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【難民支援ボランティア募集も】NPO職員の私も、最初はインターンでソーシャル業界の扉を叩いた

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認定NPO法人難民支援協会で日本に逃れてきた難民と地域社会の橋渡しをするコミュニティ支援を中心に活躍する鶴木由美子さんへのインタビュー後編です。

前編はこちら

「難民が暮らしやすい社会=全ての人に配慮された社会」だから私は難民支援に取り組む

2つめの転換点は夢を語る学友

異国で始まった大学院生活。前述したように、まさに多文化共生の中での生活だったが、そんな生活の中でもう一つ、鶴木さんにとってのターニングポイントとなる出来事があった。

鶴木さんが学んでいた州立の大学院の授業に、子どもの頃、家族とともに安全を求めて、メキシコから非正規(不法)に越境してきたという学生がいた。彼女は、「将来教師になりたい」と夢を語っていたという。

「スタートで苦労した過去はあるけれど、語学を習得し、教育を受け、州立の大学院まで通って、将来は教師になる夢がある。純粋にスケールがすごいなと思いました。日本では制度上、似たような環境の子どもの未来は閉ざされていますが、日本の学生時代は『かわいそうだな』だけで思考停止していました。でも、海外では、決してそこでは終わっていなかったことに驚き、視界がひらけました。」

『常識』『当たり前』と言われることを前提としてしまうと、思考の範囲は限られてしまう。鶴木さんはこの出来事を通して、「そもそも政策や制度を変えることができる可能性に、やっと気づいた」という。

鶴木さんが以前から漠然と憧れがあった『ソーシャルを仕事にする』こと。だが、ずっとどこかに「その場しのぎの支援をし続けるだけでは、その課題自体は解決しない。その仕事に自分がモチベーションを持ち続けられないのではないか」という躊躇いがあった。しかし、「ルールを変えれば、根本解決ができる」と気づいたことで、迷いが消えた。

「社会の制度や政策を変える活動を行うソーシャルセクターに行きたい。」

大学院在学中に、現場の支援活動と政策提言活動の両方を行っているNPO・NGOで働くことに焦点を合わせた。

(正職員とインターン・ボランティアがともに働くJARのオフィス。働く人の約半数がインターンやボランティアのスタッフだ)

目標への最短経路

大学院の修了、帰国を経て、鶴木さんは児童福祉領域のソーシャルベンチャーで働き始める。

「今もそうですが、新卒の社会人を採用してくれるNPOやNGOは多くありません。将来的なキャリアを決めていたので、必要なスキルや経験を積める最短経路の就職先を考えました。」

最短経路とは、どんな道だったのだろう。

「NPOやNGOは小規模な組織なので、組織を運営するために様々なことが出来るようになる必要があります。学生時代のインターン経験でそのことが分かっていたので、大企業に入って業務の一部を任される働き方ではなく、小さな会社に入って、会社の運営を学びながら、一連の業務を任される経験ができた方が良いと考えていました。」

ソーシャルに関係する分野で、幅広いビジネス経験が積める道。それが最短経路と考えた鶴木さん。

「新卒で入ったベンチャー企業では営業部配属ながら企画や広告、人事の仕事まで任せてもらうなど、NPO/NGOに移った時に必要となる『組織や事業を運営する』ために必要な経験値をたくさん積ませてもらえました。将来のキャリアプランへの社長の理解もあったので、経験させていただけたのだと思います。非常にありがたい環境でしたね。」

想定していた通りの最短経路を走り出していた鶴木さんだが、道の半ばでさらに近道をすることになる。

「やりがいもあり、最初の会社に4-5年いるつもりでしたが、実際には2年で転職しました。今働いているJARのコミュニティ支援(地域の多文化共生)を進める部署が立ち上がることを知って、予定より早く転職を決意したからです。

