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「組織運営」に不可欠なのは「らしくない」代表? NPO法人代表兼「二枚目の名刺」メンバーの本音とは

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団体名そのままに運営メンバーの多くが「2枚目の名刺」ホルダーであるNPO法人二枚目の名刺ですが、二枚目の名刺とは別のNPO法人の代表を務めるメンバーが複数いるのも特徴かもしれません。
NPO法人xTReeE(クロスツリー)代表の北川雄久(キタさん)、NPO法人日本プール利用推進協会代表の山本彩海(やまもっちゃん)、そしてNPO法人二枚目の名刺代表である廣に、NPOの組織運営について、チームメイトだからこそ話せる本音をぶつけあってもらいました。

 

北川雄久(キタさん):
二枚目の名刺ではサポートプロジェクトデザイナーを担当。NPO法人xTReeE(クロスツリー)代表。キャリア教育に関心を持つ大人たちが集まるオンラインコミュニティ「Eキャリ部」を開設。Eキャリ部としてコミュニティ活動や小学校・中学校向けのキャリア教育の授業やワークショップの開発・提供をより円滑に行うため、NPO法人を立ち上げる。
▶NPO法人xTReeE(クロスツリー):https://www.xtreee.or.jp/

山本彩海(やまもっちゃん):
二枚目の名刺では事業管理を担当。NPO法人日本プール利用推進協会代表。人間が重力から解放され、生きていく時間を豊かにできる場所である「プール」を、すべての人にとってアクセスしやすい場所にするため、現在のプールにある「できない」を「できる」に変えることをミッションに活動。
▶NPO法人日本プール利用推進協会:https://japupa.or.jp/

聞き手:廣優樹(ひろさん):
NPO法人二枚目の名刺代表。会社員として働きながら2009年にNPO法人二枚目の名刺を立ち上げる。すべての人が「2枚目の名刺」を持つのが当たり前になるよう、また”社会のこれから”を創るような2枚目の名刺を持つ人が増えるため、社会人とNPOをつなぐ活動を続ける。

 

サポートプロジェクトで出会った仲間が面白すぎて、NPOを立ち上げ

:NPO法人二枚目の名刺の組織運営のメンバーには、これまでも、そして今もNPO代表の方が関わってくれていて、それ自体結構ユニークな組織だと思ってるんです。本業以外の2枚目の名刺としてかかわる人たちの集まりですし、組織運営自体も「実験」と思ってやってきました。上手に組織運営できているかといえば、振り返ってみるとそうでないことのほうが多くて……。NPO代表の方が組織の中にいるので、私自身も緊張感があるわけです(笑)。
代表の方々がNPO法人二枚目の名刺にかかわることに対して、何かテイクアウェイを実現できているのか。みなさんの組織運営に役に立つ何かをお渡しできるのだろうか。今日はそのあたりについて、忌憚のない意見を聞いてみたいと思っています。よろしくお願いします!
まずはお二人がNPOを立ち上げることになったきっかけから聞かせてもらえますか?

北川:僕は二枚目の名刺のサポートプロジェクトに参加して、そこで出会った人たちと立ち上げたキャリア教育に関心を持つ大人たちが集まるオンラインコミュニティ「Eキャリ部」として小学校・中学校向けのキャリア教育の授業やワークショップの開発・提供を行っていたんですが、学校や企業との取引が増えるにつれて、任意団体ではなく法人格を持つ必要が出てきたんです。それで設立や運営のハードルが高く、挑戦しがいがありそうで一番身近なNPOを選びました。

■「サポートプロジェクト」についてはこちら
https://nimaime.or.jp/support-project

:もともと「NPOを立ち上げたかった」というよりは、いろいろと活動していくうちにNPOになった?

北川:そうですね。サポートプロジェクトで出会ったメンバーが面白すぎて、この仲間との活動がずっと続けばいいなと思っていた結果、NPOという箱を選んだという感じです。当時出会ったメンバーがNPOの運営メンバーにもなってくれています。

:なるほど。やまもっちゃんはいかがですか?

