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【インタビュー】後編:複業家・西村創一朗氏が語る、「パラレルキャリア」と企業の幸福な関係

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大手総合人材会社の採用・新規事業担当、NPO理事、さらには自身の会社である株式会社HARESの代表……。さまざまな肩書きを持つ西村創一朗さんはまさに、「パラレルキャリア」の体現者とも言える存在です。

前回のインタビューでは西村さんに、ご自身のキャリアや生き方について語っていただきました。今回は、“複業家”、そして大企業の人事担当という視点から、社員がパラレルキャリアを実践することによって何が生まれるか、会社にとってメリットはあるのか?という点について、詳しくお話ししていただきます。

パラレルキャリアの人がいることは、企業にとってプラスにしかならない

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――前回のインタビューの最後に、「副業禁止規定を設けている会社をゼロにする」という西村さんの目標をお聞きしました。しかし、実際には副業禁止という企業は、まだまだ多いと思います。そんな企業の人事担当の方に向けて、まずひと言いただけますでしょうか。

西村:副業NGという企業になぜそうなのか、という理由を聞くと、大抵「社員が本業に集中しなくなって、社員の生産性が落ちる」というような答えが返ってきます。けれど、副業に限らず本業以外の活動をしている、いわゆる“パラレルキャリア”の社員が増えることは、企業にとってもプラスになることばかりなんです。


――では、会社の中にパラレルキャリアの人がいるメリットは、どのような点にあるのでしょうか。

西村:メリットはたくさんあると思うのですが、端的に言うなら3つです。

ひとつは、「社員が自分自身の意思でスキルを身に着けてくれる」点。
たとえばある社員が本業以外の場所でWebサイトの構築をしようとしたら、プログラミングやデザイン、SEOといったスキルを自分自身で身に着けるわけですよね。同じことを社内教育で行おうとしたら、コストも時間もかかってしまいます。“複業”を推奨すれば、ある意味、お金をかけずに社員研修ができるんです。

もうひとつは、「トランザクティブ・メモリーが増える」点。
トランザクティブ・メモリーというのは聞き慣れない言葉かもしれませんが、簡単に言うと「“誰が何を知っているか”を把握する」こと。
今の時代は、「知っている」こと、つまりノウハウ(Know how)よりも、「誰がそれをできるかを知っている」、ノウフー(Know who)の方が大切だと言われます。知識そのものよりも、この分野ならこの人に聞けばいい!という専門家がたくさんいて、なおかつそれがデータべース化されていることが望ましいという考え方ですね。

社員が100人の会社があったとして、その会社が副業を禁止していれば、知識は100人分にしかなりません。しかし、もしもその会社に本業以外の活動をしている人がたくさんいれば、その知識は100人以上になるのです。

そして、最後のひとつはとてもシンプルで、「社員のモチベーションが上がる」という点です。社外であろうと社内であろうと、自分が本当にやりたいことをやれている人間の方が、絶対にモチベーションは高いんですよね。社員のモチベーションを上げたいなら副業をOKにすべき、と僕は常々言っています。

社会人が市場価値を高めるための、たった2つの方法

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――前回伺ったとおり、西村さんは実にさまざまな肩書きを持っていらっしゃいますよね。パラレルキャリアについて、西村さんご自身はどのように考えていらっしゃいますか。

西村:僕は、社会人が自分のキャリアを活かし、市場価値を高めるための方法は2つしかないと思っています。その2つというのはすごくシンプルで、ひとつは「できることを活かしてやりたいことをやる」こと。そしてもうひとつが、「やりたいことをやるためにできることを増やす」ことです。

「できることを活かしてやりたいことをやる」というのは、つまり、本業で培ったキャリア=Canを活かして、社内ないし社外で何か他のことをやる、というケース。
「やりたいことをやるためにできることを増やす」というのは、Canがまだ確立していない人が、社外に出たりして本当に興味のあることを身に着ける、というケースです。

自分のキャリアをもっと広げたいのにそれができていない、あるいは、何かしたいという気持ちはあるのに、やりたいことが明確になっていない……。そんな人はたくさんいると思うんです。どちらのケースにせよ、自分の市場価値を高めたいのなら、パラレルキャリアを視野に入れてほしいな、と思いますね。

「なんかイキイキしてるな、という人は大抵、プライベートでも何かしています」


――いま、「副業を推奨」している企業が少しずつ増えつつありますよね。採用担当者でもある西村さんの目には、実際に、パラレルキャリアの社員はどのように映っているのでしょうか。

西村:実際、弊社の中には、学生時代に起業して、イベント企画・集客といった仕事をしながら、今でも自分の事業を続けている女性社員がいます。メディアなどにも頻繁に出ていますが、やっぱり見ていてキラキラしています。パラレルキャリアの社員は多いので挙げ出すとキリがないくらいですが、「あの人、なんかイキイキしてるな」と感じる人は、大抵、プライベートで何かやっていますね。

よく、「どれだけスキルを身に着けたところで、それが本業に活かせなければ意味がないんじゃないか」と言う人がいます。でもそれは、僕はちょっと違うと思う。

なぜなら、社員が身に着けたスキルがたとえ本業に直接的には活かされなくても、「イキイキしている」という状態は、絶対に仕事にも好影響を与えるんです。僕は社内外のパラレルキャリアの人を見ていて、日々それを実感しています。
いますぐに副業をOKにする、というのは難しいかもしれません。……けれど、パラレルキャリアを始めたい、という社員がいるなら、まずはその人たちの声を聴いてみてほしいな、と思いますね。

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豊城 志穂
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