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大人との“本気”の対話が、街づくりの担い手を生み出す!! 子どもの自分事と街の課題がつながる瞬間とは

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2017年から二枚目の名刺、放課後NPOアフタースクール、Kids Experience Designerの植野真由子さんとで共催している「Social Kids Action Project(ソーシャルキッズアクションプロジェクト、以下SKAP)」は、渋谷区の小学生が街に住む人・働く人・訪れる人、それぞれとの対話を通じて街の課題を引き出し、それを解決するアイディアを生み出すもの。これまでも渋谷、原宿を舞台に行われてきたプログラムを2枚目の名刺Webマガジンで紹介してきました。

過去のレポートはこちら

“社会は自分で変えられる!”小学生が地域課題に本気で取り組む「Social Kids Action Project」密着レポ

小学生の「本気の提案」で原宿の街が変わり始めている! 2018年「Social Kids Action Project」開催レポート

小学生のアクティブラーニングに同行!大人から見た「Social Kids Action Project」の魅力とは?

多様化する地域の課題。子どもと街のポテンシャルを最大限に引き出す新しい「学びの形」

現在進行形で続く“コロナ禍”により例年夏休みに開催されていたSKAPも、2020年夏は中止に。2021年の春休み期間中に規模を縮小して行われました。コロナ禍によって街の様相が大きく変わっているのは、多くの日本人が目の当たりにしている現実で、それは日本を代表する”街”である原宿も同様。そのことを、プログラムを通じて子どもたちはどのように感じ取り、どのような課題解決策にたどり着くのかと注目していましたが、蓋を開けてみると、大人たちと子どもたちとの感覚や感性の違いに納得させられる結果となりました。

(渋谷区は「ちがいをちからに変える街」を基本構想に掲げています。大人と子どもの感性や感覚の“ちがい”も、街の活性化には欠かせない要素なのです)

 

大人がすぐに気づけない「コロナ禍でよくなったこと」も、子どもには見えている

今回は、例年5日間かけて行っているプログラムを3日間に短縮。とはいえ、「原宿はどんな街なのか?」を、渋谷区役所の職員の方や商店会の方、街をつくる企業であるデベロッパーの方にもお聞きして知識を蓄えた後に、実際に街に出て原宿で働く方々にお話を聞き、街の課題を導き出し、その解決策をまとめるという流れは今回も同様。短い日数の中に、ぎゅっと濃くまとめられたプログラムでした。

街で働く商店会の方、街の住民の方を知る渋谷区役所、街をつくる企業である東急不動産とのパネルディスカッションでも、お店の方々へのインタビューでも、やはりコロナ禍が原宿の街に色濃く影響しているエピソードが聞かれました。外から原宿の街に訪れる人は激減し、お店は緊急事態宣言下では開くこともできない。それがメディアを通じて受け取るニュースではなく、目の前の人が体験したリアルな出来事なのが伝わってきて、「コロナ禍の変化」で「よかったこと」という質問にも考え込んでしまいます。一方で、子どもたちからは「電車が空いてる!」「家にすぐ帰って遊べる!」「メイクしなくてよくなった!」などポンポンと出てきたことも印象的でした。

(パネルディスカッションには穏田キャットストリート商店会、原宿表参道欅会、東急不動産、渋谷区 子ども家庭部 子ども青少年課の方が参加。原宿の街の特徴についてお話しされました)

何気ない対話から課題が見つかり、思いもよらないアイディアにつながる

最終日、長谷部健渋谷区長をはじめとする大人たちに向けて、子どもたちが課題解決策を本気で提案する発表会がSKAPのプログラムの締めになります。今回は会場も集まる人もぐっと縮小されていましたが、それだけに全員の声が全員に届く“場の一体感”が感じられました。講評の時間に、発表した子どもたちひとりひとりに語りかける長谷部区長の姿も、新鮮に映りました。

(目の前の子どもたちに向けて、提案の感想を伝える長谷部健渋谷区長)

 

街の大人との対話を経て、子どもたちが解決したいと感じた課題は「マスクで表情がわかりにくい」などコロナ禍ならではのものもありましたが、「ゴミのポイ捨て」「路上の自転車駐輪」など以前から原宿の街で問題になっていたものも多く見られました。「インタビューに訪れた八百屋さんから、“何かいいアイディアはあるかな?”と逆インタビューを受けた」「“原宿を世界的に有名な街にしたい”と言われた」など、何気ないやりとりから発想されたと思われる解決策も。

(インタビューに訪れた原宿の八百屋さんからは、「何かアイディアあるかな?」と、逆に聞かれることに)

