公務員×NPO法人経営者 新米パラレルワーカーが聞く、公務員が2枚目の名刺を持つ理由 (前編)
2018年に国家公務員に兼業を容認する法案が可決され、かつては、シングルキャリアが当たり前だった公務員の世界でも本業とは別で2枚目の名刺を持って活動している公務員が増えてきています。
今回は、公務員3年目の新米パラレルワーカー はまむー が、北九州市役所職員として働きながら、「NPO法人好きっちゃ北九州」の理事を務める先輩パラレルワーカーの入門さんに、公務員が2枚目の名刺を持つ意味や価値についてインタビューしていきます。
※新型コロナウイルスの感染予防のためオンラインによるインタビューを実施しました。
(インタビュー実施2022年2月)
■入門真生(NPO法人好きっちゃ北九州 理事)
本業は、消防士。現在は北九州市の区役所にて、防災係長を務める。
2枚目の名刺として、ローカルな小学校区単位での郷土愛を育むことを活動目的とする
NPO法人好きっちゃ北九州の理事をしている。4人の子どもを持つ父親でもあり、PTA活動にも力を注いでいる。
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NPO法人好きっちゃ北九州について
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■聞き手:濵村和生(はまむー)
NPO二枚目の名刺広報ユニット員/プロジェクトデザイナー。
本業で京都市の行政職員をしながら、非営利団体の活動をデザインやプログラミングでサポートする
NPO法人FREE BOXの代表理事をしている。
1.NPO法人好きっちゃ北九州設立のきっかけについて
ーお久しぶりです。大学4年の頃にお会いして以来ですね。
(入門さん)そうですね。お久しぶりです。
ー今日は、新米公務員パラレルワーカーの目線から、先輩公務員パラレルワーカーの入門さんに、公務員が2枚目の名刺を持つ意味や価値について聞いていけたらなと思います。
(入門さん)はい。よろしくお願いします。
ーまず、NPO法人好きっちゃ北九州を設立するに至ったきっかけについてお話をお伺いしてもよろしいでしょうか?
(入門さん)「NPO法人好きっちゃ北九州」の前身となったのは、14年前の社会人2年目の頃に入塾した、北九州市が運営していたまちづくりの塾である「ひまわり塾」です。
1期1年間の区切りで30人の塾生がおり、行政職員と民間職員で構成されていました。この30人をさらにこれを4つのグループに分けて、そのうちの1つが「好きっちゃ北九州」でした。シビックプライド、北九州の良さを深めたり、発信することを目的としていました。
ーなるほど。前身は北九州市が運営するまちづくりの塾だったんですね。どうして、ひまわり塾に入ろうと思ったんですか?
(入門さん)北九州市の高専を出た後に三重大学に進学し、北九州市の外に出る機会がありました。その時、地元に帰りたいと強く思いました。現に、大学時代も毎月北九州へ帰って、三重県と北九州市を何度も往復していました 笑。そして、北九州を三重県という外から見る中で地元への愛着が芽生えて、自分を育ててくれた北九州の街に恩返しをしたいと思いました。
ー一度市外に出るからこそ分かる「思い」ってありますもんね。
(入門さん)はい。あと実は「ひまわり塾」に入る前の、社会人1年目の頃に、看板娘ならぬ、北九州の魅力をPRする「看板息子」を1年間務めたことがありました。消防士として地元北九州に就職することは、
永住することにつながり、その中でこの街を盛り上げたいという思いは強く持っていたからです。看板息子を終えた後も、地域のために何かしたいと思い、街づくりの勉強と実践をしようと考え、ひまわり塾に入塾しましたね。
ーPR大使である看板息子を終えた後も、地域のために活動したい熱が残っていて、次のステップという形で「ひまわり塾」に入ったんですね。
(入門さん)はい、そうですね。
2. 好きっちゃ北九州の法人化〜公務員とNPO法人の相性
ー法人格を持たずに「任意団体」として活動してくこともできたと思うのですが、どうしてNPO法人になろうと思ったのですか?
(入門さん)手弁当で活動していくことに限界を感じたことが法人化をした理由としてありますね。その中でも、NPO法人を選んだのは、行政の手の届かない領域に社会貢献・地域づくりをしていく場合、NPO法人がベストだと考えたからです。そして、これからの時代は、そういったNPO法人が活躍していかなければならない世の中になると強く思って、当時のメンバーを説得していきました。
ー公務員をしながら、NPO法人を経営をするというのはいかがですか?
(入門さん)公務員とNPOの親和性は高いと思っています。公務員は全体の奉仕者として公平中立に、市民と市政のために働くことですが、それはNPOの概念とも似ています。とくにシビックプライドを育てる「NPO法人好きっちゃ北九州」の目的は、公務員の本務とも近しいものがあります。
ーそういう意味では公務員とNPO法人はマッチしているのかもしれませんね。
3.公務員のNPO法人経営者として気をつけていること
ー公務員法人経営者として特に、気をつけていることはありますか?