自分の専門である多文化共生というテーマで活動ができ、政策提言をするNPO/NGOでもある。金銭面の不安や、親の反対、もう少し会社に残りたい気持ちもありましたが、私が求めていた条件がここまで揃っていて、チャレンジをしない理由がありませんでした。

JARには有給職員が10名以上いたということもあり、ボランティアではなくプロとして関わる人材を採用したいという気概を感じたので、最終的にはやりたいという想いが不安要素を上回りました。」

「ソーシャルを仕事にする」

念願だったコミュニティ支援の職。しかし現場は甘くない。

「私たちはあくまで民間であり行政側の人間ではないので、ある意味で、できることが限られています。たとえば、難民申請者である彼らが望んでいる難民認定や在留資格を出すことは私たちにはできません。私たちしか拠り所がないのに、私たちが彼らの期待に応えられないことが実際には多くあります。そんなとき、『あなたは無意味だ!』『私たちのことを何も考えてくれていない!』などと支援をしている本人から厳しく言われることもあります。力になりたいけどなれず、自分たちの無力さを突き付けられる、そんなことの方が多いかもしれません。

掲げる理想に対する現実の厳しさ。
やりたいことに対する無力感が大きいときに、乗り越えられるかどうかが、ソーシャルを仕事にする上で非常に重要だと教えてくれた。

自分の心の整え方を知っているか、自分の心との向き合い方を知っているかが、この仕事をしていく上でとても大切だと思います。それができないと、バーンアウト(燃え尽き症候群)してしまいますし、実際何人も見てきました。」

鶴木さんなりの、心の整え方を訊いてみた。

「気持ちを分かってくれる人といることも大事ですが、私はポジティブな気持ちを持てる機会を作るようにしています。違う分野で仕事をしている人と飲みに行ったり、ソーシャルセクターで世の中を変えようと頑張っている仲間と語り合ったり、プライベートで気持ちを切り替えながら視野が狭くならないようにしています。

一方で、行き場のない怒りを受け止めるのも大切な役割。そういった声に耳をふさいだり、真に受けすぎて思考停止になったりするのも良くないので、改めてその背景を考えて、自分なりに消化し、向き合うことも大切にしています。お風呂が好きなので、へこむことがあった日は2-3時間ぐらい長風呂をしながら(笑)。否定されるようなことがあっても、改めて自分たちの存在価値や活動の意味を見つめなおして、よしまた頑張ろうと思うようにしていますね。」

2枚目の名刺のすゝめ

ソーシャルセクターで働きたいという人に向けて、鶴木さんは2つの理由から「自分の向き不向きを捉えるために、まずはボランティアやインターンで参加してみるのが良いのでは」と提案する。

その理由のひとつは、働き方を見極めるため。

「経理や法務など、やりたい職種がしっかりしている人は業務が明確ですが、そのようなポジションを目指していないなら、事業を丸ごと任せられることもあるので、ある程度オールマイティーにこなせることも必要です。

また、ソーシャル業界で働くことは、フルタイム勤務するという選択肢だけではありません。ソーシャルと民間、ソーシャルとソーシャルで掛け持ちする働き方もあり、実際にそのような働き方をすることが自分にベストなバランスだというスタッフもいます。まずは2枚目の名刺としてソーシャルな活動に関わってみて、実際の働き方を体感することで、イメージとのギャップが少なくなるのではないでしょうか。」

もうひとつの理由は、心の整え方を見極めるため。

「繰り返しになりますが、民間の支援には限界があります。例えばホームレスの難民にシェルター提供もしていますが、宿の数や資金、管理できる人員が物理的に限られているため、希望されても断らないといけないことがあります。そんなとき、宿を得られなかった人からの『なんで宿を貸してくれないんだ!』『心がないのか!』という辛辣な言葉を受け止める環境に耐えることができるか。理想どおりにいかない現実と向き合ったときに、自分の心のバランスを取れるかをぜひ確認してほしいです。」

