「副業する権利は自分で勝ち取るもの」複業LIVE!イベントレポ(前編)
あなたは「副業」という言葉に、どんなイメージを持っていますか?
本業の合間を縫ってやるもの、お小遣い稼ぎのためにやるもの、会社にバレないようこっそりやるもの……恐らくそんなマイナスな印象を持たれている方が、今はまだ少なくないのではないでしょうか。
そんな中、注目を浴び始めているのが「複業」という考え方。これは、本業の陰でする他の仕事を副業と呼ぶのではなく、自分の仕事を「すべて本業」にしてしまうという新しい働き方のカタチです。
このwebマガジンでも、(主に2枚の名刺やパラレルキャリアという呼び方で)そのような働き方をされている人を紹介してきました。
【インタビュー】
・大企業の採用担当、NPO理事、企業家…27歳の僕が、名刺を何枚も持つ理由
・「下浜さん、電通にいるのにどうしてそんなことできるんですか?」のらもじ発見プロジェクトを手がける、若手アートディレクターに聞く
……そんな“複業”にスポットを当てた初のイベント「複業LIVE!」が7月16日に開催され、私たちNPO二枚目の名刺も出展企業として参加させていただきました。
ここからは、2枚目の名刺webマガジン サムライト編集部による、イベント当日のレポートをお届けします!
◇イベント情報
「複業ライブ!―見つけよう、あなただけのパラレルキャリア―」
・主催
PARAFT株式会社/株式会社en Factory
・出展企業
メリービズ株式会社/株式会社オープンロジ/はたらく株式会社/株式会社フェリックス/インプレックス アンド カンパニー株式会社/株式会社エンファクトリー/レイ・フロンティア株式会社/ストリートアカデミー株式会社/NPO法人 二枚目の名刺
イベントスタート!司会者の面々も“複業家”
客席がすでに賑わい始めていたこともあり、イベントは予定の時刻より少し早めにスタート。
司会進行を務めるのは、エンファクトリーの井川さんとPARAFTのマックス江崎さん。マックスさんはPARAFTでエンジニアとして働く傍ら、素材サイトでフリー素材のモデルをされています。
(※マックスさん)
もうひとりの司会である井川さんも、エンファクトリーの事業開発部で働きながら、フリーランスとして活躍されているそうです。司会のお二人がすでに現役の複業家というのが、さすが主催企業の面々です。
特にエンファクトリーは、副業禁止ならぬ「専業禁止」を宣言したことでも話題になった、“複業”文化のパイオニア。オープニングトークで、代表・加藤さんは次のように語りました。
「たとえば年金制度だとか、バブルの前に作られたしくみというものがまだ生きているじゃないですか。僕はいわゆるバブル世代ですが、時代は当然、その頃から大きく変化してきています。
その頃の古いしくみに頼っていて大丈夫なのかな、という思いがあって。会社ではなく個人がそれぞれ考えて、荒波を乗り越えなければいけない時代になってきたな、と」(加藤さん)
イケダハヤトさん「東京は暑くて大変ですね(笑)」
続いて登場したのは、言わずと知れた人気ブロガーのイケダハヤトさん。現在は高知県に住んでいらっしゃるため、スカイプでのオンライン参加です。
開口一番、「高知は非常に涼しいです。東京は暑くて大変ですね(笑)」と会場を煽るイケダさん。
フリーランスはたとえ自分の体調が悪くても仕事をしなければいけないと思うが、という話題を受け、
「僕、東京にいたときは年に5~6回風邪を引いてたんですよ。でも高知に来てから一度も引いてないです、住んでいるのが限界集落なので、ここまでウイルスが飛んでこないんだと思う(笑)。
今はどこでも仕事ができるけど、地方はコミュニティがしっかりしていて、やっぱり生活環境がいいです。こうやって、自分の場所を築きつつ仕事をするという働き方もあるよ、というのをお伝えしたいですね」(イケダさん)
これから本業以外の活動をしたいと考えている人が自分を売り込むには、まさに彼がしているとおり「ブログを書く」のがよい、とイケダさん。仕事は自分でプレゼンする中で作られていくため、情報発信は積極的にすべき、と語りました。
企業の目にパラレルワーカーはどう映る?―副業OK企業によるトークセッション
続いて行われたのが、従業員に実際に副業を許可している“副業OK企業”によるトークセッション。白熱したその模様をたっぷりお届けします。
○登壇者
・日本マイクロソフト株式会社
砂金 信一郎さん
・株式会社コミュニティコム
星野 邦敏さん
・ライフネット生命保険株式会社
佐藤 邦彦さん
○ファシリテーター
伊藤 羊一さん
ヤフー株式会社 企業内大学「ヤフーアカデミア」本部長/グロービス経営大学院客員教授
人事担当者は、「フリーランスから会社員に戻る人」もたくさん見ている
まずは、登壇者の3名の自己紹介。
(佐藤さん)
ライフネット生命の人事担当である佐藤さんは、ライフネット生命が副業やダイバーシティを促進している企業であることを強調しながらも、
「人事担当としてあえて言わせていただけば、一度会社を辞めてフリーランスになってから、やっぱり組織で働きたい、と会社員に戻られる方の例もたくさん見てきている」と語ります。
そもそもなぜ副業NGの会社が多いかと言うと、副業に集中することで本業の生産性が下がるという意見以外に、「仮に副業をしている社員が過労で倒れてしまったというような場合、その責任を追うのは企業」だということが挙げられる、と佐藤さん。
「企業に正規雇用されているというのは、実はかなり“守られている”状態です。もし社員が仕事中に倒れてしまうようなことがあった場合、病院を手配したり、ご家族に連絡したりといった手続きをするのは、僕のような人事担当者なわけです。
