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2枚目の名刺を持つことが普通のスタートラインになる~生駒市・小紫市長インタビュー(後編)~

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前編では、生駒市として取り組む自治体3.0のまちづくりと副業推進の関係、そして地域に飛び出す職員と上司との関係について伺った。後編では、公務員の未来と副業についてお聴きしていく。
前編記事はこちら

「半公半X」、パラレルキャリアでリスクヘッジ

島田

小紫さんの著書ではこれからの公務員のあり方として「半公半X」という生き方も提案されています。これは公務員をやりながら公務員ではない仕事もするという考え方ですよね。

はい。エックスが「公」でもいいんです、「半公半公」でも。生駒市役所で働きながら、どこかで別の自治体で働いているっていうのでもいいんです。私は、将来、夏は北海道のどこかの自治体で働いて、冬は沖縄のどこかの自治体で働けないかなとか思っているんです。そういう風に雇ってくれる自治体がないかなあ(笑)

小紫
島田

それ、いいですね!(笑)

小紫:もちろん「公務員×民間」とか「公務員×NPO」とか「公務員×個人事業主」とか色々あると思います。そういう働き方を止める理由がもうないですし、現に止まらないと思います。

10年後ってはっきり言って分からないんですよ。ただ公務員の働き方で確実に言えるのは、終身雇用とか年功序列とか、副業はダメだとか、社会の動きを考えたら、これまでのそんな常識が残っていくはずないということです。

例えば、今採用している人に「60歳とか65歳まで絶対君たちの雇用を保障します」なんて、将来を見通せる、責任ある自治体ほど、そんなこと約束できないです。途中で公務員の仕事自体がバンバンなくなっていくかもしれません。ロボットやAI、ICT技術ができることがどんどん増えていけば、生駒市役所の職員数は今800人くらいですけど、それこそアメリカのどこかの街みたいに、職員はたった数人っていう可能性もありえるわけです。

今採用している人たちが40年後にどうなっているか予測できないという意味では、事実上終身雇用というのはもう終わっているんです。

そういう時代が確実に来るんだから、特に今の若い職員には、「稼ぐ力をつけよう」と特別な意味を込めて伝えています。

民間企業の仕事もしながら何日間か公務員をしたり、公務員をしながら農業をしたり本を書いたり講演活動をしたり。パラレルキャリアは絶対に自分の人生のリスクヘッジにもなるし、相乗効果で面白くする意味もあるだろうし、面白くするだけじゃなくて、人生の脆弱性を減らすために色々なことをやっておくというのはとても大切なことだと思っています。

生駒市でも、現時点で数名は民間企業から引く手あまたの人がいると思います。そういうレベルの人をどんどん増やしながらも、そういうレベルの人が「生駒市の仕事は面白い」と言って組織に残ってくれるくらい良い組織、面白い組織、成長できる組織にしないといけないんです。

やりたい仕事に就けずにブーブー言うのはかっこ悪い

島田:私も市役所職員をやりながら、市役所に対して「辞めさせないでください」「雇っておいてください」という気持ちで向き合うよりは、自分の意志で、「今この瞬間はこのさいたま市役所と仕事をしたいから、ここで仕事をさせてもらっていますよ」と言えるような関係性が創れたら健全かなと思っています。

小紫:その通りですね。市役所にとっても、後者の方がよく仕事をしてくれる職員であることが多いです。

著書にも書きましたけれど、環境省の頃からご縁のあるリンクアンドモチベーションの小笹さんの言葉で、「I-company」という言葉がすごく好きなんです。「一人ひとりが個人事業主ですよ」と。

市の方針はこうなっていて、契約はちゃんと結んで給料ももらってるんだから、その方針と違うことをされると困るけれども、その実現に向けて一番いいやり方は一人ひとりが契約と市の方針の範囲の中で、市役所をどんどん飛び出してもよいので、いろいろと工夫してやってくださいと。そこで実績を出してくれればいいですっていう考え方が理想ですし、そうあるべきだと思います。

島田:そんな風に働ける職員になろうとしたときに、職場での経験や学びに加えて、職場でなかなか経験できないことを、職場で経験させてもらえるまで待つのか、それとも自分で能動的に職場の外に獲りに行くのかが問われますね。

小紫:まさにそうだと思います。市役所は業務の横幅が広いので、その横幅の広さは武器というか面白さです。ですが、基本的には配属された職場でできる仕事はある程度絞られてきますから、受け身では経験できることは限られちゃいます。