山本:私は2021年9月にNPO法人日本プール利用推進協会を立ち上げました。プールのインストラクターをしていて、プールがもっといろんな人のアクセスしやすい場所になればいいなと思うようになって、それを成し遂げるにはいちインストラクターでは難しいとなったところからいろいろな人に声をかけて理事になってくれるメンバーを探しました。今のプールでは、ソフト面・ハード面・マインド面から「できない」状態になっていることがたくさんあるので、それを「できる」に変えるのが私たちのミッションです。

:いろいろなことが「できない」ために、プールに行けない人たちがいるという課題があるわけですよね。

山本:そうです。あちこちに段差があるからプールに行きにくいという車いすの方や高齢の方もいますし、体のラインが出る水着を着るのが恥ずかしいという理由でプールから足が遠のく方もいます。この状況を変えるために日本プール利用推進協会では、研究活動や提言、広報活動をやっていこうとしています。

:お二人とも、NPO法人の代表でありながら二枚目の名刺にも運営メンバーとして参画してくれているのですが、そうしようと思ったきっかけや経緯を教えてもらえますか。

北川:僕は企業の人事を20年ほどやっていたのですが、会社の合併などがあって人事から異動になったときに自分の無力感とキャリアの閉塞感でいっぱいになってしまって。そこでキャリアコンサルタントの資格勉強をしながら、石山先生の「パラレルキャリア」についての本を読んだんです。そこでプロボノというものを知って、二枚目の名刺についても知りました。

:最初は運営メンバーではなく、サポートプロジェクトへの参加だったんですよね。

北川:そうです。それまではNPOの存在も、社会課題がそんなにたくさんあるのも知りませんでした。最初は社会貢献というより、自分のキャリアを広げる目的でサポートプロジェクトに参加しましたが、そこで仕事の鎧を脱いだ自分でも何かできるかもという小さな自信が芽生え、自分の1枚目の名刺以外のことでも社会の役に立てることに面白さを感じてしまって。

:サポートプロジェクトには2回参加いただいていますよね。

北川:はい。自分の関心事を掘り下げていくと、やっぱりキャリアコンサルタントとして、自信を持てない子どもたちに自信をつけるようなことをしたくて。なので、2回目のサポートプロジェクトでは、小学校向けのキャリア教育プログラムを提供しているJAEさんのサポートに手を挙げたんです。結果的にそこでの取り組みが今のNPO立ち上げにつながりました。さらに、キャリアコンサルタントがサポートプロジェクトの参加者に伴走する仕組みができたら、より学びが多いものになるのではないかと思って、サポートプロジェクトのデザイナーとして二枚目の名刺に参画したんです。

■キタさんが2回目に参加した「NPO法人JAE×二枚目の名刺サポートプロジェクト」
https://nimaime.or.jp/projects/1997

:そういう経緯だったんですね。やまもっちゃんがNPO二枚目の名刺の運営に参画してくれたのは、キタさんと違ってNPO法人を立ち上げた後ですよね。

山本:そうですね。2020年の末にNPOを立ち上げると決めて、2021年6月から非営利組織の資金獲得の仕方を学ぶファンドレイジングスクールに入りました。そこで学ぶうちに、実際どういうふうにNPOが運営されているのか、NPOの中に入って一度経験しておきたいと思うようになったんです。二枚目の名刺の事業管理ユニットのメンバー募集を見つけて、2022年の7月から参画しました。

 

「二枚目」メンバーとのコミュニケーションが組織運営に生きる!

:2人ともそれぞれNPO代表の立場として自分の団体で叶えたいビジョンやミッションがあり、本来ならそこに もっと全力投球したいのだと思うのです。それでも二枚目の名刺に関わることは、どのようにご自身の中で整理されているのですか。

北川:僕はまず、お世話になった二枚目の名刺に恩返しがしたいからです。キャリアの閉塞感があった僕が、今はパラレルキャリアで楽しく遊ぶように仕事をしている。そのきっかけになった2枚目の名刺の活動を広げていきたい。もうひとつは、やっぱり1人で何枚も名刺を持って、いろんな面を持つことで自分自身が輝くと思っていて。二枚目の名刺にかかわる人って面白い人が多いというか……。好奇心だけで走れるある意味での“変態”が多い!(笑)僕にとってはこれって誉め言葉で。まだまだ世の中的には少数派だけど、普通に仕事していたら出会えないような人が集まる面白い場なので、ここに関わっていたいと思えるんです。

山本:私も理由は2つありますね。ひとつは自分の団体のため。もうひとつは私自身のためですね。NPO立ち上げるときは、右も左もわからず気持ちだけで動いていたんです。自分で自分を追い込んで、朝4時から起きて必死に作業をしていたら、自分がやりたくてやっていることのはずなのにだんだん嫌になってくることもあって。これはよくない精神状態だと思って、ファンドレイジングスクールで知り合った仲間と話したらすごく気持ちが安定したんです。今も、二枚目の名刺の活動を通じていろんな人と関わったり、非営利組織について話を聞いたりすることが、ファンドレイジングスクールの仲間と話す時間と同じような効果が感じられるので、私にとっては必要な場なだと思っています。

:「自分の団体のため」には、どんなことが役に立ってるんですか?

