社だったらさまざまな展開も可能だし、いろいろな業界の方々にも出会えると思って」

その頃、同時にこんな想いも感じていた。

「大学時代に、さまざまな団体の方と関わったり、実際に自分が活動してみたりしたなかで、『NPOの職員ではなく、広報のプロとして後方支援をしたい』と思ったんです。NPOのなかには社会的に意義のある活動をしているのに、本業が忙しくて広報活動にまで人もお金も時間もなかなか割けないために、活動の実態をなかなか知ってもらうことができない団体が多くあると思いました。それはもったいないことですし、この課題を解決できる存在になりたかったんです」

NPO二枚目の名刺との出会い

そして縁あって、現在勤めているPR会社に就職した。今年で5年目。家電、ゲーム、食品などを扱うクライアントを担当し、クライアントとメディア、クライアントと消費者の橋渡しをしている。

PR会社の仕事といえば、朝から晩まで忙しく、自分のための時間を捻出するのが難しいというイメージがあるが、高橋さんは興味のあるイベントや社外活動に、仕事の合間を縫って積極的に出かけていた。

そんななかで、かつて参加した「南アフリカ最新事情視察」のコーディネーターだった米倉誠一郎氏(一橋大学イノベーション研究センター 特任教授、法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授、日本元気塾塾長)が登壇する講演会に出席したことがきかっけで、NPO二枚目の名刺と出会う。その講演が行われていたのが二枚目の名刺が主催した「夏フェス2015」だったのだ(参照:「2枚目の名刺」というスタイルの広がりとこれから 米倉 誠一郎 ×二枚目の名刺代表 廣 優樹)。

「世間の枠にはまることなく、好きなことを仕事にしてきた両親の影響もあるのかもしれませんが、『会社人ではなく、社会人として、自分が大切にしている価値観を表現する』という二枚目の名刺のコンセプトに共感したんです。それと同時に、働き方や生き方の選択肢がいろいろあるのだということも、私が伝えたいことの一つなのかもしれないと感じました」

NPO法人二枚目の名刺への参画と、NPOサポートプロジェクトへの参加

そこからどのような流れで二枚目の名刺の運営メンバーになったのだろうか。

「『夏フェス2015』にはいろんなNPOがいらしていたんですけど、そのなかでもイベントを主催していた二枚目の名刺自体が面白そうだなと思いました。それで、その場で代表の廣さんとお話ししたら、『タイミングが合えばミーティングにおいでよ』と誘ってくださったんです。実際に行けたのは確かそれから半年後の2月だったのですが、その後は定例会など参加できるときには行っていました。『夏フェス2016』が4月末にキックオフしたので、広報担当としてリリースの作成やSNSをどのように活用していくかということを考え、実施しました。」

『夏フェス2016』が終わると、今度はNPO法人二枚目の名刺のサポートプロジェクトのプロジェクトメンバーとして、NPO法人シャプラニール=市民による海外協力の会の広報支援に携わることになる。

「二枚目の名刺に出会ったときから、サポートプロジェクトに参加してみたいと思っていたんです。ピンとくるNPOと出会ったときがタイミングだと機会を伺っていました。そんなときに、大学生の頃から関心があった国際協力の分野で、しかも広報支援を必要としているNPOシャプラニールがパートナー団体の一つとしてあがっていました。『これは名のりを上げない手はない!』と自らにGO!サインを出したんです」

「第1フェーズは20~30代の若者のサポーターを増やすことで、今後も長く団体が継続することができる仕組みづくりが目標でした。シャプラニールが運営しているフェアトレード雑貨の通販サイト「クラフトリンク」で商品を購入したお客さんが会員に転換する、もしくはイベントを通じて会員になっていただける方の割合を上げることを、このプロジェクトのゴールとしたわけです。アクションとしては、団体紹介資料の改訂や、新しいキャンペーンの企画立案などを行いました」

このプロジェクトに参加したことで、業種や職種、年齢が異なるメンバーやパートナーNPOから多くの学びがあったようだ。多様な働き方や価値観があることもそうだが、自分に足りない部分や強みを知ることができたのは、今後の自分のキャリアにとっても大きな意味を持つだろうと振り返る。

