あなたも「先生」になれる。スキルを活かした講座が持てる、ストリートアカデミーのはじめ方
一度でいいから、「先生」になってみたい――。そんな風に思ったことはありませんか?
学生時代、同級生によく勉強を教えていた。体育祭や文化祭でチームの指導役だった。そんな、“教える”ことが得意、好き!という人は、きっとたくさんいると思います。もしかしたらすでに、家庭教師や会社のセミナーの講師などで、先生役を経験したことがある、という人もいるかもしれません。
しかし本物の「先生」となると、学校で教えるのはもちろん、料理や書道、水泳といった習い事でも、資格や教室を開設するための手続きが必要――というのがこれまでの常識でした。
ところが、特別な資格は持っていなくても、個々人のスキルを活かして「先生」になることができる…なんてウェブサービスが近ごろ、脚光を浴びているのをご存じでしょうか。
サービスの名前は「ストリートアカデミー」。講座は全国さまざまな場所で自由に開くことができ、講師登録も、講座を掲載するのも無料です。
今回は、そんな画期的なウェブサービスを運営する、ストリートアカデミー株式会社の代表取締役・藤本崇さんにお話を伺いました。
◇お話を聞いた方
藤本 崇(ふじもと たかし)さん
ストリートアカデミー株式会社 代表取締役社長
ユニバーサルスタジオ、フェデックスなど様々な業界にて会社員として勤務する傍ら、夜間の料理学校や映画学校などに通い、クリエティブなキャリアを志すも挫折。会社を辞めてMBA留学した後、金融業界に転身を図り5年間投資ファンドに勤務。
2012年に社会を変える事業を起こす為に起業。「まなびを自由に、当たり前に」をビジョンにスキル共有のマーケット「ストリートアカデミー」をローンチし、VC3社から出資を受け、現在に至る。
米コーネル大学工学部修士課程卒、スタンフォード大学MBA卒。
ビジネス系講座から、靴磨き、バク転まで
――今日はよろしくお願いします。早速ですが、「ストリートアカデミー」には、どんな講座があるんですか?
藤本:現在、ストリートアカデミーのサイトには7000以上の講座が掲載されています。多いのは、IT・ビジネススキルや写真、英語を学べる講座ですね。ユニークなところで言うと、バク転講座、包丁の研ぎ方講座、靴磨き講座…なんていうのもあります。
――バク転講座!すごいですね。バク転、してみたいです。
藤本:そうそう、バク転ってみんなやってみたいんですよね。できるようになって、Facebookで「これ俺だぜ」って言いたいじゃないですか(笑)。そういう、シェアしやすい講座はやっぱり話題になります。
「包丁の研ぎ方講座」も、一見すごくニッチだけれど主婦の方に大人気で。なぜかと言うと、包丁の研ぎ方ってこれまで誰も教えてくれなかったんです。メーカーの実演販売とかで教えてくれるケースはありますけど、あれは最後に砥石を売られてしまう(笑)。包丁の研ぎ方だけを学びに、料理学校に入るわけにもいかないですし。
だからやっぱり、1回の講座でプロがそのスキルを教えてくれるというのは魅力的ですよね。そんな「ありそうでなかった講座」には、やっぱり人が集まります。
――なるほど、面白いです…!他にも、人気のある講座の特徴ってありますか?
藤本:レクチャーやセミナーだけに留まらず、受講生が実際に自分で体験できることですね。それからやっぱり、すぐに使えて実益に結びつくこと。
たとえば写真の撮り方講座だと、趣味で通われている方ももちろんいますが、ネットショップを運営している若い女性が受講されるケースが多いそうです。いまは、写真の良し悪しによって商品の売れ方も変わってくるので。
審査を通ればすぐに講座を開ける手軽さも魅力
――先ほど、いま7000以上の講座があるとおっしゃっていましたが、講座って簡単に開けるんでしょうか。
藤本:手順としては、まずサイト上で講座を作っていただく。そして、掲載前に私たちが簡単な審査をさせていただきます。審査というのはどの程度のスキルがあるかということではなく、きちんと素性が分かる方かどうか、ですね。
講座の内容で掲載NGになることは少ないですが、公序良俗に反しているもの、それに「学び」とは少し離れているという観点から、心理セミナー・カウンセリングなども無しにさせていただいています。
審査に通れば、すぐにサイトに掲載されます。ですので、講座を開くこと自体はとても手軽にできますよ。
――講師には、どのような経歴の方がいらっしゃるんでしょう。
藤本:その道の現役プロの方もいれば、フリーランスで活躍されているパラレルワーカーの方、趣味が高じて講座を開かれたという方……本当に多種多様です。
ただ、決してハードルを上げるわけではないですが、講座を開くのは簡単でも、講座を「続ける」には努力がいると皆さんおっしゃいますね。7000ある講座の中で、定期開催されているのは約半分くらいでしょうか。
――たしかに、講座がそれだけあったら生徒の方を集めるのも大変そうです…!人気講師になれる秘訣ってありますか?
