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【連載】副業を自己成長につなげよう!ソフトバンク株式会社前編

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兼業・副業・複業を解禁する企業がここ数年でじつに増えた。「2枚目の名刺」を持つ働き方を選ぶ人の増すなかで、会社組織と個人の双方にはどんな化学変化が起きているのか。また、双方のあり方は今後どう変わっていくのか。今回、すでに兼業・副業・複業を組織として取り入れ活躍する企業の現在を追いかけ、その背景や変化、課題などを聞き、そこに生きる組織と個人の関係性を見つめ直す連載である。

ソフトバンク株式会社(以下、ソフトバンク)は、今後事業成長をしていく上で、既存事業の活性化とイノベーションの創出が必要であると考え、「Smart & Fun!」というスローガンのもと、「働き方改革」を推進し、その一環として、201711月より、社員の副業を解禁した。

働き方改革で時間・場所の有効活用に加え、自己成長の促進として掲げた副業解禁について、前編では同社人事企画部 労務厚生企画課 課長の石田恵一(いしだけいいち 以下石田さん)さんより、社としてどのような経緯がありこの副業解禁に踏み切ったのか、そして実際制度を変更したあと、社内にどのような変化があるのかを聞く。

ソフトバンク株式会社人事企画部労務厚生企画課課長 石田恵一
2008年にソフトバンク株式会社の子会社であるSBアットワーク株式会社へ入社。2010年よりソフトバンク株式会社の人事部門所属。組織人事(HRビジネスパートナー)担当を経験後、人事企画部へ。2017年より人事企画部労務厚生企画課長。

副業を通じて社員のスキル・経験を高める

同社では、以前の就業規則では原則副業禁止となっており、申請を行い確認の上特別に許可をするという状況であった。ただ、これまでほとんどの社員にその制度について知られていなかったという。

こうした中、ソフトバンクでは人事が主導して動き始めた。

副業を通して、会社内ではできない多様な経験が可能になるため、結果として社員のスキルアップや成長につながる、と考えています。普段と違う場所で仕事をするということは武者修行にもなりますし、異文化交流やスキル・経験、社外の人材ネットワークの獲得にもつながる。副業解禁は、会社も社員もWin-Winになる施策として捉えています」

人事企画部石田さんは副業解禁にあたっての会社としての前向きな意見を語る。

副業解禁にあたり、「雇用契約を結ばない副業に限る、業務時間内に行わない」といった規則やどのような副業に申請が必要なのかをガイドラインに定めたり、そのための申請フローの確立など、制度・運用を設計していった。ガイドラインを準備したことによって現時点では社員が副業を申請して却下されるケースは少ないという。

社員の中には「投資や資産運用は副業に当たるのか」「フリーマーケットへの出店なども副業として申請する必要があるのか」などと、どこまで申請が必要なのか、何が副業に当たるのか、などがわからず、質問がくることもあるという。ラインを明確にするために、定期的にガイドブックを更新し、社員に周知しているという。

副業許可の基準は「自分が成長できるか、スキルアップできるか」

今回の副業解禁で、20183月までに約2万人の社員のうち200名程度、全従業員の約1%が副業を申請し、承認されている。副業に取り組む社員の男女比に大きな偏りはなく、年代も、20代~50代までと幅広い。

副業の申請は、社内のシステムを通じて社員自身が行う。必要な情報を記入して上長のチェックを受け、業務に支障がないと判断されれば人事部へと渡り、問題がなければ、数日~数週間程度で許可される。

そしてポイントとして、ただ副業を申請するだけでなく、副業でもたらされる効果として、「副業をすることで自分自身が獲得できるスキルや経験」を記入させている。

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「副業の内容は、多岐に渡ります。多いのは、自身の専門性を活かしたプログラミングやデザイン、研修講師などですが、中には、趣味や特技を活かした副業をしている社員もいます。例えば、習い事として取り組んでいたボクシングジムやヨガが上達したため、先生として生徒に『教える』という経験をしたり、英語が得意な社員が、自らの英語力を維持・向上させることを目的として、英語講師をしたりするケースなどもありますね」