「地域に飛び出したいのに、私は給与計算の担当になりました」と腐ったら終わりです。給与計算も確実にこなし、また、AIやITの活用など、効率化の工夫などもしながら職務を果たしつつ、やりたい仕事は職場の自主活動や地域でやればいい

地域が目の前にあるわけですから面白い人なんていくらでもいる。そういう意味で市町村の職員は本当に恵まれていると思います。そのような恵まれた環境の中で、自分がやりたい仕事や部署に就けませんでしたと文句だけ言ってる人はかっこ悪いですよね。いや、自分でやりたい仕事は地域でやればいいやんって。

2枚目の名刺を持つことが普通のスタートラインに

島田

2枚目の名刺を持とうと思っているけれど思うように一歩を踏み出せない公務員に何かアドバイスはありますか。

公務員って別に辞めさせられないので上司に嫌われようが何だろうが(笑)、やってしまえばよいんですよ。公務員の地位の安定性って、挑戦するためにあるんですから。

小紫

小紫:別に文句言われる筋合いって何もないからね、2枚目の名刺を持つこと自体が。本業の後の時間にやるような活動なんて誰に縛られる必要もないので、はっきり言えば勝手にやればいいじゃんって思うんです。やりたくないならやらなくても別にいいですし。

仕事じゃないから強制できないけど、やった方が絶対に人生も面白い。私は、常々、ワークライフコミュニティのハーモニーって言ってます。ワークライフバランスはもう古くて、仕事も家庭も、そして地域に頼り、地域に貢献し、地域を楽しむ視点を加え、この3つが相乗効果を生むことが大切なんです。仕事も人生も家庭もそれぞれにおいて地域っていう要素を入れた方が全部豊かになります。

だから2枚目の名刺を持つというのは、特別偉いことをやっているわけではなくて、これからの時代、「自然に普通そうなるんちゃうん?」っていう感じはします。地域に携わっていたら、地域活動に関する顔、ひいては名刺が自然と生まれてきますからね。

今、1枚目の名刺持つことすら危うい「バージョン1.0」な人と、1枚目の名刺で忙しいゆえに2枚目の名刺を持っていない人「2.0」な人と、2枚目の名刺も意識して動いているような「3.0」な人までいるとしたら、もう間もなく「4.0」までいくんじゃないかと思います。

地域と接点がなくて仕事なんかできるはずがないので、1.0とか2.0とかいうのはそもそも存在しなくなる。今3.0って言っている2枚目の名刺を持つこと自体が普通のスタートラインになる気はします。

2枚目の名刺は当たり前で、それをどういう風に活かしていくのかとか、それはもしかしたら稼ぐということなのかもしれないし、公務員の仕事もしているけれど、公務員がメインでもなくて、民間でも10社くらい複業しています、なんてる人がどんどん出てくるんじゃないかとか、むしろその進化系のところが4.0。そんな時代がもう何となくそこまで来ているような気がしますね。

島田:小紫さんの頭の中では、2枚目の名刺を持つということが死語になりかけている?(笑)

小紫:いや、死語というか、前提というか普通だと思いますね。

逃げ切れないあなたたちを縛るのは、逃げ切れる上司

島田:同じ公務員の中にも温度差があるのかもしれませんが、人によっては地域に飛び出すことについて組織や上司の顔色を窺いながら活動をするようなケースもあると聴いています。有償・無償に関わらず、そういう人もいることを私は「公務員の呪い」だと言ってるんです。

小紫:課長とか部長だって、自治会長とかPTAとかやってるわけですよね。だから若い子らが子ども食堂の手伝いに行くのを止める意味が分からないわけです。

もうあと何年かで退職だから、「時代の変化から逃げ切れる」っていう人に縛られて、若手職員が地域に飛び出すのを諦めちゃったらだめですよね。だって若い職員は、社会の激変から逃げ切れないんですよ。

止めてる側の人は終身雇用に守られてるけど、あなたたち若い人はもう終身雇用に守られないんだから、そんな上司の言っていることに気を使いすぎて、真面目に受け止めて地域に飛び出すのを止めたら、上司は困らないけど、あなたたちはめちゃくちゃ困りますよね。あなたたちは首を切られますよねっていうことです。