鶴木さん自身も、学生時代にインターンを経験して、責められたり、怒りを受け止めたりするような仕事に耐えられるかを確認したという。

「分野によっても、その壁の高さは違うので、まずは一歩踏み出して、自分の目で確かめてみてほしい。ボランティア、インターン、プロボノ、形はなんでも良いと思います。」

(難民の方々のための物資棚。「このような物資をオフィスに運んできてくれるのもボランティアの皆さんです」)

誰かがやらないといけないことに、自分が向き合う

鶴木さんは、難民支援や、ともに生きられる社会づくりの活動をこう表現する。

『向き合うことを避けることもできるけど、誰かがやらないといけないこと』

「辛いこともありますが、その使命感が支えてくれているように思います。難民と地域の橋渡し役は、日本の言語、文化、制度などを理解し、日本で生活している私たちだからこそできる支援なので。」

鶴木さんがアメリカでそう感じたように、自分にとっての『当たり前』が誰かにとっての『当たり前』ではない。

自分の経験やバックグラウンドを棚卸してみると、ちょっとした何かが誰かを支えるきっかけになるかもしれない。
日本における『難民支援』はその選択肢のひとつ。なぜなら、日本で暮らす人だからこそできることが、そこにあるから。

「もし、国際協力や多文化共生、難民支援というテーマに関心があれば、ぜひJARのウェブサイトを訪ねてみてください。私たちと同じ目線で活動をしてくれる方であれば、入門編となる簡単な作業のお手伝いも、通訳ボランティアも、プロボノとしてのサポートも大歓迎です。そのときどきで必要としているお手伝いについてウェブサイトに掲載しています。ご自身の無理のない範囲で、一緒に一歩を踏み出していただけると嬉しいです。」

あなたに合うやり方で「2枚目の名刺」を始めませんか?

認定NPO法人難民支援協会には、あなたのライフスタイルやスキルに合わせてできるインターンやボランティアがあります。

1)ボランティア業務

「自分のスキルがどう活用できるかわからない」「定期的に関わるのは難しい」。そんな方には、発送作業や印刷、資料整理などの事務作業や、イベント、シンポジウムなどでの運営サポートといった、スキルや経験不要で始められるボランティアがあります。

「こうした作業を担っていただけることで、私たち専門スタッフが本来の業務に集中して取り組むことができるため、とても助かっています」と、鶴木さん。

「ボランティア登録フォーム」に登録され、サポートが必要な時にメールが送られてきます。1日から参加可能なものもあるので、まずはソーシャルな活動に参加したい2枚目の名刺ビギナーの方にもおすすめです。
詳しくはこちら

(JARの受付。難民の方の受付業務を担っているのもボランティア。日本語と英語の両方で仕事ができる方を募集している)

2)インターン業務

コミュニティ支援、、渉外(政策提言)、個別支援など、専門分野を持つインターンも募集しています。

平日の日中に長期的に活動が可能な方は、自らのスキルでできるインターンを検討してみては?
詳しくはこちら

ここでご紹介したのは、難民支援協会で募集しているインターン・ボランティア、その他の支援のごく一部です。
詳しくは難民支援協会のHPをご覧ください。

(画像:JARのホームページより流用。画像より募集詳細が確認できます)

 

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ライター

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カメラマン

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大西弘毅
ライター
多様な価値観・働き方に触れること、文章を書くこと、写真を撮ることが好きで、学生の頃から「2枚目の名刺」としてアマチュアライター実践中。1枚目の名刺は経営コンサルタント。3枚目の名刺は国家資格キャリアコンサルタント。
はしもと ゆふこ
編集者
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女性誌出身の編集者。 「人生100年時代」に通用する編集者になるべく、雑誌とWebメディアの両方でキャリアを重ねる。趣味は占い。現在メインで担当するWebメディアで占いコーナーを立ち上げ、そこで独自の占いを発信すべく、日々研究に励んでいる。目標は「占い師」という2枚目の名刺を持つこと。
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