パラレルワークをされている方って、やっぱりすごく忙しい。だからこそ、僕のような立場の人たちがセーブしなければいけない、ということも多々あります」(佐藤さん)
複業促進の流れに警鐘を鳴らすような佐藤さんのコメントのあとは、コミュニティコムの星野さんによる自己紹介。星野さんは、メディア運営、サイト制作などを主事業として行いながらも、地域新聞の編集長を兼任されているとのこと。
(砂金さん)
3人目であるマイクロソフトの砂金さんは、エバンジェリストという日本ではまだ浸透していない肩書きを「マイクロソフトのファンになってもらうための仕事」と解説します。
「……最近ちょっとWindows10のアップデート関連でお騒がせしましたが(笑)、あれももちろん、皆さんのPCのセキュリティを考えてのこと。良かれと思ってやってるんです」とのコメントに、会場が笑いに包まれるシーンも。
「マイクロソフトはいわゆる外資系です。先ほど佐藤さんから人事は社員を守ってくれているというお話がありましたが、外資では人事は守ってくれない(笑)。自分の業務を100%でこなせることが前提で、そうでない場合、ポジションクローズだから2週間以内に他の仕事探してね、みたいなことも普通にあります」(砂金)
「200%の仕事をして、副業する権利を自分で勝ち取る」
セッションのトークテーマは、「複業をより推進していくために必要なものは何か」。
仕事には、「その人にしかできない」という専門制の高い“質的な仕事”と、手を動かせば誰でもできる“量的な仕事”の2つがある、と佐藤さんは話します。
「質的な仕事は、自分のキャリアアップにも繋がる。できるのなら、質的な仕事の割合を増やすために副業をしてほしいと思います」(佐藤さん)
複業の流れを推し進めていくにはとにかく「ハイパフォーマーになること」だ、と語ったのは砂金さん。
「量的/質的どちらにしても、自分でこなせる仕事の相場を高めていかない限り、複業OKという流れにはなかなかなりにくいと僕は思います。本業の人にはやっぱり『副業は勝手にやってるんでしょ』って言われますし」(砂金さん)
砂金さんはこう続けます。
「自分に甘かったり、いわゆるワークライフバランスが何よりも大事、という人には、複業というスタイルは向かないかも、と思いますね。
200%の仕事をして、これだけやってるんだからあとの時間は何をしても自由でしょ、と自ら権利を勝ち取るしかないと思います」(砂金さん)
自分の名前で仕事ができるか、企業名に頼るか
ここまでの流れを受け、「偉人レイヤーの話と凡人レイヤーの話があると思うんですよね」と話し始めたのは佐藤さん。
「砂金さんのように、余人をもって代えがたい仕事でフリーランスだったりパラレルワーカーになるというのは、なかなか普通の人にはできないことだと思います。これから労働人口は減っていくけれど仕事は増えていく、という時代の流れの中で、そういった偉人レイヤーだけでなく、凡人レイヤーでも何ができるのか考えなきゃですよね」(佐藤さん)
砂金さんはこの意見に対し、エンジニアの世界を例とするのなら、「自分の名前を名乗って仕事ができる人」が偉人、「企業名で仕事を受ける人」が凡人だと言います。
自分の名前を出して仕事ができるようになるには、「先ほどイケハヤさんがおっしゃっていたように、ブログをやったりすることで、『自分のブランドをどう高めていくか』を考えるべき。やっぱり本名を出していくことが大事だと思う」と語りました。
「休みを休みとして使う人には、複業は難しい」
ここで、来場者の方から「複業の第1歩を踏み出すために何をすればいいか、凡人レイヤーでアドバイスがほしい」という質問が。
「まずは、自分の会社の中で最大のパフォーマンスを発揮することですよね。それから外にも目を向けるようにしていって、最初はちょっとしたお手伝いレベルでいいので、同業種の他の企業やセミナー、イベントなど、いろんな場所に顔を出してみる。これってお金になるのかな、ということは考えずに、しばらくはギブ&テイクのギブだけをし続けるといいと思います。テイクは絶対に、時間差で訪れるので」(佐藤さん)
「僕は、休みを完全に休みとして使う人には複業は難しいんじゃないかな、と思います。
たとえばキャンプが趣味で休みの日にはキャンプをする、という人だったら、いずれ自分でイベントを主催するようになるだとか、コミュニティを自分でつくるという方向に繋がっていく。そんな風に自分の好きなことを仕事に変えていける人がいいんじゃないかな、と」(星野さん)
「今回のようなイベントにたくさん顔を出して、自分の理想に近いキャリアを実現させている身近なロールモデルを見つけるといいと思う。
それにやっぱり、ブログやSNSで自分の活動を発信し続けるのは大事だと思います。意見は発信しながらまとまっていくものだと思うので」(砂金さん)
砂金さんの意見を受けて、ファシリテーターの伊藤さんはトークセッションを次のような言葉で結びました。
「まずは動いてみる。そして、動きながら考えることで、砂金さんのおっしゃるハイパフォーマンスを発揮できるようになるということでしょうね。複業をするための自分の権利は自分で勝ち取る、というのが印象的でした」(伊藤さん)
まだまだ続く「複業LIVE!」。イベントレポートは後半に続きます。
後半では、実際に複業をしているパラレルワーカーの方々のトークセッション、主催のパラフトの方へのインタビューを中心にお届けします!
ライター
編集者
カメラマン