地域に飛び出さない公務員を雇い続ける余裕はどの自治体にもなくなるんです。それをきちんと考えて、行動しないといけない。

ちゃんと地域に飛び出してる人がどの組織にも少しはいるでしょうから、そういう職員のことも見てください。身近にいなかったら勉強会とかに行くのは一つの方法だと思います。こういう方向性になるっていうのを分かってない人が周りで多数派なのだとしたら、時代の変化を感じ取って自ら学んだり地域に飛び出すような人たちの集まりに月に1回でも2ヶ月に1回でも行ってみてください。地域に飛び出さないといけないよねっていう、1番当たり前のことを当たり前に確認できる場に行かなきゃ。

そういう意味では公務員の勉強の場とか異業種交流会というのは意味があることだと思います。

でも、それは当たり前のことをやってるレベルでしかありません。

次の段階は「どう稼ごうか」とか、さらには「9時〜17時はきちんと働いた上で副業を」っていう本業と副業の区別すらない働き方とか、公務員として働くのは週に3日間とか、午前中だけ公務員やって午後は好きなことをするとか、そういう段階に進みますから。

島田:次のステージに備えて、自分の身は自分で守るっていうのは、公務員にとっても大切だということですね。

小紫:もう年功序列が崩壊するのは火を見るより明らかですし、終身雇用だって絶対になくなりますからね。

島田:本日はお忙しい中、ありがとうございました。

【イベントのご案内】
二枚目の名刺 Common Room 64「2枚目の名刺は今なぜ求められているのか?~公務員と共に語る~」
■日時:2019年3月13日(水)19時00分~21時00分
■場所:パーソルテンプスタッフ株式会社(東京都渋谷区代々木2-1-1新宿マインズタワー18Fセミナールーム)https://www.tempstaff.co.jp/corporate/group/area-03/shinjuku-01.html
■参加費:3000円
■人数:先着30人■イベントスケジュール
◆開場(18:30-19:00)
◆第1部:イントロダクション(19:00-19:40)
・オープニング:NPO法人 二枚目の名刺とは?
・公務員プロジェクトの紹介
◆第2部:トークセッション(19:40-20:10)
・2枚目の名刺がなぜ今求められているのか?
◆第3部:ブレスト(20:10-20:40)
ご参加者とゲストと共に分科会としてチームに分かれてブレスト
◆第4部:シェア&ラップアップ(20:40-21:00)現役公務員の方はもちろん、公務員でない方もお気軽にご参加ください!参加をご希望の方は、イベントページ(Peatix)からお申込ください。
主 催:NPO二枚目の名刺

【インタビューを終えて】
小紫さんの頭の中にある公務員像にとっては、既に2枚目の名刺を持つことが先進的でも特別でもない、当たり前のことでした。

「2枚目の名刺のことを語るなら《持つかどうか》ではなく、《持ってどうするか》、いや、その更に一歩先のことを語らないと未来を語ることにならない」

小紫さんが語る言葉の端々から、そんなメッセージが発信されているのを感じ続けた60分間でした。

NPO法人二枚目の名刺の活動に関わるようになってから、頻繁に「公務員とは何だろう?」「本業とは何だろう?」そんなことを考える瞬間があります。例えば、目の前の事務処理ばかりに追われる役所の職員と、地域のために身を粉にして活動する市民と、どちらが“公”のために“務”めを果たしているのだろう?

小紫さんのお話をお聴きして感じたのは、どの組織に属しているのかとか、誰に雇用されているのかという要素は、決して本質ではないということ。このことは多くの公務員にとって“心強さ”でもあり“怖さ”でもあるはずですが、このインタビューがその本質的ではない境界を越えようとする誰かの背中を押すことに繋がれば、そんな風に願っています。

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ライター

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編集者

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カメラマン

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島田正樹
ライター
さいたま市役所に勤めながら、NPO法人二枚目の名刺「2枚目の名刺webマガジン」の編集者として活動。その他、地域コミュニティづくりの活動や、公務員のキャリアに関する活動などにも取り組む“公務員ポートフォリオワーカー”。『仕事の楽しさは自分でつくる! 公務員の働き方デザイン』(学陽書房)著者。ブログで日々情報発信中。https://note.com/shimada10708 https://magazine.nimaime.or.jp/shimadamasaki_interview/
金治 諒子
編集者
公務員×2枚目の名刺プロジェクトメンバー。 母であり、妻であり、プライベートで社会活動に携わる姫路市職員。孤独な子育てを経験し最愛の子ども達の前で笑えない日々を過ごす中で、社会と自分の在り方に疑問を持ち、地域に飛び出すようになる。子ども達の世代まで持続可能な繁栄を願う。そのためにまずは、母自身が自分の人生に主体性を持って行動する。
SunagaYuichiro
カメラマン
フリーライター・フォトグラファー
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