趣味や特技を活かした副業であっても、「誰かに教える」という経験によってマネジメントスキルに繋がり、本業でもそれが活きる瞬間があるかもしれない。

得意な英語というスキルが副業に活かされることによって、自己成長を促進し続けるスキームとなりえる可能性もある。

石田さんの発言からも、副業によって自分がどのようなスキルを得ようとしているのか、またはどのような自己成長をイメージしているかを明示できる社員が、副業を選択できていることがわかる。

会社としてどうなるか、社員にどうなってもらいたいか、それをメッセージとして制度化していく

同社では、社員に定期的にアンケートを実施している。
副業解禁を含む働き方改革を実施した結果、『Smart & Fun!を体現できているか』『業務の生産性は向上したか』『仕事でイノベーションを発揮できているか』などの複数項目の質問に対し、社員の約7割が、1年前と比べて向上したと回答しているという。

同社の働き方改革のスローガンである「Smart & Fun!」の「ITを駆使し、メリハリのある働き方によって、時間創出する(Smart)」ということと、「新しいことや自己成長に時間をあて、イノベーティブ・クリエイティブに働く(Fun)」という2つの考え方は、同社の人事制度とも密接に絡み合っている。

コアタイムの無いフレックスタイム制、在宅勤務やサテライトオフィスの拡大、自己啓発や社外交流・自己成長のために2年間限定で全社員に支給する支援金など、時間や場所に捉われずメリハリをつけて働く意識や、楽しみながらイノベーティブに働く意識を持ってもらうこと、またそれらにアクションを伴わせることを目的に、会社としてあらゆる方面から社員を支援していることが理解できる。

「人事制度はメッセージが大切だ、と我々は考えています。会社としてどうなりたいのか、社員にどうなってもらいたいかというメッセージが、人事制度に落とし込まれているはずです。それを社員に伝えることが、人事としての仕事だと捉えています」

副業は、イノベーションを起こすための選択肢のひとつ

同社では、制度として副業は認めているが、会社として『全社員に推奨している』というわけではない。副業は同社にとって、あくまでも本業にプラスをもたらすための選択肢のひとつだという。

副業は、イノベーションを起こすための選択肢のひとつとして位置付けています。イノベーションは、既存知と既存知の掛け合わせ、つまり、自分と他の人が持っているものを組み合わせた時にできるものである、と当社は考えています。イノベーションを起こすために、いつも同じ部署の人ばかりと関わるのではなく、副業などで社外の人と交流し、その経験を社内に持ち帰り、少しでも仕事に還元してもらえたら、と考えています」

副業を本業に還元していくことをイメージして、扉を開けている。

石田さんのメッセージからも、副業の位置付けとしては「主たる本業があり、副業はあくまで副業である」ということも明確に読み取れる。

「当社の人事施策では『与えられるものを待つだけでなく、自分から手を挙げる、取りに行く』ということを大切にしています。自分から行動してくださいね、そのための選択肢はいろいろ用意しますよ、という考え方です」

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同社では、フリーエージェント制度やジョブポスティング制度などがあり、上長の許可を得なくても、自分がチャレンジしたい部門やポジションに手を挙げることができる。つまり「現在任されている仕事」以外の自分がやりたい仕事にリーチできる仕組みが社内に存在している。

副業をしなくとも、そのような制度を通じてスキルや経験を積んだり、成長したりすることができる社内での副業にあたるような環境をつくっている。

「副業」というと、未だに「本業以外で収入を得る・増やす手段」というイメージを持つ人も少なくない。ソフトバンクでは、副業を「スキルアップや自己成長につなげ、本業に還元するための選択肢」と位置づけ、明確にそのメッセージを打ち出しているからこそ、社員も目的意識を持って副業に取り組む。

副業だけに限らず、社員が能動的に仕事をしていける環境を整えたり、革新的な働き方改革を推進したりしている同社の取り組みは、会社、社員双方のさらなる成長・発展につながっていくことは間違いないだろう。

写真)海野千尋

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手塚 巧子
手塚 巧子
ライター
1987年生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社勤務等を経て、フリーランスのライター・編集者として活動中。ビジネス、社会問題、金融、女性向け媒体など、幅広いジャンルにて記事を執筆。小説執筆も行い、短編小説入賞経験あり。
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