山本:ボランティアの方と運営メンバーがどんなコミュニケーションを取っているかはすごく参考になります。自分で立ち上げた団体であれば、無償でもいろいろやっていこうと思えるのはわかるのですが、ボランディアの方や正会員の方たちがお金以外のどんな意味を見出して団体運営にかかわってくださるのかを知ることや、その方たちに対してどんな活動を提案していくかを学ばせてもらっています。ミーティングも「必ず出てください」ではなく「参加したい」と思えるような設計を考えないといけないとか、無償だからこそどう価値を感じてもらえるようにするかなど考えるヒントがたくさんあります。

 

運営メンバーが自由に実験できる場づくりがNPO代表の仕事

:「二枚目の名刺」という組織は、みんなが別の仕事や役割を持ちながら、もう一つの取り組みとしてNPOの運営に関わってくれています。ある時期運営に関わってくれて、やがて次のステージに行くというのがうちの団体の特徴だと思っていて。だからこそ、組織に在籍している間に自分が実現したいことや挑戦したいこと、あるいは次につながることに出会ってもらえたらと思ってやっているつもりです。なので、キタさんややまもっちゃんが実現したいことの役に立ってるとしたら、うれしいです。

山本:私が参画してから今までの1年ちょっとの間にも卒業した方が何人もいますよね。NPOってそういうものなんだというのは、自分が団体運営するうえでも未来に起こるであろうことの心構えができました。それぞれの人生のステージや目的があって、組織に長くいることだけがいいことではなくて、どんなふうにかかわれたかみたいなことが大事なんだなって。

北川:僕はまだ自分の団体でメンバーが抜けると心が病みますね(笑)。仲間内のコミュニティから始まった団体なので「仲間」が抜けてしまうことに耐性が持てなくて……。ただ、廣さんの組織運営の話を聞いて「そういうものなんだ」と思えたところは正直あります。それに、廣さんとそういう会話ができるのはありがたいです。廣さんって代表っぽくないんですよ。いい感じにゆるくて。

:ありがとうございます(笑)。

北川:あれやれこれやれって運営メンバーに対して絶対言わないんですよね。僕も自分の団体では「ゆっくりいそぐ」をイズムのひとつとして大事にしています。代表としては自分たちの活動を早く世の中に浸透させたくなるのですが、それを押し付けるとメンバーがそのプロセスを楽しめない。二枚目の名刺がそうであるように、僕らもキャリア教育に関心を持つ大人の実験場でありたいと思っているので、実験は本人のペースでやってほしいわけです。

:僕も最初からそうだったわけじゃなくて……最初のうちは、どれだけNPOとして新しい未来の形を提言して、それを言うだけじゃなくて実現するかが大事だと考えていました。「早くやるんだ!なんとかやるんだ!」という時期もあった。でも、それだけだとうまくいかなくて。思いに共感できる人たちが集まって、ここで時間を過ごしてよかったと思ってもらえることは、みんながボランティアで集まっているからこそ、とても大事なんだと思うようになりました。人によっては成長の場であり、別の人にとっては自己実現の場でもあり、やりがいを感じる場、つながりを感じる場などさまざまなので。これを受け止められるといいなと思うようになりました。

北川:廣さんの器の大きさもすごいですよね。当初、僕は企業人としての習性で、同じようなことをしている団体と生き残りをかけて競わなきゃと思うことがありました。でもNPOって同じ社会課題をなくすために、ともに創り、協力し合っていくじゃないですか。その意識も僕が二枚目の名刺で学ばせてもらっていることですね。

:そうですね。自分たち以外でも、いろいろなモデルが出てきて、担い手が増えて、広がるとよいなと思います。

山本:私、キタさんにちょっと聞いてみたいことがあって。廣さんが代表っぽくないって言ってましたけど、どういう代表でありたいと思っているんですか?