藤本:ひとつ言えるのは、人気のある先生は皆さん、お世話好きで褒め上手な方です。
生徒の方は新しいことを始めるわけですから、「知らない人ばっかりで緊張する」「素人だから、ついていけなかったらどうしよう」と不安を抱えているわけです。それを上手にほぐして「大丈夫だよ!」と言ってあげられる方は、講師に向いていると思います。
たとえば写真の講座だったら、ひと言「カメラ持ってなくてもOKです!」と書いてあげるだけで、初心者の人も受けやすくなりますしね。
自分のスキルをどんな講座にしたらいいか分からない、講座を開いてみたもののなかなか生徒が集まらない…という方は、ストリートアカデミー主催の講師向けセミナーも定期開催しているので、まずはそれに足を運んでいただくのもいいかもしれません。
「何がやりたいの?」と言われた時、「じゃあみんなやりたいことやってるの?」と思った
――ちょっと話は変わりますが、藤本さんは、どうしてこんなユニークなサービスを始められたのでしょう?
藤本:それは、僕自身が「学びオタク」だからです(笑)。
大学卒業後、新卒でエンジニアとして大手企業に入ったのですが、その後さまざまな業界に勤めながら料理学校に通ったり、映画学校に通ったりした時期があって。クリエイティブな仕事をしたかったんですよね、とにかく。ただ、僕自身には残念ながらあんまりその才能がなかった。
ストリートアカデミーを思いついたのは、妻が趣味を活かしてケーキ教室をやっていたのがきっかけです。彼女みたいに何かスキルを持っていたり、あるいは資格を持っていても、それを使わずに持て余している人ってたくさんいるな、と思って。反対に、仕事帰りや週末に何か新しいことを始めたいけれど、「入会金」なるものの存在がネックで踏み出せない…という人もたくさんいる。
じゃあ、その2つを結びつけられる場所を創ったら、みんながもっとやりたいことをやれるようになるんじゃないか、と。僕自身、いろんな仕事をしたりいろんな学校に通ったことで「結局何がしたいの?」と言われたりしたので、「じゃあみんなやりたいことをやってるの?」と思ってたんです(笑)。
人々がもっと自由に生きることを誘発したいな、という気持ちでストリートアカデミーを始めましたね。
――いま「もっと自由に生きることを誘発したい」という言葉がありましたが、本業だけに縛られない、「2枚目の名刺」を持つというような生き方についてどう思いますか。
藤本:物事って、本当にやりたい人がやっている方が、そうでない人がやっているより絶対に効率的なんですよ。だから、挑戦したいことがある人にはどんどん踏み出してみてほしいと思う。
いまストリートアカデミーに講師登録してくださっている方はおよそ6000人いらっしゃるんですが、いわゆる地域のカルチャースクールに登録されている方は、全国に6万人いるんだそうです。そういった方にも、どんどんストリートアカデミーを活用してほしいですね。
講師になることで、誰かの人生を変えることができる
――最後に、これからストリートアカデミーで講座を開いてみようかな、と思っている方にメッセージをお願いします。
藤本:講座は、マンツーマンからでも開催できます。教えられる場所がない、という方は、最初から大げさに会議室を借りたりせず、たとえばスターバックスでもいい。はじめは本当に、気軽な気持ちで講座にチャレンジしてほしいですね。
日本人は奥ゆかしいので(笑)、私なんかに教えられることないし…という方がとても多い。ただ、たとえば企業の広報の方だったら、自分にとっては当たり前のその広報の知識を、欲している人がどこかにいるかもしれない。そのニーズは実際に聞いてみないと分からないわけです。
それに、「講師になる」って、誰かの人生を変えることができるんですよ。現に、「ストリートアカデミーのビジネス系講座を受けたことがきっかけで起業しました」という方も出てきている。自分の知識やスキルがきっかけで、人に感謝してもらえることほど嬉しいことはないですよ。
自分の豊かさをマネタイズできる……つまり、自分の豊かさが価値になるわけです。こんな楽しいことは、一度味わったらやめられない(笑)。ぜひ、ストリートアカデミーをきっかけに、「先生」への第一歩を踏み出してみてください。
ライター
編集者
カメラマン