(入門さん)お金の動きについてはクリーンにしたいと思っていますね。法人の会計を健全にすることで、公務員が法人を経営することに対して、不要な誤解を受けることがなくなります。
ーやはり金銭面はしっかりしておく必要があるのですね。
(入門さん)お金の流れの公開性を高め、健全にすることで「お金儲けのためにしている」という不要な誤解を受けずにすみますから。
ー法人運営の中で、お金を稼ぐという側面がある以上は必要ですよね。
(入門さん)NPO法人の中には、会計に関して、注力しきれていないところもありますが、うちは仮に「決算書を今日出せと」言われても、いつでも提出できる準備をしています。
ー他に、法人経営者として、気にかけていることはありますか?
(入門さん)経営者として、活動の発信が大事になってくると思っていますね。多くの人に認知してもらうことで団体の意義を深めることにつながるし、発信することが内部のモチベーションを上げることにつながります。細々とやっていくだけでは続かない側面がありますね
ー組織の持続性の担保のためにモチベーションの維持は大事ですか?
(入門さん)そうですね、そこはやはり大事だと思います。
ー好きっちゃ北九州は、SNSなどを拝見する限り、入門さんが前面に出ているイメージがありますが、組織運営自体はどうなっているのでしょうか?
(入門さん)確かに、私が前面に出ていることが多いですね。でも、そろそろ私自身プレイヤーを卒業して表舞台から下がりたいと考えていますね。
ー「卒業」ですか。
(入門さん)はい、実はこの前、今までの古参のメンバーと、最近入ったメンバーが、これからの好きっちゃ北九州について話し合う場面がありました。2グループに分けて話し合ってもらったのですが、面白いことに、両グループとも同じ話題になっていました。
ーどんな話題になっていたんですか?
(入門さん)両グループとも、「第2の入門」をどうやって育てていくのかが議論の焦点になっていきました。その結果、入門には一歩引いてもらって、他の人に主担当になってもらい、入門が後方支援をするというスタイルにしていこうと。会計は僕自身が継続していきますが、広報活動などできることから任せています。
ー入門さんを含めた好きっちゃ北九州という組織全体として、どう動いていくかが大切になってきますね。
4. 2枚目の名刺を持つ上で、大切なコンディション作り
ー法人運営をしながら、子育てもして、公務員として働くことは、体力も必要ですし、とても多忙なのでは?
(入門さん)本業とは別の「2枚目の名刺」の活動には確かに、体力が必要かもしれませんね。周りの人には無理しないでねと心配はされますが、僕自身は無理している意識はあまり無いです。
でも、時間は大切にしていますね。平日でいえば、昼休みが一番忙しいかもしれません。朝は勉強したりしてインプットに時間を割いていますが、昼休みはNPOの資料作成や、打ち合わせのLINEの発信をしたりしています。メンバー各々の生活サイクルは異なりますが、昼休みに連絡すると、どこかのタイミングで見てくれますし。
私の場合、家に帰ったら、家事や育児でノンストップなので、スマホを触ることはできません 笑。いかに、タイムマネジメントするかが肝ですね。
ータイムマネジメントですか。私はまだ独身ですが、時間の捻出には苦労していますね。時間を均等に割り振るコツがあれば是非とも教えていただきたいです。
(入門さん)大きく2つありますね。1つ目は時間はコストなので大事に使うというマインドです。公務員の仕事でも、残業はせずに勤務時間の8時間という時間をうまく使うことを常に意識しています。2つ目は、朝早く起きて、朝の時間を有効活用することです。私自身、毎朝4時に起きています。夜は時間がとれず体力がきつくダラダラしてしまう一方で、朝は頭が冴えていますし、時間の確保も容易です。
ー確かに、仕事終わりの夜は体力的にきついですし、夜更かしすると翌日にひびきますからね。
(入門さん)はい。それに私の場合は、夜は子どもと同じ過ごし方なので、朝は確実に時間を取ることができます。NPOのタスク以外にも、主査や係長の昇任試験の勉強も朝にやってましたね。朝早起きすることは本当に世界が変わると思います。係長試験に合格した頃は2時30分や3時に起きてました。
本業をしながら、法人運営を2枚目の名刺を持って活動することは、時間との戦い。とくに家族を持つ人にとっては、タイムマネジメントが重要になってくると感じました。さて、前編では、NPO法人好きっちゃ北九州のはじまりとこれから、朝の時間の有効活用について聞くことができました。後編では、2枚目の名刺を持つことによって生まれる本業への変化や、2枚目の名刺を公務員が持つ上で大切な心構えを聞いていきたいと思います。>後編に続く
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カメラマン