 

街のお店の人たちがアイディアを求めていると知ったこと、そしてSKAPのプログラムを通じてみんなの考え方の“ちがい”に気づいたことをきっかけに生まれたのは、「アイディアを集めて、実験的に行ってみる」という『アイディア共有週間』。商店街だけでなく、自治体でも取り入れられそうな提案です。また「原宿を世界に知ってもらう」という課題は、なんと「みんなで同時に紙飛行機を飛ばす」という提案に。しかも紙飛行機に使う紙が雨の日だけ使える割引クーポンになり、「雨の日は退屈」という課題解決にもつながるのだとか。おそらくはそれぞれの子どもがもともと持っている関心事や、バックグラウンドにもよるのでしょうが、何がヒントになるかわからない「小学生の発想」の面白さを改めて感じました。

(大人も子どもも一緒になって、紙飛行機を「せーの!」で飛ばすなんて、想像しただけでも楽しそうです。プレゼンに使った模造紙にも、本物の紙飛行機が)

子どもの発想を最大限引き出すための、大人の言葉かけとは?

SKAPの魅力はさまざまなところにあると思いますが、小学生にとって「家族や学校・習い事の先生以外の大人と、同じ目線で話す」ことは、大きな経験につながるのではないでしょうか。前述のように、インタビューに行った先で逆に意見を求められるなど、大人が自分たちの話を真剣に聞き、頼りにしてくれるという経験はひとつのブレイクスルーになるのではと感じます。日常接している、家族であっても果たして子どもの話を真剣に聞き、“対話”ができているのだろうか?ということは、まさに小学生の親である筆者も自分に問い直したのでした。

2日目の後半、子どもたちが翌日発表するためにまとめた提案をブラッシュアップするため、その場にいる大人からアドバイスをもらう時間が設けられました。アドバイスを求められる大人は、植野さんとメンターとして参加されている方だけかと油断していたら、「ここにいる大人は誰にでも聞いていいからね!」と植野さん。筆者も何人かにアドバイスをさせていただきました。

 

(撮影担当の方もアドバイスする大人のひとりに! じっくりと子どもの話に耳を傾けていました。大人にとっても、子どもとの対話は新鮮な経験です)

 

子どもたちの提案は、どれも「私も実現したらうれしい!」とワクワクするものばかりで、「然るべき大人とつながれば、すぐに実現できるのでは?」と感じました。それだけに、アイディアがさらに広がるように、でも私の考え方には誘導しないように、どのような言葉かけをしたらいいのかは、とても頭を悩ませました。子どもたちに向けて、植野さんが「大人は好き勝手に言うからね。自分でこれはいいなと思うことだけ参考にすればいいから!」と声をかけたのも、大人がちょっとくらい言葉かけをしくじってもいいようにという対策なのかもと。大人だからと言って、発言をすべて参考にする必要もないし、必ず参考になる発言があるわけでもない。子どもがそう思ってくれることで、対等な立場での“対話”が成立するのかもしれません。

後日、植野さんに子どものアイディアに言葉かけをするときのポイントをお聞きしたところ「心がけているのは否定しないことと、答えをあげないこと。もう少し考えてほしいところはあえて“これどういうこと? 教えて”と質問をしてみます」との答えが。アドバイスをするときには、複数のアイディアを伝え、どうしてもひとつしか浮かばないときには「思いつきだけど…」と前置きしたうえで「私ならこうしたいかな」と伝えるのだそうです。この声かけのポイントは、親が自分の子どもに対しても役立つはず。大人どうしの会話でも“相手を尊重する“という意味で、とても重要なことでしょう。

(子どものアイディアを聞く植野さん。表情にも安定感があります)

SKAPは、発表会が終わってからが、ある意味での本番。発表会で提案して終わりではなく、その日からスモールステップでも自分でできることを積み重ねること、協力してくれる大人と出会うことが求められます。決して絵空事ではなく、実際に大人と協力しながら活動を続け、渋谷の街づくりで活躍している先輩たちが何人もいます。今回のSKAPに参加した子どもたちも、提案したアイディアそのものの実現でなくても、街に目を向け、周囲の大人と対話をしながら、街の課題の解決のために頭と心と体を動かせる“街づくりの若き担い手”として活躍してくれることを楽しみにしています!

(この中から、渋谷の新たなリアルライフヒーローが誕生するかも⁉)

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古川 はる香
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フリーライター。女性誌や育児誌を中心に雑誌、書籍、WEBで執筆。
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