関連記事>リーダーシップが身につく!?「NPOサポートプロジェクト」で社会人が学んだこと

新規会員増を目指す「母の日キャンペーン」に挑戦中

そしてNPO法人シャプラニールのサポートプロジェクトは、2017年2月から第2フェーズの活動を開始。今取り組んでいるのは、日本とネパールのお母さんの両方を笑顔にする「母の日キャンペーン」で、これは高橋さんがアイデアを出した企画だ。

「『新規会員を増やすにはどうするか』ということで考えたキャンペーンです。シャプラニールの2017年度の団体スケジュールの中で何かできることはないかと話し合っていたら、ノベルティーが付く入会キャンペーンを年に2回やっているということを知って。ここにプラスアルファで何かやれたらいいなと。時期はいつがいいのか、どの層に発信するのが効果的なのかを、第2フェーズのメンバーで考えました。シャプラニールは、南アジアに生きるお母さんたちも支援している団体なので、活動内容とつながるシンプルなキャンペーンがいいよね、なおかつ、ひねりを効かせてシャプラニールに今まで興味がなかった方にも響くものにしたいよねということで、立ち上がった企画です。日本のお母さんにもフォーカスを当てて、母の日をきっかけにするのがいいのではないかということになりました。ただ『寄付してください』だとなかなか難しいので、自分のお母さんにありがとうを伝える気持ちと同時に、南アジアのお母さんも支援できるという形にしたわけです」

新規会員になると、自身のお母さんにはネパールのお母さんが作った石鹸と手紙が届き、南アジアのお母さんにはシャプラニールによるサポートが届くという循環型のキャンペーン(「フェアトレードな母の日」新規会員入会キャンペーン)だ。

「第2フェーズをやることに決めたのは、第1フェーズが本業の関係であまり参加できなかったからということもありますが、もともとやりたかったことだったから、ものすごく楽しかったということが大きいんです。どんなに忙しくてもサポートプロジェクトの最中にやめたいと思うことはありませんでした。大学時代の活動にも、それこそ東京ではないところに住んでいるメンバーもいたし、みんなそれぞれ違う動き方をしていたから、そういうメンバーで一つのプロジェクトを実現するということの大変さ、やり方がわかっていたからかもしれません。そして自分が仕事でミーティングに参加できないときも、“ここまではできるけど、ここからはできない”とちゃんと伝えれば、メンバーもそれを受け入れてくれる方々だったので、滞りなく進めてくることができました」

NPO広報の課題解決や仕組みづくりを大学院の研究テーマに

この4月から高橋さんは、広報のスペシャリストを育成する日本唯一の社会人向け大学院、社会情報大学院大学に通い始めている。NPOシャプラニールのオフィスに行った帰り道に、1期生募集のポスターを発見したのが始まりだった。

「『広報の専門職大学院が出来るんだ!』と、とても驚いて。これからも広報の業界で頑張っていきたいと考えているので、行くしかないなとすぐに思いました。あとは、1期生になりたかったんです(笑)。これから2年間、平日の夜間と土曜日に授業に通うんですよ」

広報のスペシャリストを目指してますます奮闘するようだ。そんな彼女に今後のキャリアプランを聞いた。

「あまり所属先にこだわりはなくて、会社がなくなったとしても、結婚して子供が生まれても、転勤になっても、この業界だったらやっていけるなという思いもあって、広報の道を選んだので、自分のペースでやりたいことをやっていけたらと思っています。大学院の研究テーマは、もともと広報の業界に入ったきっかけにもなった、『NPOの広報の課題をどう解決するか、仕組みをどう作るか』に決めたので、これからの2年間は、このテーマを突き詰めていきたいなと思っています」

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写真:松岡千草
聞き手:はしもとゆふこ(二枚目の名刺)
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今井 浩一
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フリー編集者・ライター。長野県の文化・芸術に関する情報を収集、 発信するサイト「NaganoArt+」の編集長も務める。