北川:僕は底辺でありたい。これも二枚目の名刺で学んだことですが、NPOって代表がトップじゃないですよね。トップは運営メンバーで、代表はその人たちをモチベートする役割なのかなって。「僕についてきて」っていうのはあまり好きではないし、できれば代表交代制にしたいとも思ってます。

山本:私も同じ感じです。私よりふさわしい方がいたら喜んで代表譲ります! 最初にNPOを立ち上げた私の代表としての役割は、「あの団体の代表になりたい!」と言う人が現れるように活動を届けていくことなんじゃないかと思っています。

北川:NPOのマネジメントってやっぱり企業のマネジメントとは違っていて、私たちの団体では超属人的な組織を目指しているんですね。「○○さんだからできる。○○さんがいなくなったり、○○さんの関心事が変わったりしたらこの事業は終わり」という感じで。決して放置してるわけではなく、それが私たちが目指すNPOの姿で必要なマネジメントなんだと。

:NPOの組織運営がうまくいくには、いかにそこに所属する人が思いを持ちながら、やりたいことに取り組めるか、を設計することがひとつのポイントかなと思うんです。二枚目の名刺は、そういう「やりたい」意識を持って入ってきてくれた人の良さを次の進化につなげていきたいと思っています。僕だけが「次はこれやろう。その次はこれ」ってやっても全然面白くない。入ってきてくれた人の問題意識や個性によって彩られていくものがあるので。

 

NPOにかかわると、人生が2倍楽しむコツがわかる!

:問題意識や個性という意味では、二枚目の名刺ではさらに次世代を担う若い方たちが、インターンとして運営にかかわってくれることを積極的に受け入れていきたいと思っているんです。自分で組織運営もしている2人から見て、学生の方が二枚目の名刺から得ることができるのはどんなことだと思いますか?

山本:私自身はフリーランスという立場で、会社に属しているわけではないんですけど、学生を卒業して社会に出たときに「会社だけじゃない場所がある」ことの豊かさが人生の豊かさにつながると思うんです。だから、会社という世界と、それとは別のルールや人間関係のある場所を持つきっかけとして、二枚目の名刺の活動にかかわるのはすごくいいですよね。人生を2倍楽しめるスタートになると思います!

北川:僕も同じですね。僕自身、会社に入って社会人になるっていう道筋しか知らなかったので、それ以外の世界を知れるのは大きいと思います。企業のマネジメントとNPOのマネジメントの違いを学生のうちに知れるのはとても貴重な経験ですし、特に二枚目の名刺は様々な業種業態の会社員経験をもったメンバーが多いので、すごくいい学びになると思います。

:「2枚目の名刺を持つ」ということを当たり前の選択肢として感じてもらえるといいですよね。あとは本当に素敵なメンバーがたくさんいるから、僕らも互いに学べている事が多いし、インターンで入ってきてもきっと学びは多いんじゃないかと思ってます。

北川:若い世代と接していると、学生の多くが働くことを苦役だと考えている傾向がみられるんですね。それがめちゃくちゃ悔しくて!僕もそうですけど、二枚目の名刺のメンバーってNPOの活動ではお金を得ていないのに遊ぶように働いているわけじゃないですか。なので若い世代にも「つらいつらい」と言いながら働いてる人と出会う前に、遊ぶように働く大人と出会う機会を持ってほしいですよね。

山本:今、聞いていて思ったんですけど、いろいろな人がその社会課題を自分ごととしてとらえられるようにするのが、ある意味NPOに求められるマネジメントなのかもしれないですね。私自身、リーダー向きの性格ではないと思うんです。でもNPOを立ち上げてみて、1人ではできないことも何人か一緒ならできるというのを感じたので、「やりたいけど一歩踏み出せない」とか「方法がわからない」という人が、二枚目の名刺に参画してもらえると、仲間と一緒に何かをやるには、いろんな形があることを体験できて、背中を押されるんじゃないかと思います。

北川:まだやりたいことが見つかってない人にもいいかもしれない。二枚目の名刺はいろんな社会課題やいろんなことに関心を持っている人が来るので。「これ気になるな」ってアンテナが向くことがあればちょっと参加してみて、「違う」と思ったらまた別の関心ごとにトライすればいい。ここはそういう実験場なので。自分を変えたい人、自分の好きなことがわからない人にもぜひ来てほしいです!

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古川 はる香
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フリーライター。女性誌や育児誌を中心に雑誌、書籍、WEBで執筆。
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